こんにちは、SNSインフルエンサーに強い税理士の植村拓真です。
近年、インフルエンサー・マーケティングの市場は拡大しており、SNSインフルエンサーとして活動される方も増えてきています。弊所にも、SNSインフルエンサーの方々から、経理や税務会計に関するご相談が多く寄せられています。特にいただくのが下記のようなご質問です。



本記事を読んでいる方の中にも、上記のように思っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、SNSインフルエンサーが経費計上できるものについて、経費で落とせないものとあわせて解説します。
どこまで経費計上していいのか、不安や迷いがあるSNSインフルエンサーの方は、本記事を参考にしてみてください。
SNSインフルエンサーが経費計上できるもの
本項目では、SNSインフルエンサーが経費計上できるものについて解説します。具体的にどのようなものが経費として落とせるかについて知りたい方は、本項目を参考にしてみてください。
SNSインフルエンサーが経費計上できるものは、次のとおりです。
- 交通費
- 機材代
- 衣装代
- 書籍代
- 広告宣伝費
- 打ち合わせの飲食代
- 外注費
- 家賃
- 水道光熱費
- 通信費
- 販売促進費
- 研究開発費
- 取材にかかる費用
交通費
交通費は事業に関連する移動にかかった費用であれば、経費として計上できます。たとえば、撮影や打ち合わせ、取引先への移動にかかった費用が該当します。
一方、プライベートな移動にかかる費用は経費になりません。事業用と私用の交通費が入り混じった状態で確定申告した場合、税務署から指摘されるおそれがあるため注意が必要です。
また、ICカードの利用分は、チャージ時ではなく使用時に経費として処理しますので注意しましょう。
機材代
SNSインフルエンサーが使用するカメラやスマートフォン、照明機材などの購入費用は、事業に必要な支出として経費計上できます。また、動画や画像を編集するためのソフトウェアやパソコンも経費計上の対象です。
ただし、購入金額が10万円以上で、使用可能期間が1年以上の機材に関しては減価償却資産として扱われるため、減価償却が必要です。減価償却とは、購入費用を法定耐用年数に応じて分割し、各事業年度の経費に計上する方法を指します。
衣装代
SNSインフルエンサーが衣装代を経費にするには、事業上、必要な衣装であるのが条件です。撮影やイベントなどで着用する特別なドレスやコスプレ衣装は、プライベートでは使わないと判断されるため、経費計上が認められます。
一方、スーツやカジュアルウェアなど私生活でも使える衣服は、経費として認められないケースがあります。ただし、事業とプライベートの両方で使う場合、使用する割合に応じて家事按分し、事業で使用した部分を経費として計上できます。
繰り返しになりますが、衣装代を経費計上する場合、使途について明確に記録しておきましょう。
書籍代
繰り返しになりますが、SNSインフルエンサーが書籍代を経費として計上するには、事業に関連している必要があります。該当するものとしては、SNS運用のハウツー本やビジネス書、経営に役立つ書籍などです。
コンテンツ制作や発信テーマに関係する内容の書籍も経費にできます。また、事業との関連があれば、オンラインセミナーや動画教材も経費に含められます。
なお、小説や漫画などエンタメ性が強いものについては、経費として認められにくいです。ただし、事業上の必要性を説明できる場合、例外として認められるケースもあります。
関連記事:クリエイター向けの税理士の選び方|税務やインボイス制度の丸投げに対応
広告宣伝費
たとえば、SNS広告の出稿費用やフォロワー増加を目的としたプロモーション費用などが、広告宣伝費として該当します。広告宣伝費は不特定多数の消費者に向けたPRが条件であり、特定の個人への贈答や接待などにかかる支出は含められません。
繰り返しになりますが、広告宣伝費を経費計上する場合、請求書や領収書などを適切に保管し、事業上の必要性について説明できるようにしておくのが重要です。なお、事業規模や収益に対して、過剰な割合で広告宣伝費を経費計上した場合、税務調査の対象となるおそれがあるため注意しましょう。
参考:国税庁(No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分)
関連記事:税務調査における修正申告・更正とは?違いについて税理士が解説
打ち合わせの飲食代
打ち合わせで発生する飲食代も経費として計上できます。たとえば、取引先とのミーティングでの食事代やカフェ代などが該当します。
