こんにちは、法人の顧問実績が豊富な税理士の植村拓真です。
弊所の顧問先様には、ネットビジネス業やIT業、広告代理店業など利益率の高い事業をされている経営者の方が多くいらっしゃいます。
利益率の高い事業では課税所得が多くなる傾向があるため、税負担も重くなりやすいです。
弊所では、上記のような状況の経営者の方から、税金対策に関するご相談をいただく機会も多いです。特に、以下のような質問をよくいただきます。


本記事を読んでいる経営者の方の中にも、上記のような疑問を抱いている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、役員報酬を活用した税金対策について、法人で使える節税スキームとあわせて解説します。
税負担を軽減させて資金繰りの安定につなげたい経営者の方は、本記事を参考にしてみてください。
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
役員報酬を活用した税金対策の具体的な方法
役員報酬を適切に活用すると、税負担の軽減につながります。役員報酬は一定の要件を満たせば、損金算入が認められるため、課税所得を減らせます。
一定の要件については、国税庁のホームページをご参照ください。
ただし、役員報酬の金額が多くなるにつれて、役員個人の所得税や住民税、社会保険料は増加するため注意が必要です。
法人の節税効果と役員個人の税負担のバランスを考慮しながら、役員報酬の金額を設定しましょう。
なお、配偶者や親族を役員にし、役員報酬を支給すれば、所得の分散によって所得税の軽減が期待できます。
所得税は超過累進税率のため、所得が多いほど税負担も重くなる性質を持つからです。
たとえば、自分1人で1,000万円を受け取る場合と夫婦で500万円ずつ受け取る場合を比較してみましょう。
下表のとおり、自分1人で1,000万円を受け取るよりも夫婦で500万円ずつ受け取る方が、世帯収入が同じでも、所得税を約60万円分軽減できます。
ケース | 計算式 | 所得税額 |
①自分1人で1,000万円を受け取る | 1,000万円 ✕ 33% ー 1,536,000円 | 1,764,000円 |
②夫婦で500万円ずつ受け取る | (500万円 ✕ 20% ー 427,500円)✕ 2 | 1,145,000円 |
① ー ② | 619,000円 |
役員報酬は事業年度の開始から3か月以内に決定し、原則として期中の変更はできません。
また、法人税法の第34条2項に規定されているとおり、不相当に高額な役員報酬は、損金不算入となるおそれがあるため注意が必要です。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
関連記事:役員報酬が高すぎる中小企業が抱えるリスク|相場や適切な決め方も解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
役員報酬以外で活用できる税金対策
本項目では、役員報酬以外で活用できる税金対策について解説します。

上記のような疑問を抱いている経営者の方は、本項目を参考にしてみてください。役員報酬以外で活用できる税金対策は、以下のとおりです。
- 法人名義で生命保険に加入
- 決算賞与の支給
- 不要な固定資産の除却処理
- 中古車の購入
- 不動産投資を始める
- 福利厚生の整備
- 出張手当の支給
- 経営セーフティ共済への加入
- 決算期の変更
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
法人名義で生命保険に加入
法人名義で加入した生命保険の保険料は、損金算入が認められているため、課税所得を圧縮する効果が期待できます。
ただし、2019年の税制改正によって、下表のとおり、解約返戻率の高い保険ほど損金算入できる額が制限されるようになりました。
引用:全国商工会連合会(やさしい税務|節税保険封じの税制改正に関するQ&A)
最高解約返戻率が50%を超える保険については、上表のルールに則って損金算入しなければなりません。
なお、下記いずれかの要件を満たす保険については、支払った保険料の全額を損金算入できます。
- 保険期間が3年未満
- 最高解約返戻率が50%以下
- 最高解約返戻率が50%超70%以下かつ年間の保険料が30万円以下
税金対策の一環として法人名義で生命保険に加入する際は、税理士からもアドバイスをもらいながら適切な保険を選びましょう。
