こんにちは、個人事業主やフリーランスに強い税理士の植村拓真です。
弊所では、これから開業される、もしくは開業されて間もない個人事業主やフリーランスの方からのご相談によく応じています。
特に、以下のようなご質問やご相談をいただくケースが多いです。
本記事を読んでいる方の中にも、上記のように考えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、個人事業主に税理士はいらないと言われる理由について解説します。
いつから税理士が必要になるのかについてや、税理士を選ぶ際の要点についても合わせて解説しますので、税理士への依頼を検討されている方は参考にしてみてください。
個人事業主に税理士はいらないと言われる理由
本項目では、個人事業主に税理士はいらないと言われる理由について解説します。
主な理由は以下の3つです。
- クラウド会計ソフトがあるから
- 分からない事柄はインターネットで調べられるから
- 税理士とのやり取りが面倒だから
上記について順番に見ていきましょう。
クラウド会計ソフトがあるから
個人事業主に税理士はいらないと言われている理由の1つとして、クラウド会計ソフトの普及が挙げられます。
クラウド会計ソフトが普及する以前は、経理や税務会計に関する業務負担を軽減したい場合、税理士へ依頼するのが一般的でした。
近年、費用や機能面で気軽に利用できるクラウド会計ソフトが普及した結果、わざわざ税理士へ依頼しなくても、確定申告に関わる業務負担を軽減できるようになりました。
しかし、クラウド会計ソフトを使用しても、仕訳のルールをきちんと理解していない場合、誤った決算書や確定申告書ができあがってしまうおそれがあるので注意しましょう。
意図していなかったとしても、誤った決算書や確定申告書を提出するのは、税務調査に入られるリスクとなります。
上記のように、クラウド会計ソフトがあれば個人事業主に税理士はいらない、と一概にはいえない側面があります。
分からない事柄はインターネットで調べられるから
個人事業主に税理士はいらないと言われている要因として、経理や税務会計に関する業務で分からない事柄があった場合、インターネットで調べて解決できる環境になったのも挙げられます。
昔は分からない事柄を調べる際、下記のような時間と手間がかかる手段しかありませんでした。
- 書籍を参考にする
- 国税局や税務署といった国の機関に問い合わせる
- 税理士に質問しに事務所までいく
しかし、今はインターネットが発達したため、検索をかければ、欲しい情報がいつでもすぐ手に入る環境になりました。
特に、税理士が運営しているブログやYouTubeなどのメディアが増え、経理や税務会計に関して分かりやすく解説されているコンテンツも充実しています。
以上のように、必要な情報がいつでもすぐ手に入る状況になったため、個人事業主に税理士はいらないと言われ始めるようになりました。
税理士とのやり取りが面倒だから
税理士とのやり取りが面倒だからという理由で、個人事業主に税理士はいらないと判断し、税理士へ依頼しない方も一定数います。
依頼者の負担ができるだけ少なくなるよう配慮しながら対応してくれる親切な税理士が多い一方で、親身になって対応してくれない税理士が僅かながらいるのも事実です。
税理士との相性が合わなかったり、税理士からのレスポンスが遅かったりする場合、依頼した側はストレスを抱えてしまいます。
上記のようなストレスを避けるために、税理士はいらないと判断される個人事業主の方もいらっしゃいます。
もし、税理士への依頼を検討されている方は、慎重に税理士を選んでいきましょう。
個人事業主が税理士へ依頼するメリット
本項目では、個人事業主が税理士へ依頼するメリットについて解説します。
個人事業主が税理士へ依頼するメリットはさまざまですが、代表的なものとして、次の6つが挙げられます。
- 経理や税務会計に関する事務作業の手間が省ける
- 確定申告や帳簿付けでミスをなくせる
- 税務調査に適切な対応を行ってもらえる
- 税務や節税に関するアドバイスがもらえる
- 経営や資金調達に関する相談ができる
- 人件費の削減ができる
1つずつ順番に見ていきましょう。
経理や税務会計に関する事務作業の手間が省ける
個人事業主が税理士へ依頼するメリットの1つ目は、経理や税務会計に関する事務作業の手間が省けることです。
経理や税務会計についての知識がない場合に懸念されるのは、経理や税務会計に関する業務に時間がかかり、事業の生産性を損なわれてしまうリスクです。
たとえば、自力で領収書を整理したり帳簿を作成したりするのは、事業の規模が拡大するにつれて、かかる労力も増えます。
特に、確定申告の時期は、帳簿作成や書類整理に追われるケースが多いです。
しかし、税理士に依頼すれば、ご自身が事業に集中している裏で経理や税務会計に関する業務が進められているため、確定申告の時期に焦らなくて済みます。
非生産的な作業から解放され、本業に集中できるのはメリットの1つです。
上記の結果、事業規模の拡大や増益のスピードアップも期待できます。
確定申告や帳簿付けでミスをなくせる
個人事業主が税理士へ依頼するメリットの2つ目は、確定申告や帳簿付けでミスをなくせることです。
確定申告や帳簿付けを税理士に依頼すれば、正確な処理を実施してもらえるため、多くのリスクを回避できます。
経理や税務会計についての専門知識がない状態で確定申告を行った場合の懸念点は、売上や仕入の計上を誤るおそれです。
申告漏れや納税額の計算ミスは税務調査で指摘され、無申告加算税や過少申告加算税などの追徴課税、延滞税を課されるリスクが高まります。
予期せぬ追徴課税や延滞税は、資金繰りに影響を及ぼすおそれもあります!
