こんにちは、植村会計事務所代表の植村拓真です。
顧問税理士を変更したいと考えるのは、珍しいことではありません。弊所でも、顧問税理士の変更に関するお問い合わせを月に数件いただきます。
顧問税理士の変更を検討するキッカケは、
- 顧問料を見直したい
- 性格がキツくて気軽に質問できない
- ネットビジネスや仮想通貨は専門外だった(対応できない業種だった)
上記のようにさまざまです。
SNSでも、顧問税理士の変更に関する投稿が散見されます。
マジで決算関係の仕事が終わらない。
決算時期をずらしたい
会社名変更したいこの時期の決算マジでしんどい
税理士が相手してくんない
今年こそは毎週レシートまとめて、定期的にMF入力しよう
て思うじゃん?
まだ前期の分が入力終わってないと機種残高があってないんよな
いいのか?いいよな
— ヨシダ【古物市場立上やります】 (@ysd_tv) February 10, 2022
税理士、変更検討したいなあ。節税を一緒に考えてくれる、独立してすぐのガッツのある若手で優秀な(そして報酬が安い)税理士さんがいいんだけど、どうやって見つければいいんだ???
— サングロ(Sun_Glory) (@Sun_Glory_Tokyo) March 28, 2021
サービス業の自覚が全くない税理士先生から変更したい。
税理士を変えると税務調査が入るとゆーセリフで社長を縛る税理士を変えたい…— Aim (@aimfor666) October 18, 2019
今回はそんな悩みをお持ちの方に向けて、顧問税理士を穏便に変更する方法について断り方や注意点とあわせてお話します。
ちなみに、
と質問をいただくのですが、税理士を変更したからといって税務調査には入られません。
正しくは、税務会計の処理方法が変わると税務調査の対象となりやすいです。
上記の内容を踏まえたうえで、本記事を読み進めてみてください。
顧問税理士を変更する主な原因
そう考えている方は多くいらっしゃいます。
先ほどお話したとおり、実際に弊所にも、毎月約10件の税理士変更に関するお問い合わせが届きます。
顧問税理士を変更する主な原因は、以下のとおりです。
- 顧問税理士の対応が雑
- 顧問税理士が節税対策に消極的
- 顧問料が高い
- 顧問税理士との相性が悪い
本項目では、上記の内容について詳しくお話します。
心当たりのある方は、顧問税理士の変更を検討してみましょう。
顧問税理士の対応が雑
税理士の役割は、税務や会計の専門知識を用いて個人や事業主をサポートすることです。
税理士法第一条に、以下のように定められています。
「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」
引用:国税庁(1 税理士の使命等)
しかし、税理士の中には、顧問契約を結んでも
- 普段から明らかに返信が遅い
- 返事が素っ気なく意思疎通が困難
- 質問しても「しらなくていい」「わからない」と言う
など
上記のような対応を取る先生もいます。
と感じている方は、顧問税理士の変更を検討しましょう。
顧問税理士が節税対策に消極的
顧問税理士が実施する節税対策の度合いは、税理士によって異なります。
節税に対する考え方が税理士によってさまざまだからです。
顧問税理士が節税対策に積極的な場合、専門知識や顧問経験を活かして正しい節税対策を提案してくれます。
節税対策を徹底できるので、手元により多くの資金を残せます。
一方、顧問税理士が節税対策に消極的な場合、本来であれば経費計上できる費用を経費処理してくれないケースが多いです。
税務調査を意識して適正な申告と納税のみに注力しているからです。
たしかに、税務調査を意識した申告書の作成は重要です。
しかし、本来納めなくてもいい税金まで納めるため、資金繰りに悪影響を及ぼす恐れもあります。
顧問税理士が節税対策を嫌がる場合は、顧問契約の見直しを検討してみましょう。
顧問料が高い
と感じたことがありませんか?