参考:国税庁(No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料〔保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合〕の取扱い|令和元年7月8日以後契約分)
参考:国税庁(No.5364-2 定期保険及び第三分野保険の保険料〔保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合〕の取扱い|令和元年7月8日以後契約分)
参考:国税庁(第3節 保険料等)
関連記事:【法人版】節税対策の裏ワザ|手元により多くの資金を残す方法
決算賞与の支給
決算賞与は利益を従業員へ還元しつつ、税負担を軽減させる効果が期待できます。
決算賞与は損金算入できるため、課税所得の圧縮につなげられますが、下記の要件を満たさなければなりません。
- 事業年度の終了前に決算賞与を支給する全従業員へ支給額を通知
- 通知を行った事業年度の終了日から1か月以内に決算賞与を支給
- 通知を行った事業年度で決算賞与を損金算入
万が一、税務調査に入られた場合、決算賞与の支給については厳しくチェックされる傾向があるため、証憑書類の保管が重要です。
参考:国税庁(No.5350 使用人賞与の損金算入時期)
参考:e-Gov(法人税法施行令 第七十二条の三 使用人賞与の損金算入時期)
参考:国税庁(決算賞与金の税務上の取扱いについて)
関連記事:【法人版】節税対策の裏ワザ|手元により多くの資金を残す方法
不要な固定資産の除却処理
不要な固定資産の除却処理は、法人で活用できる税金対策のひとつです。
減価償却が終わったり使わなくなったりした固定資産を処分すれば、除却損として損金算入できるため、課税所得の圧縮につなげられます。
また、不要な固定資産の除却処理を行うと、固定資産税の負担も無くなります。
不要な固定資産の除却処理を怠っていると、下記のとおり、使用していない場合でも毎年課税されるため注意が必要です。
減価償却が終了した資産であっても事業の用に供することができるものについては申告の必要があります。
なお、地方税での取り扱いとしてはその資産が事業に使用できる状態におかれている限り、課税客体となるため、固定資産税における評価額の最低限度額は取得価額または改良費の額の5%に相当する額を最低限度額としています。
引用:大阪市(耐用年数の過ぎた残存簿価1円まで減価償却がされた資産は申告する必要がありますか?)
不要な固定資産の除却処理で不明な点がある場合は、税理士への相談も検討してみましょう。
参考:国税庁(第1款 除却損失等の損金算入)
参考:総務省(地方税制度|固定資産税)
中古車の購入
中古車の購入は法人で使える税金対策のひとつです。
新車で購入する場合よりも減価償却の期間を短くできるケースがあるため、損金にできる額が増え、節税効果を高められます。
たとえば、普通自動車を新車で購入した場合の法定耐用年数は6年ですが、4年落ちの場合は下記の計算式により、耐用年数が2年と算出されます。
法定耐用年数の一部を経過した資産
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数
引用:国税庁(No.5404 中古資産の耐用年数)
(6年 ー 4年)+(4年 ✕ 20%)= 2年(1年未満の端数は切り捨て)
なお、期首に購入すれば償却額を最大化できますが、事業年度の途中で購入すると月割り計算が必要になり、償却額が減少してしまうため注意が必要です。
以上のように、中古車購入による税金対策では、購入するタイミングに注意しましょう。
参考:国税庁(No.2100 減価償却のあらまし)
参考:国税庁(主な減価償却資産の耐用年数表)
参考:総務省(Q&A集|減価償却を行う単位として、年割り、月割りのほか「日割り」は認められないのでしょうか。)
参考:総務省(資産評価及び固定資産台帳整備の手引き)
不動産投資を始める
法人で不動産投資を始めると、節税効果と収益安定の両方が期待できます。
建物の購入費用は法定耐用年数に応じて減価償却するため、長期間に渡って課税所得を圧縮できます。
不動産投資を始めるにあたって必要経費として認められる支出は、主に下記のとおりです。
なお、減価償却の期間終了後は節税効果が薄れるため、不動産を所有し続けるか売却するかの判断をしましょう。
また、土地や建物を売った際の譲渡所得には課税されるため注意が必要です。
