こんにちは、植村会計事務所代表の植村拓真です。
経営者は事業の運営だけでなく、資産の管理・運用・税金に関する手続きなど、やるべきことが山のようにあります。
特に、税金に関する手続きは複雑で難しいため、ご自身で適切な対応を行うのは困難です…。
最近では、上記のようにお悩みの方からお問い合わせをいただく機会が増加しております。
そんなとき、ある程度売上が伸びて安定している方であれば、税理士との顧問契約を検討されているのではないでしょうか。
本記事ではそんな方に向けて、税理士と顧問契約を結ぶ必要性からメリット・注意点まで解説します。
顧問税理士とは?顧問契約とスポット契約の違い
上記のように考えて、税理士と顧問契約を結ぼうと考えている方が多いのではないでしょうか。
実際に、弊所では事業形態を問わず、適切な節税対策の徹底や事業集中などのために、顧問契約の件でお問い合わせいただく機会が多いです。
特に、法人は専門知識を必要とする複雑な税務作業が多いため、顧問税理士をつける方が多い傾向があります。
ただし、状況次第では税理士と顧問契約ではなく、スポット契約を結んだほうがいい方もいらっしゃいます。
そこで本項目では、顧問税理士とは何かから顧問契約とスポット契約の違いについて解説しますので、どちらの契約形態を選ぶか判断するうえで参考にしてみてください。
そもそも顧問税理士とは?
顧問税理士とは、期間を定めて顧問契約を結んでいる税理士のことです。
顧問契約を結んでいる期間中、顧問先に経理業務や税務会計の指導や経営サポートを行います。
顧問税理士の役割は、顧問先に対して経理や税務業務の代行サービスを提供するだけだと思われがちです。
しかし、顧問先が自社(自身)で会計や経理業務を行えるようにサポートしたり、財務状況から経営のアドバイスを行ったりすることも含まれています。
長期に渡り顧問先の事業成長をサポートするため、顧問税理士は事業主にとってビジネスパートナー同然です。
顧問契約
税理士の顧問契約とは、期間を定めて税理士と契約を結び税務や経営のサポートを受ける契約のことです。
顧問料は月ごとか年に一度支払います。
顧問税理士からは、主に「税理士の業務内容|どこまで依頼できる?」の見出しで解説する専門知識を要する業務を代行・サポートしてもらえます。
いつでも専門家に相談できる安心感のもと事業に集中したい、さらに事業規模を拡大したい方は、顧問税理士をつけている傾向があります。
スポット契約
スポット契約とは、必要なときだけ税理士のサポートを受ける契約のことです。
顧問契約のように継続したサポートを受けられないデメリットはありますが、税理士報酬が安くなるメリットもあります。
たとえば、年に一度の確定申告や決算申告だけ代行を依頼する際に、税理士とスポット契約を交わします。
売上が安定していなかったり年間取引量が少なかったりする場合は、スポット契約を選択して税理士報酬を抑えるといいでしょう。
確定申告や決算申告時のみ税理士とスポット契約を結ぶと、税理士報酬を抑えられるメリットを享受できます。
しかし、デメリットや注意点もありますので、スポット契約を検討している方は、以下の記事で内容を確認しておきましょう。
関連記事:【法人の決算申告】税理士なしのリスクと依頼時の費用相場
税理士の業務内容|どこまで依頼できる?
