こんにちは、アフィリエイトの顧問実績が豊富な税理士の植村拓真です。
弊所では事務所を開設して以来、副業・専業問わず多くのブログやSNSなどのアフィリエイターの方と顧問契約を結ばせていただいております。
副業アフィリエイターの方からいただくお問い合わせで特に多いのが、以下のような内容です。
今回は上記のような疑問をお持ちの方に向けて、アフィリエイトで開業届を提出するタイミングから書き方まで解説します。
アフィリエイトで開業届を提出するタイミング
まずはアフィリエイトを行う方が開業届を提出するタイミングについて解説します。
適切なタイミングで開業手続きを行うためには、開業届と所得税の青色申告承認申請書の提出期限を考慮する必要があります。
開業届は事業を始める際に税務署へ提出する書類です。
原則提出の期限は事業開始から1ヶ月以内ですが、遅れたからといってペナルティはありません。
しかし、青色申告での確定申告を検討している方は、所得税の青色申告承認申請書の提出期限にも注意しなければなりません。
所得税の青色申告承認申請書は青色申告を行うためには開業届と一緒に提出する必要があり、提出期限があるからです。
所得税の青色申告承認申請書の提出期限 | |
新しく事業を開始する | 事業開始から2ヶ月以内 ※事業開始が1月1日~同月15日の期間であれば3月15日が期限日 |
すでに白色申告を行っている | 事業を開始した年の3月15日まで |
提出期限を過ぎて所得税の青色申告承認申請書を提出した場合、青色申告を行えるのは次次回の確定申告からです。
上記の内容を踏まえたうえで、アフィリエイトを行う方が開業届を提出するタイミングについて見ていきましょう。
専業または副業で所得が一定額を超えたとき
アフィリエイトで年間所得が一定額を超える場合、確定申告を行う必要があります。
そして開業届と所得税の青色申告承認申請書を一緒に提出しておけば、今後最大65万円の所得控除を受けられて節税につながるため、アフィリエイトで所得が一定額を超えたときが提出するタイミングだと言えます。
アフィリエイトで確定申告が必要なケースは、以下のとおりです。
- 副業アフィリエイターで年間所得が基礎控除20万円を超える
- 専業アフィリエイターで年間所得が基礎控除48万円を超える
確定申告が必要な方は、開業届と一緒に所得税の青色申告承認申請書を提出して、最大65万円の所得控除を受けてみましょう。
専業または副業で赤字が出たとき
アフィリエイトで開業届を提出するもうひとつのタイミングは、事業で赤字が出たときです。
確定申告はアフィリエイトで年間所得が赤字だと不要に感じますが、行っておけば節税につながるケースがあります。
たとえば副業アフィリエイターで赤字が出た場合、開業届を提出して確定申告を行えば、損益通算制度により給与所得から徴収された税金の一部を還付してもらえるケースがあります。
そして専業アフィリエイターの場合、開業届と一緒に所得税の青色申告承認申請書を提出しておけば、翌年以降3年間に赤字を繰り越せますので、赤字が出ても確定申告を行っておきましょう。
アフィリエイトで開業届を提出するメリットとしないデメリット
続いてはアフィリエイトで開業届を提出するメリット・デメリットに加えて、提出しないデメリットについて解説します。
先ほど少し触れた青色申告についても解説しますので、順番に見ていきましょう。
提出するメリット | 提出するデメリット | 提出しないデメリット |
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提出するメリット
事業主として事業を営んでいると証明できる
開業届を提出しておけば、アフィリエイターとして事業を営んでいると証明できる開業届の控えを受け取れます。
開業届の控えはレンタルオフィスを借りたり、金融機関で融資を受けたりする際など、さまざまな場面で必要になります。
開業届を提出して受け取っておきましょう。
青色申告を行って最大65万円の特別控除を受けられる
繰り返しになりますが、開業届と一緒に所得税の青色申告承認申請書を提出すれば、最大65万円の特別控除をはじめとした、以下のような青色申告を行うメリットを享受できます。
メリット | 内容 |
青色事業専従者給与 | 事業に関わる家族の給与を経費計上できる |
純損失の繰り越し | 赤字を最大3年間繰り越せる |
少額減価償却資産の特例 | 30万円未満の固定資産なら一括で経費計上できる、上限は年間300万円 |
貸倒引当金の計上 | 取引先の倒産などによる報酬未支払いに備えて、事前に損失額を予測して計上できる |
ただし先ほど少し触れましたが、青色申告の特典を最大限に享受するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 事業開始から2ヶ月以内に所得税の青色申告承認申請書を提出する
- 複式簿記による記帳を行う
- 貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付する
- e-Taxによる電子申告を行う
- 優良な電子帳簿保存を行う
昨今では青色申告に対応したクラウド会計ソフトがリリースされていますので、青色申告を行って節税対策を徹底したい方は調べながら利用してみましょう。
