こんにちは、合同会社の設立支援の実績が豊富な税理士の植村拓真です。
節税目的で法人化や会社設立を検討している方で、一人合同会社の設立を検討しているケースは少なくありません。
実際に弊所では、一人合同会社の設立を検討している方から、顧問税理士をつけるべきか悩んでいる旨のご相談をよくいただきます。
今回は、同じような悩みをお持ちの方向けに、一人合同会社の設立に税理士が必要なケースといらないケースを選び方とあわせて解説します。
一人合同会社の設立に税理士が必要なケース
上記のようなご質問をいただく機会が多いのですが、一人合同会社の設立で税理士が必要なケースはいくつかあります。
合同会社を設立する前後の手続きでは、必要書類や準備物が多く期限もあるため、事業に集中しつつ設立したい方であれば税理士は必要です。特に、事業開始後の決算時には法人税確定申告書や地方法人税確定申告書、さらに道府県民税や市町村民税など、複数の申告書類を作成しなければなりません。
さらに、設立後は貸借対照表や損益計算書などの決算書類や、勘定科目内訳明細書、事業概況書といった書類も用意する必要があり、作成業務は煩雑になりがちです。
また、年末調整時には給与支払報告書や源泉徴収票等の法定調書合計表の提出、必要に応じて報酬や契約金の支払調書、不動産使用料の支払調書、償却資産申告書といった書類も提出しなければならないケースもあります。
上記を正確に処理するためには専門知識が必要で、なおかつ期限を守る必要があるため、一人合同会社であっても設立前後に税理士に依頼する必要性は高いです。
ご自身で合同会社の設立方法や経理、税務会計などについて調べて、事業を行いながらも正確に対応できない方は、設立時から税理士への依頼を検討してみましょう!
関連記事:合同会社に税理士は必要?費用相場や不要なケースも解説
関連記事:一人社長(一人会社)の税理士の必要性|費用相場と選び方も解説
一人合同会社の設立に税理士がいらないケース
一人合同会社の設立で税理士の必要性は高いと解説しましたが、必ず必要なわけではありません。
合同会社に税理士が必要といった法律はありませんし、事業規模が小さくて税務に関する専門知識や経験がある方であれば、税理士の必要性は設立後も低いです。
たとえば、合同会社の設立について、自力で調べて手続きを行うための時間を確保できる方であれば、税理士に依頼しなくても十分対応できるでしょう。
また、合同会社を設立したあとの決算に関しても、会計ソフトを活用すれば経理や税務会計の負担を大幅に軽減できます。
最近ではクラウド会計ソフトが普及しており、経理や税務会計の手間を省きつつ正確に申告書類を作成しやすい環境が整っています。もちろん、専門知識ゼロの状態から会計ソフトを活用して、合同会社の経理や税務会計を正確に行うのは至難の業です。
とはいえ、実際に自力で合同会社をひとりで運営されている方もいますので、一人合同会社で税理士がいらないケースはあるといえます。
ただし、税務調査や税制改正や法律変更に伴い、自力で対応しきれない場面に直面するおそれがありますので、事業に集中したい方であれば設立前後で税理士は必要です。
一人合同会社でも経理や税務会計の難易度は高い
一人合同会社には取引量が少ない傾向があるため、経理や税務会計の難易度が低いと考える方は少なくありません。しかし、実際には先ほど解説したとおり、税務に関する専門知識や経験がなければ、正確に合同会社の経理や税務会計を行うのは困難です。
そもそも初めて法人として事業に取り組む方であれば、合同会社の経理や税務会計で何をすればいいのかから調べなければなりませんし、多くの専門用語を覚える必要があります。
そのうえで最新の税制や法律などを把握して、事業を行いながら経理や税務会計を正確に行わなければなりません。
また、法人には社会保険の加入義務があり、給与から社会保険料を差し引く際には正確な賃金台帳の作成が必要です。賃金台帳に不備がある場合、年末調整で源泉徴収税額を正確に計算できず、納税額が高くなるおそれがあります。
事業で売上を伸ばすことだけに集中しつつ、正確な経理や税務会計を行い、適切な節税対策を実施したい方は、一人合同会社でも税理士への依頼を検討してみましょう。
関連記事:顧問税理士とは?顧問契約の必要性・メリットや注意点を解説
一人合同会社における税理士の役割
一人合同会社における税理士は、さまざまな経理や税務会計のサポートを行う重要な役割を担います。
一人合同会社の決算時には、法人税確定申告書や地方法人税確定申告書など、数多くの法定書類を作成して提出しなければなりません。貸借対照表や損益計算書、社員資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、事業概況書などのさまざまな書類の準備が必要です。
さらに、年末調整では、給与支払報告書や源泉徴収票等の法定調書合計表の作成と提出が求められます。必要に応じて報酬や不動産使用料の支払調書、償却資産申告書なども必要です。
法人の経理や税務会計は一人合同会社であっても手間がかかり、税務に関する専門知識や経験がなければ適切に処理するのは難しい傾向があります。
また、各書類には期限が定められており、提出が遅れるとペナルティが発生するおそれもあります。そこで、一人合同会社でも税理士に依頼しておけば、煩雑な手続きを正確かつ迅速に処理してくれますので、事業に集中できる環境を整えたい方にとって依頼するメリットは大きいです。
