こんにちは、マイクロ法人の設立や顧問実績が豊富な税理士の植村拓真です。
本記事を読んでいる方は、マイクロ法人を設立して税金や社会保険料を抑えたいと考えていると思います。
そして、同時に以下のような不安を抱いており、マイクロ法人を設立後に後悔したくないとも考えているのではないでしょうか。
今回本記事を作成するにあたって、実際にマイクロ法人を運営されている顧問先様、過去にマイクロ法人を設立した経験がある顧問先様にご質問させていただいたところ、やはり設立前に同じような内容を考えていたとご回答いただきました。
今回はそんなお悩みの方に向けて、マイクロ法人設立で後悔する理由と対策を税理士が徹底解説します。
マイクロ法人設立で後悔する理由と対策【体験談】
上記のように考えているマイクロ法人で後悔したくない方向けに、マイクロ法人設立で後悔する理由と対策を解説します。
マイクロ法人の設立を検討するうえで参考にしてみてください。
①法人の維持費を考慮していない
マイクロ法人を設立する際、多くの方が見落としがちなのが維持費に関する問題です。
法人を維持するためには、年間で一定の費用がかかります。
たとえば、法人税や住民税は最低でも毎年数万円かかり、さらに税務申告や決算書の作成が必要となります。
特に、社会保険料の負担は個人事業主の時よりも大幅に増えるケースがあり、経営を圧迫する原因となりかねません。
また、経理や税務会計を記帳代行業者や税理士に依頼する場合、報酬分も負担になります。
マイクロ法人の設立を後悔しないためにも、維持費を正確に把握したうえで設立前にコストを見積もることが重要です。
②経理や税務会計が想像以上に難しくて時間がかかる
マイクロ法人を設立する際、税金や社会保険料の節約を目的とする方が多いですが、経理や税務会計にかかる時間を軽視すると後悔します。
マイクロ法人を運営するうえで、個人事業主よりも複雑な経理や税務会計を正確に行う必要があります。
特に、法人税や消費税の申告、法定調書の作成などを正確に行うためには、専門知識と経験、膨大な時間が必要です。
さらに、毎月の経理業務や決算処理、書類の管理なども時間がかかり、結果として事業に集中できなくなる恐れがあります。
事業に集中するためには、マイクロ法人を設立する前に経理や税務会計に必要なスキルを学び、自力での対応が難しい場合は早めに税理士への依頼が必要です。
事前に準備しておけば、マイクロ法人を設立したあとに時間面での負担を最小限に抑えられます。
③独学で設立して手続きや決算申告などでミスをする
マイクロ法人について独学で学んでうえで設立する方も少なくありません。
しかし、マイクロ法人の設立には定款作成や登記手続きなどで専門知識が必要です。
そして、設立手続きや決算申告時のミスによる修正申告や追徴課税のリスクが高まります。
マイクロ法人の手続きや事務作業に関するミスを回避するためには、設立手続きや税務申告の段階で専門家への依頼を検討しましょう。
税理士や司法書士に依頼すれば、正確に手続きを進めてもらえますし、設立後のトラブル発生を未然に防止できます。
費用を抑えるために独学を選ぶ方も多いですが、長期目線では専門家への依頼で得られる安心感と確実性は大きな価値があります。
④年金が少なくなるとあとから気づいた
マイクロ法人を設立する主な目的は社会保険料を抑えようとすることですが、結果として将来受け取る年金受給額が減少するとあとから気づくケースがあります。
役員報酬額を低く設定すると、社会保険料の負担を抑えられて目先の手取りが増加します。
しかし、老後の生活資金の柱となる年金が減額されるデメリットも生じるので注意しましょう。
マイクロ法人を設立する際は、役員報酬の適切な設定を行って将来の年金額をシミュレーションすることが重要です。
マイクロ法人設立で後悔したくない人必見の注意点
顧問先様にご協力いただき、実際にマイクロ法人を設立した体験談をもとに後悔する理由と対策を紹介しました。
続いては、マイクロ法人設立で後悔したくない方必見の注意点を紹介します。
①サラリーマンは社会保険料を抑えられない
サラリーマンの社会保険料は、マイクロ法人を設立しても抑えられません。
すでに勤務先で社会保険に加入しており、社会保険料は原則として勤務先の給与に基づいて計算されるからです。
サラリーマンとしての給与がある限り、社会保険料は変わりません。
さらに、マイクロ法人から役員報酬を受け取る場合、役員報酬にも社会保険料がかかるため、社会保険料が増える恐れがあります。
