こんにちは、法人化の支援実績が豊富な税理士の植村拓真です。
弊所の顧問先様には、ネットビジネス業やIT業など時代にマッチした事業を運営されている方が多くいらっしゃいます。
個人事業主や副業から小さくスタートして、あっという間に売上規模が大きくなるケースが多いです。
上記のような顧問先様から、節税に関するご相談をいただく機会があります。
法人化を検討されている顧問先様からは、下記のような質問をよくいただきます。



本記事を読んでいる個人事業主の方の中にも、上記のような疑問や不安を抱えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、個人事業主が法人化するタイミングについて、節税シミュレーションを交えながら解説します。
法人化で失敗や損をして後悔したくない個人事業主の方は、本記事を参考にしてみてください。
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個人事業主が法人化を検討するべきタイミング
本項目では、個人事業主が法人化を検討するべきタイミングについて解説します。

いつ法人化すれば良いのか迷っている…

上記のような悩みを抱えている個人事業主の方は、本項目を参考にしてみてください。個人事業主が法人化を検討するべきタイミングは、次のとおりです。
- 課税売上高が1,000万円を超えた
- 課税所得が800万円を超えそう
- 課税所得が900万円以上
- 事業規模を拡大したい
それでは、1つずつ見ていきましょう。
課税売上高が1,000万円を超えた
下表のとおり、課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が2年後から発生します。
引用:国税庁(消費税のしくみ)
消費税の納税義務が生じるタイミングに合わせて法人化すれば、最大で2年間、消費税の免税事業者を継続できます。
新たに設立された法人は、資本金が1,000万円未満であれば、下記のように取り扱われるためです。
新たに設立された法人については、設立1期目および2期目の基準期間はありませんので、原則として納税義務が免除されます。
引用:国税庁(No.6501 納税義務の免除)
以上の理由から、課税売上高が1,000万円を超えた個人事業主の方は、法人化を検討するのが良いとされています。
ただし、2023年からスタートしたインボイス制度の影響により、消費税の免税事業者のままでいると、不利益を被るおそれがあります。
インボイスが発行できない消費税の免税事業者との取引では、仕入税額控除が適用できないため、税負担の増加を懸念する取引先に、取引の中止を告げられるリスクが高いからです。
参考:国税庁(インボイス制度について)
参考:国税庁(No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)
関連記事:インボイス制度がやばい・ひどい理由|抜け道と対策を解説
関連記事:インボイス制度と法人成り|タイミングから影響と対策まで解説
課税所得が800万円を超えそう
課税所得が800万円を超えそうな個人事業主の方にとって、法人化の検討は最適なタイミングの1つです。
課税所得が800万円を超えるあたりから、法人税を適用した方が税負担の軽減を見込めるためです。
下表のとおり、個人事業主が納める所得税には超過累進税率が採用されており、課税所得が大きくなるにつれて税負担も重くなる傾向があります。
一方、資本金1億円以下で設立された法人の場合、800万円以下の課税所得には一律15%、800万円を超える課税所得には一律23.20%の税率が適用されます。
以上のように、法人税は所得税と比べると税負担が緩やかです。上記の理由から、売上規模が拡大している個人事業主の方が法人化すれば、節税効果が期待できます。
下表は課税所得800万円の場合で、所得税と法人税の税額を比較したものです。
項目 | 計算式 | 合計 |
①所得税 | 8,000,000円 ✕ 23% ー 636,000円 | 1,204,000円 |
②法人税 | 8,000,000円 ✕ 15% | 1,200,000円 |
① ー ② | 4,000円 |
上表のとおり、所得税の方が税負担が多くなるため、課税所得が800万円を超えそうなタイミングで、法人化を検討し始めましょう。
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課税所得が900万円以上
課税所得が900万円以上になると、個人事業主が納める所得税の税率は23%から33%へ跳ね上がります。
一方、法人の場合、課税所得が800万円を超える部分にかかる税率は、一律23.20%です。
上記のため、課税所得が900万円以上では、所得税の税率が法人税の税率を上回ります。
以上の理由から、課税所得が900万円以上の個人事業主の方は、法人化によって節税効果が期待できます。
下表は課税所得900万円の場合で、所得税と法人税の税額を比較したものです。
項目 | 計算式 | 合計 |
①所得税 | 9,000,000円 ✕ 33% ー 1,536,000円 | 1,434,000円 |
②法人税 | 8,000,000円 ✕ 15%+1,000,000円 ✕ 23.20% | 1,432,000円 |
① ー ② | 2,000円 |
上表のとおり、所得税の方が税負担が多くなるため、課税所得が900万円に達したタイミングは、法人化の判断基準の1つになります。
上記については、本記事の個人事業主から法人化した場合のメリットの項目で、詳しく解説していますので、法人化の検討材料として参考にしてみてください。
参考:国税庁(No.2260 所得税の税率)
参考:国税庁(No.5759 法人税の税率)
参考:国税庁(所得税のしくみ)