領収書の裏には、何に関する打ち合わせで、誰と利用したのかについてメモを残し、議事録とあわせて保管しておくと安心です。また、オンラインで打ち合わせする場合も飲食代は経費として計上できますが、打ち合わせした事実をしっかりと記録しておくのが重要です。
外注費
SNSインフルエンサーとして活動をする中で、外注した際の費用は経費計上できます。外注費として該当するのは、プロの写真家に撮影を依頼したり、動画編集や画像加工を専門のクリエイターにお願いしたりする場合です。
また、企画の立案や衣装制作を外部に依頼した際にかかった費用も、外注費として経費計上できます。繰り返しになりますが、税務上のトラブルを回避するために、領収書や請求書、契約書などを適切に管理しておきましょう。
家賃
SNSインフルエンサーが、コンテンツ作成のためにスタジオや部屋を借りている場合、家賃を経費として計上できます。ただし、自宅を撮影や編集のために使っている場合、家賃の全額を経費計上できません。
上記の場合、家事按分を行い、事業で使用している部分のみを経費計上します。家賃を家事按分するための基準としては、撮影や編集に使用しているスペースの床面積の割合や利用時間などが挙げられます。
なお、家賃はどこまで経費にできるのかについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:家賃はどこまで経費にできる?個人事業主・法人にわけて解説
参考:国税庁(地代家賃)
参考:国税庁(家事関連費|第1号関係)
水道光熱費
水道光熱費は事業に必要な経費として計上できます。ただし、自宅を仕事場として使用しているSNSインフルエンサーの場合、水道光熱費の全額を経費計上できませんので注意しましょう。
繰り返しになりますが、家事按分し、事業で使用している部分を経費計上します。家事按分では、仕事とプライベートの利用割合を合理的に計算する必要があり、使用時間や日数、面積などを基準とします。
また、水道光熱費を支払っている事実を証明するため、請求書やクレジットカード明細などの証憑書類を適切に保管しておくのが重要です。なお、不適切な家事按分は、税務調査の対象となるリスクを高めるため、適切な計算基準を設けましょう。
クレジットカード払いの経費に領収書は必要なのかについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
通信費
通信費は経費として計上でき、主に以下の支出が該当します。
- 携帯電話や固定電話の月額料金
- インターネット使用料
- 切手代や書留代
インターネット利用料や電話代など、プライベートと事業の両方で利用しているものについては、全額を経費計上できません。
上記のような場合、家事按分を行い、事業で利用している部分だけを経費として計上します。たとえば、電話代が毎月1万円かかっていて、事業で利用しているのが全体の6割である場合、6,000円を経費として計上できます。
繰り返しになりますが、利用時間や使用日数などを家事按分の基準とするのが一般的です。
販売促進費
販売促進費とは、商品やサービスの売上を増やしたり、ブランド価値を高めたりするための費用であり、消費者や取引先への直接的な関わりによって生じる支出です。具体例として、取引先に試供品を提供する費用やキャンペーンにかかる費用、販売手数料などが該当します。前述の広告宣伝費との違いは明確に規定されていませんが、下記のような区分が一般的です。
販売促進費 | 特定の対象に対する直接的な働きかけ |
広告宣伝費 | 不特定多数への宣伝活動 |
関連記事:クリエイター向けの税理士の選び方|税務やインボイス制度の丸投げに対応
研究開発費
研究開発費とは、今後の事業展開に関係する新しい製品やサービスの開発にかかった費用です。大企業や大学だけでなく、SNSインフルエンサーも研究や開発にかかった費用を経費として計上できます。研究開発費として該当するのは、具体的に下記のような支出です。
- 新規事業を計画するための調査費
- 新たな市場を開拓するのにかかる費用
- 競合店を調査するのにかかった商品代や飲食代
- 新商品の試作にかかる費用
参考:金融庁(研究開発費等に係る会計基準)
参考:日本公認会計士協会(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針)
取材にかかる費用
SNSインフルエンサーが仕事の一環として取材を行う場合、取材にかかる費用は経費として計上できます。取材費として該当するのは、以下のような支出です。
- 取材先への交通費
- 取材相手との飲食代
- 取材相手との電話代
- 書類や資料の郵送代
- 取材で使う10万円未満の機材代
- 取材に必要な書籍や資料代
- 取材に必要な宿泊代