税理士はどんな業務を行っているのか、どこまで依頼できるのかについて解説します。
本項目で解説する内容は、以下のとおりです。
- 税理士の独占業務
- 依頼できる業務
順番に見ていきましょう。
税理士の独占業務
税理士は確定申告や決算申告の代行業や税務相談を受けたりなど、さまざまな業務を行います。
中でも、以下の3つは税理士の独占業務で、税理士登録を行なっていない人が行うことが有償・無償問わず禁止されています。
- 税務代理
- 税務書類の作成
- 税務相談
各業務について簡単に解説しますので、確認しておきましょう。
税務代理
税務代理とは、個人事業主の確定申告や法人の決算申告、税務調査の対応や処分に対する主張・陳述を行う業務のことです。
中でも、従来は紙で行われていた税金の申告ですが、現代ではネットで完結する電子申告が主流になりつつあります。
上記のように考える方がいらっしゃるかもしれませんが、非税理士が代理で行うと税理士法違反に該当してしまいます。
税務代理は税理士の独占業務ですので、税務代理に該当する業務はご自身で対応するか、税務の専門家である税理士に依頼して対応しましょう。
税務書類の作成
税務書類の作成とは、確定申告書や決算申告書、源泉徴収票や法定調書などの税務に関する書類を作成する業務のことです。
本書類は納税地を所轄する税務署に提出する書類で、税理士のみ作成を代行できます。
もちろん、税務書類の作成を税理士登録していない人が代行するのは、税理士法違反に該当する行為です。
税務書類の作成はご自身で行うか、税理士登録を行っている現役の税理士に依頼しましょう。
税務相談
税務相談とは、納税者の確定申告や決算申告、税務調査などに関する相談に乗る業務のことです。
たとえば、納税額の計算方法や節税方法、税務署への主張や陳述に関するアドバイスなどがあります。
税務相談に関しては、SNSで非税理士が行っているケースをよく見かけます。
繰り返しになりますが、税理士登録を行っていない人が税理士の独占業務を行うのは、無償であろうとも税理士法違反に該当する行為です。
仮に非税理士に相談して損害を被ったとしても、すべて自己責任でペナルティを受けるのはご自身です。
どうしてもご自身で対応できない場合は、正規の税理士に相談・依頼するようにしましょう。
依頼できる業務
税理士は先ほど紹介した独占業務に加えて、以下のような業務の代行も請け負っています。
- 税務会計の指導
- 適切な節税対策
- 記帳代行
- 年末調整
- 給与計算
- 経営相談
など
上記はあくまで一例です。
依頼先によって提供しているサービスの内容が異なりますので、事前に確認しておきましょう。
顧問税理士に依頼できる業務内容について簡単に紹介します。
税務会計の指導
顧問税理士は、顧問先に税務会計の指導を行います。
顧問先が自身または自社で経理や会計業務を行えるように、会計ソフトの使い方、仕訳・記帳のやり方、会計書類の管理方法などについて指導します。
適切な節税対策
税務会計の専門家である顧問税理士は知識と顧問経験から、顧問先がどうすれば無駄なく税務調査で指摘されずに節税対策を実施できるかについてアドバイスできます。
ネットや知人から税務署に指摘されない節税対策の情報を仕入れて実施したからといって、ご自身が指摘されないとは限りません。
そこで、顧問税理士に依頼すれば、自社に合わせた節税対策を無駄なく実施してもらえます。
記帳代行
顧問税理士に請求書や領収書などの必要書類を渡せば、記帳代行を依頼できます。
仕訳や会計ソフトへの入力作業、帳簿の作成までを代わりに行ってくれます。
年末調整
年末調整には税理士の独占業務が含まれるため、代行を希望する場合は税理士に依頼します。
給与台帳、扶養控除等申告書や保険料控除等申告書などの書類が必要になるので、依頼する際は準備しておきましょう。
給与計算
給与計算の業務を行う際に資格は不要ですが、専門知識と正確性を要求されるため、税理士や社労士に依頼するケースが多いです。
顧問税理士がいる場合は毎月の勤怠データを渡して、所得金額、源泉所得税、社会保険料などを計算してもらいます。
経営相談
経理業務に関わる顧問税理士は、作成した資料や顧問経験をもとに顧問先の経営相談に乗ります。
さまざまな業種や事業規模の事業主から相談を受けているため、税務会計だけでなく経営に関する相談にも対応できます。
以上が、税理士に依頼できる業務内容です。
ご自身や自社にとって必要なサービスを受けられるかどうか不安な方は、お気軽にご相談ください。
ご安心していただけるようにしっかり説明させていただいたうえで、ご質問に答えさせていただきます!
