こんちには、会社設立や法人化支援の経験が豊富な税理士の植村拓真です。
事業を始める際、法人か個人事業主のどちらを選ぶべきかで迷っている方がいるのではないでしょうか。
今回はそんな方に向けて、会社(法人)と個人事業主はどっちが得かについて違いやメリット・デメリットとあわせて解説します。
個人事業主が法人化すべきタイミングについても解説するので、参考にしてみてください。
会社(法人)と個人事業主はどっちが得?
会社(法人)と個人事業主はどっちが得かを判断するうえで、以下の5つの大きな違いは重要なポイントです。
- 開業手続き
- 納める税金と最大税率
- 経費にできる範囲
- 社会的な信用
- 社会保険の加入義務
詳細については後ほど項目ごとに解説しますが、主に上記内容を考慮したうえで法人化して会社にすべきか、個人事業主として事業を行うかを判断します。
具体的な法人と個人事業主の違いについて知る前に、個人事業主と法人の特徴を確認しておきましょう。事業形態を選択するうえで参考にしてみてください。
個人事業主・フリーランスとは?
名称 | 概要 |
個人事業主 | 事業開始から1ヶ月以内に税務署に開業届を提出すれば名乗れる |
フリーランス | 個人で事業を行っており税務署に開業届を提出していない |
自営業 | 個人事業主でも法人でも名乗れる |
個人事業主やフリーランスは、組織に属さず個人で事業を行う事業主のことです。事業を開始してから1ヶ月以内に税務署に開業届を提出すれば、個人事業主として認められます。
一方、税務署に開業届を提出しない個人の場合、厳密には個人事業主ではなくフリーランスです。個人事業主とは異なり税務署に開業届を提出する必要はありませんが、青色申告を行えないので注意しましょう。
個人で仕事ごとに契約を結んでいる事業主は、個人事業主と混同されがちですが、厳密には自営業で会社を設立している法人のケースもあります。
個人事業の開業届出をダウンロード(国税庁のホームページに移動します)
会社・法人とは?
会社(法人)とは、法律によって人と同じく権利能力を与えられた組織のことです。法人を大きく分けると、以下の2種類に分類されます。
- 営利法人(株式会社・合同会社など)
- 非営利法人(NPO・公益法人など)
個人事業主が法人化(法人成り)により法人格を得ると、個人とは別の権利義務の帰属主体となります。社長個人としての自分と法人としての自分は別人格です。
会社を設立して個人の事業を引き継ぎ運営することを、法人化または法人成りといいます。
個人事業主と法人の違いについて、次の項目で詳しく見ていきましょう。個人事業主の法人化の詳細は、以下の記事でご確認いただけます。
関連記事:個人事業主の法人成り|適切なタイミングから注意点まで解説
会社(法人)と個人事業主の違い
それでは、会社(法人)と個人事業主はどっちが得かを判断するうえで重要な、法人と個人事業主の違いについて解説します。
法人と個人事業主の主な違いは以下のとおりです。
※赤文字:メリット、青文字:デメリット
事業形態 | 会社(法人) | 個人事業主 |
開業手続き | 税務署、地方自治体に届出書を提出する(設立後も手続きあり) | 税務署に開業届を提出すればOK |
納める税金と最大税率 | 法人税(最大23.2%)・消費税・法人住民税・法人事業税 | 所得税(最大45%)・消費税・住民税・個人事業税 |
経費にできる範囲 | 個人事業主の範囲に加えて、役員報酬・賞与・退職金なども経費計上できる | 自宅兼事務所の家賃 ・インターネットの通信費 ・水道光熱費 ・交際費 など法人よりも範囲が狭い |
社会的な信用 | 個人事業主より高い | 法人より低い |
社会保険の加入義務 | あり (役員報酬を受け取る場合) |
なし (常時5人以上のスタッフを雇用する場合はあり) |
順番に解説していくので、法人か個人事業主を選択するうえで参考にしてみてください。
開業手続き
法人と個人事業主の違いについて、まずは開業手続きの違いから解説します。先ほど解説したとおり、個人事業主は税務署に開業届を提出すれば開業できます。
特に複雑な手続きは行いませんし、フリーランスであれば開業手続きは不要です。
一方、法人の開業手続きは、設立する会社の種類によって方法、登記完了に必要な時間、かかる費用が異なります。法人化(法人成り)の主な手続きの手順は、以下のとおりです。
↓
会社名を決定する
↓
定款を作成する
↓
法人の印鑑を作成する
↓
役員報酬を設定する
↓
資本金を銀行に振り込む
↓
登記書類を作成して申請手続きを行う