取材費は、コンテンツ制作の基盤となる重要な支出として経費計上が認められます。繰り返しになりますが、事業と無関係な支出は経費に含められませんので注意しましょう。
SNSインフルエンサーが経費計上できないもの
本項目では、SNSインフルエンサーが経費計上できないものについて解説します。前項でSNSインフルエンサーが経費計上できるものについて解説しましたが、なんでも経費計上できるわけではないため注意しましょう。SNSインフルエンサーが経費計上できないものは、以下のとおりです。
- 取材や撮影目的ではない旅行代
- カフェで1人作業した際の食事代
- コンテンツ化されない商品の代金
取材や撮影目的ではない旅行代
取材や撮影目的であるのを明確に証明できない場合、旅行にかかった費用は経費計上できません。たとえば、家族や恋人との旅行が主目的で、ついでに撮影を行ったような場合、旅行代は経費として認められません。
仮に、経費計上したとしても、ホテルや交通機関の利用履歴を税務署に調査され、プライベートな目的の旅行であるのが突き止められるおそれがあります。不適切な経費計上は、税務上のリスクを高めるため、事業において必要な支出であるのが明白なもののみ経費計上しましょう。
カフェで1人作業した際の食事代
SNSインフルエンサーがカフェで1人作業した際の食事代は、食事をとる合理的な理由がない限り経費計上できません。
一方、食事がメインである場合やアルコールを伴う飲食の場合、プライベートな支出とみなされるため経費計上できません。経費計上する際には、事業との明確な関連性があるかどうかを判断基準にしましょう。
なお、個人事業主よりも経費の範囲が拡大する法人であっても、なんでも経費で落とせるわけではないため注意が必要です。
関連記事:法人はなんでも経費で落とせる?よくある勘違いと判断基準を解説
コンテンツ化されない商品の代金
コンテンツ化されない商品の代金は経費計上が認められません。美容グッズや化粧品、ブランド品などを購入した場合、SNSやブログなどで具体的に紹介したもののみが経費の対象です。
なお、日常的に使用できる化粧品やファッションアイテムなどは、プライベートと事業の区分が曖昧なため、経費として認められないおそれがあります。家事按分して経費計上しても、プライベートと事業の線引きが明確に説明できない場合、経費計上を否認されるケースがあります。
プライベートと事業の線引きが難しいものを経費計上する場面が多いケースでは、税理士との顧問契約も検討してみましょう!
関連記事:顧問税理士とは?顧問契約の必要性・メリットや注意点を解説
SNSインフルエンサーが確定申告を必要とするケース
本項目では、SNSインフルエンサーが確定申告を必要とするケースについて、下記の3つに分けて解説します。
- 本業の場合
- 副業の場合
- 赤字の場合
本業の場合
SNSインフルエンサーを本業とし、個人事業主で活動している場合、収入は事業所得もしくは雑所得として扱われます。収入から必要経費を差し引いた課税所得が年間48万円を超える場合、確定申告が必要です。
一方、課税所得が年間48万円以下であれば、所得税がかからないため確定申告の義務はありません。
上記の理由としては、基礎控除の適用によって課税所得が0円になるためです。課税所得が48万円以下の場合、確定申告の必要はありませんが、青色申告で確定申告を行っておくと、下記のような特典があります。
- 最大65万円の特別控除を受けられる
- 赤字の繰り越しを最大3年間できる
- 家族への給料を経費計上できる
- 30万円未満の減価償却資産を即時償却できる
ただし、上記のようなメリットを享受できる一方で、下記の点には注意が必要です。
参考:国税庁(No.2070 青色申告制度)
参考:中小企業庁(少額減価償却資産の特例)
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
副業の場合
副業としてSNSインフルエンサーの活動をしていて、本業やアルバイトなどの給与所得がある場合、SNSインフルエンサーの収入は雑所得に分類されるのが一般的です。
上記のようなケースでは、アフィリエイト報酬やタイアップ報酬などの収入から必要経費を差し引いた課税所得が、年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。会社員をしながらSNSインフルエンサーとして活動している場合でも、給与所得と副業収入を合わせた所得税の計算が必要なため、正確な税務申告を行いましょう。
関連記事:確定申告が全くわからない方へ|やり方や相談先について税理士が解説
赤字の場合
SNSインフルエンサーの活動が赤字の場合、納税する必要がないため確定申告は不要です。
詳細については、前項の本業の場合の内容をご参照ください。