一方、税理士に依頼すれば、正確な確定申告や帳簿付けができるので安心です。
上記のおかげで、ペナルティが課されるトラブルが回避でき、過不足なく納税できます。
本業に専念しながら確定申告をスムーズに終えるためにも、税理士への依頼は有効な手段の1つです。
参考:国税庁(No.9205 延滞税について)
参考:財務省(加算税の概要)
税務調査に適切な対応を行ってもらえる
個人事業主が税理士へ依頼するメリットの3つ目は、税務調査に適切な対応を行ってもらえることです。
税務調査は、開業して5年以内に1度は実施されるケースが多く、突然通知が来る場合もあります。
税務に関する知識が不足している場合に懸念されるのが、税務調査官への説明が不十分となり、追徴課税の対象となるリスクです。
税理士を依頼すれば、税務調査の準備や適切な受け答えを任せられるため安心です。
税理士は税務調査官の質問の意図を的確に把握し、税法に基づいた説明ができるため、追徴課税を回避したり、減額できたりするケースもあります。
また、税務調査官の主張が間違っている場合でも、税法に基づいた反論ができ、納税者に有利な結果を引き出せる場合もあります。
さらに、税理士は税務調査にあたって必要な書類の準備や、税務調査官が重点的に確認する項目へのアドバイスもしてくれるため心強いです。
税理士に依頼すれば、税務調査における不備のリスクが減り、税務調査に適切な対応ができます。
関連記事:税務調査における修正申告・更正とは?違いについて税理士が解説
税務や節税に関するアドバイスがもらえる
個人事業主が税理士へ依頼するメリットの4つ目は、税務や節税に関するアドバイスがもらえることです。
税理士は税制に関する最新情報や適切な節税対策について、常に専門知識をアップデートしています。
税理士と契約すれば、経理や税務会計に関する疑問や、節税対策について、気軽に相談できる環境が整えられます。
上記のようなケースが生じた際、周りに適切なアドバイスをくれる人がいない場合、経理や税務会計上、誤った処理をしてしまうおそれがあります。
税理士と契約していれば、所得計算や経費の取り扱い、仕訳に関する疑問にも即座に対応してもらえ、法律に基づいた正確な処理ができます。
また、顧問契約を結んだ場合、ご自身の事業の業績を年単位で把握してもらえ、状況に応じた適切な節税対策を実施してもらえるのも税理士に依頼するメリットの1つです。
経営や資金調達に関する相談ができる
個人事業主が税理士へ依頼するメリットの5つ目は、経営や資金調達に関する相談ができることです。
資金繰りに困った場合や、業績拡大のために設備投資や人員増強を図りたい場合、税理士は財務に関して的確なアドバイスをくれます。
さらに、金融機関の融資審査や、自治体の補助金申請に関するサポートも行ってくれます。
上記の審査や申請には、事業計画書や残高試算表の作成が必要です。
また、税理士と顧問契約を結んでいれば、金融機関からの信用度が向上し、融資の実現確率が高まる利点もあります。
以上のように、経営や資金調達に関するサポートが得られるため、顧問税理士は事業を運営するうえで強力な味方です。
関連記事:日本政策金融公庫の融資審査を確実に通すためのチェックポイント6選
人件費の削減ができる
個人事業主が税理士へ依頼するメリットの6つ目は、人件費の削減ができることです。
事業が成長すると、経理や税務会計に関する業務が煩雑になります。
経理や税務会計に関する業務体制を見直すタイミングが来た際、税理士に依頼するか、社内で経理担当者を雇うかの選択が迫られます。
社内で経理担当者を雇うのは大きなコストです。
たとえば、正社員を雇うと1人あたり月額約20万円、パートでも1人あたり月額約10万円の給料の支払いが生じます。
さらに、上記に加えて、社会保険料や雇用保険料などの負担も発生します。
また、考えられるリスクとして、急な欠勤や突然の退職といった労務面でのトラブルです。
一方、税理士と顧問契約を結んだ場合、社内で経理担当者を雇うよりもコストを抑えられるケースも多く、労務面でのリスクも回避できます。
税理士に依頼すれば、経理や税務会計に関する業務を正確に処理してもらえ、適切な節税対策の提案もしてくれるため、業務の効率化とコスト削減が期待できます。
個人事業主が税理士へ依頼するデメリット
本項目では、個人事業主が税理士へ依頼するデメリットについて解説します。
個人事業主が税理士へ依頼するメリットは数多くある一方で、デメリットが生じるのも事実です。
