こんにちは、ネットワークビジネスに強い税理士の植村拓真です。
弊所では、ネットワークビジネス事業者(ディストリビューター)の方から、税務に関する相談を寄せられる機会が多いです。
特に、下記のようなご質問をよくいただきます。



本記事を読んでいるネットワークビジネス事業者の方の中にも、上記のような疑問を抱いている方がいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、ネットワークビジネスの節税対策について、副業がばれない方法や無申告のリスクとあわせて解説します。
初めて確定申告を行うネットワークビジネス事業者の方は、本記事を参考にしてみてください。
適切な節税対策を実施したい方、面倒な確定申告を丸投げしたい方は、弊所までお気軽にご相談くださいませ!
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ネットワークビジネスで使える節税対策
本項目では、ネットワークビジネスで使える節税対策について解説します。

上記のような悩みを抱えているネットワークビジネス事業者の方は、本項目を参考にしてみてください。ネットワークビジネスで使える節税対策は、次のとおりです。
- 経費を適切に計上する
- 青色申告を選択する
それでは、順番に見ていきましょう。
経費を適切に計上する
課税所得は収入から必要経費を差し引いて算出されるため、経費を適切に計上すれば、節税効果が期待できます。経費計上できる主な支出は、以下のとおりです。
- 商品の仕入れにかかる費用
- 電車やバスなどの交通費
- 携帯電話やインターネットの利用料金
- パソコンやプリンタの購入代金
- 文房具やコピー用紙などの消耗品費
- 事業所の家賃や水道光熱費
- 書籍や雑誌の購入代金
- 打ち合わせや商談時のカフェ代
また、経費計上するうえで、領収書やレシートなどの証憑書類を保管しておきましょう。
なお、インターネットの利用料金や水道光熱費などプライベートでも使用しているものを経費計上する場合、適切な割合で家事按分する必要があります。
家事按分の割合が適切かどうか不安な場合は、税理士への相談も検討してみましょう。
参考:国税庁(No.2210 必要経費の知識)
参考:国税庁(必要経費|令和6年分 確定申告書等作成コーナー)
関連記事:ネットワークビジネスを行う個人事業主の税金と確定申告について税理士が解説
青色申告を選択する
ネットワークビジネスの収入が事業所得に該当する場合、青色申告を選択できます。
なお、事業所得と認められる要件については、本記事のネットワークビジネスの所得区分の項目をご参照ください。
青色申告は白色申告と比べると高い節税効果が期待できます。青色申告特別控除は青色申告における特典のひとつで、要件を満たしていれば、最大65万円の控除を受けられます。
また、赤字を最大3年間にわたって繰り越して、翌年度以降の黒字から控除できるのも青色申告で得られるメリットのひとつです。
上記の制度を純損失の繰越しといい、長期間にわたる税負担の軽減が期待できます。
関連記事:ネットワークビジネスを行う個人事業主の税金と確定申告について税理士が解説
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ネットワークビジネスの確定申告における基礎知識
本項目では、ネットワークビジネスの確定申告における基礎知識について解説します。


上記のような不安や疑問を抱いているネットワークビジネス事業者の方は、本項目を参考にしてみてください。
ネットワークビジネスの確定申告における基礎知識について、以下の2つに分けて解説していきます。
- ネットワークビジネスの所得区分
- ネットワークビジネスで確定申告が必要かどうかの判断基準
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
ネットワークビジネスの所得区分
- 事業所得
- 雑所得
上記について順番に解説していきますので、ご自身の場合はどちらに該当するのかを判断するうえで、参考にしてみてください。
事業所得
ネットワークビジネスの収入が事業所得に該当するかどうかの基準は、次のとおりです。
事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