関連記事:法人税と所得税ならどっちが得?税金面で法人化すべきケースを解説
事業規模を拡大したい
事業規模を拡大したい場合も、個人事業主が法人化を検討するべきタイミングの1つです。
- 大規模な資金調達を行いたい
- 法人案件を獲得したい
上記の2点に関して、法人化がもたらすプラス効果について解説していきます。
大規模な資金調達を行いたい
大規模な資金調達を行いたい場合、法人化によって選択肢が広がるため有利です。個人事業主では通りにくい融資の審査も、法人化すると通過確率が高まります。
登記によって法人格を取得するため、社会的な信用度が向上するからです。また、株式会社で法人を設立すれば、株式発行による資金調達を行えます。
原則、株式発行による資金調達は返済の必要がないため、資金繰りの安定につなげられる点が大きな強みです。
個人事業主と比べると補助金や助成金の選択肢も多いため、事業規模を拡大させる一助となります。
参考:J-Net21(資金調達方法)
参考:J-Net21(デット・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの違いについて教えてください。)
参考:中小企業庁(中小企業を支える資金調達)
参考:中小企業庁(エクイティ・ファイナンスに関する基礎知識)
参考:ミラサポplus(補助金・助成金 中小企業支援サイト)
関連記事:日本政策金融公庫の融資審査を確実に通すためのチェックポイント6選
法人案件を獲得したい
法人案件を獲得したい場合、法人化した方が有利です。
個人事業主が廃業する際、法人のような複雑な手続きは不要であり、いつでも事業をやめられるため、契約の途中で音信不通になる事態を懸念する企業も珍しくありません。
以上のような理由から、個人事業主は事業の継続性に不安を持たれやすく、企業側が取引を敬遠するケースが多いです。
繰り返しになりますが、法人化すると社会的な信用度が向上するため、企業との取引契約が締結しやすくなります。
参考:J-Net21(廃業するにはどうしたらよいですか?)
参考:国税庁(A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続)
関連記事:会社と個人事業主はどっちが得?違いやメリット・デメリットを比較して法人化を検討
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課税所得800万円のケースにおける節税効果のシミュレーション
本項目では、課税所得800万円のケースにおける節税効果を比較しやすいように、下記の場合に分けてシミュレーションします。
- 個人事業主のままの場合
- 法人化した場合

上記のような疑問を抱えている個人事業主の方は、本項目を参考にしてみてください。それでは、順番に見ていきましょう。
個人事業主のままの場合
個人事業主のままでいる場合、納める主な税金は、次のとおりです。
- 所得税
- 復興特別所得税
- 個人住民税
- 個人事業税
- 消費税および地方消費税
消費税および地方消費税を除いた上記の税金ごとに計算を行い、最後に納税額の合計を算出し、法人化した場合と比較していきます。
所得税
所得税は以下の計算式で求められます。
課税所得 ✕ 所得税の税率 ー 控除額
下表のとおり、課税所得800万円にかかる税率は23%で、控除額は636,000円です。
課税所得が800万円の場合にかかる所得税は、下記のとおりです。
8,000,000円 ✕ 23% ー 636,000円 = 1,204,000円
参考:国税庁(所得税のしくみ)
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
復興特別所得税
第179回臨時国会において、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」が成立し、「復興特別所得税」が創設されました。
引用:日本年金機構(復興特別所得税額とは何ですか。)
復興特別所得税の計算式は、次のとおりです。
基準所得税額は下表のように定められています。
今回は非永住者以外の居住者とします。なお、課税所得が800万円のケースにおける所得税額は、1,204,000円です。
以上を踏まえて、課税所得が800万円の場合にかかる復興特別所得税は、下記のとおりです。
1,204,000円 ✕ 2.1% = 25,284円
関連記事:個人事業主の法人成り|適切なタイミングから注意点まで解説
個人住民税
個人住民税の税額は、下表のように計算します。
今回は所得控除と税額控除は加味しません。なお、下記の事情から均等割と一緒に森林環境税が1,000円徴収されます。
国土の保全、水源の維持、地球温暖化の防止、生物多様性の保全など様々な機能を有する森林の整備に必要な費用を確保するため、2024(令和6)年度から、個人住民税均等割と併せて、森林環境税(国税)が1,000円徴収されます。
引用:総務省(地方税制度|個人住民税)
以上を踏まえて、課税所得が800万円の場合にかかる個人住民税は、下表のとおりです。
項目 | 計算式 | 合計 |
①所得割額 | 8,000,000円 ✕ 10% | 800,000円 |
②均等割額 | 4,000円+1,000円 | 5,000円 |
①+② | 805,000円 |
関連記事:個人事業主に顧問税理士はいつから必要?費用相場やタイミングも解説
個人事業税
個人事業税の税額は、下表のように計算します。
事業主控除の控除額は290万円です。
以上を踏まえて、課税所得が800万円の場合にかかる個人事業税は、下記のとおりです。
(8,000,000円 ー 2,900,000円)✕ 5% = 255,000円