デメリットを正しく把握したうえで、税理士への依頼を検討しましょう。
個人事業主が税理士に依頼する場合に考えられるデメリットは、次の3つです。
- 税理士への依頼費用がかかる
- 税理士とのやりとりで時間がかかる
- 費用が安いと対応業務が限定されるおそれがある
上記について順番に見ていきましょう。
税理士への依頼費用がかかる
個人事業主が税理士へ依頼するデメリットの1つ目は、税理士への依頼費用がかかることです。
税理士への依頼費用の相場は、顧問料が月額1万〜3万円程度、決算申告のみ丸投げが15万〜25万円程度、確定申告のみ丸投げが5万〜10万円程度です。
一方、クラウド会計ソフトを活用しながら、自力で経理や税務会計に関する業務を行った場合、年間1万〜3万円程度に抑えられます。
コストパフォーマンスの観点では自力で経理や税務会計に関する業務を行う方が経済的です。
しかし、ご自身で経理や税務会計に関する処理を行う場合、手間がかかるうえ、専門知識の不足からミスが発生するリスクも高まります。
上記で懸念されるのは、本業に費やす時間が減ったり、経理や税務会計に関する処理の修正に追加の労力が必要になったりするおそれです。
税理士に依頼すれば、経理や税務会計に関する業務が正確に行われるだけでなく、ご自身が本業に集中できる環境を整えられます。
事業の規模や状況などを加味しつつ、費用対効果を考慮しながら、税理士への依頼を検討しましょう。
税理士とのやりとりで時間がかかる
個人事業主が税理士へ依頼するデメリットの2つ目は、税理士とのやりとりで時間がかかることです。
依頼主と円滑なコミュニケーションができるように配慮しながらやりとりしてくれる税理士もいますが、すべての税理士が配慮できるとは限りません。
また、ごく少数ながら依頼者からの相談に真摯に対応せず、レスポンスが遅かったり、適切なアドバイスを提供しなかったりする税理士もいます。
上記のような理由から、税理士の選定には注意が必要です。
税理士を選ぶ際、サービス内容や実績だけでなく、相談のしやすさや人としての相性、レスポンスの早さなどにも注目しましょう。
相性が合わなかったり、返信が遅かったりする税理士の場合、やりとり自体がストレスとなり、結果的に業務の効率が下がるおそれもあります。
総合的に判断し、ご自身に合った税理士を慎重に選ぶのが大切なポイントです。
費用が安いと対応業務が限定されるおそれがある
個人事業主が税理士へ依頼するデメリットの3つ目は、費用が安いと対応業務が限定されるおそれがあることです。
税理士との契約には、継続的なサポートを受けられる顧問契約と、特定の業務に限定したスポット契約があります。
スポット契約は、確定申告や記帳代行だけを単発で依頼する形で、費用を抑えられるのが特徴です。
しかし、スポット契約はサポートの範囲が限定されているケースが多くあります。
はじめはスポット契約で十分と思っていても、対応が不十分でのちのち追加費用が発生するおそれもあるため、事前の検討が大切です。
たとえば、税理士の訪問がなかったり、頻度が少なかったりします。
上記の場合でも、メールでのやりとりやオンライン会議などで対応できるなら問題ありませんが、サポートの範囲が制限されていて、ご自身に不都合が生じてしまっては本末転倒です。
税理士と契約する際には、見積もり内容をよく確認し、ご自身が依頼したい内容や必要としているサポートが盛り込まれているかをきちんと確かめましょう。
個人事業主が税理士に依頼できる主な業務内容
本項目では、個人事業主が税理士に依頼できる主な業務内容について解説します。
個人事業主が税理士に依頼する際、依頼できる業務について具体的に知りたい方は、本項目を参考にしてみてください。
個人事業主が税理士に依頼できる主な業務内容は下記のとおりです。
- 税務代理
- 記帳代行
- 税務書類作成
- 税務に関する相談
1つずつ順番に見ていきましょう。
税務代理
税務代理は、税務に関する手続き全般を個人事業主に代わって税理士が進めることです。
税務代理の主な業務内容は、次のとおりです。
- 確定申告書の作成および納税地の所轄税務署への提出
- 納税地の所轄税務署からの修正申告や更正処分に対する不服申立ての手続き
- 税務調査への対応
税理士に依頼すれば、税務に関する複雑な手続きをスムーズに進められ、納税地の所轄税務署や市区町村の役所に、ご自身が赴く手間も省けます。
税務代理は税理士にしか許されない業務であり、納税者の権利を守る役割も果たします。
たとえば、税務調査が行われる際、税理士は立ち会ってくれるケースが多いです。
