こんにちは、マイクロ法人設立の支援実績が豊富な税理士の植村拓真です。
個人事業主や副業が軌道に乗り、事業規模が拡大している方から、マイクロ法人の設立について、弊所にご相談をいただく機会がよくあります。とりわけ、以下のようなご質問やご相談をいただきます。
本記事を読んでいる方の中にも、上記のように思われている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はそんな方向けに、マイクロ法人設立は年収いくらからなのかについて、社会保険を最安化させる目安とあわせて解説します。マイクロ法人の設立を迷われている方や、設立する基準に関して知りたい方は、本記事を参考にしてみてください。
マイクロ法人設立の狙いは社会保険料の節約
本項目では、マイクロ法人を設立する狙いについて解説します。マイクロ法人を設立する目的はいくつかありますが、特に、社会保険料の節約が大きな狙いです。
上記に関して、以下の3つに分けて詳しく解説します。
- 社会保険の概要
- マイクロ法人と個人事業主の二刀流で社会保険料を最安化
- サラリーマンはマイクロ法人で社会保険料の節約ができない
上記について順番に見ていきましょう。
社会保険の概要
そもそも、社会保険の仕組みは下記のとおりです。
社会保険とは、誰しも人生の途上で遭遇する様々な危険(傷病・労働災害・退職や失業
による無収入~これらを「保険事故」、「リスク」という。)に備えて、人々が集まって集
団(保険集団)をつくり、あらかじめお金(保険料)を出し合い、それらの保険事故に
あった人に必要なお金やサービスを支給する仕組みである。
引用:厚生労働省(第3章 日本の社会保障の仕組み|p39)
以下5つの保険をまとめて社会保険と呼んでいます。
法人を設立すると、上記5つの保険への加入義務が発生します。なお、上記5つのうち、労災保険と雇用保険は労働者を対象としているため、事業主や会社役員には適用されません。
上記の理由から、マイクロ法人は自分1人だけで設立するケースが多いため、健康保険と厚生年金保険のみの加入です。
個人事業主が加入する、国民健康保険と国民年金と比較したときに、健康保険と厚生年金の保険料は安い傾向にあります。
参考:厚生労働省(事業主や会社役員が業務中に傷病を負った場合、労災保険は適用されるのでしょうか。)
マイクロ法人と個人事業主の二刀流で社会保険料を最安化
社会保険料を最も安くしたい場合、個人事業主とマイクロ法人の二刀流を行うのが効果的です。
法人化するだけでも社会保険料を抑えられますが、所得が増えるにつれて保険料も増加してしまう点がデメリットです。上記のデメリットは、個人事業主を続けつつ、マイクロ法人を運営する二刀流によって解消できます。
生活費は個人事業主の方で稼ぎ、マイクロ法人の役員報酬を最低限にすれば、社会保険料を最も安くできます。なお、個人事業主とマイクロ法人が同じ業種だと、租税回避のために収入を分散しているとみなされ、違法と判断されるおそれがあるため注意しましょう。
たとえば、個人事業主でアフィリエイト事業を行い、マイクロ法人でITコンサルティング事業を運営するといった形で、業種を明確に分ける必要があります。
関連記事:マイクロ法人でおすすめの事業や業種の選び方を税理士が解説
サラリーマンはマイクロ法人で社会保険料の節約ができない
サラリーマンはマイクロ法人を活用して、社会保険料の節約ができませんので注意しましょう。勤務先で既に加入している社会保険に加えて、マイクロ法人の方でも社会保険料が発生するため、支払う額が増えてしまうからです。
なお、所得税を減らせる見込みはあります。副業の所得が800万円を超える場合、所得税の税率が法人税の税率よりも上回り始めるため、個人事業主を法人化すれば、税負担が抑えられます。
繰り返しになりますが、上記のケースでも、社会保険料の節約はできない点に注意しましょう。
関連記事:マイクロ法人設立でサラリーマンが節税するメリットや注意点を解説
参考:日本年金機構(兼業・副業等により 2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ)
マイクロ法人設立は個人事業主の年収いくらから?