個人事業税については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:アフィリエイトでも個人事業税はかかる?納税不要のケースや未申告のリスクも解説
消費税および地方消費税
消費税の納税義務が発生するのは、下記の場合です。
- 前々年の課税売上高が1,000万円を超えた
- 前年1月1日〜6月30日までの課税売上高が1,000万円を超えた
- インボイス発行事業者の登録を行った
消費税は下記の計算式で求められます。
上記は仕入税額控除といわれますが、インボイス発行事業者の発行するインボイスがなければ適用できません。
原則、売上税額と仕入税額は、下記のようにして計算します。
消費税および地方消費税の税率は、下表のとおりです。
引用:国税庁(No.6303 消費税および地方消費税の税率)
なお、軽減税率が適用される項目は、下記のとおりです。
1 飲食料品の譲渡(食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除きます。)の譲渡をいい、外食を含みません。)
2 定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡
引用:国税庁(No.6303 消費税および地方消費税の税率)
以上のように、消費税および地方消費税の計算は複雑であるため、正確に申告できるか不安な個人事業主の方は、税理士への依頼も検討しましょう。
参考:国税庁(確定申告)
参考:国税庁(No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項)
参考:国税庁(No.6351 納付税額の計算のしかた)
参考:国税庁(No.6102 消費税の軽減税率制度)
関連記事:インボイス制度がやばい・ひどい理由|抜け道と対策を解説
納税額の合計
消費税および地方消費税を除いた税金の合計額は、下表のとおりです。
税目 | 税額 |
所得税 | 1,204,000円 |
復興特別所得税 | 25,284円 |
個人住民税 | 805,000円 |
個人事業税 | 255,000円 |
合計 | 2,289,284円 |
個人事業主のままの場合、法人化した場合と比べると33万円ほど税負担が重いです。
関連記事:法人成りの税理士報酬の相場は?依頼すべきケースから費用を安く抑えるコツまで解説
法人化した場合
法人化した場合、納める主な税金は、次のとおりです。
- 法人税
- 地方法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 特別法人事業税
- 消費税および地方消費税
消費税および地方消費税を除いた上記の税金ごとに計算を行い、最後に納税額の合計を算出し、個人事業主のままの場合と比較していきます。
法人税
法人税の計算方法は、下表のとおりです。
法人税について、以下の前提条件に基づいて計算していきます。
- 普通法人
- 資本金は1,000万円以下
- 適用除外事業者ではない
- 開始事業年度は令和4年4月1日以後
- 税額控除は加味しない
法人税の税率は、下表のとおりです。
以上を踏まえて、課税所得が800万円の場合にかかる法人税は、下記のとおりです。
8,000,000円 ✕ 15% = 1,200,000円
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
地方法人税
地方法人税の課税対象や税率は、下表のように定められています。
なお、課税所得が800万円のケースにおける法人税額は、1,200,000円です。以上を踏まえて、課税所得が800万円の場合にかかる地方法人税は、下記のとおりです。
1,200,000円 ✕ 10.3% = 123,600円
関連記事:法人成りを税理士に相談する必要性|メリットや費用相場も解説
法人住民税
法人住民税は法人税割と均等割の2つで構成されています。下記の前提条件に基づいて計算していきます。
- 資本金が1,000万円以下
- 開始事業年度は令和元年10月1日以後
- 事務所は東京都23区内に1つだけ
- 従業員数は50名以下
上記の条件における法人税割の税率は7.0%、均等割額は7万円です。
法人税割は下記の計算式で求められます。
課税所得が800万円のケースにおける法人税額は、1,200,000円です。以上を踏まえて、課税所得が800万円の場合にかかる法人住民税は、下表のとおりです。
項目 | 計算式 | 合計 |
①法人税割額 | 1,200,000円 ✕ 7.0% | 84,000円 |
②道府県分の均等割額 | ー | 20,000円 |
③特別区分の均等割額 | ー | 50,000円 |
①+②+③ | 154,000円 |
参考:総務省(地方税制度|法人住民税)
参考:東京都主税局(均等割額の計算に関する明細書〔第6号様式別表4の3〕記載の手引|令和6年改正)
関連記事:法人成りのメリットは責任・信用・節税面にあり!デメリットもあわせて解説
法人事業税
法人事業税について、下記の前提条件に基づいて計算していきます。
- 普通法人
- 外形標準課税法人ではない
- 資本金が1,000万円以下
- 開始事業年度は令和4年4月1日以後
- 事務所は東京都23区内に1つだけ
上記の条件において、法人事業税の税率は標準税率が適用されるため、400万円以下の課税所得に対して3.5%、400万超〜800万円以下の課税所得に対して5.3%です。
なお、法人事業税は下記の計算式で求められます。
以上を踏まえて、課税所得が800万円の場合にかかる法人事業税は、下表のとおりです。
項目 | 計算式 | 合計 |
①課税所得400万円以下の部分 | 4,000,000円 ✕ 3.5% | 140,000円 |
②課税所得400万超〜800万円以下の部分 | 4,000,000円 ✕ 5.3% | 212,000円 |
