こんにちは、スタートアップ・ベンチャー企業に強い税理士の植村拓真です。
スタートアップが事業を急成長させるためには、最初に大きく投資する必要があります。
スタートアップにとって資金調達は、事業の成長を左右する重要なミッションです。
ただ、資金調達にはさまざまな種類があり、企業の成長段階に合った手段を実施する必要があります。
手段ごとにリスクの大きさが異なるため、とにかく実施すればいいというわけではありません。
そこで今回は、スタートアップが資金調達で失敗しないコツと注意点についてお話しします。
資金調達の失敗はスタートアップの失敗に繋がりますので、自社のラウンドに合った手段を選択して成功させましょう。
弊所では、スタートアップ・ベンチャーの資金調達はもちろん、
- 会社設立時の手続き
- 資本政策のアドバイス
- 経理・会計業務の代行や給与計算
- 税務相談や節税対策
- 決算申告
など
さまざまなサポートを行なっております。
売上が10億を超える規模のスタートアップ・ベンチャーの支援実績が多数ありますので、安心してご相談ください。
(※実績はお問い合わせください)
スタートアップにおいて資金調達の成功は必要不可欠
スタートアップとは、革新的なアイデアや技術でイノベーションを起こし、事業を急成長させてイグジットを目指す企業のことです。
事業を軌道に乗せるために、以下のようなさまざまな費用を多く投入します。
- 設備や技術への投資
- 人材の獲得と育成
- 広告宣伝費
など
しかし、設立したばかりのスタートアップは売上や利益が小さいため、自社資金のみで事業を軌道に乗せるための費用を用意するのは困難です。
かといって、新興企業は事業推進にスピード感を求められるので、十分な自社資金が貯まるのを待っている余裕もありません。
以上の理由から、スタートアップにおいて資金調達の成功は必要不可欠であるといえます。
スタートアップの資金調達には、さまざまな手段があります。主な手段は以下のとおりです。
- 銀行融資
- 助成金や補助金の活用
- クラウドファンディング
- エンジェル投資家からの投資
- ベンチャーキャピタルからの投資
スタートアップの資金調達を実施する方法やタイミングは、ビジネスモデルや成長段階、市場の状況などによって異なります。
事前に資金調達の特徴を調べて、自社に合った手段を用いて事業拡大を加速させましょう。
【ラウンド別】スタートアップにおすすめの資金調達
スタートアップが資金調達を検討する際、ラウンドについて理解しておく必要があります。
ラウンドは、投資家がスタートアップに出資する際の指標で、企業の現状を評価するために用いられる用語です。
投資家はスタートアップに投資する際、企業が大きく成長してIPOまたはM&Aといったイグジットによって利益を得られることを期待します。
そして、スタートアップが現在どの投資ラウンドに該当するかを確認して、利益だけでなくリスクも考慮したうえで投資するかどうかを判断します。
そのため、スタートアップは自社の資金調達ラウンドに合わせて、資金調達の方法を選択しなければなりません。
そこで本項目では、スタートアップにおすすめの資金調達をラウンド別に紹介します。
①エンジェルラウンド(プレシード)
エンジェルラウンドとは、創業前後でアイデア段階のスタートアップの投資フェーズを指す言葉です。
スタートアップの最初期のラウンドであり、プレシードとも呼ばれています。
エンジェルラウンドのスタートアップは、まだ具体的な製品やサービスを開発しておらず、メンバーや顧客がほとんどいない状態です。
数百万~数千万円程度の資金を調達して、主に会社設立費や製品・サービスの開発に向けた人材確保などに使用します。
エンジェルラウンドのスタートアップの主な資金調達先は、以下のとおりです。
- エンジェル投資家
- インキュベーター
- 日本政策金融公庫
他のラウンドほど多額の資金を調達する必要がないため、エンジェル投資家から数百万~数千万円の資金を調達したり、インキュベーターから経営資源などの提供を受けます。
また、原則返済不要の補助金や助成金を活用するのも一つの手です。
弊所でも設立直後のスタートアップの顧問先様から、日本政策金融公庫の審査突破、助成金や補助金などを活用するうえでのサポートをご依頼いただくケースが多いです
②シードラウンド
シードラウンドは、ビジネスの大枠が決まっているスタートアップの投資フェーズです。
本ラウンドのスタートアップでは、プロトタイプの開発や市場調査などが行われています。
そして、プロトタイプの開発や市場調査、人材雇用などを行うために、数千万~数億円程度の資金を調達するケースが多いです。
資金調達の方法としては、主に以下を活用できます。
- 新創業融資制度