税理士の顧問料は毎年固定で数十万円かかるため、決して安くはありません。
顧問税理士に依頼している内容にもよりますが、払い過ぎているケースもあります。
顧問料が高いと感じる場合は、相場について調べておきましょう。
関連記事:税理士と顧問契約を結ぶ必要性|メリットや費用に注意点も解説
顧問料の相場を調べる手順は、以下のとおりです。
↓
②ご自身の業種に強い税理士・会計事務所を数カ所ピックアップする
↓
③顧問税理士変更の旨と依頼内容をお問い合わせ時に伝える
↓
④各事務所の顧問料を確認する
上記の方法を用いれば、ネットで調べるよりも正確な金額を確認できます。
顧問料が高いと感じている方は、ぜひ確認してみてください。
顧問税理士との相性が悪い
顧問税理士に対して上記のように考えている方も、税理士変更を検討してみましょう。
先ほどお話したとおり、顧問料は決して安くありません。
にもかかわらず、顧問税理士との相性が悪くて気軽に質問できないケースは少なくありません。
顧問税理士を変更したい原因は、他にもまだまだあるでしょう。
上記のように考えている方は、顧問税理士の変更をおすすめします。
関連記事:ダメな税理士とは?良い税理士・悪い税理士の見極め方と対処法
顧問税理士を変更する際のデメリット・注意点
顧問税理士の変更には、以下のようなさまざまなメリットがあります。
- 事業に集中して売上を伸ばせる
- ご自身に合ったサポートを受けられる
- 顧問料を抑えられる
- 節税対策を徹底できる
など
ただし、デメリットや注意点もあるので、顧問税理士を変更する前に確認しておきましょう。
すぐに顧問税理士を変更できない
顧問税理士を変更したいと思っても、すぐにできるわけではありません。
後ほど紹介しますが、顧問税理士を変更するには
- 今の契約内容を確認する
- 変更するタイミングを決める
- 顧問税理士に契約解除を伝える
- 決算書や仕訳帳などを返してもらう
上記の手順を踏む必要があるからです。
業務と税理士変更の手続きを同時に進める必要があるので、計画を立てておきましょう。
顧問税理士変更の手順については、後ほど詳しくお話します。
良い税理士が見つからないケースもある
顧問税理士を変更したいタイミングで、都合よく優秀な税理士に出会えるとは限りません。
優秀な税理士ほど、顧問先の枠が埋まりやすいからです。
ですので、顧問税理士の変更を検討する際は、考え始めた時点から次の税理士を探し始めましょう。
決算まで残り3ヶ月のタイミングで変更しない
法人で顧問税理士を変更する場合は、決算3ヶ月前〜申告書提出完了までの期間を避けましょう。
決算申告は、税理士にとって重要な業務です。
法人の一年間の利益と損失を正確に計上して、経営業績を明確にしなければならないからです。
税理士はそんな決算申告の準備を、決算の3ヶ月前から始めます。決算の3ヶ月前からは、顧問税理士を変更しないようにしましょう。
決算の3ヶ月前に顧問税理士を変更してしまうと、自社の税務に詳しい人間がいない状態になってしまいます。
顧問税理士と新しい税理士は引き継ぎを行わないため、正確に決算申告できない恐れがあります。
問い合わせ時に変更理由の詳細を記載しておく
顧問税理士の変更で税理士・会計事務所に問い合わせる際は、なるべく変更理由を具体的に記載しておきましょう。
税理士によっては、上記のように考えて依頼を断るケースがあるからです。
ですので、税理士と揉めたわけではない場合は、正直かつ具体的に税理士変更の理由を記載しておきましょう。
顧問税理士を変更するタイミング
先ほど少し触れた顧問税理士を変更するタイミングについて、本項目で詳しくお話します。
テキトーな時期に顧問税理士を変更すると決算申告に悪影響を及ぼすので、適切なタイミングを知っておきましょう。
法人税の申告書を提出したあと
先ほどお話したとおり、法人で顧問税理士を変更する際は、決算申告の時期(準備期間の3ヶ月を含む)を避けましょう。
法人の税務を把握している人間がいなくなってしまうからですね。
上記の内容を踏まえたうえで、法人で顧問税理士を変更するなら、法人税の申告書を提出したあとがベストです。
年間の税理業務が終わったあとなら業務が残っていないため、スムーズに顧問税理士を変更できます。
修正申告書を提出したあと
もし、税務調査に入られている場合は、修正申告書を提出したあとに顧問税理士を変更しましょう。
新しい顧問税理士より、申告書を作成している税理士からのほうが適切なサポートを受けられるからです。
また、顧問税理士が税務調査時に代理人として対応するには、税務代理権限証書が必要です。
税務調査の連絡が入ってから顧問税理士を変更すると、手続きが困難な状態に陥ってしまいます。