①+② | 352,000円 |
関連記事:法人成りを税理士に相談する必要性|メリットや費用相場も解説
特別法人事業税
特別法人事業税の計算方法は、下記のとおりです。
- 外形標準課税法人ではない
- 特別法人ではない
- 資本金が1,000万円以下
- 開始事業年度は令和4年4月1日以後
上記の条件において、特別法人事業税の税率は37%であり、法人事業税の税率は標準税率が適用されます。
なお、課税所得が800万円のケースにおける法人事業税の税額は、352,000円です。
以上を踏まえて、課税所得が800万円の場合にかかる特別法人事業税は、下記のとおりです。
352,000円 ✕ 37% = 130,240円
参考:東京都主税局(特別法人事業税の創設について|仕事と税金)
参考:総務省(特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律案の概要)
関連記事:法人成りのベストタイミングはいつ?後悔しない会社設立時期の選び方
消費税および地方消費税
具体的な計算方法については、本記事の個人事業主のままの場合の項目の消費税および地方消費税の箇所をご参照ください。
なお、資本金が1,000万円未満で新たに設立された法人は、下記のとおり、消費税の納税義務が免除されます。
新たに設立された法人については、設立1期目および2期目の基準期間はありませんので、原則として納税義務が免除されます。
引用:国税庁(No.6501 納税義務の免除)
繰り返しになりますが、2023年からスタートしたインボイス制度の影響により、消費税の免税事業者のままでいると不利益を被るおそれがあります。
インボイスを発行できない消費税の免税事業者との取引では、仕入税額控除が適用できないため、税負担の増加を懸念する取引先から、取引の中止を告げられるリスクが高いからです。
参考:国税庁(インボイス制度について)
参考:国税庁(No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)
関連記事:インボイス制度と法人成り|タイミングから影響と対策まで解説
役員報酬を損金算入する際の注意点
役員報酬は損金算入できるため、課税所得を圧縮し、節税につなげられます。ただし、自分の給料だからといって、役員報酬を自由に増やしたり減らしたりはできません。
損金算入するためには、下記のいずれかの条件に合わせて役員報酬を支給する必要があります。
- 定期同額給与
- 事前確定届出給与
- 業績連動給与
上記の詳細については、国税庁のホームページをご参照ください。
なお、一定の要件を満たしていても、高すぎる役員報酬を支給している場合、経費計上を否認されるおそれがあるため注意しましょう。
役員報酬の適切な決め方や高すぎる役員報酬を支給するリスクについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
関連記事:役員報酬が高すぎる中小企業が抱えるリスク|相場や適切な決め方も解説
参考:国税庁(役員給与に関するQ&A|平成20年12月|平成24年4月改訂)
納税額の合計
消費税および地方消費税を除いた税金の合計額は、下表のとおりです。
税目 | 税額 |
法人税 | 1,200,000円 |
地方法人税 | 123,600円 |
法人住民税 | 154,000円 |
法人事業税 | 352,000円 |
特別法人事業税 | 130,240円 |
合計 | 1,959,840円 |
法人化した場合、個人事業主のままの場合と比べると33万円ほど税負担が軽いです。
今回のシミュレーションでは、個人事業主のままの場合と法人化した場合の税負担を比較しやすいように役員報酬は加味しませんでした。
一定の要件を満たせば、役員報酬を経費計上できるため、さらに税負担の軽減が期待できます。
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個人事業主から法人化した場合のメリット
本項目では、個人事業主から法人化した場合のメリットについて解説します。

上記のように考え、あえて法人化しない個人事業主の方も一定数いらっしゃいます。
- 社会的な信用度が向上する
- 経費計上できる範囲が拡大する
- 責任の範囲を限定できる
- 赤字を最大10年まで繰り越せる
それでは、上記について1つずつ見ていきましょう。
社会的な信用度が向上する
社会的な信用度の向上は、法人化で得られるメリットの1つです。
法人の設立時、本店所在地を所轄する法務局で登記を行う際には、本店所在地の住所や資本金の額、事業内容などの情報を登録します。
登記された内容は誰でも確認できるため、融資の審査や取引契約の締結などの場面において、個人事業主と比べると信用評価が高まりやすいです。
上記の理由から、資金調達や取引先の新規開拓がしやすくなるため、事業の成長を加速させられます。
関連記事:法人成りのメリットは責任・信用・節税面にあり!デメリットもあわせて解説
経費計上できる範囲が拡大する
個人事業主も業務に必要な支出は経費にできますが、法人化すると経費計上できる範囲がさらに拡大します。
たとえば、法人化によって経費計上できるようになる主な支出は、次のとおりです。
- 役員報酬
- 退職金
- 出張手当
- 社宅に関する費用
- 従業員への慶弔見舞金
- 法人名義で契約した生命保険料
以上のような支出を上手く活用すれば、課税所得を抑えられるため、税負担を軽減できます。
また、経費計上の範囲が広がって節税できる額が増えると、キャッシュの流出を抑えられるため、資金繰りの安定にもつながります。
経費計上して問題ないか判断に迷う支出に関しては、税務上のトラブルを回避するためにも、税理士に確認しながら処理しましょう!