税理士と顧問契約を結ぶメリット
税理士と顧問契約を結べば、税金周りの一切をサポートしてもらえると解説しました。
面倒な税務作業を代行してもらえるため、ご自身の事業に集中してより効率良く売上を伸ばせます。
では、具体的に税理士と顧問契約を結ぶとどんなメリットがあるのかについて解説します。
本項目で解説する内容は、以下のとおりです。
- 記帳などの面倒な税務作業を丸投げして事業に集中できる
- 適切な節税対策を行ってもらえる
- 社会的信用度が高くなる
- 税務調査に対応してもらえるので安心できる
順番に見ていきましょう。
記帳などの面倒な税務作業を丸投げして事業に集中できる
税理士と顧問契約を結べば、記帳などの面倒な税務作業を税理士に丸投げできます。
税務作業にかかるはずの時間が浮くため、稼ぐことだけに集中できるようになります。
一からすべて調べて税務作業を行っていては、自社の事業に割く時間をなかなか確保できません。
税金に関する専門用語、書類作成の手順、適切な税金の計算方法など、覚えなければならない内容が多いからです。
そこで顧問税理士に税務作業を丸投げすれば、一切の面倒ごとから解放されます。
さらに事務所によっては、以下の内容についてもしっかりアドバイスしてもらえます。
- 資金管理
- 証憑整理
- 正しい記帳の仕方、帳簿のつけ方
- 売掛金回収管理
- 部門別管理など経理事務の方法
など
サービス内容が契約形態によって異なる事務所もあるので、事前に確認しておきましょう。
もちろん、自社の事業規模が小さく取引数が多くない場合は、スポットの依頼で済ませる方がいいケースもあります。
弊所でも、お客様の状況に合わせて提案させていただいております。
税理士の顧問契約についてご不明、お悩みがある方は、お気軽にご相談、ご依頼ください。
適切な節税対策を行ってもらえる
税理士と顧問契約を結べば、適切な節税対策について提案してもらえます。
税理士の業務内容を詳しく知らない方でも、なんとなくご存知かと思います。
節税対策なら自分でもある程度行えると、考えている方がいるでしょう。
しかし個人の知識だけでは、以下のような事態に陥るかもしれません。
- 節税対策を見逃す
- やりすぎて追徴課税を請求される
その点税理士であれば、専門知識と経験を元に適切な節税対策を行えます。
適切な節税対策を行ってもらい、より大きな節税効果と追徴課税のリスク回避を実現してみましょう。
社会的信用度が高くなる
顧問税理士とつけていると、社会的な信用度が高くなります。
確定申告や決算申告などで必要な税務処理を行った書類に、専門家である税理士の名前や印鑑があるからです。
たとえば、税務処理を行った書類に税理士の名前や印鑑があると、金融機関の融資や地方自治体の各種優遇制度を利用しやすい傾向があります。
金融機関や地方自治体が税理士の名前と印鑑を見れば、より適切に税務処理を行っており内容を信用できると判断するからです。
上記のとおり、顧問税理士をつけている事業主は金融機関の融資や地方自治体の各種優遇制度を利用しやすくなるため、社会的信用度が高くなるといえます。
特に、金融機関の融資や地方自治体の各種優遇制度を利用して、従業員を増員したり設備投資したりして事業規模を拡大する予定の方は、顧問税理士をつける大きなメリットがあります。
税務調査に対応してもらえるので安心できる
税務調査に入られた際、税理士と顧問契約を結んでおけば立ち会ってもらえます。
ですので、税務調査に入られるからといって怯む必要はありません。
税務署は税務申告に疑問があると、対象者に税務調査に入ることができます。
そして、調査する際の連絡先はご自身ではなく顧問税理士です。
顧問税理士が税務調査に立ち会ってくれますしいきなり税務署から連絡が来ないため、安心して事業に集中できます。
税務署は過去の無申告や誤魔化した売上などを指摘して、対象者に税務調査に入ります。
特に、過去の申告を指摘されるのが厄介なポイントです。
と考えていると、後から痛い目を見るので注意しましょう。
重加算税や延滞税、不納付加算税などのペナルティは税率が非常に高いため、納税すると事業の継続が困難になりかねません。
ですので、税務署から過去の申告について指摘される前に、早めに手を打っておきましょう。