不動産投資における損金算入や不動産を売却する際の税務については、専門知識が求められるため、不明な点がある場合は税理士への相談も検討しましょう。
参考:J-Net21(減価償却の考え方)
参考:国税庁(主な減価償却資産の耐用年数表)
参考:国税庁(土地や建物を売ったとき)
福利厚生の整備
福利厚生の整備は法人の税金対策として有効です。
福利厚生に関する費用は、施策ごとに定められた一定の要件を満たせば、給与として課税されません。
上記の理由から、所得税や住民税が生じないため、従業員の実質手取りが増えます。ただし、福利厚生費として認められるには、下記の要件を満たす必要があります。
- 給与に該当しない
- 全従業員が対象
- 現金や換金性の高いものを支給しない
- 社会通念上の妥当な金額に収める
特定の役員のみを対象にしたり不相当に高額だったりする場合、損金算入を否認されるおそれがあるため注意しましょう。
福利厚生を適切に整備すれば、従業員の満足度向上と節税効果の両立が期待できます。
参考:国税庁(福利厚生費|確定申告書作成コーナー)
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構(企業における福利厚生施策の実態に関する調査)
参考:国税庁(Ⅱ 給与所得の範囲)
参考:国税庁(No.2508 給与所得となるもの)
参考:国税庁(No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行)
参考:国税庁(No.2594 食事を支給したとき)
参考:国税庁(No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき)
参考:国税庁(No.2601 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき)
出張手当の支給
出張手当の支給は法人にとって有効な税金対策のひとつです。
所得税法上、出張手当は非課税所得に該当するため、所得税や住民税の負担が軽減されます。また、出張手当は社会保険料の算定対象外です。
上記の理由から、法人と個人の社会保険料の負担も軽減できます。なお、出張手当は課税仕入れに該当するため、納める消費税額を減らす効果も期待できます。
出張手当はインボイス制度における特例の対象で、帳簿のみの保存による仕入税額控除が認められているため、インボイスの保存は不要です。
出張手当を支給する場合、旅費交通費支給規程をしっかりと整備し、規定に基づいた支給を行いましょう。
出張手当の支給における税務に関して不明な点がある場合は、税理への相談も検討してみましょう。
参考:国税庁(No.2508 給与所得となるもの)
参考:国税庁(法第9条《非課税所得》関係)
参考:e-Gov(所得税法 第九条 非課税所得)
参考:日本年金機構(算定基礎届の記入・提出ガイドブック)
参考:国税庁(No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い)
参考:国税庁(インボイス制度における特例②|出張旅費等特例)
経営セーフティ共済への加入
経営セーフティ共済への加入は、法人の税金対策として有効です。
掛金は月額5,000〜200,000円の範囲で自由に設定でき、掛金の全額を損金算入できるため、課税所得を圧縮させる効果が期待できます。
なお、掛金を増額する際は希望する月の5日までに申請しましょう。
取引先が倒産した際には、無担保、無保証人、無利子で共済金の貸付けが受けられます。共済金の貸付額の上限は、下記のとおりです。
「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ないほうの金額
引用:独立行政法人 中小企業基盤整備機構(経営セーフティ共済とは|制度の概要)
経営セーフティ共済を解約する場合、40か月以上納付していれば、掛金の全額が戻ってきます。
一方、納めていた期間が12か月以上、40か月未満であれば、戻って来るのは掛金総額の8割以上です。
以上のように、経営セーフティ共済への加入は、資金繰りの安定と税金対策の両方に役立ちます。
参考:中小企業庁(中小企業倒産防止共済制度について)
参考:共済サポート navi(掛金の増額)
決算期の変更
決算期の変更は法人で使える税金対策のひとつです。
決算期に多額の利益が発生するのが予測される場合、決算期を前月に変更すれば、利益の計上を来期に繰り越せます!