引用:国税庁(事業所得と雑所得の区分について)
また、過去の判例では事業所得に関して、下記のように定義しています。
事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得
引用:裁判所(最二小判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁)
なお、帳簿書類の保存があれば、ネットワークビジネスの収入が300万円以下であっても事業所得に該当するとされています。
関連記事:確定申告が全くわからない方へ|やり方や相談先について税理士が解説
雑所得
雑所得の定義は、次のとおりです。
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。
引用:国税庁(No.1500 雑所得)
たとえば、以下のようなケースで得られた収入は、雑所得に該当します。
- 活動する月としない月がある
- 3か月間だけ活動して休止した
- 月間の商談件数が1〜2件程度しかない
なお、ネットワークビジネスの収入が雑所得に該当する場合、青色申告を選択できないため、活用できる節税対策が限定されます。
関連記事:確定申告が全くわからない方へ|やり方や相談先について税理士が解説
ネットワークビジネスで確定申告が必要かどうかの判断基準
ネットワークビジネスで確定申告が必要かどうかの判断基準について、下記のケースごとに解説していきます。
- ネットワークビジネスを本業で行っている
- ネットワークビジネスを副業で行っている
ネットワークビジネスを本業で行っている
ただし、以下のようなケースでは確定申告が不要とされています。
- 年間収支が赤字
- 黒字でも所得控除や税額控除の範囲内に収まる
たとえば、ネットワークビジネスの収入から必要経費を差し引いた所得の金額が30万円だった場合、基礎控除の控除額48万円の範囲内に収まるため、所得税は発生しません。
なお、下記のとおり、確定申告は不要でも、居住地の自治体へ住民税の申告が必要なケースもあるため注意が必要です。
住民税の所得控除額は、所得税の所得控除額より小さいため、所得税は非課税となっても住民税は課税となることがあります。
引用:武蔵野市(所得税は非課税でしたが住民税は課税になりました)
また、青色申告を選択しているネットワークビジネス事業者の方は、赤字の繰越控除が最大3年間認められているため、赤字の場合でも確定申告を行うメリットがあります。
参考:国税庁(確定申告が必要な方)
参考:国税庁(No.1100 所得控除のあらまし)
参考:国税庁(No.1200 税額控除)
参考:国税庁(No.2070 青色申告制度)
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
ネットワークビジネスを副業で行っている
ネットワークビジネスを副業で行っているケースでは、ネットワークビジネスで得られた収入から必要経費を差し引いた所得の金額が20万円以下であれば、確定申告は不要です。
たとえば、ネットワークビジネスの収入が30万円でも、必要経費が15万円ある場合は所得の金額が15万円となるため、確定申告はいりません。
ただし、本業の給与収入が2,000万円を超えるネットワークビジネス事業者の方は、ネットワークビジネスの所得が20万円以下でも、確定申告が必要です。
また、ネットワークビジネスの所得が20万円以下で確定申告が不要なケースでも、居住地の自治体へ住民税の申告が必要な場合もあるため注意しましょう。
関連記事:副業の確定申告は税理士に相談!費用や副業バレ回避の方法も解説
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ネットワークビジネスの確定申告で注意するポイント
本項目では、ネットワークビジネスの確定申告で注意するポイントについて解説します。


上記のような身勝手な思い込みは、下記のようなリスクを高めるため注意が必要です。
- 無申告だとペナルティを受けるおそれがある
- 本業の会社に副業がバレるリスクがある
副業がバレる確率を下げる方法も解説しますので、副業のネットワークビジネス事業者の方は、本項目を参考にしてみてください!