参考:国税庁(No.2210 必要経費の知識)
参考:国税庁(No.5211 役員に対する給与|平成29年4月1日以後支給決議分)
参考:J-Net21(退職金の税務上の取扱い)
参考:国税庁(No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき)
参考:国税庁(No.2600 役員に社宅などを貸したとき)
参考:J-Net21(慶弔見舞金支給規程)
参考:J-Net21(生命保険のしくみと税務)
関連記事:法人はなんでも経費で落とせる?よくある勘違いと判断基準を解説
責任の範囲を限定できる
個人事業主は無限責任であるため、事業で生じるすべての責任を負います。
たとえば、仕入代金の未払いや借入金の返済、税金の滞納などが発生すれば、私財をなげうってでも支払わなければなりません。
一方、法人化すれば、責任の範囲を出資額までに限定できます。
法人を株式会社や合同会社で設立した場合、倒産したとしても、出資した額以上の責任を負う義務は発生しないため、個人の財産まで影響が及びません。
なお、合名会社や合資会社で法人を設立した場合、無限責任を負う必要があるため注意が必要です。
また、金融機関から融資を受ける際に経営者保証が条件となっている場合、たとえ株式会社や合同会社であっても、経営者個人が無限責任を負う形になるため注意しましょう。
以上のように、法人化によって責任の範囲を限定できるため、資産を防衛する観点からみても法人化は有効な選択肢の1つです。
参考:J-Net21(有限責任と無限責任について教えてください。)
参考:中小企業庁(経営者保証)
関連記事:個人事業主の法人成り|適切なタイミングから注意点まで解説
赤字を最大10年まで繰り越せる
青色申告を行っている個人事業主の場合、最大3年間、赤字を繰り越して翌年以降の課税所得から控除できます。
一方、法人化した場合、赤字を繰り越せる期間が最大10年に延びます。
赤字の繰り越し期間が長いほど、高い節税効果を期待できるため、個人事業主と比べるとメリットは大きいです。
なお、法人化して上記の制度を適用する場合、本店所在地を所轄する税務署に青色申告の承認申請書を提出する必要がありますので、手続きを忘れずに行いましょう。
青色申告書の承認申請については、国税庁のホームページをご参照ください。
参考:国税庁(No.2070 青色申告制度)
参考:国税庁(No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除)
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個人事業主から法人化した場合のデメリット
本項目では、個人事業主から法人化した場合のデメリットについて解説します。


上記のような不安を抱えている個人事業主の方は、本項目を参考にしてみてください。個人事業主から法人化した場合のデメリットは、次のとおりです。
- 法人を設立するのに費用がかかる
- 機関設計に専門知識が求められる
- 経理や税務会計に関する業務が複雑になる
- 法人住民税の均等割は赤字でも課税される
- 社会保険に加入しなければならない
それでは、順番に見ていきましょう。
法人を設立するのに費用がかかる
法人を設立するのに費用がかかる点は、法人化で生じるデメリットの1つです。最低でも発生する費用は、下表のとおりです。
項目 | 株式会社の場合 | 合同会社の場合 |
登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
定款認証の手数料 | 3万円 | 0円(定款認証が不要なため) |
定款にかかる印紙税額 | 4万円(電子定款であれば不要) | 4万円(電子定款であれば不要) |
定款謄本の交付手数料 | 2,000円程度 | 0円(定款認証が不要なため) |
合計 | 22万円程度 | 10万円程度 |
株式会社と比べると合同会社の方が低コストで設立できますが、社会的な信用度の面で劣る傾向があります。
参考:国税庁(No.7191 登録免許税の税額表)
参考:日本公証人連合会(9-4 定款認証)
参考:国税庁(課税される定款の範囲)
参考:国税庁(印紙税額の一覧表|第1号文書から第20号文書まで)
参考:法務省(株式会社の設立手続〔発起設立〕について)
参考:法務省(合同会社の設立手続について)
参考:独立行政法人経済産業研究所(ようやく浸透した日本版LLC)
関連記事:あえて法人化しない理由とは?したほうがいいケースも解説
機関設計に専門知識が求められる
法人化した場合、会社内部の仕組みを構築するために、機関設計を行わなければなりません。
たとえば、株主総会や取締役会などの意思決定機関を設置し、定期的に会議を開催する必要があります。
取締役会を設置する場合、3名以上の取締役と監査役1名が必要です。監査役は経営が法令に則って行われているかどうかを確認する役割を担います。
なお、取締役が1名の法人には取締役会がないため、原則として、監査役の選任は不要です。ただし、取締役会を設置しないケースでは、下記の点に注意が必要です。
取締役会を設置しない会社では、たとえば株式の分割など、会社に関する一切の事項の決定権限は株主総会が有することになります。また、業務監査権限をもつ監査役が設置されていない場合には、株主に一定の業務監査の権限が付与されます。そのため、外部の株主がいる場合には、会社運営が行いにくくなることも考えられます。
引用:J-Net21(取締役を1人にした場合の影響と手続きについて教えてください。)
参考:J-Net21(監査役を置かなくてもよい条件について教えてください。)
参考:J-Net21(取締役会はどれくらいの頻度で開けばよいのでしょうか?)