青色申告の特典の1つとして、赤字を最大で3年間繰り越せます。たとえば、初年度に赤字が出ても、翌年度が黒字だった場合、赤字の繰り越しによって課税所得を減らせます。
赤字の場合でも青色申告による確定申告を行っておき、翌年以降の節税につなげられるようにしておきましょう。なお、青色申告を事前に申請していない場合、赤字の繰り越しはできないため注意しましょう。
青色申告を活用すべきかどうか判断に迷う場合は、一度、税理士に相談してみるのをおすすめします。
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
確定申告の基礎知識
本項目では、確定申告の基礎知識について、次の3点に分けて解説します。
- 確定申告の種類
- 確定申告のタイミング
- 確定申告に必要な書類
それでは、上記の3点に関して順番に見ていきましょう。
確定申告の種類
確定申告は下記の2種類があります。
- 青色申告
- 白色申告
それぞれについて解説します。
青色申告
青色申告は、後述の白色申告よりも節税効果が期待できる制度です。繰り返しになりますが、青色申告によって得られる主なメリットは、次のとおりです。
- 最大65万円の青色申告特別控除
- 赤字を最大3年間繰り越せる
- 家族への給与を経費計上できる
- 30万円未満の減価償却資産を即時償却できる
なお、青色申告できるのは下記の所得がある方に限られ、雑所得しかない方は対象外のため注意しましょう。
繰り返しになりますが、青色申告を行うには複式簿記による帳簿作成が必要です。また、納税地を所轄する税務署へ青色申告承認申請書を事前に提出しなければなりません。
帳簿作成や事前の申請に手間はかかりますが、大きな節税効果が期待できるのが青色申告の特徴です。青色申告で確定申告する場合、専門知識を求められる場面が多いため、税理士の力を借りるのも手段の1つです。
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
白色申告
白色申告は、複式簿記が不要で、簡易な方法による記帳が認められています。上記の理由から、青色申告に比べて帳簿の記帳が簡単なため、確定申告に関する書類作成の手間がかかりません。
白色申告で確定申告する場合に提出する書類は、下記の3点です。
ただし、白色申告は、青色申告のような特別控除や赤字の繰り越し制度などがないため、節税効果は期待できません。
参考:国税庁(No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度)
参考:J-Net21(帳簿記帳の基本)
参考:国税庁(確定申告書等の様式・手引き等|令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)
参考:国税庁(令和6年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き|申告書に添付・提示する書類)
確定申告のタイミング
確定申告の期限は毎年2月16日から3月15日までです。期限内に申告と納税を完了させなかった場合、延滞税や加算税が課されるおそれがあるため、早めの準備が大切です。
特に、副業でSNSインフルエンサーを行っている場合、本業と副業の収入をまとめて申告する必要があるので注意しましょう。確定申告書の提出方法は、次のとおりです。
- e-Tax
- 納税地を所轄する税務署へ郵送
- 納税地を所轄する税務署へ持参
e-Taxは24時間対応でオンライン提出ができるため便利です。なお、納税地を所轄する税務署へ持参する場合、混雑が予想されるため、余裕を持った提出スケジュールを立てておきましょう。
参考:国税庁(申告書の提出方法)
参考:e-Gov(所得税法 第百二十条 確定所得申告)
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
確定申告に必要な書類
確定申告をスムーズに行うためには事前の書類準備が重要です。SNSインフルエンサーが確定申告する場合に必要な書類は、主に以下のとおりです。
副業でSNSインフルエンサーとして活動している場合、源泉徴収票をもとに確定申告書への記入が必要になります。上記のケースにおいて、年末調整で控除の申請が済んでいる場合、証明書類の添付は不要です。
ただし、下記の控除については、年末調整ではなく確定申告時に申請する必要があるので注意しましょう。
各種控除を受けるにあたっての証明書類を紛失してしまった場合、再発行できるケースもあります。しかし、届くまでに時間がかかるおそれがあるため、日頃からしっかりと管理しておくのが重要です。
関連記事:確定申告が全くわからない方へ|やり方や相談先について税理士が解説
