こんにちは、一人会社の顧問実績が豊富な税理士の植村拓真です。
弊所では設立当時から、一人会社を設立したい方、一人会社を運営されていらっしゃる方と顧問契約を結び、さまざまなご相談に対応させていただく機会が多いです。
中でも以下のような内容のお問い合わせを多くいただきます。
一人会社は2006年に会社法が改正されて以降、会社の代表取締役は最低3人から1人に変わり、資本金は出資額規制の撤廃により1円から設定できるようになった影響で、設立を検討する方が増加しています。
ただ設立のハードルは下がりましたが、状況によっては倒産したり損をしたりするリスクやデメリットもあるため、対処できるように準備が必要です。
そこで今回は、一人会社のリスク・デメリットと回避する方法について解説します。
一人で会社を作るメリットとリスク・デメリット
まずは一人会社を自力で設立するメリットやリスク、デメリットについて解説します。
繰り返しになりますが、会社は一人でも設立できます。
2006年の会社法改正により、代表取締役は最低1人、資本金は最低1円でも設立できるようになったからです。
そんな一人会社を自力で設立すれば、以下のようなメリットを享受できます。
- 意思決定に時間をかけずに手続きを進められる
- 自分のペースで会社を設立できる
- 会社の設立や運営に関する知識と経験が身に付く
- 専門家に依頼する費用を最低限に抑えられる
意思決定に時間がかかりませんし、自分のペースで手続きを進められる点は、会社設立後も個人事業主のように自由に事業を行いたい方にとって大きなメリットです。
そして会社設立の過程で専門知識と経験が身に付けられますので、経理や税務会計をある程度自力で行えるようになりたい方にとっても、一人会社を自力で設立するメリットはあるといえます。
中でも最も大きなメリットは、専門家に依頼する費用を最低限に抑えられる点です。
会社設立に関する費用を少しでも抑えたい方は、一人で会社を設立してみましょう。
ただし一人での会社設立には、以下のようなリスク・デメリットもあります。
- 調べたり手続きを進めたりするために時間がかかる
- ミスをすると手続きに時間がかかる
- 役員報酬や決算期などの設定を間違えると損をする
- 節税対策を見逃してしまう
- 手続きの期限に追われる
- 複数人で運営する会社よりも対外的な信用度が低い
繰り返しになりますが、会社は一人でも設立できますが、すべての手続きを自力で行う必要があるため時間がかかります。
そして設立するには正しい専門知識を学ぶ時間が必要ですし、必要書類の提出期限を守らなければなりません。
また後ほど解説しますが、一人会社は複数人で運営する会社よりも倒産リスクが高いため、取引先や融資先などから信用度が低いと判断されてしまう傾向があります。
事業に集中しながら、スムーズかつ無駄なく一人会社を設立したい方は、税理士への依頼を検討してみましょう。
費用はかかってしまいますが、適切な節税対策を徹底してもらえますし、顧問契約を結べば会社設立だけでなく税務調査やインボイス制度などにも対応してもらえます。
もちろん決算申告も代行してもらえますので、安心して事業に集中できます。
関連記事:一人社長(一人会社)の税理士の必要性|費用相場と選び方も解説
一人会社を運営するリスク・デメリットと回避方法
続いては一人会社を運営するリスク・デメリットについて解説します。
- 経営者がひとりなので突然倒産するリスクが高い
- 役員報酬額の設定でミスをすると税金が高くなる
- 誤った節税対策を実施すると追徴課税が発生する
- 社会保険を未加入のまま放置するとペナルティを受けてしまう
- 経理や税務会計でミスをすると追徴課税が発生する
会社を設立したあとにもリスク・デメリットがありますので、事前に確認しておきましょう。
経営者がひとりなので突然倒産するリスクが高い
一人会社には突然倒産するリスクがあります。
文字通り経営者がひとりで、経営者の状況次第では事業を継続できなくなるからです。