参考:J-Net21(株主が1人の株主総会について教えてください。)
参考:J-Net21(株主総会の招集手続きについて教えてください。)
参考:e-Gov(会社法 第三百三十一条 取締役の資格等)
参考:e-Gov(会社法 第三百二十七条 取締役会等の設置義務等)
参考:e-Gov(会社法 第三百八十一条 監査役の権限)
関連記事:法人化で後悔したくない!失敗しないコツを税理士が解説
経理や税務会計に関する業務が複雑になる
法人化により経理や税務会計に関する業務が複雑になる点はデメリットです。個人事業主は確定申告のみでしたが、法人化すると決算が加わります。
決算では貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成しなければなりません。なお、株式会社の場合、決算公告が義務付けられています。
また、従業員を雇用した場合、源泉徴収や年末調整、社会保険などに関する業務も追加されます。
以上のような専門知識が求められる業務を、自力で行うのは困難であると判断し、税理士へ依頼する経営者の方も多いです。
しかし、税理士への依頼費用が、資金繰りを圧迫してしまうケースもあります。
参考:e-Gov(会社法 第四百三十五条 計算書類等の作成及び保存)
参考:e-Gov(法人税法 第七十四条 確定申告)
参考:J-Net21(会社法上の計算書類について教えてください。)
参考:e-Gov(会社法 第四百四十条 計算書類の公告)
参考:中小企業庁(「決算公告」は、どのように取り扱いますか?)
参考:J-Net21(源泉徴収の基礎知識)
参考:国税庁(令和6年分 年末調整のしかた|年末調整とは)
関連記事:顧問税理士とは?顧問契約の必要性・メリットや注意点を解説
法人住民税の均等割は赤字でも課税される
法人住民税の均等割は、下記のような性質を持つため、赤字でも課税されるので注意が必要です。
均等割は赤字の法人も払わなければならないということです。言い換えると、均等割は、法人がどれだけ儲けたかに関係なく、地域社会の一員として支払う会費という性格が強いといえます。
引用:総務省(地方税制度|法人住民税)
下表のとおり、最低でも7万円の負担が発生します。
個人事業主で赤字の場合、個人住民税は発生しないため、法人住民税の均等割を売上に関係なく負担しなければならないのは、法人化で生じるデメリットの1つです。
法人化を検討する際は、以上のような税負担も考慮に入れながら判断していきましょう!
関連記事:法人成りのベストタイミングはいつ?後悔しない会社設立時期の選び方
社会保険に加入しなければならない
法人化した場合、社長1人だけの会社であっても、社会保険に加入しなければなりません。
社会保険料は労使折半で負担するため、従業員を雇用した場合、毎月の固定費として資金繰りを圧迫するおそれがあります。
また、下表のとおり、役員報酬を高く設定してしまうと、社会保険料が高額になるため注意しましょう。
引用:全国健康保険協会(令和7年3月分〔4月納付分〕からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|東京都)
一方で、社会保険の加入によって、将来の年金受給額が増えたり、傷病手当金の支給を受けられたりするなどのメリットもあります。
社会保険のコストだけに注目するとデメリットにみえますが、長期的な目線でみると価値があると判断する経営者の方も多いです。
以上を踏まえて、法人化の検討を進めましょう。
参考:地方厚生局(社会保険〔厚生年金保険・健康保険〕への加入手続はお済みですか?)
