こんにちは、ブロガーの顧問実績が豊富な税理士の植村拓真です。
弊所の顧問先様にはブログ運営で売上を伸ばしていらっしゃる方が多く、経費に関するご相談をいただく機会が多いです。
ブログ運営の経費はグレーな部分が多く、同じ費用でも経費として認められるケースがあれば認められないケースもあります。
そのため同じくブロガーの方であれば、どんなものがブログ運営の経費として認められるのかと疑問をお持ちの方がいらっしゃるでしょう。
今回はそんな方に向けて、ブログで経費にできるものとどこまで認められるのかについてアフィリエイトに強い税理士が徹底解説します。
ブログの経費計上に関する基本知識
まずはブログの経費を計上するうえで必要な基本知識について解説します。
確定申告が必要なケースからブログの経費計上のルールまで解説するので、確定申告を行ううえで参考にしてみてください。
- 確定申告が必要なケース
- 無申告がバレないはウソ
- どこまで経費計上できるかのルール
- 白色申告では収支内訳書に経費の内訳を記載
確定申告が必要なケース
まずはブログ運営で確定申告が必要なケースについて解説します。
副業や個人事業主、フリーランスの方の確定申告では、1月1日~12月31日までの所得に応じた所得税を自己申告して納税します。
上記の内容を踏まえたうえで、本項目の内容に目を通してみましょう。
フリーランスや個人事業主のブロガーで年間所得が48万円を超える
フリーランスや個人事業主のブロガーでブログや他の副業で収入を得ている方は、年間所得の合計が48万円を超えた翌年に確定申告を行いましょう。
基礎控除が48万円であるため、年間所得が48万円を超える方は確定申告が必要です。
副業で給与所得以外の年間所得が20万円を超えている
給与所得者が副業でブログ運営を行い収入を得ている場合、確定申告は副業の年間所得が20万円を超えたら必要です。
副業の年間所得ですので、ブログ運営以外のものも含まれます。
たとえば、副業の年間所得の内訳がブログ運営10万円、仮想通貨FX15万円である場合は20万円を超えるため、確定申告が必要です。
ブログ運営の年間所得が20万円を超えなければ確定申告は不要であると考える方もいますが、勘違いですので注意しましょう。
年間所得が20万円以下でも住民税の申告は必要
ブロガーで年間所得が20万円以下の方であれば、所得税の確定申告は不要です。
しかし、住民税の申告が必要なケースがあります。
住民税の申告が必要なケースの例は、以下のとおりです。
- 所得税の確定申告が不要である
- 確定申告を行わず会社を辞めて年末調整を行っていない
- 確定申告を行わず医療費控除などの控除を受ける
- 確定申告を行わず災害や生活保護などの影響で免税制度を利用する
確定申告が必要で期間までに行えば、住民税の申告は不要です。
確定申告については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:確定申告が全くわからない方へ|やり方や相談先について税理士が解説
関連記事:アフィリエイトの確定申告で副業が会社にばれないようにする方法
無申告がバレないはウソ
ブログ運営のようなネットビジネスは実店舗を構えておらず、サラリーマンのように会社から給与を受け取っているわけではないため、税金が無申告でもバレないと考えている方もいます。
しかし、税務署は情報収集網を持っているため、ブログ運営であろうとも無申告がバレないことはありません。
たとえば、ブロガーに報酬を支払っているASPや広告主などは確定申告や決算申告を行っているため、税務署はASPや広告主などの情報からブロガーの無申告を特定できます。
ブロガーで年間所得が大きく膨らんでから税務署に無申告を指摘されてペナルティを受けるケースもありますので、確定申告が必要な方は必ず行いましょう。
無申告がバレる仕組みについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:無申告がバレる仕組み・確定申告しなかったときの末路を税理士が解説
関連記事:アフィリエイトで確定申告しないとばれる?住民税やどうなるかも税理士が解説
どこまで経費計上できるかのルール
ブロガーは経費にできるものが少ない業種です。
そのため、ブログ運営を行い手元にお金を残すうえで、確定申告で必要経費をいかにうまく処理するかは重要なポイントです。
ブログ運営で得た収入から必要経費と控除を差し引いた金額が課税所得となり、所得税の税率が適用されて納税額が算出されます。
課税所得 x 所得税の税率 = 納税する所得税額
法人の法人税額は、課税所得に法人税率をかけて税額控除額を差し引いて算出します。
経費の金額が大きいほど課税所得が減少して納税額を抑えられるため、ブログ運営を行い手元にお金を残すうえで、確定申告で必要経費をいかにうまく処理するかは重要です。
ただし経費計上にはルールがあるため、ブログ運営に関する出費をなんでも経費計上できるわけではありません。