関連記事:無申告がバレる仕組み・確定申告しなかったときの末路を税理士が解説
税理士と顧問契約を結ぶ際のデメリット
税理士と顧問契約を結ぶ際、メリットだけでなくデメリットもあります。
定期的に、税理士に支払う顧問料がかかってしまうことです。
税理士との顧問契約は税務申告などの単発業務だけでなく、継続して税務や経営のサポートを受けるための契約です。
そのため、顧問税理士に対して月額の顧問料を支払う必要があります。
事業規模が小さいほど負担になることを念頭に置いたうえで、税理士と顧問契約を結ぶかの判断をしなければなりません。
税理士の顧問料については後ほど詳しく解説しますが、主に以下の要素で変動します。
- 売上規模
- 訪問回数
- 取引量
- 業種
- 追加するサービス
さらに、顧問契約を結ぶ税理士によっても異なりますので、依頼先を比較検討する際に確認しておきましょう。
本項目では税理士の顧問料をデメリットとして解説しましたが、安ければいいわけでもありません。
顧問料が安い税理士と顧問契約を結んでも相性が悪く、質問しづらかったり業種に対する理解が浅かったりなどして、ご自身の要望に応えられない、応えてくれないケースもあるからです。
顧問料だけに注目するのは、顧問税理士を選ぶ際のよくある失敗例のひとつです。
税理士と顧問契約を結ぶ際は、メリットとコストを比較したうえでご自身との相性にも注目してみましょう。
失敗しない顧問税理士の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:失敗しない税理士の選び方|依頼タイミングと変更のコツも解説
税理士と顧問契約を結ぶ際の注意点とポイント
税理士と顧問契約を結ぶ際、注意点(確認点)とポイントがいくつかあります。
税理士の顧問料やサービス内容、契約書の内容が事務所ごとに異なるからです。
そこで税理士との顧問契約を検討している方向けに、顧問契約を結ぶ際の注意点とポイントを解説します。
本項目で解説する内容は、以下のとおりです。
- 事前に依頼内容を明確にしておく
- 税理士との相性を確認する
- 顧問税理士の業務内容を確認する
- 顧問料に含まれない業務内容も確認する
- 契約前に契約書の内容を再確認する
- 税理士と顧問契約書なしでは依頼しない
それでは順番に見ていきましょう。
事前に依頼内容を明確にしておく
税理士と顧問契約を結ぶ前に、どんな業務を何のために依頼するのかを明確にしておきましょう。
最低限、ご自身が何を依頼したいのかだけでも明確にしておかないと、依頼内容に過不足が生じてしまうケースもあるからです。
どんな内容が顧問契約に含まれているかを説明したうえで、ご契約いただくかを判断していただいております!
- 税理士と顧問契約を結んですべてを丸投げしたい
- わからないことがあれば質問して勉強したい
- アドバイスを受けつついずれは自分で決算業務を行えるようになりたい
- 創業融資や資金調達のサポートを依頼したい
など
上記のような希望を、税理士に伝えられるようにしておきましょう。
税理士と顧問契約を結んだあと、トラブルに発展するケースもありますので、事前に依頼内容を明確にしておきましょう。
税理士との相性を確認する
顧問税理士とはビジネスパートナー同然の長い付き合いになるので、必ずご自身と税理士との相性を確認しておきましょう。
税理士と顧問契約を結ぶ際、面談では対面もしくはZoomで顔を見ながら以下の内容について確認しておくと、よりご自身に合った税理士が見つかります。
- 気軽に質問できるほど話しやすいか
- 不安や疑問を払拭してくれるか
- 考え方が合うか
- 納得したうえで契約するかを判断させてくれるか
など
また、税理士がご自身の業種について知識や顧問経験があり、契約を結ぶうえで問題がないかも確認しておきましょう。
顧問契約を結んだあとに、的確なアドバイスをもらえない、適切な節税対策を徹底してもらえない、といった状況に陥る恐れがあるからです。
税理士選びで失敗しないためにも、顧問契約を結ぶ前にご自身との相性を確認しておきましょう。
関連記事:失敗しない税理士の選び方|依頼タイミングと変更のコツも解説
顧問税理士の業務内容を確認する
先ほど解説したとおり、顧問税理士の業務内容は事務所や税理士によって異なります。