税理士と税務調査官が直接やり取りする方が、ご自身が対応するよりも税務調査を円滑に進められます。
税務に関する不当な更正処分に関しても、税理士に依頼すれば、専門知識を活用しながら納税者の立場を代弁し、必要な申立てができます。
参考:国税庁(2 税理士の業務)
参考:国税庁(税務手続について|税務調査手続)
参考:国税庁(No.7200 税務署長等の処分に不服があるときの不服申立手続)
関連記事:税務調査における修正申告・更正とは?違いについて税理士が解説
記帳代行
記帳代行とは、領収書や請求書などの証憑書類をもとに、売上や経費を計算して帳簿に記入する作業を代行するサービスです。
記帳代行は税理士の独占業務ではないため、行政書士や記帳代行業者にも依頼できます。
しかし、会計ソフトへの仕訳入力の手間を省略する目的だけでなく、税務に関するアドバイスも含めて依頼したい場合は、専門知識がある税理士に依頼する方が安心です。
税務書類作成
税理士には税務書類の作成代行が独占業務として認められています。
税務書類とは、確定申告書や法定調書など、納税地の所轄税務署や役所に提出する必要がある書類を指します。
上記は本来、ご自身で作成が必要ですが、税務に関する専門知識が求められるため、作成の難易度は高い場合が多いです。
また、ご自身で作成する際、税務に関する専門知識の理解が浅い場合、書類作成に多くの時間を要するおそれがあります。
税理士に依頼すれば、確定申告書や法定調書などの作成にかかる手間が省け、正確な書類を代行して作成してもらえるため、ご自身は事業に集中できるメリットがあります。
税務に関する相談
事業を運営するうえで、経営や税務に関してさまざまな悩みや課題に直面します。
たとえば、税務調査への対応や資金調達、法人成りの手続きなどです。
事業が成長する中でぶつかる壁や障害は、税理士に相談すれば、解決できるものも多くあります。
税理士に相談できる内容は、以下のとおりです。
- 法律に沿った適切な節税
- 確定申告の準備や確定申告書の作成
- 税務調査への対応
- 法人成りの準備や法人成りの手続き
- 金融機関に融資を申し込む際のサポート
- 補助金や助成金の申請に関する書類作成やアドバイス
経理や税務会計、財務に関しては専門知識が求められるため、いつでも相談できる環境を整える目的で税理士と顧問契約を結んでおくメリットはあります。
関連記事:個人事業主に顧問税理士はいつから必要?費用相場やタイミングも解説
関連記事:個人事業主の法人成り|適切なタイミングから注意点まで解説
個人事業主は税理士をいつから頼む必要があるか
本項目では、個人事業主は税理士をいつから頼む必要があるかについて解説します。
経理や税務会計に関する業務はご自身で行っても問題ありません。
しかし、自力で対応するのが難しくなるケースもあります。
個人事業主が税理士へ依頼するタイミングとして考えられるのは、次のとおりです。
- 開業するとき
- 課税売上高が1,000万円を超えはじめたとき
- 確定申告のみスポットで依頼したいとき
- 資金調達が必要なとき
- 個人事業主から法人成りするとき
- 事業承継をするとき
1つずつ順番に説明しますので、いつから税理士に依頼しようか迷っている方は参考にしてみてください。
開業するとき
個人事業主が税理士へ依頼するタイミングの1つ目は、開業するときです。
開業時には、開業届や青色申告をする場合の青色申告承認申請書など、納税地の所轄税務署に提出すべき書類が複数あります。
開業時に提出が必要な書類には提出期限が設けられており、期限を守らなかった場合、青色申告ができなくなったり、税務上の優遇措置を受けられなくなったりするおそれがあります。
また、経理や税務会計に関する知識がない状態で、自力で帳簿付けや確定申告を行うのは負担が大きいです。
税理士に依頼すれば、開業や確定申告に関わる必要書類の作成を代行してもらえるだけでなく、会計ソフトの使い方や、経理や税務会計に関する業務の正しい処理についてのアドバイスももらえます。
さらに、開業前に事業のビジョンを税理士と共有すれば、経営面のリスクや課題を検討してもらえ、より計画的に事業をスタートできるのもメリットの1つです。
参考:国税庁(A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続)
参考:国税庁(A1-8 所得税の青色申告承認申請手続)
関連記事:確定申告が全くわからない方へ|やり方や相談先について税理士が解説