サラリーマンの方はマイクロ法人を設立しても、社会保険料を抑えられないので注意しましょう。
ちなみに、複数の会社で社会保険に加入すると、本業の会社に決定通知書が届いて副業バレにつながる恐れがあります。
関連記事:マイクロ法人設立でサラリーマンが節税するメリットや注意点を解説
関連記事:会社員の会社設立はばれる!勤務先に内緒で法人化する方法と注意点を解説
②個人事業主とは業種を別にしないと税金逃れ扱いされる恐れがある
マイクロ法人と個人事業主を二刀流する際は、別々の業種を設定しましょう。
同じ業種を選択して事業を行ってしまうと、税務署から税金逃れ扱いされる恐れがあるからです。
マイクロ法人と個人事業主の事業内容を同じにする場合、税務署から個人事業主と法人間で収益を移動して税金逃れをしようとしていると判断されるリスクがあります。
結果、税務調査に入られるリスクが高まり、追徴課税が発生する恐れもあります。
マイクロ法人と個人事業主の二刀流で節税を検討している方は、各事業形態で別々の業種を選択しましょう。
関連記事:マイクロ法人と個人事業主の二刀流で節税するメリット・デメリットを解説
関連記事:マイクロ法人でおすすめの事業や業種の選び方を税理士が解説
③適切な設立のタイミングを判断するのが困難である
マイクロ法人を設立するタイミングは、税金、社会保険料や介護保険料の負担額、事業の収益状況など、さまざまな要素が大きく影響を与えるため、入念にシミュレーションを行ったうえでの検討が必要です。
しかし、適切なタイミングを独学で見極めるのは困難であり、誤ったタイミングで設立すると、逆に税負担が増加したり、社会保険料が増額してしまったりするリスクがあります。
たとえば、事業年度の途中でマイクロ法人を設立すると、法人税や消費税の課税期間が短縮されて、結果的に税務申告の手間やコストが増えるケースがあります。
また、事業が不安定な段階でマイクロ法人を設立してしまうと、売上が少ないまま固定費が増えるため、経営を圧迫しかねません。
繰り返しになりますが、上記のようなリスクを回避するためには、マイクロ法人を設立する前に現時点での事業の状況や将来の見通しを十分に検討する必要があります。
事業に集中したい、独学で正確にシミュレーションを行う余裕がない方は、弊所のようにマイクロ法人の対応実績が豊富な税理士への相談も検討してみましょう。
関連記事:マイクロ法人に強い税理士は必要?費用相場や後悔しない選び方を解説
マイクロ法人設立で後悔したくない方からよくある質問
最後に、マイクロ法人設立で後悔したくない方からよくある質問を紹介します。
マイクロ法人の設立を検討するうえで、参考にしてみてください。
Q.マイクロ法人でおすすめの事業はなんですか?
マイクロ法人でおすすめの事業は、一人社長で運営できて初期投資が少ない事業です。
たとえば、ウェブ開発やアプリ制作、SEOコンサルティングといったIT関連の事業、ブロガーやYouTube、デジタルコンテンツ販売といったコンテンツ制作、ITやマーケティング関連のコンサルティング業務などが挙げられます。
Q.マイクロ法人の設立は違法ですか?
マイクロ法人の設立自体は違法ではありません。
ただし、設立の目的や運営方法によっては、違法とみなされる恐れがあります。
たとえば、マイクロ法人と個人事業主で同じ事業を行うと、税務署から租税回避とみなされる恐れがあります。
別々の事業を選択しましょう。
Q.マイクロ法人は売上なしでも問題ありませんか?
マイクロ法人は売上なしでも問題ありません。
ただし、事業実態がないと税務署からペーパーカンパニーとみなされて、税務調査に入られる恐れがあります。
事業活動を行うようにしましょう。
まとめ
今回は、マイクロ法人設立で後悔する理由と対策を税理士が徹底解説しました。
マイクロ法人の設立は、税金や社会保険料を抑える手段として有効な手段です。
しかし、事前に正しい情報を学んだうえでしっかりシミュレーションを行ってから設立しなければ、マイクロ法人を維持できなかったり、税金や社会保険料が増えてしまったりする恐れがあります。
そして、マイクロ法人を節税目的のみで設立して事業実態がない場合、税務署から税金逃れとみなされて税務調査に入られる恐れもあります。
今後安全かつ損をせずに事業を続けていくためにも、マイクロ法人を設立する前に正確な情報を学び、現時点で設立しても損をしないかを確認しておきましょう。