上記によって今期の税負担を一時的に軽減でき、約1年の猶予を得て税金対策に取り組めます。
ただし、決算期の変更によって税金そのものが恒久的に減るわけではなく、あくまで納税時期を遅らせる効果しかない点に注意しましょう。
繰り越した利益は来期で課税されるため、来期中に設備投資や決算賞与の支給などの税金対策を実施しなければ、単なる納税の先送りに留まってしまいます。
なお、決算期を変更する際の流れは、次のとおりです。
- ①株主総会で決算期変更に関する特別決議を行う
- ②定款の内容を変更する
- ③本店所在地を所轄する税務署や都道府県税事務所などへ異動届出書を提出する
決算期を変更する場合、専門家への依頼費用が発生したり、経理や税務会計に関する業務の負担が増えたりするケースもあるため、節税効果と発生するコストを考慮しながら慎重に検討しましょう。
参考:J-Net21(定款の変更を考えております。そのポイントを教えてください。)
参考:e-Gov(会社法 第六章 定款の変更)
参考:東京都主税局(異動届出書)
参考:国税庁(C1-8 異動事項に関する届出)
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
法人が納める税金の基礎知識
日本には約50種類もの税金があります。
法人が納める主な税金は、下表のとおりです。
主な税金 | 概要 |
法人税 | ・益金から損金を差し引いた金額に課される国税 ・税率は23.2%(資本金1億円以下の普通法人であれば年800万円以下の部分に対して15%) |
特別法人事業税 | ・標準税率で計算した法人事業税の所得割額に対してかかる国税 ・税率は資本金の額や業種によって異なる |
消費税 | 商品の販売やサービスの提供などの取引ごとに課税され、消費者が負担し、消費税の課税事業者が納める国税 |
法人住民税 | ・法人税割と均等割の2つで構成される地方税 ・法人税割は法人税額に7%の税率を乗じて算出する ・均等割の額は資本金の額や従業員数によって異なる |
法人事業税 | ・資本金1億円以下の普通法人については、法人の所得に課される地方税 ・資本金の額や業種によって課税標準が異なる |
固定資産税 | 土地や建物、償却資産に対して毎年課税される地方税 |
源泉所得税 | 給与所得や各種手当などで発生する所得税を天引きし、納税者本人の代わりに会社が納める税金 |
登録免許税 | ・不動産売買や会社設立などの登記手続時に課される国税 ・登記の内容によって税率や税額が異なる |
印紙税 | ・契約書や領収書などの課税文書に課される国税 ・文書の種類や記載されている金額に応じて税額が異なる |
関連記事:合同会社が納付する税金一覧|申告と納付のタイミングも解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
役員報酬を活用した税金対策に関するよくある質問
最後に、役員報酬を活用した税金対策に関するよくある質問について紹介します。


上記のような疑問を抱いている経営者の方は、本項目も参考にしてみてください。内容は随時追記します。
役員報酬にかかる税金や手取り額のシミュレーションはできますか?
役員報酬にかかる税金や手取り額はシミュレーションできます。シミュレーションを行う際は所得税や住民税、社会保険料を考慮しましょう。
たとえば、役員報酬を800万円に設定した場合にかかる税金や手取り額は、以下のとおりです。
- 所得税:約46万円
- 住民税:約45万円
- 社会保険料:約118万円
- 手取り額:約590万円
なお、上記は以下の前提条件に基づいてシミュレーションした結果です。
- 役職:経営者(1人社長)
- 年齢:40〜64歳
- 本店所在地:東京都渋谷区
- 居住地:東京都渋谷区
- 家族構成:単身者
- 適用する所得控除:社会保険料控除と基礎控除
年齢や居住地、配偶者の有無、適用できる所得控除などによって、役員報酬にかかる税金や手取り額は変動するため注意しましょう。
弊所では、役員報酬の手取り額に関する詳細なシミュレーションも承っておりますので、お気軽にご相談くださいませ!