本項目では、マイクロ法人の設立を考え始める個人事業主の年収に関して解説します。
マイクロ法人の設立を検討する基準は、下記のとおりです。
- 二刀流で浮くお金がマイクロ法人の維持費を上回わればOK
- 扶養家族なしなら年収200万円以上
- 扶養家族ありなら年収は関係なし
上記について順番に見ていきましょう。
二刀流で浮くお金がマイクロ法人の維持費を上回わればOK
個人事業主とマイクロ法人の二刀流で、社会保険料を最安化させて浮くお金が、マイクロ法人の維持費を上回るかどうかは、設立を検討する基準の1つです。マイクロ法人を維持するうえで、最低でもかかる費用は、次のとおりです。
法人住民税 | 7万円~ |
決算申告の依頼費用 | 10万円~ |
合計 | 17万円~ |
法人住民税は、赤字でも納める必要があります。
また、場合によっては、下記のような維持費も発生します。
- 税理士の顧問料
- 弁護士の顧問料
- バーチャルオフィスの契約料
- オフィスの家賃
- 水道光熱費
- 通信費
以上を踏まえると、マイクロ法人の設立を検討する個人事業主は、二刀流によって年間17万円以上浮かせられる見込みのある年収が必要です。以下の項目では、年収いくらからマイクロ法人の設立を検討すれば良いのかに関して、個人事業主の具体的な年収を見ていきます。
扶養家族なしなら年収200万円以上
たとえば、下記のような個人事業主の場合、マイクロ法人との二刀流で、どれくらいの保険料が削減できるのかについて見ていきましょう。
- 扶養家族なし
- 新宿区在住
- 40歳未満
- 年収200万円
個人事業主の場合、年間でかかる社会保険料は、次のとおりです。
(※ここからは具体的な数値を掲載しておりますが、状況により異なるケースもありますので、あくまで参考程度にご覧ください)
国民年金 | 203,760円 |
国民健康保険 | 245,993円 |
合計 | 449,753円 |
一方、マイクロ法人との二刀流で役員報酬を最低にした場合、年間でかかる社会保険料は、次のとおりです。
厚生年金 | 193,248円 |
健康保険 | 69,456円 |
子ども・子育て拠出金 | 3,792円 |
合計 | 266,496円 |
以上を踏まえると、個人事業主とマイクロ法人の二刀流によって、約18万円を浮かせられるため、マイクロ法人の維持費を上回るのが分かります。扶養家族のいない、年収200万円以上の個人事業主は、マイクロ法人を設立するメリットが期待できるため、設立を検討していきましょう。
参考:日本年金機構(国民年金の保険料はいくらですか。)
参考:新宿区(令和6年度 国民健康保険料 概算早見表|総所得金額等)
参考:全国健康保険協会(令和6年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|東京都)
参考:日本年金機構(子ども・子育て拠出金率が改定されました)
扶養家族ありなら年収は関係なし
個人事業主は、扶養家族がいる場合、家族分の国民年金と国民健康保険を負担しなければなりません。一方で、マイクロ法人の社会保険では、被扶養者である家族分の保険料の負担はありません。
上記の理由から、扶養家族のいる個人事業主は、年収に関わらず、マイクロ法人を設立するメリットが期待できます。たとえば、下記のような個人事業主の場合、マイクロ法人との二刀流で、どれくらいの保険料が削減できるのかについて見ていきましょう。
- 大田区在住
- 40歳未満
- 年収100万円
下記の3パターンに分けて、具体的なシュミレーションをしていきます。
- 40歳未満のパートナーを扶養
- 40歳未満のパートナーと小学生1人を扶養
- 40歳未満のパートナーと小学生2人を扶養
40歳未満のパートナーを扶養
本ケースの場合、個人事業主の年間でかかる社会保険料は、次のとおりです。
国民年金 | 407,520円 |
国民健康保険 | 196,693円 |
合計 | 604,213円 |
一方、マイクロ法人との二刀流で役員報酬を最低にした場合、年間でかかる社会保険料は、次のとおりです。
厚生年金 | 193,248円 |
健康保険 | 69,456円 |
子ども・子育て拠出金 | 3,792円 |
合計 | 266,496円 |
40歳未満のパートナーを扶養するケースでは、個人事業主とマイクロ法人の二刀流によって、約33万円を浮かせられるため、マイクロ法人の維持費を上回る見込みがあります。