課税売上高が1,000万円を超えはじめたとき
個人事業主が税理士へ依頼するタイミングの2つ目は、課税売上高が1,000万円を超えはじめたときです。
課税売上高が1,000万円を超えた場合、消費税の納税義務が生じ、経理や税務会計の処理も複雑化します。
売上や事業経費の拡大に伴って、所得計算も煩雑になるため、早めに税理士に依頼すれば、経理や税務会計に関する業務負担の軽減が期待できます。
税理士に依頼すれば、適切な節税のアドバイスがもらえるのもメリットの1つです。
また、インボイス制度の導入により、課税売上高が1,000万円を超えない場合でも、適格請求書発行事業者として登録すると消費税の納税義務が発生します。
消費税の申告をご自身で行うのが難しく感じる方は、税理士への依頼を検討すると良いでしょう。
インボイス制度について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください!
関連記事:インボイス制度がやばい・ひどい理由|抜け道と対策を解説
関連記事:インボイス制度と法人成り|タイミングから影響と対策まで解説
確定申告のみスポットで依頼したいとき
個人事業主が税理士へ依頼するタイミングの3つ目は、確定申告のみスポットで依頼したいときです。
事業が小規模で、日々の帳簿付けをご自身で行っている場合、確定申告の手続きだけをスポットで税理士に依頼すれば、コストを抑えながら確定申告を行えます。
上記の方法は簿記の知識がある方にとって有効な節約手段ですが、事業規模の拡大や取引先の増加が見込まれる場合は、顧問契約を検討するのがおすすめです。
顧問契約を締結すれば、継続的なサポートが受けられ、事業成長に伴って複雑化する経理や税務会計に関する業務にも対応しやすくなります。
資金調達が必要なとき
個人事業主が税理士へ依頼するタイミングの4つ目は、資金調達が必要なときです。
たとえば、事業拡大に向けて資金調達に悩むような場面で、安心して相談できる税理士がいれば心強いです。
税理士は財務面でのアドバイスを行い、融資の審査を通すにあたってのサポートを行ってくれます。
繰り返しになりますが、融資の審査や補助金の申請には、事業計画書や残高試算表などの作成が必要です。
しかし、税理士のサポートがあればスムーズに準備を進められます。
さらに、顧問税理士がいれば、金融機関からの信用度が高まるため、資金調達の成功確率を上げるプラス要因になります。
関連記事:日本政策金融公庫の融資審査を確実に通すためのチェックポイント6選
個人事業主から法人成りするとき
個人事業主が税理士へ依頼するタイミングの5つ目は、個人事業主から法人成りするときです。
個人事業主が法人成りを検討する際、税理士のサポートなしで進めるリスクを考慮しましょう。
法人成りの手続きには、定款作成や法人設立登記の申請、個人事業の廃業届の提出など、多くの時間と労力がかかります。
法人成り後は、経理や税務会計の面において、記帳すべき書類や確定申告に加えて決算業務が増えるため、より専門知識が求められます。
経理や税務会計に関する知識に馴染みがない場合、ご自身の力だけで対応するのは難しいです。
もし、帳簿付けや税務申告のミスがあると、税務調査に入られたり、修正申告が必要になったりするおそれがあります。
以上のようなリスクを鑑み、個人事業主が法人成りする場合は、税理士への依頼を早い段階で検討するのがおすすめです。
上記の結果、税務に関するトラブルを未然に防げると同時に、事業に専念できる環境を整えられます。
関連記事:法人成りを税理士に相談する必要性|メリットや費用相場も解説
関連記事:法人成りで個人事業主の廃業届を提出する必要性やタイミングを解説
事業承継をするとき
個人事業主が税理士へ依頼するタイミングの6つ目は、事業承継をするときです。
事業承継をスムーズに進めるにあたって、税理士のサポートは非常に心強いです。
税理士は税務の専門知識だけでなく、経営に関するアドバイスも提供できる場合が多く、事業承継の手続き全般で頼りになります。
特に、相続税や贈与税に関する複雑な計算や申告を適切に行うためには、税理士のサポートが必要になるケースが多いです。
また、顧問税理士は事業の状況を把握しているため、事業承継の相談をしやすいメリットがあります。
さらに、税理士が他の士業と連携している場合、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家を紹介してもらえたりします。