一人会社の経営者が事業継続不能になった際のリスクは、株式会社か合同会社のどちらで設立しているかによって異なります。
法人形態ごとに解説しますので、順番に見ていきましょう。
一人株式会社の場合
一人株式会社で相続人がいない場合、株式を引き継ぐ人がいないため会社は倒産してしまいます。
完全にひとりで会社を運営する予定、している方は注意しましょう。
相続人に株式を引き継いで代表取締役を選んでもらえば、会社を存続させられます。
一人合同会社の場合
合同会社には株式の概念がなく、出資者が直接社員となり持分と呼ばれる出資に基づく権利を保有します。
しかし持分は相続されないため、一人合同会社では経営者が亡くなると、会社も自動的に消滅するリスクがあります。
一人合同会社では定款に特定の条項を設けておいて、倒産リスクを回避しましょう。
定款に「代表社員の死亡時には、持分を相続人に継承する」旨の内容を明記しておけば、会社の安定性が高められます。
一人会社の倒産リスクは、株式会社にしろ合同会社にしろ、経営者の状況によって大きく左右されます。
会社を設立する際は、万が一に備えておきましょう。
役員報酬額の設定でミスをすると税金が高くなる
設立する会社が一人会社であっても、適切に役員報酬額を設定する必要があります。
役員報酬額は自由に決められますが、金額次第では所得税や法人税が大きくなって損をするケースがあるからです。
たとえば役員報酬額を高額にした場合、個人の所得増加に比例して所得税も上がります。
逆に受け取らないで会社に多くのお金を残した場合、法人税が多くかかります。
所得税と法人税のバランス次第では節税につながりますが、逆に設定でミスをすると個人と法人で納める税金のトータルで損をする恐れがあるので注意しましょう。
誤った節税対策を実施すると追徴課税が発生する
一人会社の節税対策は、正しい知識を身に付けたうえでルールに従って実施しましょう。
完全にひとりで会社を運営する場合、誤った専門知識を身に付けても誰にも相談できず、誤ったものを実施するリスクがあるからです。
たとえば過剰な経費の計上は、手元のお金を失ってキャッシュフローを悪化させかねません。
そして事業に関係のない出費まで経費計上してしまい、否認されて節税につながらず、ただお金を失うだけの恐れもあります。
他にもネットの知識を鵜呑みにしてグレーな節税対策を実施した挙句、税務調査で指摘されて追徴課税が発生するケースもあります。
確実に適切な節税対策を徹底したうえで事業に集中したい方は、専門家である税理士への依頼を検討してみましょう。
税理士費用はかかりますが、経理や税務会計にかける時間を事業に回せますので、効率良く事業規模を拡大したり売上を伸ばしたりできます。
社会保険を未加入のまま放置するとペナルティを受けてしまう
一人会社の経営者で社会保険を未加入のまま放置すると、最悪の場合ペナルティを受けるケースがあります。
社会保険への加入を忘れたり、入る必要はないと勘違いしたりする方がいるからです。
社会保険を未加入のまま放置すると、年金事務所から連絡が入る恐れがあります。
年金事務所から連絡が入ると、加入状況の確認や呼び出し、立入調査に入られるなどのケースがあります。
さらに罰則の対象となるケースもあり、対外的な信用に悪影響を及ぼしたり、罰金を課されたりする恐れもありますので、一人会社を設立する際は社会保険への加入を忘れないようにしましょう。
経理や税務会計でミスをして追徴課税が発生する
完全にひとりで会社を設立して運営する場合、経理や税務会計でミスをして追徴課税が発生するリスクもあります。
繰り返しになりますが、会社の設立や運営を正確に行うためには専門知識が必要で、個人事業主よりもハードルが高いからです。
一人会社の設立に関しては、自力でも時間をかけて調べながら行えば完遂できます。
設立後も必要な手続きはありますが、専門家でなければ行えないほど難易度は高くありません。