参考:国税庁(Q20 所得税等の確定申告書を提出する際に必要な書類はどのようなものですか。)
SNSインフルエンサーが確定申告する際の注意点
本項目では、SNSインフルエンサーが確定申告する際の注意点について解説します。
SNSインフルエンサーが確定申告する際の注意点は、以下の3つです。
- 事業所得か雑所得で確定申告する
- 副業が会社にバレるおそれがある
- 領収書の裏に使途をメモしておく
上記3点について1つずつ見ていきましょう。
事業所得か雑所得で確定申告する
SNSインフルエンサーの所得は、事業所得か雑所得として確定申告します。
上記については、以下のように区分されるのが一般的です。
本業として継続的な活動を行っている | 事業所得 |
会社員の給与所得がメインで、副業として活動している | 雑所得 |
事業所得として認められるためには、継続的な事業活動が必要です。過去の判例では事業所得について下記のように定義しています。
事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得
引用:裁判所(最高裁判所判例集|昭和56年4月24日最高裁判所第二小法廷|所得税更正決定処分取消)
繰り返しになりますが、事業所得であれば青色申告を選択でき、特別控除や赤字の繰り越しなどの特典を享受できます。一方、雑所得には青色申告を適用できないため、上記のような税務上の特典はありません。
参考:国税庁(法第35条 雑所得 関係)
参考:国税不服審判所(所得の区分)
関連記事:クリエイター向けの税理士の選び方|税務やインボイス制度の丸投げに対応
副業が会社にバレるおそれがある
上記の理由として、SNSインフルエンサーの活動で得た収入によって住民税額が変化してしまうからです。
引用:総務省(個人住民税)
上記の図のように、多くの会社員は、特別徴収の方式で住民税が給与から天引きされます。特別徴収税額通知に記載してある税額と給与から天引きする税額が一致しないのが判明した場合、会社に副業がバレてしまうおそれがあります。
会社に副業がバレるのを防ぐためには、確定申告書の給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法の欄にある、自分で納付に◯をつけ、普通徴収で支払うようにしましょう。
上記の欄に◯をすれば、SNSインフルエンサーの副業収入にかかる住民税を、住民票のある市区町村に自分で納付できるため、会社にバレるリスクが回避できます。SNSインフルエンサーの副業が確定申告で会社にバレてしまわないか不安な場合、税理士に相談してみるのも手段の1つです。
関連記事:アフィリエイトの確定申告で副業が会社にばれないようにする方法
領収書の裏に使途をメモしておく
領収書は経費計上の証憑書類として保管しておきますが、裏面に下記のようなメモを残しておくと、税務調査に入られた場合、経費の使途を具体的に説明しやすくなります。
- 取引先の会社名や名前
- 取引先との関係性
- 支出の目的
- 利用した人数
特に、数年後に税務調査が行われるケースを考えると、記憶が曖昧になっているおそれがあるため、領収書裏のメモは重要な情報になります。ただし、領収書の表面にメモすると改ざんを疑われるおそれがあるため、必ず裏面に記入してください。
メモを記入する際、文字がにじんだり、かすれたりしない筆記用具として鉛筆がおすすめです。
関連記事:税務調査における修正申告・更正とは?違いについて税理士が解説
SNSインフルエンサーが確定申告しなかった場合のリスク
繰り返しになりますが、課税所得があるにも関わらず確定申告を怠った場合、延滞税や加算税などのペナルティが科されるおそれがあります。申告しなければバレないと考えるのは非常に危険です。
SNSインフルエンサーに報酬を支払った企業は、支払調書を税務署に提出しているため、税務署は収入を把握できる仕組みになっています。納税は日本国民の義務であり、確定申告を行わない理由が、会社に副業がバレたくないといった事情であっても許されません。
無申告がバレる理由については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:無申告がバレる理由|確定申告していない人のペナルティと末路
税務署に指摘された場合の対応
本項目では、税務署に指摘された場合の対応について解説します。万が一、税務署から指摘が入った場合に備え、本項目の内容を参考にしてみてください。下記の2つのケースに分けて解説します。
- 完全にプライベートだと判断されそうなもの
- 家事関連費と判断されそうなもの
完全にプライベートだと判断されそうなもの
