こんにちは、せどり業に強い税理士の植村拓真です。
弊所はマイクロ法人やネットビジネス業の顧問実績が豊富な会計事務所で、メルカリやAmazon、ヤフオク!などで、せどり業をされている方からマイクロ法人設立に関するご依頼をよくいただいております。
そんな中で特に、以下のようなご質問やご相談をいただく機会が多いです。
本記事を読んでいる方の中にも、上記のように考えている方がいるのではないでしょうか。
今回はそんな方に向けて、せどり業でマイクロ法人の二刀流で節税する方法について、メリット・デメリット、タイミングとあわせて解説します。
せどり業がマイクロ法人の二刀流で節税する方法
せどり業がマイクロ法人の二刀流で節税する方法は、次のとおりです。
- 個人事業主とマイクロ法人間で売上を調整する
- 個人事業主で活用できる所得控除を活用する
- 役員報酬を月額4.5万円に抑える
本項目では上記3点について詳しく見ていきます。
個人事業主とマイクロ法人間で売上を調整する
せどり業においても、マイクロ法人を設立して、個人事業の売上の一部を法人に移せば、消費税の納付が免除されるケースがあることを押さえておきましょう。
事業の課税売上高が1,000万円を超えた場合、消費税の納付義務のある個人または法人として「課税事業者」という扱いになります。
課税事業者は、売上の中に含まれている消費税を国に納める義務があります。
ですが、個人事業として行っているせどり業の売上の一部をマイクロ法人に移して、売上を1,000万円以下にすれば、消費税の納付は免除されるわけです。
節税の観点からみると、売上が1,000万円を超えている個人事業主の方であれば、マイクロ法人設立のメリットを享受できます。
しかし、会社の資本金が1,000万円未満であることが前提条件です。
せどり業でマイクロ法人を設立するために、どのような手順を踏むのかについて知りたい方に向けて、下記に設立の流れを簡単にまとめました。
- STEP1:設立事項を決める
- STEP2:定款を作成する
- STEP3:定款を認証する
- STEP4:資本金の払込をする
- STEP5:設立の登記をする
各ステップでやることについては以下のとおりです。
「STEP1:設立事項を決める」では、発起人の決定、商号/会社名の決定、法人の印鑑作成、資本金の決定などを行います。
「STEP2:定款を作成する」では、インターネット上に公開されている定款のテンプレートを活用しながら書面を作成していきます。
定款とは、資本金の額や発行可能株式総数など、会社の基本的なルールをまとめたものです。
「STEP3:定款を認証する」では、直接公証人役場へ定款を持参する、もしくは、定款のデータを公証人役場へ送信して電子認証を受ける、のいずれかの方法で定款の正当性を公証人に証明してもらいます。
なお、定款の認証の際に、下記の費用がかかることは把握しておきましょう。
- 公証人へ払う認証手数料:5万円
- 定款の謄本請求手数料:2,000円程度(1部につき250円、必要部数によって異なる)
- 定款に貼付する収入印紙代:4万円(電子定款の場合は不要)
「STEP4:資本金の払込をする」では、あらかじめ決めておいた資本金額を発起人の口座へ振り込みます。
なお、資本金を現金で用意する場合、払込みをしたことを証明できる書類が必要です。
「STEP5:設立の登記をする」では、下記の資料を揃えて法務局へ提出します。
- 登記申請書
- 収入印紙貼付台紙
- 定款
- 発起人の決定書
- 役員の就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書
- 資本金の払込証明書
- 印鑑届出書
- 登記すべき事項を保存したCD-RもしくはFD
提出してから通常1週間程度で審査が終了し、登記は完了です。
以上がマイクロ法人を設立する際の大まかな流れです。
法人の設立を自力で行うのは難しいと感じる場合は、支援してくれる専門家や税理士などに依頼することをおすすめします。
参考:国税庁(① 消費税課税事業者届出書)
参考:国税庁(No.6501 納税義務の免除)