↓
法人設立届けを2ヶ月以内に提出する
個人事業主の開業手続きに比べると手順が複雑です。もちろん、法人化に手間がかかる分、さまざまなメリットがあります。
法人化後の手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:会社設立手続きを自分で行う5つのステップ|費用や流れについて解説
納める税金と最大税率
法人と個人事業主では、以下のように納める税金の種類が違います。
会社(法人) | 個人事業主 |
法人税 (最高23.20%) |
所得税 (最高45%) |
消費税 | 消費税 |
法人住民税 | 住民税 |
法人事業税 | 個人事業税 |
中小法人である場合、課税対象の所得額800万円を超える部分に法人税23.30%がかかります。一方で個人事業主は課税対象の所得額に応じて、最高45%の所得税が発生します。
そして、法人と個人事業主では、経費の範囲が大きく異なります。個人事業主が法人化(法人成り)すると、決算時に経費計上できる項目が多くなるからです。法人化で増える主な経費項目は、以下のとおりです。
- 役員報酬
- 社宅の家賃
- 出張費
- 生命保険料
など
法人は個人事業主よりも経費項目が多いため、節税に有利です。経費にできる範囲の違いについては、次の項目で詳しく解説します。
関連記事:法人税と所得税ならどっちが得?税金面で法人化すべきケースを解説
経費にできる範囲
個人事業主が経費計上できる費用は、以下のとおりです。
- 自宅兼事務所の家賃
- インターネットの通信費
- 水道光熱費
- 交際費
など
事業や取引先との付き合いでかかった費用は、税務署から経費として認められます。ただし、事業とプライベートのどちらでかかったか曖昧な費用は、家事按分を行って処理します。
個人事業主の場合は、交際費に法人のような限度額はありません。ただし、金額があまりにも大きい場合、税務調査に入られる可能性があるので注意しましょう。
法人の場合、個人事業主が経費にできる範囲に加えて、役員報酬や賞与、退職金なども経費計上できます。ご自身が会社から受け取れるお金は、給与所得扱いになるからです。
また、法人で生命保険を契約しておくと、契約内容次第ではかかる費用をすべて経費計上できます。法人は個人事業主に比べるとコストはかかりますが、経費にできる範囲が広いです。
法人の節税対策については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:【法人版】節税対策の裏ワザ|手元により多くの資金を残す方法
関連記事:法人はなんでも経費で落とせる?よくある勘違いと判断基準を解説
社会的な信用
先ほど個人事業主の法人化(法人成り)の手続きは、複雑で手間がかかると解説しました。定款や印鑑の作成、資本金の振込、登記手続きなど、個人事業主の開業手続きに比べて作業が多いです。
もちろん、法人化の手続きに時間がかかる分、社会的な信用を得られるメリットがあります。事業のために時間やお金をかけることになるので、事業に対する本気度が取引先や金融機関などに伝わるからです。
また、法人が金融機関から融資を受ける際、社会的な信用の高さから審査に通りやすいです。法人は会社設立時に時間とお金がかかりますし、税金などの維持費もかかります。
しかし、社会的な信用を得て事業拡大につなげられるので、売上が伸びてきている方は法人化を検討してみましょう。
社会保険の加入義務
法人と個人事業主では、社会保険の加入義務にも違いがあります。個人事業主が法人化(法人成り)する際、社会保険はスタッフを雇わない一人社長の会社であっても、役員報酬を受け取る場合は加入する義務があります。
一方で個人事業主は、常時5人以上のスタッフを雇用する場合、社会保険への加入が必要です。
社会保険とは、広義には健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険を指します。各種保険の費用は、被保険者だけでなく事業者も負担する必要があり、雇用するスタッフ数が増えるほど増額するので注意しましょう。
ちなみに、当然ですが社会保険に加入するメリットもあります。たとえば、社会保険に加入すると健康保険や厚生年金保険が利用できるため、病気やケガで休業した際の給付や老後の年金受給が保障されます。
また、スタッフ目線ですと福利厚生が充実するメリットがありますので、人材をリクルートしやすいです。
個人事業主で事業を行うメリット
会社(法人)と個人事業主の特徴を振り返ってから、メリットとデメリットの詳細について確認しましょう。