それでは、順番に見ていきましょう。
無申告だとペナルティを受けるおそれがある
ネットワークビジネスの収入について申告を怠ると、延滞税や加算税などのペナルティを受けるおそれがあります。
延滞税は期限までに納めるべき税金に対する遅延利息として機能し、下表のとおり、日割り計算で負担額が決まります。
また、加算税の概要は、下表のとおりです。
引用:財務省(加算税の概要)
以上のように、無申告が発覚した場合、厳重な処分を受けるおそれがあります。
無申告は百害あって一利なしであるため、定められている期限までに確定申告を行いましょう。
関連記事:無申告がバレる理由|確定申告していない人のペナルティと末路
本業の会社に副業がバレるリスクがある
確定申告によって本業の会社に副業がバレるリスクがあります。本業の会社に副業がバレる主な原因は、住民税の税額変化です。
引用:総務省(納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿)
居住地の自治体から本業の会社へ送付される特別徴収税額決定通知書に記載されている住民税の税額が、本業の給与に見合わない金額であるのに気付かれた場合、副業がバレる確率が高まります。
上記のリスクを軽減させるためには、確定申告書の第二表に記載されている「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」の欄で「自分で納付」を選択しましょう。
ただし、下記のとおり、自分で納付を選択しても、特別徴収に変更されるケースがあるため注意が必要です。
給与所得以外の所得がマイナスの場合や、申告の内容によっては、「自分で納付」を選択していても、特別徴収となる場合があります。
引用:文京区(副業がある場合の徴収方法について)
本業の会社に副業がバレるのを懸念しているネットワークビジネス事業者の方は、居住地の自治体へ事前に確認しておくのが望ましいです。
関連記事:副業の確定申告は税理士に相談!費用や副業バレ回避の方法も解説
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ネットワークビジネスの節税対策に関するよくある質問
最後に、ネットワークビジネスの節税対策に関するよくある質問をご紹介します。



上記のような疑問や不安を抱えているネットワークビジネス事業者の方は、本項目も参考にしてみてください。内容は随時追記します。
ネットワークビジネスのオートシップ代は経費計上して大丈夫でしょうか?
ネットワークビジネスのオートシップ代を経費計上する際の判断基準は、次のとおりです。
事業所得、不動産所得および雑所得の金額を計算する上で、必要経費に算入できる金額は、次の金額です。
(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
引用:国税庁(No.2210 必要経費の知識)
- 実際に販売する
- デモンストレーションで使用する
- サンプルとして配布する
一方、オートシップで送られてくる商品を個人消費している場合、経費計上が否認されるおそれがあります。
オートシップ代の経費計上に関して判断に迷う場合は、税理士への相談も検討しましょう。
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
ネットワークビジネスの報酬は外交員報酬に該当しますか?
ネットワークビジネスの報酬は外交員報酬に該当するケースが多いです。外交員に関しては下記のように定義されています。
外交員とは、事業主の委託を受け、継続的に事業主の商品等の購入の勧誘を行い、購入者と事業主との間の売買契約の締結を媒介する役務を自己の計算において事業主に提供し、その報酬が商品等の販売高に応じて定められている者
引用:国税不服審判所(平11.3.11裁決、裁決事例集No.57 206頁)
外交員報酬を支払う場合、所得税および復興特別所得税を源泉徴収しなければならないと定められています。
上記は確定申告の要否に関係するため、ご自身が提携しているネットワークビジネスの会社へ確認しましょう。
なお、外交員報酬として支払われている場合、下記のとおり、所得税の還付を受けられるケースがあります。
確定申告書を提出する義務のない人でも、給与等から源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が年間の所得金額について計算した所得税額よりも多いときは、確定申告をすることによって、納め過ぎの所得税の還付を受けることができます。この申告を還付申告といいます。
引用:国税庁(No.2030 還付申告)
参考:国税庁(No.2804 外交員等に支払う報酬・料金)
参考:国税庁(外交員又は集金人の業務に関する報酬又は料金)
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副業禁止の会社に勤めていても、ネットワークビジネスを行って大丈夫でしょうか?
副業禁止の会社に勤務している場合、ネットワークビジネスを無断で行うのは避けるべきです。
副業を行うのは法的に問題ありませんが、就業規則で禁止されているケースでは、減給や降格などの懲戒処分を受けるおそれがあります。
また、確定申告の際に住民税の徴収方法を自分で納付にした場合でも、居住地の自治体によっては特別徴収で処理されてしまうケースがあり、本業の会社に住民税の増減が気付かれる危険性があります。
ネットワークビジネスの確定申告をする際、職業欄の業種は何と書けば良いでしょうか?
ネットワークビジネスの確定申告をする場合、確定申告書の職業欄への記載例は、次のとおりです。
- 無店舗小売業(健康食品)
- 無店舗小売業(化粧品)
- 無店舗小売業(日用品)
上記はあくまでも一例です。
ネットワークビジネスの収入が雑所得に該当する場合、種目は何と書けば良いでしょうか?