参考:国税庁(No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)
参考:法務局(商業・法人登記の申請書様式)
関連記事:会社設立手続きを自分で行う5つのステップ|費用や流れについて解説
関連記事:せどり・転売で法人化(会社設立)するタイミングや会社にバレない方法も解説
個人事業主で活用できる所得控除を活用する
せどり業がマイクロ法人と個人事業主の二刀流で節税する方法の1つとして、個人事業主が利用できる所得控除を活用することが挙げられます。
もし、個人事業主の方で稼ぎ過ぎたとしても、適用可能な所得控除をフル活用して課税所得を最小限に抑えられれば、無駄に多くの税金を納めずに済みます。
所得控除の種類は次のとおりです。
雑損控除
医療費控除
社会保険料控除
小規模企業共済等掛金控除
生命保険料控除
地震保険料控除
寄附金控除
障害者控除
寡婦控除
ひとり親控除
勤労学生控除
配偶者控除
配偶者特別控除
扶養控除
基礎控除
引用:国税庁(No.1100 所得控除のあらまし)
仮に、マイクロ法人で80万円・個人事業主で420万円稼いだ場合、利用可能な所得控除のシュミレーションは次のとおりです。
基礎控除は、納税者本人の合計所得金額が2,400万円以下であれば、48万円の控除を受けられます。
小規模企業共済等掛金控除は、小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの掛金に支払った金額を控除できます。
小規模企業共済は月額掛金が最高で7万円のため、控除額は最大で84万円です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)については、マイクロ法人で社会保険に加入した場合、個人事業主でありつつも会社員となるため、掛け金の上限は月額2.3万円になります。
よって、iDeCoの控除額は最大で27.6万円です。
青色申告特別控除として、最大65万円の控除が受けられます。
社会保険料控除の対象は、個人負担分の国民健康保険や国民年金の保険料などです。
個人事業主で420万円稼いだ場合、国民健康保険が約50万円、国民年金が約20万円の控除を受けられます。
ここまで挙げた所得控除の合計は約300万円です。
個人事業として行っているせどり業の売上420万円から300万円を控除すると、課税所得は約120万円まで抑えることができます。
以上のことから個人事業主で活用できる所得控除をフル活用して節税することをおすすめします。
参考:国税庁(No.1199 基礎控除)
参考:国税庁(No.1135 小規模企業共済等掛金控除)
参考:iDeCo公式サイト(iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等)
参考:国税庁(No.2072 青色申告特別控除)
参考:国税庁(No.1130 社会保険料控除)
役員報酬を月額4.5万円に抑える
節税のために社会保険料と所得税を最低限にするには、マイクロ法人の役員報酬を月10,946〜45,000円の範囲で設定しましょう。(令和6年時点)
まず、社会保険料を最も低くするには、東京都の場合、役員報酬を月額63,000円未満に設定する必要があります。
しかし、役員報酬を月10,946円未満に設定してしまうと社会保険料が天引きできず、社会保険に入れないおそれがあるので注意しましょう。
引用:全国健康保険協会(令和6年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|東京都)
上記の保険料額表を見て分かるとおり、東京都の社会保険料の月最低額(会社と折半した金額)が、40歳未満の場合、健康保険2,894円・厚生年金保険8,052円だからです。
もし、ご自身が40〜64歳であれば、健康保険3,358円・厚生年金保険8,052円となるため、役員報酬は11,410円以上に設定しておく必要があるのでご注意ください。
次に、所得税を最も低くするには、役員報酬を年間55万円未満に設定しておきましょう。
というのも給与所得控除の最低控除額が55万円だからです。