参考:厚生労働省(法人の代表者又は業務執行者の被保険者資格について)
参考:裁判所(昭和37(ネ)99 行政処分無効確認等請求事件)
参考:厚生労働省(社会保険加入のメリット)
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個人事業主が法人化で後悔しない決算月の決め方
法人の決算月は自由に決められ、所定の手続きを行えば、あとから変更もできます。ただし、1年を超える長さには設定できませんので注意が必要です。
節税効果や業務効率などを考慮に入れながら決算月を決めましょう。
前々年の課税売上高が1,000万を超え、消費税の納税義務が発生するタイミングに合わせて法人化した場合、資本金が1,000万円未満であれば、1〜2期目は消費税の納税義務が免除されます。
上記のため、法人設立の12ヶ月後に決算月を設定すれば、消費税の納税義務が免税される期間を最大化できます。
なお、決算月が事業の繁忙期と重なってしまうと、本業に支障をきたすだけでなく、決算業務でミスが生じるおそれがあるため注意しましょう。
決算月は事業の閑散期に設定するのが理想です。
決算月の決め方や変更方法などについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:【失敗しない】決算期の決め方|変更方法から調べ方まで解説
参考:国税庁(C1-8 異動事項に関する届出)
参考:e-Gov(法人税法 第十三条 事業年度の意義)
参考:e-Gov(法人税法 第十五条 事業年度を変更した場合等の届出)
参考:国税庁(消費税のしくみ)
参考:国税庁(No.6501 納税義務の免除)
参考:国税庁(インボイス制度について)
参考:国税庁(No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)
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個人事業主の法人化に関するよくある質問
最後に、個人事業主の法人化に関するよくある質問を紹介します。
内容は随時追記します。
法人化で後悔するケースはありますか?
期待していた節税効果が得られなかったり、想定外の負担が発生したりした場合、法人化を後悔する経営者の方もいらっしゃいます。
また、決算書の作成や税務申告などの経理や税務会計に関する業務が、個人事業主と比べると手間がかかるため、本業の時間が削られてしまうおそれもあります。
予想外の問題に直面した場合に後悔するケースが多いため、法人化を検討している個人事業主の方は、事前に十分なシミュレーションを行っておきましょう。
法人化で後悔や失敗しないコツについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:法人化で後悔したくない!失敗しないコツを税理士が解説
法人成りで個人事業主を廃業しないデメリットはありますか?
法人成りで個人事業主を廃業しないデメリットは、資金調達と税務の面で不利になる点です。
上記のようなケースでは、社会的な信用度の低下を招いたり、資金調達の場面で不利になったりするおそれがあります。
また、法人と個人事業主の両方で納税義務が生じるため、経理や税務会計に関する業務の手間が増えるのもデメリットの1つです。
法人成りで個人事業主を廃業しないデメリットについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:法人成りで個人事業主を廃業しないデメリットとメリットを解説
関連記事:法人成りで個人事業主の廃業届を提出する必要性やタイミングを解説
法人化を検討するべき年収の目安はありますか?
年収が800万円を超える見込みがある個人事業主の方は、税負担の観点から法人化を検討するべきタイミングです。
繰り返しになりますが、所得税では超過累進税率が採用されているため、課税所得が増えるほど税負担も重くなる傾向があります。
一方、法人税では800万円以下の課税所得に対して15%、年800万円を超える課税所得に対して23.20%の税率がかかるため、所得税と比べると税負担が緩やかです。
下表は課税所得800万円の場合で、所得税と法人税の税額を比較したものです。
項目 | 計算式 | 合計 |
①所得税 | 8,000,000円 ✕ 23% ー 636,000円 | 1,204,000円 |
②法人税 | 8,000,000円 ✕ 15% | 1,200,000円 |
① ー ② | 4,000円 |
上表のとおり、所得税の方が税負担が多くなるため、課税所得が800万円を超えるラインが法人化を検討する1つの基準であるといえます。
なお、法人化を検討するべき年収の目安については、本記事の個人事業主が法人化を検討するべきタイミングの項目もご参照ください。
参考:国税庁(所得税のしくみ)
関連記事:【法人版】節税対策の裏ワザ|手元により多くの資金を残す方法
個人事業から法人化した場合に活用できる助成金はありますか?
制度の名称 | 説明 |
キャリアアップ助成金 | 非正規雇用労働者の正社員化や従業員の待遇改善を行った場合に支給される |
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース) | ・雇用機会が不足している地域に新たな事業所を設置し、地域住民を雇用する場合に支給される ・事業所の設置費用や雇用人数に応じて、最大3回まで支給が行われる |
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) | ・職業経験や技能が不足している求職者を、一定の期間、試行雇用した場合に支給される ・原則、支給額は1人につき月額4万円 |
受給要件や申請手続きは助成金ごとに異なるため注意が必要です。
なお、各都道府県の創業者向け給付金については、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しているJ-Net21のページをご参照ください。
参考:厚生労働省(キャリアアップ助成金)
参考:厚生労働省(地域雇用開発助成金|地域雇用開発コース)
参考:厚生労働省(トライアル雇用助成金|一般トライアルコース)
参考:ミラサポplus(補助金・助成金 中小企業支援サイト)
関連記事:日本政策金融公庫の融資審査を確実に通すためのチェックポイント6選
法人化した場合の税金シミュレーションはどのように行えば良いですか?