時間を無駄にしないためにも、どのようなサービスを受けられるのかについて、しっかり確認しておきましょう。
顧問税理士の業務内容を確認する手順は、以下のとおりです。
↓
電話やフォームなどから問い合わせる
↓
担当スタッフに自社の経営状況や悩み、依頼したい内容などを伝える
↓
サービス内容と税理士の顧問料が
依頼内容や相場、他社と比較して妥当か判断する
まずは、ご自身の抱えている悩みを伝えたうえで、顧問税理士がどのようにサポートしてくれるのかを確認しましょう。
そして、受けられるサービスの内容が税理士の顧問料に見合ったものかを判断します。
税理士の顧問料の相場や他社のサービス内容・料金と、じっくり比較してみてください。
顧問料に含まれない業務内容も確認する
税理士と顧問契約を結ぶ際、顧問料に含まれない業務内容も確認しておきましょう。
先ほど解説したとおり、事務所によってサービス内容がバラバラだからです。
たとえば、税務調査の対応ですが有料のケースもあります。
顧問料に含まれていない場合は別途で料金を請求されます。
事務所のホームページや問い合わせ時に、直接担当スタッフに質問しておきましょう。
契約前に契約書の内容を再確認する
税理士と顧問契約を結ぶ際、契約書の内容を確認しておきましょう。
確認する項目は、以下のとおりです。
- 契約期間と自動更新
- 委任業務の範囲
- 税理士の顧問料
- 契約の解除条項(期限、方法、違約金)
- 損害賠償の責任範囲(賠償金額の上限)
特に契約の解除条項には、しっかり目を通しておいてください。税理士も人間ですからご自身と性格が合わないケースがあり、契約解除に至る恐れがあるからです。
第一印象が良くても、顧問契約を結んでから
と思ってしまうケースは少なくありません。
さらに、違約金が発生するケースもあるため、契約解除を想定しながら契約書に目を通すのがおすすめです。
契約書を読んだときに不明な点があれば、遠慮せずに質問しておきましょう。
税理士と契約書なしでは依頼しない
税理士と顧問契約を結ぶ際に契約書がない場合、以下のようなリスクを負わなければなりません。
紛争に発展する原因になりますので、顧問税理士をつける際は必ず契約書を交わしておきましょう。
税理士の顧問契約の範囲が不明確で希望のサポートを受けられない
契約書がない場合、どのような業務を税理士に依頼するのか、どの程度のサービスを提供してもらえるのかが不明確です。
税理士とご自身の間で誤解や不満が生じてトラブルに発展する恐れがあります。
顧問料や追加サービス料が突然値上がりする
契約書がなければ、税理士の顧問料や支払い方法、値上げする基準などがハッキリしません。
突然の顧問料アップで想定外の出費が増えたり顧問料が払えなくて契約解除に至ってしまったりといった、未然に防げるはずの料金トラブルに発展する恐れがあります。
権利や責任範囲が曖昧で紛争に発展する
税理士と顧問契約時に交わす契約書には、権利や責任範囲について記載されています。
そのため、契約書なしで顧問契約を結び問題が発生した場合、税理士のミスでご自身が大きな損失を負っても補償してくれない恐れがあります。
契約期間が不明確で突然契約を解除される
契約書がなければ契約の開始から終了までの時期、更新方法、解約条件などが不明確なので、税理士側から突然契約を解除される恐れがあります。
税理士探しや引き継ぎに時間がかかったり、申告期限間近なら新たに契約した顧問税理士から追加料金を請求されたりする恐れがあります。
以上が、税理士と契約書なしで顧問契約を結ぶリスクです。
税理士と顧問契約を結ぶ際は、必ず契約書の内容に目を通したうえで保管しておきましょう。
税理士と顧問契約を結ぶ際の費用相場|顧問料について
税理士の顧問料にはある程度の相場があります。
毎月または毎年支払うことになるので、税理士と顧問契約を結ぶ前に確認しておきましょう。
税理士の顧問料は事業形態によって大きく変動します。
事業形態 | 費用相場 | 確定申告 決算申告報酬 |
記帳代行 |
個人事業主 | 1万5,000 ~ 3万円 | 5万~10万円 | 1万円~ |
法人 | 3万円 ~ | 15万~25万円 | 3万円~ |
そこで本項目では、個人事業主と法人の税理士と顧問契約を結ぶ際の費用相場について解説します。