関連記事:役員報酬で税金がかからないのはいくらまで?税金の種類もあわせて解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
役員報酬シミュレーションはエクセルを使って行えますか?
役員報酬シミュレーションはエクセルを使って行えます。
所得税や住民税、社会保険料などをエクセルの計算式に組み込めば、役員報酬の設定金額ごとの税負担や手取り額を具体的に算出できます。
また、算出された数値をグラフ化すれば、視覚的に理解しやすくなります。
役員報酬シミュレーションや役員報酬の手取りを増やす方法については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬の手取りを増やす方法|シミュレーションや一覧表も掲載
役員報酬に税金がかからない(非課税)のはいくらまでですか?
また、受け取る役員報酬の金額を年間55万円までにすれば、給与所得控除の範囲内に収まるため、課税所得がゼロになります。
配偶者に役員報酬を支給するケースでは、下記のとおり、年間100万円以下なら所得税や住民税はかかりません。
課税される所得は、パート収入から給与所得控除(最低55万円)と基礎控除(48万円)などの所得控除を差し引いた残額となりますので、パート収入が103万円以下でほかに所得がない場合は、所得税等はかかりません。
住民税(所得割)については、総所得金額等が45万円以下の場合は非課税となりますので、パート収入が100万円以下でほかに所得がない場合は、住民税(所得割)はかかりません。
引用:国税庁(家族と税)
役員報酬に税金がかからないケースについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬で税金がかからないのはいくらまで?税金の種類もあわせて解説
役員報酬にかかる税金や手取り額の一覧表や早見表はありますか?
下記の前提条件に基づいた、役員報酬にかかる税金や手取り額の一覧表(早見表)を掲載します。
- 役職:経営者(1人社長)
- 年齢:40〜64歳
- 本店所在地:東京都渋谷区
- 居住地:東京都渋谷区
- 家族構成:単身者
- 適用する所得控除:社会保険料控除と基礎控除
役員報酬の月額を10万円刻みで一覧表(早見表)にしましたので、設定金額を決めるうえで、参考にしてみてください。
参考:全国健康保険協会(令和7年3月分〔4月納付分〕からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表)
参考:渋谷区(令和7年度 特別区民税・都民税〔住民税〕の算出方法)
参考:国税庁(No.2260 所得税の税率)
参考:国税庁(No.1130 社会保険料控除)
参考:国税庁(No.1199 基礎控除)
参考:国税庁(No.1410 給与所得控除)
参考:財務省(所得控除に関する資料)
関連記事:役員報酬の手取りを増やす方法|シミュレーションや一覧表も掲載
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
役員報酬の設定金額はいくらが得ですか?
役員報酬の設定金額はいくらが得かについては、個人の手取りと法人の純利益のバランスを見ていく必要があります。
- 役職:経営者(1人社長)
- 資本金:1,000万円未満
- 年齢:40〜64歳
- 本店所在地:東京都渋谷区
- 居住地:東京都渋谷区
- 家族構成:単身者
- 適用する所得控除:社会保険料控除と基礎控除
売上総利益が1,000万円のケースにおける、個人の手取りと法人の純利益のバランスは、下表のようになります。
売上総利益が1,000万円のケースで、個人の手取りと法人の純利益の合計が最も多くなるのは、役員報酬の年額を100万円もしくは200万円に設定した場合です。
また、売上総利益が2,000万円のケースでは、下表のとおり、役員報酬の年額を500万円に設定すると個人の手取りと法人の純利益の合計が最も多くなります。
売上総利益が3,000万円のケースでも、下表のとおり、個人の手取りと法人の純利益の合計が最も多くなるのは、役員報酬の年額を500万円に設定した場合です。
以上のシミュレーションについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
サラリーマン役員が活用できる節税対策はありますか?
