こんにちは、法人設立の支援実績が豊富な税理士の植村拓真です。
弊所では、役員報酬なしに設定した際の社会保険について、よく以下のようなご相談をいただきます。



役員報酬をなしに設定する際、社会保険の加入義務だけでなく、他にも考慮すべき内容があるため慎重に決めなければなりません。
そこで本記事では、役員報酬なしの社会保険の加入義務について合同会社の一人社長向けにも解説します。
役員報酬の決め方については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
役員報酬なしの社会保険の加入義務
法人設立時に役員報酬を決める際、なるべく負担を抑えるために金額をゼロにする方は少なくありません。
特に、法人設立や運営のコストを最小限に抑えるために、合同会社を選択する一人社長の方であれば、役員報酬をなしにして社会保険料の負担を抑えたいと考える傾向があります。
役員報酬をなしにした場合、社会保険の加入義務はなくなりません。たとえ一人社長の合同会社であっても対象です。
しかし、社会保険料は標準報酬月額に基づいて算出されるため、役員報酬をなしにすると徴収されません。
そして、社会保険の加入資格を失い、5日以内に日本年金機構に被保険者資格喪失届を提出しなければなりません。
一人社長の法人の場合、事業所としては社会保険適用事業所の状態が継続します。
事業継続が困難で終了する際は、税務署に廃業届や法人解散の登記書類を添付して提出します。他にも、年金事務所に全喪届を提出して、適用事業所でなくなる手続きを行わなければなりません。
役員報酬をなしにして社会保険に加入できない方は、健康保険なら国民健康保険、年金なら国民年金に加入するのが一般的です。ただし、国民健康保険には扶養制度がありません。
扶養する親族がいるうえで役員報酬をなしに設定するか検討している方は、社会保険から国民健康保険への切り替えを慎重に判断しましょう。
役員報酬額の金額設定は、健康保険や年金の負担に影響を与えるため、自社に合った最適な数値を設定したい方は、専門家である税理士への相談を検討してみましょう。
関連記事:合同会社の一人社長が給料(役員報酬)を設定する際のルールと決め方
関連記事:役員報酬で税金がかからないのはいくらまで?税金の種類もあわせて解説
役員報酬をなしにする際によくある質問
最後に、役員報酬をなしにする際によくある質問を紹介します。
本項目の内容で疑問が解決せず、税理士への依頼を検討している方は、お気軽にお問い合わせくださいませ。
※内容は随時追加いたします
役員報酬をなしにすれば社会保険で副業バレすることはありませんか?
法人で副業を行っている事実を勤務先に隠す方法として、役員報酬をなしに設定するのは有効です。役員報酬を受け取らなければ、副業の法人にて社会保険の加入要件を満たさないからです。
複数の事業所から報酬を受け取る場合、年金事務所に二以上事業所勤務届を提出しなければなりません。そして、届出をすると勤務先に通知されて副業がバレます。
そこで、役員報酬をなしにしておけば、年金事務所からの通知で勤務先に副業バレするリスクを回避できます。
関連記事:会社員の会社設立はばれる!勤務先に内緒で法人化する方法と注意点を解説
役員報酬をゼロにするデメリットを教えてください
まず、役員報酬をゼロにすると法人の所得が増えるため、金額次第では税金が高くなるケースがあります。そのため、役員報酬を設定する際は、社会保険料だけでなく税金も考慮したうえでシミュレーションすべきです。
そして、繰り返しになりますが、役員報酬をゼロにすると社会保険に加入できないため、健康保険や厚生年金の保障を失う点もデメリットと言えます。
年金についても、役員報酬ゼロの期間が長引くほど受給額が減少して、老後の収入に悪影響を及ぼします。加えて、役員報酬がゼロでは金融機関からの信用を得られず、融資を受ける際に不利になりかねません。
役員報酬をなしにするデメリットについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬をなしにするデメリットと注意点|決める手順も解説
役員報酬を8万円にすると社会保険料はかかりませんか?
役員報酬を月8万円に設定すれば、社会保険料は発生しません。社会保険の加入基準に関係しており、金額が月額88,000円未満の場合は健康保険と厚生年金の対象外となるからです。
本基準により、8万円の役員報酬では標準報酬月額に該当せず、社会保険料を負担せずにすみます。
社会保険の具体的な加入基準については、厚生労働省のホームページをご覧ください。
関連記事:厚生労働省(社会保険加入のメリットや手取りの額の変化について)
関連記事:役員報酬を8万円に設定するメリットは税金や社会保険料の節約にあり!
まとめ
今回は、役員報酬なしの社会保険の加入義務について合同会社の一人社長向けにも解説しました。
役員報酬をなしに設定すると、社会保険の加入条件を満たせなくなるため、社会保険料を負担せずに済みます。
ただし、将来受け取る年金が減ってしまい、老後の生活に悪影響を及ぼすおそれがあります。
ですので、役員報酬の金額を決める際は、社会保険料だけでなく税金や年金なども考慮して慎重に決定しましょう。