40歳未満のパートナーと小学生1人を扶養
本ケースの場合、個人事業主の年間でかかる社会保険料は、次のとおりです。
国民年金 | 407,520円 |
国民健康保険 | 262,293円 |
合計 | 669,813円 |
一方、マイクロ法人との二刀流で役員報酬を最低にした場合、年間でかかる社会保険料は、次のとおりです。
厚生年金 | 193,248円 |
健康保険 | 69,456円 |
子ども・子育て拠出金 | 3,792円 |
合計 | 266,496円 |
40歳未満のパートナーと小学生1人を扶養するケースでも、個人事業主とマイクロ法人の二刀流によって、約40万円分の保険料が削減できるため、マイクロ法人の維持費を上回る見込みがあります。
40歳未満のパートナーと小学生2人を扶養
本ケースの場合、個人事業主の年間でかかる社会保険料は、次のとおりです。
国民年金 | 407,520円 |
国民健康保険 | 327,893円 |
合計 | 735,413円 |
一方、マイクロ法人との二刀流で役員報酬を最低にした場合、年間でかかる社会保険料は、次のとおりです。
厚生年金 | 193,248円 |
健康保険 | 69,456円 |
子ども・子育て拠出金 | 3,792円 |
合計 | 266,496円 |
40歳未満のパートナーと小学生2人を扶養するケースでも、個人事業主とマイクロ法人の二刀流によって、約46万円分の保険料が削減できるため、マイクロ法人の維持費を上回る見込みがあります。
マイクロ法人設立で社会保険料を最安化させる年収の目安
本項目では、社会保険料を最も安くするためのマイクロ法人の年収に関して解説します。
マイクロ法人の年収を考えるうえでのポイントは、次のとおりです。
- 役員報酬は月額4万5千円以下で設定
- マイクロ法人の年収は75万円以上が目安
上記それぞれについて見ていきましょう。
役員報酬は月額4万5千円以下で設定
社会保険料と所得税を同時に最少化させるためには、役員報酬の月額を11,410円~45,000円の間で設定するのがおすすめです。
令和6年度の東京都の基準では、役員報酬の月額を6万3千円未満に設定すれば、社会保険料の負担を最も少なくできます。ただし、役員報酬の月額が11,410円未満だと、社会保険に加入できないため注意が必要です。(40歳未満であれば、役員報酬の月額を10,946円まで抑えられます)
また、役員報酬を年間で55万円以下に設定すれば、給与所得控除の控除額内に収められるため、所得税が発生しません。上記の理由から、役員報酬の月額を4万5千円以下で設定すれば、給与所得控除額55万円以内に収められます。
以上を踏まえて、社会保険料と所得税の両方を節約したい場合は、役員報酬の月額を11,410円~45,000円の間で設定しましょう。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
参考:全国健康保険協会(令和6年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|東京都)
参考:国税庁(No.2508 給与所得となるもの)
マイクロ法人の年収は75万円以上が目安
マイクロ法人の年収を考えるうえで、最も重要なのは、課税所得が増えない工夫をすることです。
上記の理由から、マイクロ法人の年収は、できるだけ維持費と同額になるように調整するのをおすすめします。たとえば、マイクロ法人の役員報酬を月額4万5千円で設定するケースにおいて、最低でも発生する維持費は、次のとおりです。
役員報酬 | 54万円 |
社会保険料(会社負担分) | 約14万円 |
法人住民税(赤字でも納付する必要がある) | 7万円 |
合計 | 約75万円 |
以上を踏まえて、マイクロ法人の年収は75万円以上が1つの目安となります。また、場合によっては、以下のようなランニングコストも発生しますので、念頭に置きましょう。
- 税理士の顧問料(年間で約50万円〜)
- 弁護士の顧問料(年間で約50万円〜)
- バーチャルオフィスの契約料
- オフィスの家賃
- 水道光熱費
- 通信費
- 出張費
繰り返しになりますが、節税効果を最大化させるためには、マイクロ法人の年収をできるだけ維持費と同じになるよう抑え、課税所得を増やさないのが重要です。節税対策のためにマイクロ法人の年収を調整するには、専門知識が必要な場面も多いため、税理士に相談しながら実施するのをおすすめします。