個人事業主の費用相場
個人事業主の顧問料の相場は、法人よりも安い傾向があります。
個人事業主は法人よりも売上や取引量が少ない傾向があるからです。
たとえば、個人事業主で年間売上1,000万円未満のケースでは、顧問料の相場は訪問回数により変動しますが月1万5,000~3万円程度です。
そして、確定申告の報酬は5万~10万円程度です。
記帳代行を依頼する場合、月ごとの顧問料に加えて1万円以上かかります。
本項目の内容を見て、上記のようにお考えの方もいらっしゃると思います。
もちろん、税理士の顧問料を抑えるなら、ご自身で記帳を行ったほうがいいです。
しかし、記帳には時間と手間がかかってしまいますので、事業に集中するならセットで依頼したほうがいいでしょう。
法人の費用相場
続いて、法人の顧問料の相場ですが、売上や取引量が多い傾向があるため個人事業主よりも高くなりがちです。
たとえば、小規模な会社で年間売上1,000万円未満のケースでは、顧問料の相場は訪問回数により変動しますが月3万円以上程度です。
そして、決算申告の報酬は15万~25万円程度、記帳代行を依頼する際は追加で3万円以上かかります。
決算申告に関しては、専門知識を有する方でなければ適切な決算書を作成して申告まで完了するのは困難です。
決算申告を税理士なしで行うリスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。
少しでも適切に決算申告を行えるかが不安な方は、お気軽にご相談ください。
関連記事:【法人の決算申告】税理士なしのリスクと依頼時の費用相場
税理士の顧問料の決まり方・高くなる要素
先ほど「税理士と顧問契約を結ぶ際のデメリット」の見出しで、税理士の顧問料はいくつかの要素で決まると解説しました。
そこで本項目では、税理士の顧問料の決まり方と高くなる要素について、具体的に解説します。
- 売上規模
- 訪問回数
- 取引量
- 特殊な業種や対応の難易度
- 追加するサービス
税理士と顧問契約を結ぶうえで、参考にしてみてください。
売上規模
税理士の顧問料は売上規模によって変動します。
売上規模が大きな事業者ほど取引量が多く、税理士の確認作業が増加して時間や負担も増えるからです。
そして、売上規模が大きな事業者は納税額が高額で、申告ミスの際に大きな責任を負うリスクがあるからです。
上記のような理由から、売上規模が大きい事業主は税理士の顧問料が高くなる傾向があります。
訪問回数
税理士の顧問料は売上規模だけでなく、顧問先に訪問する回数が多いほど高くなります。
訪問回数が多い事業主と少ない事業主では、売上規模が同じでも割く時間が異なるからです。
税理士の顧問料は訪問回数によっても変動しますので、契約を結ぶ前に1回あたりいくらかかるのかを確認しておきましょう。
取引量
記帳代行を依頼する場合、税理士の顧問料は取引量に応じて増加します。
顧問先に対して割く時間が多くなるからです。
たとえば、顧問先2社が同じ売上規模だとしても、顧問料は取引量が多く税理士の作業量も多いほうが高く設定されます。
顧問料がホームページの表に記載されている金額よりも多い場合は、ご自身の取引量が多いケースがあります。
取引量に応じた顧問料の変化は、事前に税理士が教えてくれますので質問しておきましょう。
特殊な業種や対応の難易度
税理士の顧問料は、以下のような特殊な業種や対応の難易度が高い場合、高くなるケースがあります。
- 業界特有の専門知識が必要:医療、中古車販売、不動産業など
- 期限ギリギリで早急な対応が必要:確定申告や決算申告の期限間近の依頼
- 外部専門家の協力が必要:会社設立など
上記のようなケースでの値上がりは、難易度加算と呼ばれています。
税理士の顧問料が依頼先によって大きく異なるケースがあるので、事前に見積もりを申し出ておきましょう。
追加するサービス
税理士と顧問契約を結ぶ際、追加で以下のサービスを依頼するケースがあります。
- 年末調整
- 消費税申告
- 創業融資や資金調達支援
- 会社設立支援
など
上記のようなサービスは必ず依頼するものではありません。
必要に応じて料金を聞きながら依頼するかどうかを判断しましょう。
個人事業主なら税理士との顧問契約はいらない?