マイクロ法人の役員報酬は、個人事業主であるご自身が所得として受け取る形になります。
毎月の役員報酬を45,000円以下に設定すれば、年間55万円未満にできます。
以上を踏まえると、40歳未満の方は月10,946〜45,000円の範囲で、40〜64歳の方は月11,410〜45,000円の範囲で役員報酬を設定することで、社会保険料と所得税の両方を最小限に抑えられるわけです。
参考:国税庁(No.1410 給与所得控除)
参考:国税庁(No.2508 給与所得となるもの)
関連記事:役員報酬をなしにするデメリットと注意点|決める手順も解説
関連記事:マイクロ法人と個人事業主の二刀流で節税するメリット・デメリットを解説
せどり業がマイクロ法人の二刀流で節税する際の注意点(デメリット)
せどり業がマイクロ法人の二刀流で節税する際の注意点やデメリットは、次のとおりです。
- 個人事業主とマイクロ法人で同じ業種を選択しない
- 売上のバランスを考慮してマイクロ法人で稼ぎすぎない
- 会社員の副業せどらーは社会保険料の節約ができない
- マイクロ法人の設立に時間がかかる
- 個人事業主とマイクロ法人で経理や税務会計を行う必要がある
- マイクロ法人の設立や維持に費用がかかる
- 将来受け取る年金が減ってしまう
- 税制や保険制度の内容が変わって損をするケースもある
本項目では、上記の内容について、順番に解説していきます。
個人事業主とマイクロ法人で同じ業種を選択しない
個人事業主とマイクロ法人は同じ業種を選択しないようにしましょう。
会社役員または代表者はマイクロ法人と競業する事業をしてはいけないからです。
(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
引用:e-GOV法令検索|会社法
また、マイクロ法人を設立したものの「事業実態がない」ケースも要注意です。
法人を設立したあと、売り上げや活動実績がない状態で、役員報酬だけが支払われているような場合には脱税が疑われ、強制調査(納税者の同意なしで強制的に行われる税務調査)が実施されるリスクがあります。
国税局から脱税を疑われないためにも「個人事業として行っているせどり業とは別の事業でマイクロ法人を作る」「マイクロ法人を設立したあとは事業実績を作る」ことが必要です。
関連記事:マイクロ法人でおすすめの事業や業種の選び方を税理士が解説
売上のバランスを考慮してマイクロ法人で稼ぎすぎない
売上のバランスを考慮してマイクロ法人で稼ぎすぎないようにしましょう。
理由は2つあります。
1つ目は、役員報酬を多くしてしまうと、社会保険料が上がってしまうからです。
2つ目は、役員報酬以外の利益が多くなってしまうと、法人税が高くかかってしまうおそれがあるからです。
以上を踏まえると、マイクロ法人の年間売上は、およそ80万円程度が理想といえるでしょう。
大まかな内訳としては、以下になります。
- 役員報酬:54万円
- 社会保険料:13万円
- 利益:13万円
役員報酬を54万円としているのは、月45,000円に設定することで、社会保険料と所得税を最小限にできるからです。
社会保険料を13万円としているのは、年間およそ26万円を会社と個人が折半で支払うためです。
利益13万円に対して、法人税や住民税などが10万円程度課され、税引き後の純利益は約3万円となります。
せどり業をマイクロ法人と個人事業主の二刀流で節税する際は、売上のバランスを考慮し、マイクロ法人で稼ぎすぎないようにしましょう。
参考:全国健康保険協会(令和6年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|東京都)
参考:国税庁(No.5759 法人税の税率)
会社員の副業せどらーは社会保険料の節約ができない
しかし、マイクロ法人を活用して社会保険料の節約ができない点に注意してください。
法律上、会社員は雇用されている会社で、すでに社会保険を負担してもらっているため、マイクロ法人の方で社会保険料を支払えません。
ただし、所得税や住民税などはマイクロ法人を活用して節税ができるため、マイクロ法人を設立して個人事業主と二刀流するメリットはあります。