関連記事:マイクロ法人に強い税理士は必要?費用相場や後悔しない選び方を解説
マイクロ法人を設立する際のデメリットや注意点
本項目では、マイクロ法人を設立する際のデメリットや注意点に関して解説します。
デメリットや注意点は、以下のとおりです。
- 将来もらえる年金の額が減る
- 税制や保険制度の変更に合わせた経営を強いられる
- 設立時に費用がかかる
- 維持費がかかる
- 経理や税務会計に関する処理が煩雑になる
上記について1つずつ見ていきましょう。
将来もらえる年金の額が減る
マイクロ法人の役員報酬を最少で設定すると、厚生年金の保険料を少なくできる一方で、将来もらえる年金が減ってしまうおそれがあります。厚生年金の受給額は、納めた保険料と年間給与の額に応じて決まるためです。
上記の理由から、老後にもらえる年金が少なくなってしまうリスクがあります。個人事業主とマイクロ法人の二刀流によって節約できたお金は浪費せず、資産運用や貯蓄に回し、老後に備えていくのが大切です。
参考:厚生労働省(年金額・保険料シミュレーション)
参考:厚生労働省(国民年金と厚生年金の仕組み)
税制や保険制度の変更に合わせた経営を強いられる
マイクロ法人の設立で節税効果が期待できる一方で、税制や保険制度の変更によりデメリットが生じるおそれがあります。税率の引き上げや保険料の計算方法の改定など、制度は毎年見直されるため、現行の仕組みが将来も有効とは限りません。
上記の理由から、収支のバランスや役員報酬の設定金額などを毎年見直し、税制や保険制度の変更に応じた柔軟な対応が重要です。
設立時に費用がかかる
個人事業主と違い、マイクロ法人は設立時に費用が発生します。株式会社で設立する場合にかかる費用は、主に次のとおりです。
- 登録免許税:15万円~
- 定款認証の手数料:3万円~
- 定款の謄本請求手数料:2,000円程度
合同会社で設立する場合にかかる費用は、主に次のとおりです。
- 登録免許税:6万円
- 定款認証の手数料:不要
- 定款の謄本請求手数料:不要
定款を紙で作成した場合、収入印紙代として4万円がかかります。また、マイクロ法人の設立には手間がかかるため、税理士に依頼するケースも少なくありません。
上記の場合は、別途、費用が発生しますので念頭に置きましょう。
会社を設立する際の税理士の必要性については、下記の記事でさらに詳しく解説しています!
関連記事:会社設立に税理士は必要?費用相場やメリットについて解説
維持費がかかる
マイクロ法人を設立したあと、維持費がかかる点はデメリットです。
たとえば、赤字でも法人住民税(均等割)が最低7万円発生します。
また、マイクロ法人では決算申告が必要になるため、税理士に依頼する場合は費用がかかります。決算申告を自力で行う方もいますが、税理士に丸投げするケースが多いです。
さらに、役員報酬を設定している場合は、社会保険料の支払いも発生します。
以上のようなマイクロ法人の維持費は、売上がない場合でも支払う必要があり、経済的な負担となるおそれがあります。マイクロ法人を設立する前に、節税効果とランニングコストのバランスに関して入念に確認しておくのが重要です。
関連記事:【法人の決算申告】税理士なしのリスクと依頼時の費用相場
経理や税務会計に関する処理が煩雑になる
マイクロ法人を設立すると、経理や税務会計に関する処理が複雑になる点はデメリットです。
繰り返しになりますが、マイクロ法人では確定申告の他に、決算申告が加わります。決算申告は専門知識が求められる場面が多く、税理士へ依頼するケースも少なくありません。
また、役員報酬を設定している場合、社会保険に関する手続きも必要です。特に、個人事業主とマイクロ法人の二刀流をする場合、両方で経理や税務会計に関する処理を行わなければならず、非常に手間がかかります。
上記の業務を自力でこなせない場合、税理士のサポートが必要になるため、税理士への依頼費用が発生するのも念頭に置きましょう。
マイクロ法人に強い税理士の必要性や後悔しない選び方については、下記の記事でさらに詳しく解説しています!
関連記事:マイクロ法人に強い税理士は必要?費用相場や後悔しない選び方を解説
マイクロ法人の設立に関するよくある質問
最後に、マイクロ法人の設立に関するよくある質問をご紹介します。マイクロ法人の設立を検討している方は、参考にしてみてください。内容は随時追記します。
マイクロ法人を設立して後悔することはありますか?