顧問税理士を探している方の中には、個人事業主なら顧問税理士はいらないのではと考えている方もいらっしゃいます。
本項目ではそんな方に向けて、個人事業主で顧問税理士がいらないケースと顧問契約を結ぶタイミングについて解説します。
- 顧問税理士がいらないケース
- 顧問契約を結ぶタイミング
顧問税理士がいらないケース
売上が安定していなかったり、専門知識を有しており自力で税務会計を行えたりする個人事業主の方であれば、税理士との顧問契約は不要です。
売上が少ないうちは取引量も少ない傾向があり、記帳や仕訳、確定申告などの作業に時間がかからないため、自力で行う方もいらっしゃいます。
近年では、ネットや書籍などで情報を得やすい環境が整っていますし、優秀な会計ソフトが普及しています。
自力で専門知識を学んで適切な税務会計を行い、税務調査にも対応できる方であれば、顧問税理士はいらないでしょう。
顧問契約を結ぶタイミング
売上が伸びて安定してきたとき
個人事業主が税理士と顧問契約を結ぶタイミングで多いのが、売上が伸びて安定したときです。
売上が伸びて安定すれば税理士顧問料が大きな負担にはならないため、顧問税理士を探す方が多いです。
年商が1,000万円を超えたとき
年商が1,000万円を超えたときも、個人事業主が税理士との顧問契約を検討するタイミングです。
2年後に消費税の課税事業主となり申告が必要になりますし、令和5年10月1日からインボイス制度が始まるからです。
消費税の申告やインボイス制度の対応について、すべて自力で調べて対応するのは困難ですし、顧問税理士をつけていればご自身にあった対応を提案してもらえます。
また、売上が増加すると、取引量も増加して税務会計に時間がかかり、事業に集中できなくなる恐れがあります。
時間がかかる記帳や仕訳、新制度の対応などから解放されて事業に集中したい方は、税理士との顧問契約を検討してみましょう。
関連記事:税理士に依頼するタイミングはいつ?メリットや必要なケースもあわせて解説
顧問税理士を変更する際の注意点と契約解除の手順
税理士と顧問契約を結ぶ方は変更するケースを想定して、顧問税理士を変更する予定の方はスムーズに変更手続きを行うために、顧問税理士を変更する際の注意点と契約解除の手順について確認しておきましょう。
顧問税理士を変更する際の注意点
顧問税理士を変更する際の注意点は、以下のとおりです。
- すぐに顧問税理士を変更できない
- 良い税理士が見つからないケースもある
- 決算まで残り3ヶ月のタイミングで変更しない
- 問い合わせ時に変更理由の詳細を記載しておく
上記の内容を意識しておけば、スムーズに顧問税理士の変更手続きを行えます。
以下の記事では、顧問税理士を穏便に変更する方法について断り方や注意点とあわせて解説しています。
顧問税理士を変更するうえで参考にしてみてください。
関連記事:顧問税理士を穏便に変更する方法|断り方や注意点を税理士が解説
顧問契約を解除する手順
①契約書で解除の条件を確認する
現在契約している税理士と交わした契約書で、契約解除の条件を確認しましょう。
スムーズに顧問契約を解除するには、何ヶ月前に税理士への連絡が必要かを確認しておく必要があります。
たとえば、契約書に契約解除は3ヶ月前に申し出る必要があると記載されている場合、2ヶ月前に申し出ると違約金として残りの顧問料を支払わなければなりません。
逆に、税理士に何も連絡しなければ、契約が自動更新されてしまう恐れもあります。
スムーズかつ無駄なく税理士との顧問契約を解除するために、まずは契約書で契約解除の条件について確認しましょう。
②顧問税理士に解約を申し出る
税理士との顧問契約を解除する際は、メールや電話で契約を解除したい旨を伝えましょう。
契約を解除したい理由によっては税理士に連絡しづらいとは思いますが、遠慮なく契約解除を申し出てください。
万が一、契約内容を守って契約解除を申し出たうえで税理士と揉める場合は、税理士が所属する税理士会に連絡しましょう。
税理士が所属する税理士会は、日本税理士会連合会のホームページから検索できます。
③渡していた書類を返してもらう
顧問税理士に申告書や領収書などの重要書類やデータを預けている場合は、契約解除日が決まり次第返してもらいましょう。
税理士から重要書類やデータを回収するタイミングでトラブルが発生した場合も、税理士が所属する税理士会に連絡してください。
まとめ:良い顧問税理士を探す方法と契約の流れ
今回は、税理士と顧問契約を結ぶ必要性についてメリットや費用相場に注意点とあわせて解説しました。
税理士と顧問契約を結ぶと、税務作業や複雑な税金の計算など、面倒で複雑な税務会計から解放されます。
そして、インボイス制度などについても相談できますし対応してもらえるため、安心して事業に集中できます。
最後に、良い顧問税理士を探す方法と契約の流れについて振り返っておきましょう。
↓
②ご自身の業種に対応できる税理士を探す
↓
③ホームページで顧問税理士の業務範囲と追加サービスについて確認する
↓
④問い合わせて面談を依頼する
↓
⑤面談にて相性の確認と依頼に関する相談を行う
↓
⑥問題なければ見積書や契約書を確認する
↓
⑦顧問契約を決めたら契約書を再確認しておく
↓
⑧税理士と顧問契約を結ぶ
弊所と顧問契約を結ぶうえで疑問や不安がある方は、以下のフォームからいつでもお気軽にご相談ください。