※赤文字:メリット、青文字:デメリット
事業形態 | 会社(法人) | 個人事業主 |
種類 | 株式会社や合同会社など、さまざまな種類がある | 特になし |
開業手続き | 税務署、地方自治体に届出書を提出する | 税務署に開業届を提出する |
納める税金と最大税率 | 法人税(最大23.2%)・消費税・法人住民税・法人事業税 | 所得税(最大45%)・消費税・住民税・個人事業税 |
経費にできる範囲 | 個人事業主の範囲に加えて、役員報酬・賞与・退職金なども経費計上できる | 自宅兼事務所の家賃 ・インターネットの通信費 ・水道光熱費 ・交際費 など法人よりも範囲が狭い |
社会的な信用 | 個人事業主より高い | 法人より低い |
社会保険の加入義務 | あり (役員報酬を受け取る場合) |
なし (常時5人以上のスタッフを雇用する場合はあり) |
まずは、個人事業主で事業を行うメリットについて解説します。
開業手続きに時間と費用がかからない
個人事業主で事業を行う場合、開業手続きに時間と費用がかかりません。青色申告を行う方は青色申告承認申請書の作成と提出も必要ですが、白色申告を行う方であれば税務署に開業届を提出すれば完了します。
法人で事業を行う場合、会社を設立する費用や書類の作成と提出に時間がかかりますが、個人事業主は不要です。ちなみに、法人を設立するには、株式会社で約25万円、合同会社で約6万円かかります。
経理や税務会計の難易度が低い
個人事業主の経理や税務会計の難易度は、法人に比べると低いです。
事業を開始したばかりで売上や取引量が少ない方であれば、税理士をつけずに自力で行えます。もちろん、業種や消費税申告、青色申告など、さまざまな要素により税理士が必要なケースもあります。
特に、青色申告では複式簿記を用いて帳簿への記帳を行わなければならないため、専門知識を学ぶ余裕がなかったり、事業に集中したい方にとっては、税理士の必要性が高いです。
税理士への依頼は必ず必要なわけではありません。事業に集中したい、適切な節税対策を徹底したい、税務調査や税制改正などに落ち着いて対処したいといった方は、税理士への依頼を検討してみましょう。
青色申告で最大65万円の特別控除を受けられる
個人事業主として事業を行い、必要な手続きを期限までに完了すれば、青色申告の最大65万円の特別控除を受けられます。青色申告を行うには、原則として申告する年の3月15日までに、税務署へ青色申告承認申請書の提出が必要です。
そして複式簿記で記帳して、確定申告時に貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付したうえで提出する必要はありますが、経費の枠が最大65万円増えるのでお得です。
関連記事:法人成りのメリットは責任・信用・節税面にあり!デメリットもあわせて解説
個人事業主で事業を行うデメリット
個人事業主として事業を行うデメリットについても解説します。個人事業主と会社(法人)のどっちで事業を行うのが得かを判断するうえで、参考にしてみてください。
所得が多いほど法人よりも税金が多くなる
繰り返しになりますが、所得にかかる最大税率は個人事業主の所得税で45%、法人の法人税で23.20%です。個人事業主として事業を行っており、所得が増加するほど確定申告時に納める税金が多くなります。
一方、法人は最大税率が23.20%であるため、納税額は所得が増加しても個人事業主のように増加しません。
社会的な信用度が法人よりも得づらい
法人として事業を行うためには、まとまった資金と時間が必要です。そして、法人の情報は第三者でも法務局で確認できるため、社会的な信用を得やすいです。
一方、個人事業主は開業時に、税務署に開業届を提出するだけで事業を開始できます。手軽に事業を行えて廃業も簡単である分、法人よりも社会的な信用度が低い傾向があります。
社会的な信用が低いと、資金調達の審査や新規取引先の開拓などで不利になるため、事業規模の拡大を検討している方は法人化を検討しましょう。
関連記事:いきなり法人化して起業するのは問題なし!メリット・デメリットやタイミングも解説
個人事業主が法人化して会社で事業を行うメリット
個人事業主が法人化して事業を行えば、主に以下のメリットを享受できます。
- 所得が上がるほど節税につながる
- 経費の範囲が広がる
- 社会的な信用が個人事業主よりも得やすい
- 責任の範囲が有限になる
- 最長2年の間消費税の免税事業者になるケースがある