上記の理由から、事業承継を円滑に行うためには、税理士を含む専門家の支援が必要です。
個人事業主が税理士を選ぶ際のポイント
本項目では、個人事業主が税理士を選ぶ際のポイントについて解説します。
ビジネスにおける良きパートナーとして税理士を選ぶ際、以下の4つの要素に着目してください。
- 相性が合うか
- 豊富な専門知識と実績があるか
- 迅速で誠意のある対応があるか
- 料金体系が明確か
上記に関して順番に見ていきましょう。
相性が合うか
個人事業主が税理士を選ぶ際のポイントの1つ目は、相性が合うかどうかです。
税理士は経理や税務会計に関する業務の良きパートナーとして、長い付き合いになるケースが多いです。
しかし、税理士と相性が合わないため、税理士の変更を検討される方が一定数います。
税理士を選ぶうえで、相談のしやすさは非常に大切なポイントです。
依頼費用の安さを理由に税理士を選ぶのは危険です。
税理士を選ぶ際には、複数の税理士と実際に会い、相性が合うかどうかを確認しながら慎重に決めるのをおすすめします。
関連記事:顧問税理士を穏便に変更する方法|断り方や注意点を税理士が解説
豊富な専門知識と実績があるか
個人事業主が税理士を選ぶ際のポイントの2つ目は、豊富な専門知識と実績があるかです。
個人事業主が税理士を選ぶ際、税理士の顧問実績や得意な業界、業種を確認しましょう。
また、ご自身の事業が関わっている業界や業種の経理や税務会計に関する業務に対応できるかどうかも確認してください。
業種や業界ごとに異なる慣行や決済方法、法規制があるため、税理士を選ぶ際、ご自身の事業に詳しいかどうかは事前に確認しておきたいポイントです。
いかに有能な税理士であっても、ご自身の事業が関わっている業界や業種の対応実績がなければ、アドバイスが不十分になったり、期待する節税効果が得られなかったりするおそれがあります。
関連記事:ダメな税理士とは?良い税理士・悪い税理士の見極め方と対処法
迅速で誠意のある対応があるか
個人事業主が税理士を選ぶ際のポイントの3つ目は、迅速で誠意のある対応があるかです。
事業を運営するなかで、税理士へ緊急の相談や対応要請が必要な事態が発生するケースもあります。
特に、税務調査の通知がきた場合に緊急対応できる税理士は非常に心強いです。
一方で、返信が遅かったり、対応に誠意が感じられなかったりする税理士は、不都合が生じやすいため避けるべきです。
税理士を探す段階からレスポンスの早さを重視し、スピーディーで誠実な対応をしてくれるかを確認しましょう。
料金体系が明確か
個人事業主が税理士を選ぶ際のポイントの4つ目は、料金体系が明確かどうかです。
料金体系や解約の条件を、きちんと説明してくれる税理士を選びましょう。
契約内容をしっかり確認せず、費用の安さを理由に契約した場合、あとから追加の費用が発生するおそれがあります。
上記のような予期せぬ追加費用は、大きな負担となります。
料金の安さだけで判断せず、サポート範囲やサービス内容をきちんと確認しておくのが大切です。
たとえば、顧問料が高額に感じても、記帳代行や定期的な面談などのサービスが料金に含まれているケースもあり、総合的にみるとリーズナブルな場合があります。
個人事業主が税理士へ依頼する場合の費用相場
本項目では、個人事業主が税理士へ依頼する場合の費用相場について、以下の4つに分けて解説します。
- 顧問税理士をつけたとき
- 確定申告のみ丸投げしたとき
- 帳簿作成を依頼したとき
- 税務に関する相談をしたとき
1つずつ順番に見ていきましょう。
顧問税理士をつけたとき
税理士に年単位で経営の状況をみてもらい、定期的なアドバイスをもらいたい場合、税理士と顧問契約を結びます。
顧問契約を結ぶと、月額の顧問料が発生し、事業の規模や依頼する内容によって料金が決められます。
個人事業主では月額1万~3万円程度、法人では月額3万~5万円程度が相場です。
税理士とのやりとりをメールや電話のみで行う場合、顧問料を抑えられますが、訪問面談を希望する場合、顧問料は高くなる傾向があります。
また、記帳代行や給与計算、年末調整などの業務は、顧問業務に含まれない有料オプション扱いとなるケースも多いため注意が必要です。
さらに、確定申告に関わる業務についても別途費用がかかる場合が多く、費用の目安は顧問料の4~6ヶ月分程度です。
関連記事:顧問税理士とは?顧問契約の必要性・メリットや注意点を解説
確定申告のみ丸投げしたとき
税理士と顧問契約を結ばずに、確定申告のみ丸投げもできます。