しかし経理や税務会計は、たとえ一人会社でも法人に変わりないため、正確に行う難易度は個人事業主よりも高いです。
そして決算申告や経費処理などでミスしてしまうと、追徴課税を課されたうえに修正申告などで時間がかかってしまいます。
専門家を頼らずに一人会社の設立から経理や税務会計までを行う予定の方は、事前に十分な専門知識を身に付けておきましょう。
一人会社で株式会社や合同会社を選択するケースと費用
一人会社を設立する際に選択する法人形態は、主に株式会社と合同会社の2つです。
両者ともメリットとデメリットがあるため、選択する際に迷う方もいらっしゃいます。
今回はそんな方に向けて、一人会社で株式会社や合同会社を選択するケースについて、設立や維持にかかる費用とあわせて解説します。
一人株式会社を設立するケース
一人会社を株式会社で設立するケースは、以下のとおりです。
- 事業規模の拡大や取引先開拓などで対外的な信用度が必要
- リクルートのハードルを下げていずれスタッフを雇いたい
- いずれ出資を募ってまとまった資金調達を行いたい
株式会社の対外的な信用度や知名度は、合同会社に比べると高い傾向があります。
融資先や営業先、求人の応募者などの自社に対する印象が良くなり、事業規模の拡大や取引先の開拓、リクルートのハードルが下がるメリットがあります。
また株式会社は株式を上場させて出資を募り資金調達を行えるため、事業規模の拡大に有利です。
ただし株式会社には、合同会社よりも設立費用が約10万円高いデメリットもあります。
初期投資の金額が合同会社よりも高額な点に注意しましょう。
一人合同会社を設立するケース
一人会社で合同会社を設立するケースは、以下のとおりです。
- 会社の設立・維持費用を抑えたい
- 個人事業主のように素早く意思決定を行いたい
- いずれ株式会社に移行できる
合同会社は株式会社よりも知名度が低く対外的な信用度は低いですが、設立・維持費用が安いため、節税目的の方が選択する傾向があります。
そして合同会社は出資者が経営者となり決算公告の義務がないため、個人事業主のようにスムーズに意思決定できます。
そのうえで株式会社と同じ税制が適用されますので、一人会社で選択する方は少なくありません。
関連記事:合同会社の設立で税理士は必要?費用相場や注意点も解説
一人会社と個人事業主の違い
最後に一人会社の設立・運営に関するよくある質問を紹介します。一人会社と個人事業主の大きな違いは、以下のとおりです。
- 法人か個人事業主
- 対外的な信用度
- 納める税金の種類
- 事業継続にかかるコスト
法人は事業継続のコストが個人事業主よりもかかりますし、経理や税務会計の難易度が高いため、誰でも法人化すればいいわけではありません。
売上が伸びて安定している方であれば、法人のメリットを享受できます。
法人は主に税金面や信用面で個人事業主よりも有利ですので、節税対策の徹底や事業規模の拡大を検討している方は法人化しましょう。
関連記事:会社と個人事業主はどっちが得?メリット・デメリットを比較して法人化を検討
まとめ
今回は一人会社のリスク・デメリットと回避する方法について解説について解説しました。
一人会社を設立する際は、以下のリスクを回避できるように準備しておきましょう。
- 経営者がひとりなので突然倒産するリスクが高い
- 役員報酬額の設定でミスをすると税金が高くなる
- 誤った節税対策を実施すると追徴課税が発生する
- 社会保険を未加入のまま放置するとペナルティを受けてしまう
- 経理や税務会計でミスをすると追徴課税が発生する
特に税務調査や追徴課税の発生のリスクは、会社の運営がひとりであろうとなかろうと抱えています。
事業を行いながら法人の経理や税務会計を正確に行う自信がない方は、会社設立から税理士への依頼を検討してみましょう。
最初から税理士に依頼しておけば、設立から設立後の経理や税務会計までの一切を任せられます。
安心して事業に集中したい方も、一人会社でも税理士への相談を検討してみましょう。