SNSインフルエンサーが税務署から指摘を受けた場合、第三者の視点でプライベートな支出と判断されそうなものについては、購入目的や支払った理由を明確に説明できるようにしておくのが重要です。税務署からは、具体的な購入目的や使用状況、事業との関連性を示すよう求められますが、立証責任は税務署側にあります。
上記の理由から、法的根拠に基づきながら明確に反論できるよう準備しておきましょう。特に、グレーゾーンの経費については税理士に相談し、税務上のリスクを事前にチェックしておくのがおすすめです。
参考:国税庁(令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況)
参考:国税庁(税務訴訟における立証責任―裁判例の検討を通して―)
参考:内閣府(諸外国の所得税の課税方式と立証責任の所在)
関連記事:税務調査における修正申告・更正とは?違いについて税理士が解説
家事関連費と判断されそうなもの
全額を経費として計上したものの、税務署に家事関連費と判断されるおそれのある支出については、事業とプライベートの使用割合を合理的な基準で家事按分し、明確に説明できる状態にしておく必要があります。
家事関連費とは、家賃や光熱費、通信費など、事業とプライベートの両方に関連する費用です。家事関連費は上記のような性質をもつため、家事按分を行い、事業部分のみを経費計上します。
家事按分の基準として、使用している時間や日数、面積などが用いられます。ただし、家事按分の基準が曖昧だと判断され、経費計上のすべてを税務署に否認されるケースがあるのも念頭に置きましょう。
過去に、家事按分を行って事業部分のみを経費計上したものの、経費として認められなかった判例もあるため、信頼できる税理士の力を借りながら税務調査に対応しましょう。
参考:国税不服審判所(家事費、家事関連費)
参考:国税庁(平成25年判決分|税務訴訟資料 第263号 順号12310)
参考:国税庁(平成25年判決分|税務訴訟資料 第263号 順号12311)
参考:e-Gov(所得税法施行令 第九十六条 家事関連費)
参考:国税庁(所得税基本通達〔家事関連費|第1号関係〕)
関連記事:税務調査における修正申告・更正とは?違いについて税理士が解説
SNSインフルエンサーの節税対策
本項目では、SNSインフルエンサーの節税対策について解説します。
SNSインフルエンサーの節税対策として挙げられるのは、次のとおりです。
- 青色申告の活用
- 小規模企業共済の活用
- 家族に給与を支払う
上記について1つずつ見ていきましょう。
青色申告の活用
SNSインフルエンサーにとって青色申告は、節税対策における強力な手段の1つです。繰り返しになりますが、青色申告には下記のような特典があります。
- 最大65万円の特別控除を受けられる
- 赤字の繰り越しを最大3年間できる
- 家族への給料を経費計上できる
- 30万円未満の減価償却資産を即時償却できる
ただし、青色申告を行うには事前の申請が必要です。なお、最大65万円の特別控除を受けるには複式簿記での記帳が必須です。
複式簿記での記帳には専門知識が求められますが、近年、使い勝手の良い会計ソフトが手頃な価格で提供されているため、初心者でも取り組みやすくなっています。以上のように青色申告を選べば、税負担の軽減が期待できます。
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
小規模企業共済の活用
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者が、将来の退職金や廃業への備えとして活用できる共済制度です。掛金の全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担軽減につながり、高い節税効果が期待できます。
掛金の月額は、1,000円から7万円の範囲で自由に設定でき、収入状況に応じて変更できます。なお、同月中に掛金の再変更はできませんので注意しましょう。
参考:国税庁(No.1135 小規模企業共済等掛金控除)
参考:独立行政法人 中小企業基盤整備機構(小規模企業共済とは)
家族に給与を支払う
SNSインフルエンサーの活動を家族に手伝ってもらえる場合、一定の要件を満たせば、家族に支払った給与を経費として計上できます。上記の制度を利用するには青色申告が必須です。
給与を経費として計上するには、青色事業専従者給与に関する届出書を納税地を所轄する税務署に提出し、届出書に記載した金額の範囲内で給与を支払うのが条件です。ただし、給与の金額が常識的でない場合や実際に業務を行っていないと判断される場合、経費計上が認められないおそれがあるため注意しましょう。
青色事業専従者給与に関する制度を活用すれば、家族の協力を得ながら節税効果を最大化できます!