青色申告制度の詳細については、国税庁のホームページをご覧ください。
屋号名義の銀行口座を開設できる
開業届に屋号を記載して提出すれば、屋号で事業を行えるようになります。
そして屋号名義の銀行口座を開設できるようになりますので、資金を事業とプライベートで分けられます。
資金管理を徹底すれば、確定申告や経費処理などを効率良く行えますので、開業届を提出して屋号名義の銀行口座を開設しておきましょう。
小規模企業共済に加入できる
開業届の提出には、小規模企業共済に加入できるメリットもあります。
小規模企業共済は個人事業主や小規模企業経営者向けの退職金制度です。
本来アフィリエイターに退職金制度はありませんが、加入して積み立てておけば、解約する際に掛け金に応じた共済金を退職金として受け取れます。
さらに小規模企業共済の掛け金は全額所得控除の対象ですので、税金の負担を軽減させられます。
加入には確定申告書の控えもしくは開業届の控えが必要ですので、開業直後の方は開業届の控えを提出しましょう。
提出するデメリット
失業手当を受けられない恐れがある
開業届を提出すると、ハローワークから再就職の意思がないと判断されて、失業手当を受け取れなくなる恐れがあります。
失業手当を受け取るためには、就職する意思と能力が必要だからです。
開業届の提出は、就職せずに個人事業主として生きていく意思を示すようなものです。
失業手当を今後受け取る予定、現在受け取っている方は、提出するタイミングには注意しましょう。
健康保険の被扶養者から外れるケースがある
開業届を提出すると、家族や配偶者の健康保険の被扶養者から外れる恐れがあります。
健康保険組合によって被扶養者の条件は異なりますが、個人事業主は収入に関係なく扶養に入れないケースや、収入または所得が一定金額を超えると扶養から外れるケースがあるからです。
健康保険の被扶養者から外れる際、自力で健康保険の脱退手続きと国民健康保険の加入手続きを行う必要があります。
健康保険の被扶養者である方は、健康保険組合が定めている被扶養者の条件を確認しておきましょう。
提出しないデメリット
節税対策を徹底できなくなる
アフィリエイトで開業届を提出しないデメリットは、節税対策を徹底できなくなる点にあります。
開業届を提出しなければ所得税の青色申告承認申請書を提出できないため、青色申告を行えず特典も受けられません。
すでにアフィリエイトで稼いでいる方は、開業届を提出して節税対策を実施しましょう。
屋号名義の銀行口座を開設できない
開業届を提出しないので、屋号名義の銀行口座を開設できません。
アフィリエイトでASPアカウントと紐づける銀行口座を、個人口座に設定せざるを得なくなります。
資金を事業とプライベートで分けづらくなりますので、開業届を提出して事業用の銀行口座を開設できるようにしておきましょう。
アフィリエイトの開業届の書き方と提出方法
アフィリエイトの開業届を提出する方向けに、書き方と提出方法を解説します。
アフィリエイトの開業届を用意して提出するまでの流れは、以下のとおりです。
- 個人事業の開業・廃業等届出書を用意
- 提出先の所轄税務署と提出日を記入
- 納税地を記入
- 個人情報と個人番号を記入
- 職業と屋号を記入
- 届出の区分は開業を選択
- 所得の種類と開業日を記入
- 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無にチェック
- 事業の概要を記入
- スタッフを雇っている場合は給与等の支払の状況を記入
- 開業届を提出
個人事業の開業・廃業等届出書を用意
まずは個人事業の開業・廃業等届出書を用意します。
国税庁のホームページからPDFファイルをダウンロードできますので、保存して印刷しましょう。
提出先の所轄税務署と提出日を記入
個人事業の開業・廃業等届出書には、まず提出先の所轄税務署と提出日を記入します。
提出先の所轄税務署は国税庁のホームページで調べて、提出日は実際に書類を提出する日にちを記入しましょう。
納税地を記入
納税地の欄では住所地にチェックを入れて、郵便番号などの住所情報を記載しましょう。
アフィリエイト事業を自宅ではなく事務所で行っている方は、事務所の住所を納税地として記載しても問題ありません。
個人情報と個人番号を記入
氏名や生年月日、個人番号も記入したら、認印でも構いませんので印鑑を押しましょう。
個人番号の欄には、マイナンバーカードに記載されている番号を記載します。
職業と屋号を記入
職業欄と屋号の欄ですが、アフィリエイターの方は主にインターネット広告業やインターネット広告業、広告仲介業と記載します。
アフィリエイトはインターネットでブログやSNSにて広告収入を得るビジネスモデルですので、インターネット広告業で問題ありません。
そしてアフィリエイターの屋号ですが、サイト名やインターネットでの活動名を記載します。
本名で活動している場合はなしで問題ありません。
届出の区分は開業を選択
今回は開業届を提出しますので、届出の区分は開業を選択しましょう。
事業を引き継いでいない方は、住所や氏名などの記入は不要です。
所得の種類と開業日を記入
所得の種類では事業(農業)所得を選択しましょう。
そして開業・廃業等日には、アフィリエイターとして活動を始めた日を記載します。