ネットワークビジネスの収入が雑所得に該当する場合、種目は報酬と記載するのが適しているケースが多いです。
また、下記のように、ご自身が取り扱う商材に合わせて具体的に表記しても問題ありません。
- 健康食品の販売による報酬
- 化粧品の販売による報酬
- 日用品の販売による報酬
下表のとおり、確定申告書第二表の所得の内訳欄に種目を記載しますが、記入欄が足りなくなってしまった場合は、所得の内訳書を活用しましょう。
ネットワークビジネスで開業届を出すときの書き方を教えてください
ネットワークビジネスで開業届を出す際、職業欄と事業の概要欄の書き方で迷う方が多いため、記載例をご紹介します。
- 無店舗小売業(健康食品)
- 無店舗小売業(化粧品)
- 無店舗小売業(日用品)
また、事業の概要欄への記載例は、以下のとおりです。
- 連鎖販売取引による健康食品や化粧品などの販売及び販売組織の育成
- 栄養補助食品や日用品、家庭用電化製品などの販売代理店業
開業届の書き方については、国税庁のホームページもご参照ください。
なお、開業届と同時に青色申告承認申請書も提出すれば、最高65万円の青色申告特別控除や純損失の繰越しなどの特典を享受できるため、高い節税効果が期待できます。
ネットワークビジネスで赤字でも確定申告は必要ですか?
ネットワークビジネスで赤字の場合、確定申告が必要なケースに該当しません。
ただし、青色申告を選択しているネットワークビジネス事業者の方は、赤字でも確定申告を行えば、純損失の繰越しが適用できます。
純損失の繰越しは青色申告の特典のひとつであり、下記のような制度です。
事業所得などに損失(赤字)の金額がある場合で、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除します。
引用:国税庁(No.2070 青色申告制度)
純損失の繰越しに関して不明な点がある場合、税理士への相談も検討してみましょう。
ネットワークビジネスの収入を扶養内に収めたい場合、いくらまでなら大丈夫ですか?
所得税上の扶養に関しては、合計所得金額が48万円以下であれば、扶養控除や配偶者控除を受けられます。
なお、合計所得金額が48万円を超えていても、133万円以下であれば、配偶者特別控除を適用できます。
社会保険上の扶養に関しては、年収が130万円未満でなければなりません。
本業で源泉徴収されている場合、副業のネットワークビジネスで確定申告は必要ですか?
原則、本業で源泉徴収されている場合でも、副業のネットワークビジネスで確定申告は必要です。
繰り返しになりますが、本業の給与収入が2,000万円を超えるネットワークビジネス事業者の方は、ネットワークビジネスの所得が20万円以下でも確定申告が必要になるため注意しましょう。
本業で源泉徴収されているケースの確定申告で不明な点があれば、税理士への相談も検討してみましょう。
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まとめ
今回は、ネットワークビジネスの節税対策について、副業がばれない方法や無申告のリスクとあわせて解説しました。
ネットワークビジネスで使える節税対策は、次のとおりです。
- 経費を適切に計上する
- 青色申告を選択する
所得は性質によって10種類に分けられており、ネットワークビジネスの場合、以下のどちらかに区分されます。
- 事業所得
- 雑所得
なお、青色申告を選択できるのは、事業所得のあるネットワークビジネス事業者の方だけですので注意しましょう。
ネットワークビジネスで確定申告が不要なケースは、下記のとおりです。
- 本業の場合:年間収支が赤字、もしくは黒字でも所得控除や税額控除の範囲内に収まる
- 副業の場合:収入から必要経費を差し引いた所得の金額が20万円以下
また、確定申告を適切に行わない場合、下記のようなリスクを高めるため注意が必要です。
- 無申告だとペナルティを受けるおそれがある
- 本業の会社に副業がバレるリスクがある
確定申告書の第二表に記載されている「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」の欄で「自分で納付」を選択すれば、本業の会社に副業がバレるリスクを軽減できます。