マイクロ法人の設立によって、社会保険料を抑えられたり、節税効果が期待できたりする一方で、設立して後悔される方がいるのも事実です。よくある後悔は、次のとおりです。
- 経理や税務会計に関する処理が思った以上に煩雑だった
- 赤字でも法人住民税の均等割を納付する必要があるのを知らなかった
- 維持費が予想以上の負担になってしまった
- 社会保険料の手続きが想像していたよりも複雑だった
- 将来もらえる年金が減るのを念頭に置いていなかった
マイクロ法人を設立して後悔する理由については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:マイクロ法人設立で後悔する理由と対策を税理士が徹底解説
マイクロ法人の設立は違法ですか?
マイクロ法人の設立自体には違法性はありません。ただし、以下のようなケースでは、税務署から租税回避を疑われ、違法とみなされるおそれがあるので注意しましょう。
- 1つの事業を無理やり個人事業主とマイクロ法人に分けている
- マイクロ法人に事業の実態がない
マイクロ法人の設立が違法かどうかについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:マイクロ法人は違法?正しい設立方法とメリット・デメリットを解説
マイクロ法人におすすめの事業を教えてください
下記のような性質を持つ事業は、マイクロ法人に向いています。
- 仕入れが少ない
- 在庫を抱える必要がない
- 設備投資が不要
- オフィスがいらない
- 自分1人で運営できる
上記のポイントを踏まえ、マイクロ法人として設立するのに向いている業種は、以下のとおりです。
- ITエンジニア
- SNSマーケター
- ECサイト制作
- コンサルティング
- スクール事業
- 広告代理店業
- アフィリエイター
マイクロ法人に向いている事業や業種ついては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:マイクロ法人でおすすめの事業や業種の選び方を税理士が解説
夫婦で個人事業主を営んでいますが、マイクロ法人はどう活用できますか?
夫婦で個人事業主を営む場合、マイクロ法人を活用すれば、社会保険料や税金の負担を抑えられる見込みがあります。
たとえば、夫婦の一方または両方がマイクロ法人の役員となって社会保険に加入するとしましょう。上記のケースでは、国民健康保険や国民年金よりも、保険料の負担を軽減できる場合があります。
また、個人事業主とマイクロ法人の二刀流で、合理的に所得を分散させれば、節税効果も期待できます。繰り返しになりますが、マイクロ法人の設立時や維持には費用がかかるため、入念なシュミレーションを行ったうえで、マイクロ法人の設立を判断していきましょう。
マイクロ法人が売上なしの場合、社会保険料の負担はどうなりますか?
マイクロ法人は売上がなくても、役員報酬を設定している場合は、社会保険料の負担が発生します。社会保険料は役員報酬に基づいて計算されるためです。
ただし、役員報酬を低く設定すれば、社会保険料の負担を軽減できます。上記に関しては、本記事のマイクロ法人設立で社会保険料を最安化させる年収の目安の項目で詳しく解説しています。
まとめ
今回は、マイクロ法人設立は年収いくらからなのかについて、社会保険を最安化させる目安とあわせて解説しました。
マイクロ法人を設立する目的はいくつかありますが、大きな狙いは、個人事業主との二刀流で社会保険料を最安化させることです。マイクロ法人の設立を考えている個人事業主の方は、マイクロ法人との二刀流で浮かせられるお金が、マイクロ法人の維持費を上回るのが、年収いくらからなのかを精査する必要があります。
個人事業主がマイクロ法人の設立を検討し始める年収の目安は、下記のとおりです。
- 扶養家族なしなら年収200万円以上
- 扶養家族ありなら年収は関係なし
社会保険料を最も安くするために、マイクロ法人側では、下記のような設定をしておくのがおすすめです。
- 役員報酬の月額は4万5千円以下に設定
- マイクロ法人の年収は75万円以上が目安
マイクロ法人の設立によって得られるメリットは多いですが、下記のようなデメリットや注意点もありますので慎重に検討しましょう。
- 将来もらえる年金の額が減る
- 税制や保険制度の変更に合わせた経営を強いられる
- 設立時に費用がかかる
- 維持費がかかる
- 経理や税務会計に関する処理が煩雑になる