一人合同会社で安い税理士に依頼する注意点
一人合同会社における税理士の必要性について確認して、税理士への依頼を検討されている方の中には、格安な事務所を探して相談したいと考えている方もいると思います。
一人合同会社であれば税理士費用は、普通の法人に比べると低い傾向があり、事務所によっては月額顧問料が1万円前後の格安なケースもあります。税理士費用を抑えられてラッキーだと言いたいところですが、格安税理士には落とし穴があるので注意しましょう。
もちろん、すべての税理士費用が格安な事務所が該当するとは思いませんが、本業界は安ければ安いほどサービスの質が低く、担当者の返信が遅かったり、態度が冷たかったりと安心して相談しづらい環境である傾向があります。実際に、弊所でも格安事務所からの変更に関するご相談をよくいただきます。
ですので、一人合同会社で税理士費用をなるべく抑えたいと考えている方は、税理士を選ぶ際に相談しやすさやサービスの質、担当者の対応などについて、面談時によく確認しておきましょう。
関連記事:税理士選びで失敗しない方法|依頼タイミングと変更のコツも解説
関連記事:ダメな税理士とは?良い税理士・悪い税理士の見極め方と対処法
一人合同会社の税理士に関するよくある質問
最後に、一人合同会社の税理士に関するよくある質問を紹介します。一人合同会社でご自身に合った税理士を探すうえで、参考にしていただけますと幸いです。
※内容は随時追加いたします
合同会社はやめておけと見かけたのですが、なぜですか?
合同会社を検討している方の中には「合同会社はやめておけ」といった、ネガティブな意見を見かけた方もいらっしゃると思います。
合同会社はやめておけといわれる理由の多くは、合同会社の特性や運営に関する誤解や事前準備の不足が原因です。一人合同会社では特に、経営責任があなたひとりに集中するため、運営面でのプレッシャーを感じる場面があります。
そして、設立費用は株式会社よりも低いですが、社会保険の加入義務や経理・税務会計の複雑さにより、そもそも法人化しなければよかったと後悔する方もいます。
さらに合同会社は株式会社に比べて知名度が低く、資金調達や新規の取引先を開拓する際に対外的な信用面で不安を感じる方は少なくありません。一人合同会社を設立を後悔しないための対策を以下の記事で解説しておりますので、設立を検討するうえで参考にしてみてください。
関連記事:合同会社で後悔する理由と対策|個人事業主や株式会社と比較して設立を検討
マイクロ法人であれば税理士はいらないですか?
マイクロ法人を設立して、一人合同会社として運営を考えている場合、税理士が必要かどうか迷う方は少なくありません。
結論として、税理士は必須ではありませんが、法人をひとりで運営するのが不安な方であれば必要です。マイクロ法人と個人事業主の二刀流を想定されている方であれば、マイクロ法人は社会保険料や税金の負担を抑えるために設立するため、取引量が少なく税理士は不要だと考える方がいます。
しかし、マイクロ法人とはいえ法人に代わりなく、経理や税務会計を行う必要はありますので、税務に関する専門知識や経験がない方は、税理士が必要です。
関連記事:マイクロ法人に強い税理士は必要?費用相場や後悔しない選び方を解説
合同会社の決算は自分でできますか?
本記事で解説したさまざまな書類を準備して、正確に決算を行うまでを期限までにひとりで対応できる方であれば、合同会社の決算を自分でできるといえます。
「一人合同会社でも経理や税務会計の難易度は高い」の見出しの内容を参考にして、一人合同会社の決算を自力で対応するのか、税理士に依頼するのかを検討してみましょう。
合同会社の一人社長の給料は何を基準に決めればいいですか?
一人合同会社を設立した際、社長であるご自身の給料(役員報酬)を決めるのですが、主な基準は以下のとおりです。
- 社会保険料を抑える
- 社長個人の所得税を抑える
- 独立前の給料を考慮する
- 同じ業種や同じ規模の会社の役員報酬を参考にする
- 会社の年間計画を考慮してシミュレーションする
詳しくは以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください。
関連記事:合同会社の一人社長が給料(役員報酬)を設定する際のルールと決め方
まとめ
今回は、一人合同会社の設立に税理士が必要なケースといらないケースを選び方とあわせて解説しました。
一人合同会社は小規模で取引量が少ない傾向がありますが、法人には変わりありません。個人事業主よりも経理や税務会計の難易度が高く、税務調査のリスクも高まりますので、自力で対応できたい、事業に集中したいといった方は、税理士への依頼を検討しましょう。
そして、なるべく費用を抑えて安い税理士に依頼したいと考えている方は、後悔しないためにも担当者との相性やサービスと費用のバランスなどに注目して選びましょう。咄嗟に相談しづらいと税理士費用を支払っている意味がありませんので、慎重に依頼先を選ぶことが重要です。
また、合同会社に税理士は必須ではありませんので、自力で経理や税務会計、税務調査などに対応できる方は、一人合同会社で税理士がいらないケースだといえます。