売上につながらなかったり事業とプライベートの境目が曖昧だったりする出費は、税務署から経費として認められない恐れがあります。
たとえば、旅行ブロガーが家族旅行の様子を記事化して、旅館の宿泊費やガソリン代、お土産代などをすべて経費処理し続けたとします。
そして、該当記事からアドセンス報酬やアフィリエイト報酬が発生しているものの、売上が少なかったり赤字を出し続けたりしていると、税務署から指摘されかねません。
ブログ運営では適切な節税対策を意識して、かかった経費を計上するようにしましょう。
白色申告では収支内訳書に経費の内訳を記載
フリーランスや個人事業主で顧問税理士をつけていないブロガーの方は、シンプルな申告方法である白色申告を選択するケースが多いです。
そして、白色申告では一般用の収支内訳書に、ブログ運営の経費について記載します。
収支内訳書には経費の項目が設けられていますので、該当する項目に経費について記載します。
該当する項目がない場合は、空欄がありますので経費の名称と金額を記載しましょう。
収支内訳書については、国税庁のホームページやクラウド会計ソフトなどから取得、作成できます。
ブログの経費のグレーゾーンが広い理由
ブログ運営における経費は、活動のツールや環境が多様化している影響でグレーゾーンが広がっています。
たとえば、ブログ記事を作成するツールといえばパソコンでしたが、現代ではタブレットやスマホを用いる方もいます。
現代ではタブレットやスマホの購入費も、ブログ運営を行ううえでの主な経費です。
ただ、パソコンやタブレット、スマホをブログ運営のみに利用していると断言できないケースもあるため、ブログ運営の経費はグレーゾーンが広いと言われています。
後ほど詳しく解説しますが、ブログ運営の経費を計上する際は、税務署からの指摘に備えておきましょう。
ブログの経費で認められるもの
それでは、ブログ運営で経費として主に認められるものを紹介します。
状況によっては経費計上を否認されるケースもありますので、参考程度にご覧ください。
経費 | 詳細 |
パソコン購入費 | ブログを運営するための端末の購入費用 |
通信費 | インターネットの利用料金 |
電気代 | 作業部屋の照明やパソコンを使用するために必要な電気の料金 |
物品購入費 | 記事作成に必要な商品やサービスの購入費用 |
交通費 | 記事作成に必要な取材やイベントへの参加費用、公共交通機関の運賃など |
電話代 | 記事作成に必要な電話取材で発生する料金 |
交際費 | 記事を作成する際のネタ集めのための食事代など |
上記のような経費の中には、事業とプライベートのどちらの出費か区別しづらいものもありますので、家事按分してブログ運営による出費の分を経費計上しましょう。
ブログ運営の経費計上では税務署からの指摘に備えておく
繰り返しになりますが、ブログ運営に関わる出費を経費計上する際は、税務署からの指摘に備えておきましょう。
ブログ運営の経費はグレーゾーンが広いため、税務署が指摘する余地は十分にあります。
ブログ運営にかかった費用は経費計上できますが、年間所得400万円に対して経費500万円といったように不自然なバランスだった場合、税務調査の対象となる恐れがあります。
そして、年間所得800万円に対して経費700万円といったように年間所得の方が多いケースでも、経費が多い点を税務署から指摘される恐れがあるので、必ず経費に関する領収書やレシートを保管したうえで説明できるように備えておきましょう。
税務調査における修正申告や更正に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:税務調査における修正申告・更正とは?違いについて税理士が解説
ブログ運営の経費計上でよくある質問
最後に、ブロガーの方からよくいただく質問を紹介しておきます。
ブログ運営で経費計上を行ううえで参考にしてみてください。
Q1:プライベートでも使っているパソコンの購入費は経費計上できますか?
事業であるブログ運営で使用しているパソコンであれば、購入費を経費計上できます。
しかし、プライベートでも使用している場合は、通信費や電気代と同じように家事按分して経費計上します。
パソコンの購入費が10万円以上である場合は、減価償却で処理しましょう。
青色申告であれば10万円以上でも一度に経費計上できますが、白色申告では経費計上できません。
たとえば、パソコンの購入費が50万円である場合、5年目まで毎年10万円を減価償却費とします。
Q2:旅行ブロガーです、家族旅行を記事にしたのですが旅費は経費計上できますか?
ブログ記事作成が目的の旅行であれば、宿泊費や交通費を経費計上しても問題ありません。
しかし、旅行の目的に家族旅行も含まれている場合、経費計上は出費を明確に事業とプライベートに分けられなければグレーです。
本人の言い分次第なところもありますので、税務署からの指摘を前提としたうえで、事業に必要な出費であったと証明できる経費は計上しましょう。
Q3:個人事業主のブロガーです、昨年は収入なしでしたが事業で使った費用は経費計上できますか?