- クラウドファンディング
- 投資家からの出資
新創業融資制度は日本政策金融公庫が提供する融資制度で、審査に通りやすいうえに低金利です。
ただし、審査完了までに3週間~1ヶ月ほどかかるので、計画を立てて申し込み手続きを行いましょう。
新創業融資制度はこちら※日本政策金融公庫のホームページに移動します)
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて自社を応援したいと感じた支援者から資金提供を受ける手法です。
不特定多数の人から資金提供を受けられるため、多くの資金を調達できるケースもあります。
また、シードラウンドのスタートアップの主な資金調達先として、先ほど紹介したエンジェル投資家に加えてシード投資家もあります。
シード投資家とは、名前の通りシードラウンドのスタートアップに投資している投資家です。
シードラウンドのスタートアップはまだまだ社歴が短く事業リスクが高いため、資金調達の難易度が高いです。
資金調達の方法を選ぶ際は投資家やクラウドファンディングだけでなく、政府系金融機関や地方自治体などの融資制度も選択肢に加えておきましょう。
③プレシリーズA・シリーズAラウンド
シリーズAラウンドはビジネスが立ち上がり、プロトタイプが完成して製品・サービスの提供が始まっているスタートアップの投資フェーズです。
スタートアップの事業の方向性が固まっており成長性が高まりつつあるため、資金調達元はエンジェルラウンドやシードラウンド時よりも資金を投資しやすい傾向があります。
シリーズAラウンドのスタートアップは数億~数十億円程度の資金を調達して、主に製品・サービスのブラッシュアップや設備投資、人件費、広告費などに使用します。
主な資金調達先は以下の2つです。
- ベンチャーキャピタル(VC)
- コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)
VCは高成長が見込まれる未上場企業に対して出資を行う会社です。
そして、CVCは事業会社が自己資金を基にファンドを組成して、未上場企業に投資する組織を指しています。
シリーズAラウンドのスタートアップはすでに実績があるため、主な資金調達先の規模が個人投資家からVCやCVCへと大きくなります。
④プレシリーズB・シリーズB
シリーズBラウンドは、製品・サービスが市場に評価されて、事業が軌道に乗り始めたスタートアップの投資フェーズです。
資金調達先から黒字化が求められる段階であり、積極的に設備投資、販売促進、新規顧客開拓、人材確保、製品・サービス改良などに資金を投入して、売上を伸ばす段階でもあります。
シリーズBラウンドのスタートアップの資金調達では、主にベンチャーキャピタル(VC)から十数億~数十億円程度を調達するケースが多いです。
他にも、以下のような資金調達先があります。
- 日本政策金融公庫
- 民間の銀行
- CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)
より多くの資金が必要な場合、複数のVCから出資を募るケースもあります。
⑤シリーズCラウンド
シリーズCラウンドは、黒字が安定しているスタートアップの投資フェーズです。
資金調達先はIPOやM&Aなどのイグジットを意識しているため、自社に合ったイグジットを見極める必要があります。
そのうえで、シリーズCラウンドのスタートアップは、
- 市場の動向やニーズ変化などの対応
- 安定した黒字経営
- 事業規模の拡大
- 国内外での事業展開
など
上記のために追加で資金調達を実施する必要があります。
資金調達を必要としない企業もありますが、市場の動向やニーズの変化に対応しきれずに赤字に転じる恐れがあるため、資金調達の需要は高いです
シリーズCラウンドのスタートアップの資金調達は、主にベンチャーキャピタル(VC)やプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)、民間の銀行から数十億円程度を集めます。
⑥シリーズDラウンド
シリーズDラウンドは、組織が確立して安定した収益を上げているスタートアップの投資フェーズです。
本ラウンドのスタートアップではイグジットに向けた具体的な検討が行われ、事業規模の拡大や関連事業の開発に取り組むケースが多いです。
そのため、上場準備チーム組織や管理機能強化のための人材増員が求められます。
そんなシリーズDラウンドのスタートアップでは、十分な利益や売上を出すために数十億円程度の資金調達が実施されます。
主な資金調達先は、ベンチャーキャピタル(VC)やプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)です。