活用できる節税対策 | 概要 |
iDeCoへの加入 | 掛金の全額が所得控除の対象 |
医療費控除 | ・年間の医療費が一定額を超えた場合に適用できる所得控除 ・上限は200万円 |
生命保険料控除 | ・生命保険料や介護医療保険料などを支払った場合に適用できる所得控除 ・上限は12万円 |
特定支出控除 | 業務に必要な図書費や研修費などを給与所得控除後の所得金額から差し引ける |
ふるさと納税 | ふるさと納税で納めた金額のうち2,000円を超える部分について控除が受けられる |
以上のような節税対策は、税務に関する専門知識が求められるため、実施するうえで不明な点がある場合は、税理士への相談も検討してみましょう。
関連記事:合同会社を設立して節税する裏ワザをサラリーマン向けに解説
オーナー社長が活用できる節税対策はありますか?
活用できる節税対策 | 概要 |
小規模企業共済への加入 | 掛金の全額が所得控除の対象となるため税負担の軽減が期待できる |
役員報酬を調整し退職金へ振り分ける | 退職所得は控除額が大きいため、役員報酬として受け取るよりも税負担を抑えられる |
役員報酬を調整し出張手当で受け取る | 出張手当は非課税所得に該当するため、役員報酬で受け取るよりも税負担を軽減できる |
自宅を社宅化する | 家賃や管理費などの一部を損金算入できる |
以上のように適切な節税対策を実施すれば、手取り額を増やせます。
ふるさと納税の控除は役員報酬にも適用できますか?
ふるさと納税の控除は役員報酬にも適用できます。役員報酬は給与所得に該当するためです。なお、ふるさと納税は下記のような制度です。
ご自身の選んだ自治体に対して寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を超える部分について、所得税および個人住民税からそれぞれ控除が受けられる制度
引用:国税庁(No.1155 ふるさと納税|寄附金控除)
ふるさと納税の控除額は、以下のように計算されます。
ふるさと納税の詳細については、国税庁のホームページをご参照ください。ふるさと納税の控除に関して不明な点がある場合は、税理士への相談も検討してみましょう。
役員報酬から給与所得控除を差し引く際の計算方法を教えてください
下表のとおり、役員報酬の金額が増えるにつれて控除額も段階的に上がり、最低で55万円、最高で195万円が控除されます。
役員報酬から給与所得控除を差し引く際の具体的な計算式は、下表のとおりです。
年間の役員報酬 | 計算式 | 給与所得の金額(課税対象) |
160万円 | 160万円 ー 55万円 | 105万円 |
180万円 | 180万円 ー(180万円 ✕ 40% ー 10万円) | 118万円 |
360万円 | 360万円 ー(360万円 ✕ 30% + 8万円) | 244万円 |
660万円 | 660万円 ー(660万円 ✕ 20% + 44万円) | 484万円 |
850万円 | 850万円 ー(850万円 ✕ 10%+110万円) | 655万円 |
900万円 | 900万円 ー 195万円 | 705万円 |
なお、国税庁のホームページに詳細な計算式が公表されていますので、ご自身の役員報酬の金額にあわせて確認してください。
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
まとめ
今回は、役員報酬を活用した税金対策について、法人で使える節税スキームとあわせて解説しました。
役員報酬は一定の要件を満たせば、損金算入が認められるため、課税所得を減らせます。
役員報酬は事業年度の開始から3か月以内に決定し、原則として期中の変更はできません。
なお、役員報酬の金額が多くなるにつれて、役員個人の所得税や住民税、社会保険料は増加するため注意が必要です。
また、法人税法の第34条2項に規定されているとおり、不相当に高額な役員報酬は、損金不算入となるおそれがあります。
配偶者や親族を役員にし、役員報酬を支給すれば、所得の分散によって所得税の軽減が期待できます。役員報酬以外で活用できる税金対策は、以下のとおりです。
- 法人名義で生命保険に加入
- 決算賞与の支給
- 不要な固定資産の除却処理
- 中古車の購入
- 不動産投資を始める
- 福利厚生の整備
- 出張手当の支給
- 経営セーフティ共済への加入
- 決算期の変更