ですので、税務調査の連絡が入っている方は、修正申告書を提出したあとに顧問税理士を変更しましょう。
顧問税理士の変更を穏便かつスムーズに行う手順
それでは、顧問税理士の変更を穏便かつスムーズに行う手順についてお話します。
主な手順は以下のとおりです。
↓
②顧問税理士を変更するタイミングを決定する
↓
③現在の顧問税理士に契約解除を伝える
↓
④決算書や仕訳帳などを返してもらう
↓
⑤業務終了日と開始日を合わせる
それでは、順番に見ていきましょう。
①:まずは今の契約内容を確認する
まずは、現在の顧問税理士と交わした契約書の内容を確認しましょう。
契約解除できる期間や違約金に関する情報に目を通してください。
契約解除できる期間外に顧問契約を解除すると、違約金が発生してしまうからです。
スムーズに顧問税理士を変更するために、契約書を必ず確認しておきましょう。
②:顧問税理士を変更するタイミングを決定する
繰り返しになりますが、顧問税理士を変更するベストタイミングは、以下のとおりです。
- 法人税の申告書を提出したあと
- 修正申告書を提出したあと
スムーズに顧問税理士を変更するために、上記の内容を意識しながら決めましょう。
③:現在の顧問税理士に契約解除を伝える
準備が整ったら契約解除できる期間中に、顧問税理士に契約解除の旨を伝えましょう。
顧問税理士に断りの連絡を入れる際は、なるべく角が立たないようにしてください。
顧問税理士と揉めてしまうと、スムーズに書類を回収できない恐れがあるからです。
もし、顧問税理士に問題がある場合は、
- 身内の税理士にお願いすることになった
- 取引先に税理士を勧められた
など
やむを得ない事情で顧問税理士を変更する旨を伝えましょう。
そんな方は弊所にご相談ください。
弊所の顧問弁護士から契約内容についての見解を受領することができます。
④:決算書や仕訳帳などを返してもらう
顧問税理士に契約解除の連絡を入れたら、決算書や仕訳帳などの書類を返してもらいましょう。
返してもらう書類の中には、機密情報が記載されている書類も含まれています。
情報漏洩のリスクを回避するためにも、必ず返してもらいましょう。
また、税務処理の際に必要な決算書などの書類がない場合、新しい税理士がご自身の状況を把握できません。
税務調査の際にも必要なので、5期分ほど返してもらいましょう!
万が一、顧問税理士が書類を返してくれない場合は、顧問税理士が所属している税理士会に「書類を返してもらえない」と相談してください。
⑤:業務終了日と開始日を合わせる
最後に、顧問税理士不在の状態ができないように、新しい税理士を見つけます。
新しい税理士の得意業種や性格、顧問料などを確認して、顧問契約の開始日について話し合いましょう。
繰り返しになりますが、現在の顧問税理士と新しい税理士間で引き継ぎは行いません。
すぐに新しい税理士と顧問契約を開始できるように、業務開始日や必要書類について確認しておきましょう。
弊所は顧問弁護士から、契約内容についての見解を受領することができます。
顧問税理士と揉める恐れがある方でも、お気軽にご相談ください。
顧問税理士の変更に関するよくある質問
顧問税理士の変更に関するよくある質問を紹介しておきます。
顧問税理士を変更するうえで、参考にしてみてください。
税務調査に入られやすくなる?
冒頭でお話ししたとおり、顧問税理士の変更が原因で税務調査に入られるのではありません。
税理士によって税務会計の処理方法が異なるのが原因です。
経費処理や売上計上の基準などに変化があると、税務調査の対象となるケースがあります。
顧問税理士を変更しなくても、税務会計の処理方法が異なれば税務調査の対象となり得るので覚えておきましょう。
うまい断り方について知りたい
顧問税理士に契約解除を申し出る際は、
- 契約内容を必ず守る
- 契約解除の理由を伝える
上記の2点を意識しましょう。
契約内容を守らなかったり契約解除の理由を伝えなかったりするのは、顧問税理士と揉める原因になります。顧問税理士に契約解除の理由を伝える際は、なるべく角が立たないようにしましょう。
たとえ上記のような税理士だったとしても、正直に契約解除の理由を伝えてしまうと反感を買いかねません。
うまい断り方が思いつかない場合は、取引先から税理士を紹介されたなどと、やむを得ずに税理士を変更する旨を伝えましょう。
顧問税理士と揉めたときの対処法は?
万が一、顧問税理士と揉めて話し合いで解決できそうにない場合は、顧問税理士が所属している税理士会に相談しましょう。
税理士会を間に挟めば、裁判に発展するリスクを回避できます。
顧問税理士と揉めると、書類を返してもらえないケースもあります。
書類の所有権はあなたにあるので、返してもらって当然です。
顧問税理士と揉めた場合は、税理士会に相談してみてください。