申告の種類や売上の規模によって、かかる費用が異なります。
また、顧問契約がない場合は依頼費用が割高になるおそれもありますので注意してください。
確定申告を丸投げする際にかかる費用の相場は、白色申告の場合は5万~10万円程度です。
一方、青色申告の場合は年間の売上に応じて、かかる費用が変動します。
青色申告の場合、確定申告を丸投げする際にかかる費用の相場は、次のとおりです。
- 売上500万円未満:10万円〜
- 売上500万〜1,000万円未満:15万円~
- 売上1,000万〜3,000万円未満:20万円~
- 売上3,000万〜5,000万円未満:25万円~
上記に加えて、仕訳数が多い場合もかかる費用が変動するため、しっかりと見積もりを確認しましょう。
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
帳簿作成を依頼したとき
税理士に帳簿作成を依頼する際にかかる記帳代行料は、事業の規模や仕訳数などによって異なります。
月100仕訳あたりの記帳代行料は、月額5千~1万円程度が相場です。
データの入力をご自身で行い、チェックだけを税理士に依頼する場合、帳簿作成にかかる費用を半額程度に抑えられる場合もあります。
なお、税理士と顧問契約を結んでいる場合、帳簿作成が顧問契約業務に含まれているケースもあるため、帳簿作成を依頼する際は事前に確認しましょう。
税務に関する相談をしたとき
顧問契約を結んでいない場合でも、単発で税理士に相談できます。
単発で税理士に税務相談を依頼する場合、税務に関する特定の問題や課題について重点的にアドバイスを受けられます。
たとえば、ご自身で経理や税務会計に関する処理をできている方が、税務に関する特定の問題を解決したい場合に適しているのが、単発の税務相談です。
相談料の相場は、次のとおりです。
- 30分以内:5千円程度
- 1時間以内:1万円程度
- 以降30分ごとの追加料金:3千~5千円程度
出張相談も対応してくれる税理士もいますが、相談料の他に交通費や出張費が別途加算されます。
2002年3月31日以前は、税理士業務に対する報酬の最高限度額に関する規定によって、1時間以内の相談は2万円と定められていました。
しかし、2002年3月末日をもって、税理士業務に対する報酬の最高限度額に関する規定は廃止されました。
税理士に税務に関する相談をする場合、問い合わせ時に相談内容を具体的に伝え、相談料やサポート範囲を確認しましょう。
個人事業主が税理士への依頼費用を抑えるコツ
本項目では、個人事業主が税理士への依頼費用を抑えるコツについて解説します。
個人事業主が税理士へ依頼する際、場合によっては費用がかさんでしまうおそれもあります。
上記のようにならないためには工夫が必要です。
税理士への依頼費用を抑えるコツは次の2点です。
- 相見積もりを取って比較する
- 顧問契約は結ばずスポットで依頼する
上記のように思われている方も、本項目を参考にしてみてください。
相見積もりを取って比較する
個人事業主が税理士への依頼費用を抑えるコツの1つ目は、相見積もりを取って比較することです。
たとえば、知人の紹介などで深く検討せずに税理士を選ぶと、費用やサービス内容がご自身のニーズに合わない場合があります。
税理士によって顧問料の設定が異なるため、相見積もりを取って複数の税理士を比較しながら選ぶのをおすすめします。
複数の税理士の中から、ご自身の希望やニーズにマッチし、費用も抑えられる税理士を見つけていきましょう。
顧問契約は結ばずスポットで依頼する
個人事業主が税理士への依頼費用を抑えるコツの2つ目は、顧問契約は結ばずスポットで依頼することです。
たとえば、ご自身が経理や税務会計に関する知識を豊富に持っている場合、自分の知識だけでは解決できない課題が発生した際に、スポットで税理士に依頼するのはおすすめです。
顧問料が月額3万円の税理士と契約した場合、少なくとも年間で36万円かかります。
一方で、顧問契約を結ばす、確定申告に関する業務のみをスポットで依頼すれば、5万〜10万円程度で済ませられる場合もあります。
税理士に任せた方が事業全体の効率が上がる業務のみをスポット契約するのは、税理士への依頼費用を抑えるコツの1つです。
個人事業主が税理士に依頼する際によくある質問
最後に、個人事業主が税理士に依頼する際によくある質問をご紹介します。
※内容は随時追記していきます
個人事業主が税理士に依頼している割合はどのくらいですか?