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無にチェック
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無の欄ですが、開業届と一緒に所得税の青色申告承認申請書を提出する方は、青色申告承認申請にチェックを入れましょう。
インボイス制度などの都合で消費税の課税事業者を選択する方は、課税事業者選択届出書の欄にもチェックを入れて開業届と一緒に提出してください。
事業の概要を記入
事業の概要の欄には、アフィリエイターの方は「WEBサイトの運営や広告紹介」といった文言を記載しておきましょう。
税務署にアフィリエイターであると伝われば問題ありません。
スタッフを雇っている場合は給与等の支払の状況を記入
アフィリエイターでスタッフを雇っている方は、給与等の支払の状況も記入しておきましょう。
区分の専従者には青色専従者、使用人にはその他スタッフの人数を記載します。
給与の定め方の欄には、給与が月払いなら月給、日払いなら日給と記載しましょう。
年末調整する場合は税額の有無の有にチェックを入れて、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の欄の有にもチェックを入れます。
開業届を提出
開業届が完成したら提出するのですが、手段は以下のとおりです。
- 税務署に直接持参する
- 税務署に郵送する
- 税務署が閉まっている場合は夜間ポストに投函する
税務署は平日の8時30分から17時まで開庁していますので、来庁する時間がない方は郵送か夜間ポストを利用して開業届を提出しましょう。
開業届を郵送や夜間ポストで提出する方は、控えを受け取れるように原本、控え用、切手付きの返送用封筒を同封しておいてください。
スムーズにアフィリエイトの開業届を提出して青色申告の特典を最大限に受け取りたい、開業後の経理や税務会計から税務調査の対応までをすべて専門家に任せて事業に集中したい方は、税理士への依頼を検討してみましょう。
関連記事:アフィリエイトに強い税理士が解説!頼れる税理士の選び方や費用相場
アフィリエイトの開業届は開業日に遡って提出できる
上記のように開業届を提出期限に提出していない方もいると思います。
原則アフィリエイトを始めてから1ヶ月以内に提出する必要はありますが、ペナルティはありませんし開業日に遡って提出できますのでご安心ください。
とはいえ速やかに提出する必要はありますし、開業日を遡れても提出日は遡れません。
確定申告で青色申告を行うためにも、なるべく早めに開業届を提出しておきましょう。
アフィリエイトで開業届を提出しても副業は会社にバレない
上記のようなご質問をいただく機会が多いのですが、開業届を提出しただけでは会社にアフィリエイトを行っているとバレません。
ただし確定申告を行うと、住民税から会社にアフィリエイトがバレかねません。
会社員が納める住民税は、特別徴収で給与から天引きされているからです。
アフィリエイト分の収入が増加すると住民税額も増加しますので、会社の方に気づかれてしまう恐れがあります。
副業のアフィリエイトを勤務先にバレたくない場合は、確定申告の際に住民税の納付方法を普通徴収に変更しておきましょう。
アフィリエイト収入分の住民税の納付方法を普通徴収にしておけば、自分で納税するので会社に副業を行っているとバレる心配はありません。
関連記事:会社員の会社設立はばれる!勤務先に内緒で法人化する方法と注意点を解説
関連記事:アフィリエイトの確定申告で副業が会社にばれないようにする方法
アフィリエイトの確定申告が必要なケース
繰り返しになりますが、最後にアフィリエイトで確定申告が必要なケースについて解説します。
アフィリエイトでは年間所得が一定額を超えると、確定申告を行う必要があります。
あくまでアフィリエイトのみ行っていると仮定して解説しますが、給与所得がある副業アフィリエイターの方は、年間所得が20万円を超えたら確定申告を行いましょう。
そして専業アフィリエイターの方は、年間所得が48万円を超えたら確定申告が必要です。
ご自身が確定申告を行う必要があるかどうかわからない方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:アフィリエイトで確定申告しないとばれる?住民税やどうなるかも税理士が解説
関連記事:アフィリエイトブログで経費にできるものを税理士が解説
まとめ
今回はアフィリエイトで開業届を提出するタイミングから書き方までを解説しました。
開業届はアフィリエイトで赤字または黒字であっても、提出しておくデメリットだけでなくメリットもあります。
青色申告の特典を最大限に活用するためにも、開業届の提出が必要だと気づいた方は速やかに提出しましょう。
アフィリエイトで売上が伸びたものの、開業届を提出すべきかわからない、適切な節税対策を徹底できているかわからない、税務調査に入られるのが怖い、記帳や確定申告などが煩わしい、そんな方はアフィリエイトの顧問実績が豊富な植村会計事務所にご相談ください。
弊所は私だけでなく、スタッフもアフィリエイトを含めたネットビジネス業全般の顧問実績が豊富ですので、お力になれると存じます。