参考:国税庁(No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除)
参考:国税庁(A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続)
SNSインフルエンサーの経費に関するよくある質問
最後に、SNSインフルエンサーの経費に関するよくある質問をご紹介します。具体的な質問を取り上げますので、SNSインフルエンサーの経費に関してさらに理解を深めたい方は、本項目も参考にしてみてください。内容は随時追記します。
底辺youtuberでも経費で落とせるものはありますか?
事業として収益性や継続性が認められる場合、底辺youtuberでも経費計上はできます。経費計上できる支出に関しては、本記事のSNSインフルエンサーが経費計上できるものの項目をご参照ください。
ただし、まだ収益が発生していない場合、事業としての収益性や継続性の見通しについて説明できる必要があります。上記の説明ができない場合、経費計上が否認されるおそれがあるため注意しましょう。
参考:e-Gov(所得税法 第三十七条 必要経費)
参考:国税庁(所得税法第37条に規定する直接性に関する一考察)
関連記事:YouTuberの税理士費用の相場や安く抑える方法を経費とあわせて解説
ユーチューバーの美容院代は経費で落とせますか?
ユーチューバーが美容院代を経費として計上できるかは、事業との関連性が重要になります。当然ながら、完全にプライベートな理由で美容院代を経費にはできません。
動画撮影やイベントへ出演するために特定のヘアスタイルが必要な場合、美容院代は必要経費として認められるケースがあります。ただし、プライベートでも差し支えないヘアスタイルだった場合、全額を経費とするのは難しく、合理的な家事按分が必要です。
関連記事:YouTuberの税理士費用の相場や安く抑える方法を経費とあわせて解説
youtuberが食レポする際にかかった費用は経費で落とせますか?
繰り返しになりますが、youtuberが食レポする際にかかった費用は、事業としての収益性や継続性が認められる場合、経費として計上できます。上記のためには、再生回数やチャンネル登録者数、動画の投稿数など、youtuberとしての活動が収入に直結しているのを示せる根拠が必要です。
前提として、衣食住にまつわる家事関連費に該当する支出は、事業とプライベートを区別する必要があり、全額が経費として認められないケースもあるため注意が必要です。youtuberの顧問実績が豊富な税理士に依頼すれば、youtuber特有の税務上のリスクにも対応が期待できるため、税理士への依頼も念頭に置きましょう。
関連記事:YouTuberの税理士費用の相場や安く抑える方法を経費とあわせて解説
インスタからの収入が増えてきている場合、どうやって節税を行えばいいですか?
インスタからの収入が増えてきている場合の節税対策については、本記事のSNSインフルエンサーの節税対策の項目をご参照ください。また、個人事業主の場合、法人化すれば、さらなる節税効果が期待できます。
節税対策で悩む場合は、一度、税理士に相談してみましょう。税金面で法人化すべきケースについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:法人税と所得税ならどっちが得?税金面で法人化すべきケースを解説
ネット収入を確定申告すると会社にばれるリスクはありますか?
ネット収入を確定申告すると、会社にばれるリスクはつきまといますが、会社にばれるリスクを低くするための方法はあります。上記の方法については、本記事のSNSインフルエンサーが確定申告する際の注意点の項目をご参照ください。
なお、会社にばれたくないのを理由に、課税所得があるにも関わらず確定申告を行わないのはNGです。最悪の場合、加算税や延滞税などのペナルティが科されるおそれがありますので注意しましょう。
関連記事:無申告がバレる理由|確定申告していない人のペナルティと末路
商品をレビューするのにかかった費用は経費で落とせますか?
商品をレビューするのにかかった費用は経費で落とせますが、注意点があります。注意点については、本記事の下記の項目をご参照ください。
- コンテンツ化されない商品の代金
- 家事関連費と判断されそうなもの
- youtuberが食レポする際にかかった費用は経費で落とせますか?
