こんにちは、植村会計事務所代表の植村拓真です。
個人事業主や法人に税務調査が入って間違いを指摘されると、過去に提出した申告書を修正しなければなりません。
ここで、この修正をするためには2通りの方法があります。
それが、修正申告と更正です。
どちらも申告書の誤りを修正し、追徴課税を納めることには変わりはありません。
しかし、この2つの違いを知らないと、税務調査で追徴課税を少額に抑えるチャンスを失うかもしれないのです。
一体どういうことなのかを、これから解説していきます。
税務調査における修正申告とは?
修正申告は、申告書の誤りが判明したときに、納税者が自ら正しい金額に修正した申告書を提出することです。
この修正申告は、納税者自らが申告書の誤りを認め、進んで申告内容を修正するものと位置づけられています。
ですので、一旦修正申告を出してしまうと、それ以後は修正した内容について納得できなくても、
税務署に不服申立てをすることができなくなってしまいます。
ということですね。
税務調査における更正とは?
一方で更正とは、申告書の誤りを税務署が正しい金額に修正することです。
修正申告の場合は、納税者が主体だったのに対し、更正の場合は税務署が主体になっているのです。
そして決定的な違いは、更正の場合、修正内容に納得いかなければ納税者が税務署に対して不服申立てができるということです。
そのため、税務署としては後日納税者から不服申立てがあったとしても反論できるように、じっくりと時間をかけて指摘事項の裏付けを取る必要があるのです。
更に、税務署内でも更正についての承認の手続など、事務処理にも時間や手間がかかります。
修正申告はなるべく避けて更正を受ける
以上の理由から、税務署は手間も時間もかかる更正よりも、納税者からなんとしても修正申告を出してほしいと考えています。
そこで税務署は、
と、あえて更正の手続きの存在を知らせず、修正申告を出すように納税者に迫るのです。
そして、ここで何も考えずに、税務署に言われるがまま修正申告を出してしまう方が多いのですが、ちょっともったいないですね。
反論のしようもない明らかな間違いならまだしも、黒とも白とも言い難いグレーゾーンの処理まで修正申告を出してしまうと、
今後一切ひっくり返せなくなるからです。
また、修正申告にせよ更正にせよ、追徴課税の金額は一切変わりません。
自ら修正申告をせず更正を受けたからといって、支払う追徴課税が増えるわけではないです。
だから更正と比較した場合、修正申告にメリットはありません。
仮に申告書を修正するとしても、安易に修正申告はせず、税務署に更正処分させた方が良いです。
修正申告を出すケースは2パターン
ここまでの話だと、
と疑問に思ったかもしれませんが、それでもあえて修正申告を出すケースがあります。
税務調査を早めに終わらせたい
1つ目が、税務調査を早めに終わらせたいケースです。
納税者にとって、税務調査中は調査官への対応などで手間や時間がかかる上に
「何かとんでもない間違いが見つかったらどうしよう」と、ビクビクしながら過ごさないといけない時期になります。
というわけで、多くの人がなるべく早く税務調査が終わってほしいと考えています。
特に、まだ指摘されてはいないが、かなりグレーな処理をしていて調査官から突っ込まれたくないことがある場合は、
なおさら早く税務調査を切り上げてほしくなるでしょう。
そんなときに修正申告を出せば、早く税務調査を終わらせることができます。
税務署からの指摘事項がさほど大したものではない場合は、こちら側からあえて税務調査の期間を延長させる必要もありませんからね。
税務署から何らかの譲歩が提案された
2つ目が、税務署から何らかの譲歩が提案されたケースです。
先程お話したとおり、税務調査における指摘事項のすべてを更正にしてしまうと、
税務署側にとっても指摘事項について十分に裏付けを取ったり、作成する書類が一気に増えたりします。
そして、署内でも承認手続を取らないといけなくなったりと、事務処理が大変です。
ですので、なるべく更正は避けたいのが税務署の本音なのです。
そこで
『指摘事項について承知しました、ではすべて更正処分にしてください』
と言うと
『いや、一部は指導に留めておく(=注意のみで追徴課税は取らない)から修正申告にしてください』
というような譲歩が提案されるケースもあります。
つまり、本来取られるはずだった追徴課税を少なくできる代わりに修正申告を出すということです。
税務調査は、決して機械的に進められるのではなく、ある意味人と人との心理ゲームな側面もあります。
そして、ご自身のお金を守るためには、何でもかんでも税務署の言いなりにならず、主張すべきことは主張する必要があります。
そのための交渉用のカードとして、更正という選択肢は大きな武器となるはずです。
もちろん、指摘事項ゼロ・追徴課税ゼロの税務調査になるのがベストです。