法人化した場合の税金シミュレーションは、個人事業主と法人それぞれで納める税目を整理したうえで、現時点の課税所得で計算して比較する方法が有効です。
個人事業主と法人それぞれで納める税目は、主に下表のとおりです。
比較項目 | 税目 |
個人事業主 | ・所得税 ・復興特別所得税 ・個人住民税 ・個人事業税 ・消費税および地方消費税 |
法人 | ・法人税 ・地方法人税 ・法人住民税 ・法人事業税 ・特別法人事業税 ・消費税および地方消費税 |
具体的な税額の計算については、本記事の課税所得800万円のケースにおける節税効果のシミュレーションの項目をご参照ください。
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個人事業主と法人化、どちらが得ですか?
個人事業主と法人化のどちらが得かについては、売上や事業の規模によって判断が分かれます。
また、下表のように個人事業主と法人それぞれが持つメリットとデメリットを、精査していく必要があります。
比較項目 | 個人事業主のままの場合 | 法人化した場合 |
税金 | 所得税は超過累進税率のため、課税所得が増えるほど税負担も重くなる | ・法人税の税率は一律で、課税所得800万円以下の部分に15%、800万円を超える部分に23.20% ・個人事業主と比べると経費計上できる範囲が広い |
加入する保険制度 | ・国民健康保険と国民年金 ・保険料は比較的安いが、保障は手薄 |
・健康保険と厚生年金 ・保険料は労使折半で負担 ・保険料は高額になりやすいが、保障は手厚い |
開業 | 比較的簡単 | 手間とコストがかかる |
廃業 | 比較的簡単 | 手間とコストがかかる |
経理や税務会計に関する業務 | 比較的簡単 | 手間とコストがかかる |
社会的な信用度 | 低い | 高い |
課税所得が800万円を超えるあたりから、法人税を適用した方が税負担の軽減を期待できるため、売上規模が拡大している個人事業主の方は、法人化を検討しましょう。
個人事業主と法人化のどちらが得かについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:会社と個人事業主はどっちが得?違いやメリット・デメリットを比較して法人化を検討
関連記事:法人税と所得税ならどっちが得?税金面で法人化すべきケースを解説
あえて法人化しないで個人事業主のままでいる方にはどんな理由がありますか?
あえて法人化しないで個人事業主のままでいる理由として、売上が安定していないケースや業務負担の増加を避けたいケースなどが挙げられます。
法人化する場合、登録免許税や定款認証の手数料などの設立費用が発生し、設立の手続きには専門知識も必要です。
また、確定申告に加えて決算が必要になるため、経理や税務会計に関する業務が煩雑になるおそれがあります。
上記のため、税理士へ依頼するケースも多いですが、依頼費用や顧問料などの負担が発生します。
なお、あえて法人化しない理由については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:あえて法人化しない理由とは?したほうがいいケースも解説
参考:国税庁(No.7191 登録免許税の税額表)
参考:日本公証人連合会(9-4 定款認証)
参考:e-Gov(法人税法 第七十四条 確定申告)
参考:J-Net21(会社法上の計算書類について教えてください。)
法人化するタイミングは何月がおすすめですか?
法人化するタイミングは、12〜翌年1月にかけて行うのがおすすめです。
なお、事業の繁忙期に重なるタイミングでの法人化は、運営に支障が出るおそれがあるため避けましょう。
決算月の決め方や変更方法などについては、下記の記事で詳しく解説しています。
関連記事:【失敗しない】決算期の決め方|変更方法から調べ方まで解説
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まとめ
今回は、個人事業主が法人化するタイミングについて、節税シミュレーションを交えながら解説しました。
個人事業主が法人化を検討するべきタイミングは、次のとおりです。
- 課税売上高が1,000万円を超えた
- 課税所得が800万円を超えそう
- 課税所得が900万円以上
- 事業規模を拡大したい
実際に課税所得800万円のケースで節税効果をシミュレーションしてみたところ、個人事業主のままの場合と比べると法人化した場合の方が、33万円ほど税負担が軽くなるのが明らかになりました。
また、個人事業主から法人化した場合のメリットは、以下のとおりです。
- 社会的な信用度が向上する
- 経費計上できる範囲が拡大する
- 責任の範囲を限定できる
- 赤字を最大10年まで繰り越せる
なお、個人事業主から法人化した場合のデメリットは、下記のとおりです。
- 法人を設立するのに費用がかかる
- 機関設計に専門知識が求められる
- 経理や税務会計に関する業務が複雑になる
- 法人住民税の均等割は赤字でも課税される
- 社会保険に加入しなければならない