特に、家事関連費に該当する支出を経費計上する場合、専門知識が求められる場面が多いため、税理士の力を借りるのも手段の1つです。
参考:e-Gov(所得税法施行令 第九十六条 家事関連費)
参考:e-Gov(所得税法 第四十五条 家事関連費等の必要経費不算入等)
関連記事:クリエイター向けの税理士の選び方|税務やインボイス制度の丸投げに対応
ネット収入を確定申告する場合のやり方を教えてください
ネット収入を確定申告する場合のやり方については、下記の記事で詳しく解説しています。確定申告の時間を確保できなかったり、税務に関する知識に不安があったりする場合、税理士への依頼も検討してみましょう。
関連記事:確定申告が全くわからない方へ|やり方や相談先について税理士が解説
関連記事:ネットビジネスの税金と確定申告まとめ|無申告がバレる理由も解説
ユーチューバーが経費で落とすのは世間から見てずるいのでしょうか?
ユーチューバーが経費で落とすのは合法であり、ずるいわけではありません。ただし、経費として認められるのは、事業に必要な支出のみですので、公私混同は禁物です。
たとえば、プライベートな買い物や旅行などにかかった費用を経費にするのは不適切であり、税務調査に入られるリスクが高まります。不適切な経費計上が発覚した場合、加算税や延滞税が課されるおそれがありますので注意しましょう。また、極めて悪質な場合、逮捕されるケースもあります。
経費計上する支出については、領収書や請求書などの証憑書類をしっかりと保管しておきましょう。経費計上に関して心配な点がある場合、税理士に相談してみるのがおすすめです。
関連記事:YouTuberの税理士費用の相場や安く抑える方法を経費とあわせて解説
SNSインフルエンサーが商品提供のみでも確定申告が必要なのは本当ですか?
SNSインフルエンサーが、企業からプロモーションやキャンペーン用の商品を提供された場合、単なるプレゼントではなく報酬とみなされるケースが多く、確定申告が必要になります。税法上、金銭以外の物品やサービスも経済的利益としてみなされるため、課税対象です。
企業から提供された商品の価値は市場価格で評価され、たとえば、1万円相当の物品やサービスを受け取った場合、1万円分の現物給与として扱われます。商品の受け取り日や取引先の企業名、商品の用途などについて記録しておき、プロモーションやキャンペーンが終了したタイミングで収入として計上するのが一般的です。
企業からの提供回数が多かったり、提供物の総額が大きかったりする場合、税務上のリスクが高まるため、正確な記録と適切な税務申告が重要です。以上のようなケースでは、税務に関する専門知識も必要なため、税理士への依頼も検討しましょう。
関連記事:クリエイター向けの税理士の選び方|税務やインボイス制度の丸投げに対応
インスタグラマーを副業でやっている場合、会社にバレるおそれはありますか?
繰り返しになりますが、上記の方法については、本記事のSNSインフルエンサーが確定申告する際の注意点の項目をご参照ください。なお、確定申告で副業が会社にばれないようにする方法については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:アフィリエイトの確定申告で副業が会社にばれないようにする方法
SNSインフルエンサーの衣装代は経費で落とせますか?
繰り返しになりますが、事業上、必要な衣装であれば経費で落とせます。詳細は、本記事のSNSインフルエンサーが経費計上できるものの項目をご参照ください。
関連記事:クリエイター向けの税理士の選び方|税務やインボイス制度の丸投げに対応
まとめ
今回は、SNSインフルエンサーが経費計上できるものについて、経費で落とせないものとあわせて解説しました。
SNSインフルエンサーが経費計上できるものについては、次のとおりです。
- 交通費
- 機材代
- 衣装代
- 書籍代
- 広告宣伝費
- 打ち合わせの飲食代
- 外注費
- 家賃
- 水道光熱費
- 通信費
- 販売促進費
- 研究開発費
- 取材にかかる費用
一方、SNSインフルエンサーが経費計上できないものについては、以下のとおりです。
- 取材や撮影目的ではない旅行代
- カフェで1人作業した際の食事代
- コンテンツ化されない商品の代金
また、SNSインフルエンサーが確定申告する際、下記の点に注意しましょう。
- 事業所得か雑所得で確定申告する
- 副業が会社にバレるおそれがある
- 領収書の裏に使途をメモしておく
なお、SNSインフルエンサーの節税対策として挙げられるのは、次のとおりです。
- 青色申告の活用
- 小規模企業共済の活用
- 家族に給与を支払う