個人事業主のブロガーの方であれば、赤字になりますが収入なしでも経費計上できます。
青色申告を行っている方は赤字の繰越しと繰戻しを行えます。
青色申告の特典については、国税庁のホームページで詳細をご確認ください。
Q4:ブログの収入を事業所得として申告するための条件を教えてください
ブログの収入を事業所得として申告するための条件は、以下のとおりです。
- 継続かつ反復して事業を行っている
- 社会的地位が認められている
- 有償性と営利性がある
ブログ運営を副業程度で行っている場合、収入は事業所得ではなく雑所得で確定申告を行います。
本業としてブログ運営を行えば、収入を事業所得として申告できます。
事業所得の優遇措置については、国税庁のホームページをご確認ください。
Q5:領収書やレシートはいつまで保管すればいいですか?
フリーランスや個人事業主のブロガーの領収書やレシートの保管期間は、確定申告の期限翌日から、白色申告なら5年間、青色申告なら7年間です。
そして、法人ブロガーの場合は、法人税申告の期限日翌日から7年間です。
事業形態ごとの領収書やレシートの保管期間については、国税庁のホームページでご確認いただけます。
Q6:領収書やレシートを無くしました、かかった費用を経費計上する方法はありませんか?
領収書やレシートを紛失した場合は、出金伝票などを用いて経費について記録しておきましょう。
そもそも発行してもらえない場合は、出金伝票に加えて経費が発生したと証明できるものとセットで保管してください。
レシートも領収書もない場合は、出金伝票でメモを残して、経費を証明するものを保管しておいてください。出金伝票は、企業から現金が出ていく取引を記録する書類のことです。主にタクシーや電車、割り勘した交際費など、領収書が発行されない取引を行ったときに使用します。 pic.twitter.com/aPsngndvUB
— 植村拓真|公認会計士・税理士 (@Takuma_Uemura_) December 1, 2021
Q7:ブロガーの節税対策で意識すべきポイントを教えてください
ブロガーやアフィリエイターといったネットビジネス業は原価がかからないため、経費が少ないうえに売上を大きく伸ばせる業種です。
そのため、納税額が大きくなってしまいがちな業種でもあります。
売上が伸びているブロガーやアフィリエイターの方は、法人化したうえで社用車を購入したり節税商品を購入したりして節税を徹底したいと考える傾向があります。
節税対策を徹底したいと考えたときは、節税対策のために手元のキャッシュを使いすぎないように意識しましょう。
節税につながるからと無闇に経費を使っていると、手元のキャッシュがなくなって本末転倒です。
節税対策を徹底するなら、まずは役員報酬額の適切な設定や出張手当の支給などといったお金がかからないものから実施しましょう。
そして経費を使うなら、将来の利益につながる商品やサービスに投資しましょう。
効率良くブログを更新できる高性能なパソコンやタブレットなどの端末購入、Google広告への出稿、オンライン学習サービスやブログツールの購入など、事業の利益につながるものに経費を使えば効率良く節税対策を実施できます。
節税対策に躍起になるよりも売上を伸ばしてしっかり納税するほうが手元にキャッシュを残せますが、まったく節税対策を実施しないほうがいいわけではありません。
適切な節税対策を心がけたうえで経費にできるものは計上して、手元により多くのキャッシュを残しましょう。
ブログ運営で適切な節税対策を徹底するなら植村会計事務所にお任せください!
今回はブログの経費はどこまで認められるのかについて徹底解説しました。
ブロガーやアフィリエイターといったネットビジネス業は原価が他の業種に比べて少ないうえに、工夫次第では売上を一気に伸ばせる業種です。
そのため、納税額が膨らんでしまい節税対策を徹底したいと考える方が多い傾向があります。
そこでブロガーやアフィリエイターの方が節税対策を実施する際は、以下の内容を意識しておきましょう。
- 原則、経費計上は売上につながっているものが認められる
- 領収書やレシートは必ず一定の期間保管する
- 領収書が無い場合は出金伝票にメモして経費を証明できるものとセットで保管する
- 経費計上する根拠を用意して税務調査に備えておく
- 節税対策はお金がかからないものから実施する
繰り返しになりますが、ブロガーの経費はグレーゾーンが広いです。
経費を計上する際は領収書やレシート、出金伝票などを保管したうえで、税務署から税務調査で指摘されても根拠を提示できるように準備しておきましょう。
適切に節税対策を実施して、ブログ運営で得た所得をより多く手元に残しましょう。