こんにちは、植村会計事務所代表の植村拓真です。
弊所では個人事業主や副業からの法人化、法人の税務顧問に関するご相談をいただく機会があります。中でも特に多いのが以下のような内容です。
法人化の際に役員報酬を決める必要があるのですが、高くしすぎても低くしすぎても税金や保険料の負担が増えるおそれがあります。そのため、いくらに設定すれば税金や保険料の負担を抑えられるのか知りたい方は少なくありません。
そこで今回は、役員報酬で税金がかからないのはいくらまでかを税金の種類とあわせて解説します。役員報酬で節税対策を徹底したい方向けの記事もありますので、あわせてご覧ください。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
役員報酬で税金がかからないケース
さっそく、役員報酬で税金がかからないケースを紹介します。
そもそも役員報酬を受け取ると、金額に応じた所得税や住民税や社会保険料がかかります。そして、控除を考慮して納税額や保険料を算出するため、報酬額次第では税金がかかりません。
本記事を読んでいるのは、役員報酬をいくらにすれば税金がかからないのかを知りたい方だと思います。本項目ではそんな方に向けて、役員報酬で税金がかからないケースについて解説します。
役員報酬をゼロに設定している
極端な例ですが、役員報酬をゼロに設定しておけば税金はかかりません。所得税や住民税の課税対象となる役員報酬分の収入もゼロになるため、社長個人の税負担を軽減できます。
また、社会保険料の支払いが発生しないため、法人でかかるコストを抑える目的で役員報酬をゼロに設定するケースもあります。
ただし、役員報酬をゼロに設定すると、以下のようなデメリットが発生するケースが考えられますので注意しましょう。
- 金融機関や取引先からの対外的な信用を失う
- 社会保険に加入できなくなる
- 法人税が高くなってしまい節税につながらない
役員報酬をゼロに設定する際のデメリットや注意点の詳細は、以下の記事でご覧ください。
関連記事:役員報酬をなしにするデメリットと注意点|決める手順も解説
役員報酬を年間55万円に設定している
社長個人が受け取る役員報酬を年間55万円に設定する場合、給与所得控除額55万円が適用されて役員報酬分の所得には税金がかかりません。
所得税の計算上、給与所得控除額は最低額の55万円が適用されるため、課税対象となる所得金額がゼロになります。
所得税額は、役員報酬以外の所得も合算して納税額を算出します。他に所得がある場合は、忘れずに含めて計算しましょう。
配偶者に支払う役員報酬を年間100万円以下で調整している
配偶者の方に役員報酬を支払う場合、他に収入がない状態で報酬額を年間100万円以下に調整しておけば、税金はかかりません。税法上、役員報酬も給与所得と同じですので、年間100万円以下であれば所得税も住民税も非課税です。
本ケースで配偶者の方が年間に得ている収入が役員報酬のみであれば、配偶者にかかる税金を抑えられるだけでなく、社長自身も配偶者控除を受けられるため、世帯全体の税負担を減らせます。
さらに、年間100万円以下の役員報酬では、配偶者が扶養の対象となるため、社会保険料の負担が不要です。配偶者の方の負担を軽減させられるだけでなく、会社の社会保険料の負担も抑えられます。
関連記事:全国健康保険協会 令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)
まとめ
今回は、役員報酬で税金がかからないのはいくらまでかを税金の種類とあわせて解説しました。
役員報酬は税金がかからないように設定できますが、その分個人もしくは法人での負担が増加した結果、節税につながらないケースもあります。ですので、設定する際は、十分にシミュレーションを行ったうえで金額を決定しましょう。
ネット上でも目安程度であればシミュレーションできますが、ご自身の状況に合わせた適切な役員報酬を設定するには不十分です。他にも、役員報酬を経費扱いするためには守るべきルールがあり、金額設定が不適切であれば損金算入が認められないケースもあります。