個人事業主が税理士に依頼している割合は、全体の2割程度です。
個人事業主が税理士に依頼している割合を把握するのに参考となるデータとして、財務省が毎年公表している、所得税、相続税、法人税についての税理士の関与割合の統計データが挙げられます。
上記のデータによれば、税理士の関与割合は、所得税が約20%、法人税が約90%です。
以上を踏まえると、税理士に依頼している割合は、個人事業主が約2割、法人が約9割と推定できます。
個人事業主は自力で経理や税務会計に関する業務を行える規模のため、税理士に依頼している割合は少なめですが、法人成りしたあとは9割近くの事業者が税理士に依頼しているといえます。
個人事業主におすすめの税理士を選ぶポイントを教えてください
個人事業主におすすめの税理士を選ぶポイントは、次のとおりです。
- ご自身と人間性や相性が合うか
- ご自身の事業や業界、業種に関して豊富な税務知識と対応実績があるか
- 迅速で誠意のある対応があるか
- 料金体系やサービス内容が明確か
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個人事業主が税理士を雇う場合、年収に応じていくらの変動がありますか?
たとえば、個人事業主が顧問税理士をつける際の費用相場は、年収に応じて、次のとおりです。
年収 | 顧問料(月額) | 確定申告料(年額) |
1,000万円未満 | 2.5万円 | 10万円 |
1,000万〜3,000万円未満 | 3万円 | 13万円 |
3,000万〜5,000万円未満 | 3.5万円 | 15万円 |
5,000万〜1億円未満 | 4万円 | 17万円 |
1億円〜 | 税理士と相談 | 税理士と相談 |
上記の表に記載されている金額はあくまで目安です。
また、青色申告の確定申告のみを税理士に丸投げする際の費用相場は、年収に応じて、次のとおりです。
年収 | 費用相場 |
500万円未満 | 10万円〜 |
500万〜1,000万円未満 | 15万円〜 |
1,000万〜3,000万円未満 | 20万円〜 |
3,000万〜5,000万円未満 | 25万円〜 |
5,000万円〜 | 税理士と相談 |
上記の表に記載されている金額はあくまで目安です。
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まとめ
今回は、個人事業主に税理士はいらないと言われる理由について、いつから必要性が出てくるかのタイミングも合わせて解説しました。
個人事業主に税理士はいらないと言われている理由は、次のとおりです。
- クラウド会計ソフトがあるから
- 分からない事柄はインターネットで調べられるから
- 税理士とのやり取りが面倒だから
とはいえ、個人事業主が税理士へ依頼するメリットは以下のように数多くあります。
- 経理や税務会計に関する事務作業の手間が省ける
- 確定申告や帳簿付けでミスをなくせる
- 税務調査に適切な対応を行ってもらえる
- 税務や節税に関するアドバイスがもらえる
- 経営や資金調達に関する相談ができる
- 人件費の削減ができる
しかし、個人事業主が税理士へ依頼するにあたってデメリットが生じるのも事実です。
以下のデメリットを考慮しながら、ご自身にとって税理士はいるのかいらないのかを検討していきましょう。
- 税理士への依頼費用がかかる
- 税理士とのやりとりで時間がかかる
- 費用が安いと対応業務が限定されるおそれがある
特に、いつから税理士が必要になるのかを迷われている方は、下記の依頼するタイミングも参考にしてみてください。
- 開業するとき
- 課税売上高が1,000万円を超えはじめたとき
- 確定申告のみスポットで依頼したいとき
- 資金調達が必要なとき
- 個人事業主から法人成りするとき
- 事業承継をするとき