繰り返しになりますが、個人事業主の所得税と法人の法人税では最大税率が異なります。所得が増加している個人事業主の方ほど法人化で税金を抑えられるため、節税効果の高さから法人化するメリットが大きいです。
経費の範囲に関しても、接待交際費は会社の規模により年間800万円まで、接待飲食費の50%と制限はありますが、個人事業主にはない役員報酬や賞与、退職金も経費計上できて広いです。
そして、法人は個人事業主よりも社会的な信用を得やすいため、資金調達を実施して設備投資やリクルートなどで事業規模を拡大したい方は、法人化する傾向があります。
法人化時や会社設立後に諸々の設立費や維持費はかかりますが、その分個人事業主よりも課税所得に対する最大税率が低く、社会的な信用が高く、経費にできる範囲が広いです。
他にもメリットはありますが、個人事業主で法人化を検討する方は、主に所得にかかる最大税率と社会的な信用の得やすさの2点を考慮しているケースが多いです。
個人事業主が法人化すれば消費税の免税期間を伸ばせますが、業種によっては取引先からインボイスの発行を求められ、断ると取引中止になるケースもあるため、一概にメリットとは言えません。
とはいえ、取引先からインボイスを求められない方にとってはメリットですので、法人化を検討するうえで重要な要素です。
関連記事:インボイス制度と法人成り|タイミングから影響と対策まで解説
参考:国税庁(No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算)
個人事業主が法人化して会社で事業を行うデメリット
個人事業主が法人化する際には、以下のようなデメリットもあります。
- 会社設立に費用と時間がかかる
- 社会保険料を負担する必要がある
- 経理や税務会計の難易度が上がる
- 赤字経営でも住民税の均等割7万円がかかる
個人事業主が法人化する際に会社を設立するには、株式会社なら約20万円、合同会社なら約6万円かかりますし、まとまった時間も必要です。初めて法人化する方であれば、会社設立について調べる時間もかかります。
他にも、社会保険料の負担、赤字経営でも住民税の均等割7万円がかかり、個人事業主に比べるとコストが高めな点もデメリットです。上記の内容で特に厄介なのが、法人の経理や税務会計は難易度が高い点です。
たとえば、法人の決算申告を正確に行うためには専門知識が必要であるため、初めて法人化する方は事業に支障をきたすおそれがあります。そのため、法人化の際に顧問税理士をつけて、会社設立や決算申告などを丸投げする方は多いです。
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
個人事業主が法人化するタイミング
個人事業主が法人化(法人成り)する主なメリットは、以下のとおりです。
- 社会的な信用を得られる
- 経費にできる範囲が広がる
課税売上高が伸びて事業を拡大していくなら法人化は必須です。金融機関の融資を受けたり新規取引先を増やしたりするなら、社会的な信用は欠かせません。
そして、課税売上高が伸びれば納税額が増加します。法人化後に節税して、会社に少しでも多くの資金を残しましょう。とはいえ、状況によっては法人化しない方がいいケースもあります。
そこで本項目では、個人事業主が法人化するタイミングについて解説します。
所得が安定して一定の金額を超える
年間の所得額が800万円を超え始めたら、法人化を検討してみましょう。先ほど解説したとおり、個人事業主が納める所得税は、所得額に応じて高くなるからです。
所得税の税率が法人税の税率より高くなる場合は、法人化を検討してみてください。所得額が多いほど法人化するメリットがあります。
ただし、年間の所得額が800万円を超えても、安定しなければ損をするケースもあるので注意しましょう。
課税売上高の増加で消費税の免税事業者となる
もう一つのタイミングは、消費税の課税事業者になるときです。2事業年度前の課税売上高が1,000万円を超えていると、消費税の納税義務が発生します。
法人化する場合、2事業年度前がなくなるため消費税の免税事業者となります。ただし、法人1期目の開始日から6ヶ月間に課税売上高が1,000万円を超えると、2期目は消費税の課税事業者となるので注意しましょう。
法人化で消費税の免税事業者になる要件については、以下の記事で詳しく解説しています。
個人事業主の法人化でよくある質問
最後に、個人事業主の法人化(法人成り)でよくある質問を紹介します。
今回は、実際に個人事業主の顧問先様からご回答いただいた内容も含まれておりますので、参考にしてみてください。
個人事業主と法人の掛け持ちはできますか?