特に、個人事業主としてせどり業の売上が安定している場合は、マイクロ法人の設立を視野に入れましょう。
参考:厚生労働省(従業員のみなさま | 社会保険の加入条件やメリットについて)
関連記事:会社員をしながら社長になれる!副業で起業するメリット・デメリットを解説
マイクロ法人の設立に時間がかかる
マイクロ法人の設立には時間がかかることを念頭に置きましょう。
一般的には、2〜3週間程度かかり、手続きの流れや準備すべき内容、設立する会社の形態によって変動するものです。
法人設立の手続きを専門家に依頼する場合は比較的スムーズに進められ、設立にかかる期間も短縮できます。
一方、自分で手続きを行う場合は、準備に手間取ることも多くあるため、設立までの期間が長くなるおそれがあります。
法人設立を「法人登記を完了すること」と考えるなら、最短2〜3日程度で完了します。
しかし、必要な書類がすべて揃っている場合に限ります。
書類の準備が十分でなかったり、専門家に相談途中の段階だったりする場合、上記のような短期間での設立は難しいです。
以上を踏まえて、マイクロ法人の設立は時間がかかることを念頭に置きながら進めましょう。
関連記事:マイクロ法人に強い税理士は必要?費用相場や後悔しない選び方を解説
個人事業主とマイクロ法人で経理や税務会計を行う必要がある
せどり業を個人事業主とマイクロ法人の二刀流で運営する場合、個人事業とマイクロ法人を別々で経理・税務会計を行う必要があります。
個人事業主の場合は確定申告のみですが、マイクロ法人を設立して二刀流する場合、確定申告だけでなく決算申告も合わせて行わなければいけません。
貸借対照表や損益計算書、株主資本等変動計算書、貸借対照表及び損益計算書に係る勘定科目内訳明細書や法人事業概況説明書などの書類作成と提出が必要です。
個人事業の確定申告だけでも煩雑な作業ですから、マイクロ法人の確定申告と決算申告が加わるとなると時間や労力の面で、かなりのデメリットとなるおそれがあります。
もし、ご自身で上記のような複雑な書類を準備できないと感じる場合は、まずは税理士に相談してみることをおすすめします。
関連記事:【法人の決算申告】税理士なしのリスクと依頼時の費用相場
マイクロ法人の設立や維持に費用がかかる
マイクロ法人を設立する際や、維持していくうえで費用がかかる点も、デメリットの1つです。
マイクロ法人の設立にあたって税理士に依頼する場合、株式会社なら25万円程度、合同会社なら15万円程度かかります。
また、マイクロ法人を設立したあとにかかる維持費として考えられるものは、バーチャルオフィスや電話受付代行などの費用です。
もし、マイクロ法人が赤字であっても、均等割の法人住民税は納付しなければいけない点にも注意が必要です。
均等割と法人税割の決定的な違いとしては、法人税割は国に法人税を納めている法人、つまり黒字の法人だけが払うのに対して、均等割は赤字の法人も払わなければならないということです。言い換えると、均等割は、法人がどれだけ儲けたかに関係なく、地域社会の一員として支払う会費という性格が強いといえます。
引用:総務省(法人住民税)
個人事業主として、せどり業を行っている場合、赤字なら所得税や住民税は免除され、支払う必要はないです。
しかし、マイクロ法人の場合は赤字であっても、下記の表のとおり都道府県民税均等割と市町村民税均等割を合計した金額を納付する義務があり、最低でも7万円の法人住民税が発生します。
引用:総務省(法人住民税)
以上の内容から、マイクロ法人との二刀流で節税を検討するにあたって、法人の設立費用や維持費がどのくらいかかるかを事前に把握しておくことは重要だといえます。
関連記事:会社設立に税理士は必要?費用相場やメリットについて解説
将来受け取る年金が減ってしまう
せどり業がマイクロ法人と個人事業主の二刀流で節税する際の注意点として、将来受け取る年金が減ってしまうおそれがあることも押さえておきましょう。
社会保険料を削減することは、節税の観点から短期的にはメリットがあります。
しかし、将来の年金受給額や健康保険の保障内容にマイナスの影響を与えるおそれもありますので、事前に把握しておきましょう。
厚生年金の年金額は「報酬比例部分」と呼ばれる仕組みによって、報酬の金額に比例して決まります。