本ラウンドでの資金調達は事業成長とイグジット戦略の成功に寄与するため、適切なパートナー選びや資金使途の明確化が重要です。
関連記事:スタートアップ支援に強い税理士の選び方|費用や注意点も解説
スタートアップの資金調達のリスクと注意点
スタートアップにおすすめの資金調達を紹介しましたが、実施する際にリスクや注意点もあるので紹介しておきます。
本項目の内容を確認して、より安全に資金調達を実施して成功させましょう。
①投資家から不利な条件を提示される
資金調達は経営者にとって、スタートアップの成功がかかっている重要な交渉の場です。
投資家を1社のみにしてしまった場合、競争環境がないので、投資家から不利な条件を提示される恐れがあります。
契約書に自社にとって不利な条項を盛り込まれたり、本来よりも企業価値を低く評価されたりするケースもあるため、複数人の投資家と資金調達の交渉を進めましょう。
複数人の投資家と資金調達の交渉を進めて最適な出資条件を比較検討すれば、自社に有利な資金調達を実施できます。
②投資家に株式を渡し過ぎて経営権を握られてしまう
初期段階で投資家に株式を過剰に放出すると、経営者の持ち株比率が低下して今後の資金調達に悪影響を与えてしまう恐れがあります。
投資家の中には、持ち株比率の低さを理由に投資を見送るケースもあるので注意しましょう。
投資家が株主になると、自社の経営に干渉してくるケースもあります。
そして、投資家に株式を渡し過ぎてしまうと、経営権を握られてしまうリスクがあります。
投資家の出資比率が 50%以上だと、定款に記載がなければ取締役を解任できる権利が与えられてしまうので注意しましょう。
③資金調達が完了するまでに時間がかかる
スタートアップにおいては、資金の確保が急務となるケースがあります。
資金調達方法によって完了までにかかる時間が異なるので、資金調達方法は緊急度を考慮して選択しましょう。
たとえば、日本政策金融公庫や地方自治体の融資では約1ヶ月、信用金庫では1~3ヶ月程度の時間がかかります。
資金調達を実施する際は、資金が手元に入るまでの期間を事前に確認して、自社の状況に適した資金調達方法を選択しましょう。
④金融機関は審査が厳しい
金融機関で資金調達を実施するには、審査の通過が必須です。
そして、調達した資金は後ほど返済しなければならないため、審査時には返済能力が重視されます。
自社の返済力が金融機関から不十分だと判断されないように、現実的な事業計画や返済計画を策定しましょう。
弊所は国から経営革新等支援機関の認定を受けておりますので、資金調達時に専門家が必要な際は安心してご相談ください!
⑤金融商品取引法の違反に注意
日本において資金調達を広く募る場合、財務局から投資家保護のために有価証券届出書や通知書の提出を求められます。
調達額によっては、有価証券報告書の継続開示が必要なケースもあります。
しかし、時間や資金が限られたスタートアップが上記の手続きを進めるのは困難です。
ただ、違反すると金融商品取引法に触れる恐れがあります。
上記のようなリスクを回避するために、資金調達は私募形式で行い、ベンチャーキャピタル(VC)などの投資家を対象にしましょう。
私募形式では一般投資家に広く募集をかけず、投資家との取引に限定されるため、法令遵守の負担を軽減できます。
また、起業家が法令遵守のリスクを避けるには、事前に法的知識を身につけることが重要です。
適切な資金調達方法を選択して法的リスクを回避すれば、スタートアップの失敗回避と成功につながります。
資金調達後に陥りやすい失敗パターン
最後に、資金調達後にスタートアップが陥りやすい失敗パターンを紹介します。
資金調達後に失敗してしまっては意味がありませんので、本項目の内容も確認しておきましょう。
①固定費を増やしすぎてしまう
スタートアップでは、固定費を考慮して次の資金調達が必要な時期を予測することが重要です。
しかし、資金調達が予想以上に難航して、オフィスなどの固定費が大きな負担となるケースもあります。
資金調達が間に合った場合でも、次回のオフィス移転時には無闇に高い物件を選ばず、他のことに資金を振り向けましょう。
②人材確保に大金を投資したがすぐに辞められた
人材紹介サービスで高年収に設定して優秀な人材を獲得できたものの、入社後に辞められてしまうケースがあります。
そして、管理業務のみに専念して実務に関与しない人が現れて、事業成長が停滞してしまうケースもあります。
上記のような状況を回避するためには、自社の成長フェーズに応じて適切な採用戦略を立てることが重要です。
自社のビジョンやミッションを明確にして、現在の段階に最適な人材像を明らかにしたうえで、採用活動を進めましょう。