個人事業主の法人化でよくある質問で、個人事業主と法人を掛け持ちできるかといったものがあります。結論から言うと、問題なく経営できます。ただし、個人事業主と法人の事業内容が別でなければなりません。
たとえば、個人事業主として投資業を行い、法人として飲食店を経営することができます。また、会社は何社でも設立できるので、どんどん事業に挑戦してみてください。
個人事業主と法人の掛け持ち、個人事業主とマイクロ法人の二刀流については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:個人事業主と法人を掛け持ちするメリット・デメリットについて税理士が解説
関連記事:マイクロ法人と個人事業主の二刀流で節税するメリット・デメリットを解説
法人か個人事業主かの見分け方を教えてください
取引先候補についてリサーチする際の話にはなりますが、法人か個人事業主かを見分ける方法は、法人には株式会社や合同会社といった法人格がありますが、個人事業主にはないといった点に注目することです。
そして、法人には法人番号があり、国税庁の法人番号公表サイトで調べられます。
株式会社と個人事業主の違いはなんですか?
株式会社と個人事業主では、そもそも事業形態が異なります。株式会社は法人ですし、個人事業主は個人事業主です。
所得にかかる税金や社会的な信用、経費の範囲など、本記事で解説したとおりの違いがあります。
有限会社と個人事業主の違いはなんですか?
有限会社と個人事業主の違いですが、先ほどの株式会社のケースと同じで、有限会社は法人ですし個人事業主は個人事業主です。有限会社は個人事業主なのかといった疑問をお持ちの方もいるようですが、違います。
そもそも有限会社は、2006年5月1日に施行された新会社法により、現在は設立できません。現時点では、株式会社もしくは特例有限会社として存続しています。
個人事業主が法人化しない、法人化しないほうがいいケースは?
個人事業主で安定した十分な売上がない、法人の経理や税務会計を正確に行う自信はないが顧問税理士をつける予定はない、といった方は法人化しない傾向があります。繰り返しになりますが、個人事業主と法人の所得にかかる税率は異なり、所得が少ないほど法人のほうが高くなるからです。
そして、法人の経理や税務会計を正確に行うためには専門知識が必須で、個人事業主よりも難易度が高いからです。
上記のような理由から、売上が少なく安定していなかったり、法人の経理や税務会計の経験がなく顧問税理士をつける予定がない方は、法人化しませんしおすすめしません。
弊所では、法人化に関するご相談を受けてけております。どの程度節税につながるのか、そもそも法人化すべきかなどについては、お気軽にご相談くださいませ。
関連記事:あえて法人化しない理由とは?したほうがいいケースも解説
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今回は、会社(法人)と個人事業主のどっちが得かについて違いやメリット・デメリットとあわせて解説しました。
最後に、法人と個人事業主の違い、メリットとデメリットについて簡単に振り返っておきましょう。
※赤色:メリット、青色:デメリット
比較内容 | 会社(法人) | 個人事業主 |
開業手続き | 定款作成や認証、資本金の振込、法人登記申請などの準備と手続きが必要 | 税務署に開業届を提出するだけ |
開業費用 | 株式会社約20万円、合同会社約6万円 | 無料 |
社会的な信用 | 個人事業主より高い傾向 | 法人より低い傾向 |
納める税金と最大税率 | 所得税(最大45%)、消費税、住民税、個人事業税 | 法人税(最大23.2%)、消費税、法人住民税、法人事業税 |
経費にできる範囲 | 個人事業主より広い | 法人より狭い |
社会保険の加入義務 | あり | なし (常時5人以上のスタッフを雇用する場合はあり) |
経理や税務会計の難易度 | 高い | 低い |
個人事業主や個人の方で、事業規模を拡大する予定がある、安定した十分な売上がある方は、法人化して会社で事業を行うほうが得です。
逆に、経理や税務会計を正確に行えないが顧問税理士はつけない、売上が安定していない方は、法人化を見送らないと損をするケースがあります。
法人は決算申告や消費税の申告などの難易度が高く、ミスをすると税務調査に入られるリスクが高まります。そして、法人の所得にかかる税率は、所得が少ないと個人事業主よりも高いです。
会社と個人事業主のどっちが得かを判断する際は、今回紹介した内容を参考にしつつ、慎重にシミュレーションを行ったうえで検討しましょう。