つまり、役員報酬を高く設定すれば支払う社会保険料は多くなりますが、その分将来受け取る年金額も増えることになります。
ところが、社会保険料を抑えるために役員報酬を低く設定すると、社会保険料の負担が軽くなる反面、報酬をもとに年金額が算定されるため、将来受給できる年金が減るリスクがあります。
また、社会保険料を削減すると、健康保険の給付額が少なくなるおそれがあることも押さえておきましょう。
たとえば、傷病手当金の給付額は標準報酬月額に応じて変動するため、役員報酬を低く設定すると、比例して給付額も少なくなります。
参考:日本年金機構(報酬比例部分)
参考:全国健康保険協会(傷病手当金について)
税制や保険制度の内容が変わって損をするケースもある
せどり業を個人事業主とマイクロ法人の二刀流で行っていくのは、現時点で効果的な節税手段の1つです。
しかし、税制や保険制度の変更により、損をしてしまうおそれもあります。
税金や社会保険の制度は毎年見直されており、たとえば、税率が引き上げられたり、保険料の算定方法が変更されたりすると、マイクロ法人の節税効果が減ってしまうリスクがあります。
せどり業がマイクロ法人の二刀流を活用するメリット
せどり業がマイクロ法人の二刀流を活用するメリットは次のとおりです。
- 社会保険料を節約できる
- 給与所得控除を受けられる
- 消費税の免税事業者になれるケースがある
本項目では、上記の内容について、順番に解説していきます。
社会保険料を節約できる
せどり業が個人事業主とマイクロ法人の二刀流を活用するメリットの1つとして、社会保険料の節約が挙げられます。
社会保険は個人事業主と会社員とで加入する内容が異なっており、個人事業主の場合は「国民健康保険+国民年金」で、会社員の場合は「健康保険+厚生年金」です。
特に、個人事業主の社会保険料は、労使折半のある会社員と比べ、負担する額が大きいです。
個人事業主が加入する国民健康保険は、稼いだ所得に応じて保険料が決まるため、稼げば稼ぐほど保険料も高額になります。
年収500万円の個人事業主の社会保険料は年間およそ80万円で、内訳は次のとおりです。
- 国民年金:約20万円
- 国民健康保険:約60万円
一方で、会社員の社会保険料はもらった給与に対して、社会保険料が計算されます。
つまり、個人事業主とマイクロ法人の二刀流をすることのメリットとして、給与所得であるマイクロ法人の役員報酬をできる限り少なく設定しておけば、社会保険料も最小限に抑えられるわけです。
たとえば、マイクロ法人から受け取る役員報酬を月額63,000円未満に設定しておくことで、もし仮に、マイクロ法人の売上が500万円だったとしても年間の社会保険料は約26.3万円になります。
内訳は次のとおりです。
- 厚生年金:約7万円
- 健康保険:約19.3万円
年収500万円の個人事業主は社会保険料が約80万円なのに対し、年収500万円のマイクロ法人は役員報酬を6.3万円未満に設定しておけば、社会保険料を約26.3万円に抑えられます。
また、扶養家族の有無で生じる社会保険料の違いもあります。
- <個人事業主の場合>
- 国民健康保険:妻と子の分をそれぞれ支払う必要あり
- 国民年金:夫婦2人分納める必要あり
国民健康保険法や国民年金法では、被保険者一人ひとりが独立した加入者とみなされ、家族であってもそれぞれが保険料を支払う必要があります。
個人事業主の加入する国民健康保険と国民年金には「扶養」という概念がないため、配偶者も子も個別に保険に加入しなければなりません。
- <マイクロ法人の場合>
- 健康保険:妻と子の分は支払う必要なし
- 厚生年金:保険料を納めなくても加入可能
もし扶養家族がいる場合、マイクロ法人を設立すれば、ご自身の社会保険料を節約できるだけでなく、ご家族の分まで保険料を抑えられます。
参考:日本年金機構(国民年金保険料)
参考:新宿区(令和6年度 国民健康保険料 概算早見表|総所得金額等)
参考:全国健康保険協会(令和6年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|東京都)
給与所得控除を受けられる
せどり業がマイクロ法人と個人事業主の二刀流を活用するメリットの1つとして挙げられるのが、給与所得控除を受けられることです。
下記の表のとおり、年間の給与(役員報酬)が1,625.000円未満なら、550,000円までの控除が認められています。
つまり、マイクロ法人からもらう役員報酬の額を、控除される金額内に抑えることで、所得税を最小限にできるわけです。
たとえば、マイクロ法人での役員報酬を月額45,000円に設定すると、月額45,000×12ヶ月=年間540,000円となり、給与所得控除の範囲に収められます。
上記のように設定した場合、マイクロ法人の役員報酬にかかる所得税はゼロです。
以上を踏まえると、せどり業でマイクロ法人を活用しながら節税する場合、役員報酬を給与所得控除の範囲内に収めるために、月額45,000円以下に設定しておく必要があります。
消費税の免税事業者になれるケースがある
マイクロ法人を設立しても売上が1,000万円以下の場合、消費税の免税事業者になれるケースがあります。
課税期間内で課税対象の売上が1,000万円に満たない場合に、消費税の納税義務が免税されます。
しかし、会社の資本金が1,000万円未満であることが前提条件です。
資本金が1,000万円以上だと、法人を設立した時点から消費税の納税義務が発生してしまうので注意が必要になります。
たとえば、次のような場合は、マイクロ法人を活用しながら消費税の免税事業者になれるケースです。
個人事業主として、不動産事業とせどり業の2つを行っていて、不動産収入が年間600万円、せどり業の収入が年間500万円で合計1,100万円の課税売上がある場合。
上記の場合、1,000万円を超えているため、消費税の納税義務があります。
しかし、不動産事業の売上を新たに設立したマイクロ法人に移すと、マイクロ法人の不動産収入(600万円)と個人事業のせどり業収入(500万円)に分かれて、それぞれ1,000万円以下の売上に収まります。
個人事業とマイクロ法人とで、各々が独立した「免税事業者」になれるわけです。
ただし、上記のような、「マイクロ法人を新たに設立して事業の売上を分割し、個人事業とマイクロ法人がそれぞれ独立した免税事業者となり消費税の納税義務を回避する」といった節税策は、今後の税制改正で利用できなくなるおそれもあります。
特に、2023年10月からスタートしたインボイス制度により、消費税免除のメリットが薄れてしまうケースも少なくありません。
インボイス制度については「インボイス制度がやばい・ひどい理由|抜け道と対策を解説」で詳しく解説していますので、ご参照ください。
参考:国税庁(No.6501 納税義務の免除)
参考:国税庁(No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)
まとめ
今回は、せどり業で個人事業主とマイクロ法人の二刀流で節税する方法について、メリット・デメリット、タイミングとあわせて解説しました。
個人事業とマイクロ法人の二刀流で節税する際の注意点(デメリット)は、次のとおりです。
- 個人事業主とマイクロ法人で同じ業種を選択しない
- 売上のバランスを考慮してマイクロ法人で稼ぎすぎない
- 会社員の副業せどらーは社会保険料の節約ができない
- マイクロ法人の設立に時間がかかる
- 個人事業主とマイクロ法人で経理や税務会計を行う必要がある
- マイクロ法人の設立や維持に費用がかかる
- 将来受け取る年金が減ってしまう
- 税制や保険制度の内容が変わって損をするケースもある
せどり業は他業種に比べると、マイクロ法人と個人事業主の二刀流がしやすい業種です。
故にマイクロ法人の設立を検討される方が多いのですが、上記のとおりメリットだけでなくデメリットもあるのでご注意ください。
せどり業で売上が増加しており適切な節税対策を実施したい、事業規模を拡大してさらに売上を伸ばしたい方は、マイクロ法人の設立を検討してみましょう。
なお弊所では、顧問契約と法人化をセットでご依頼くださる方向けに、株式会社13.8万円、合同会社1.6万円で会社設立・法人化フルサポートプランを提供させていただいております。