こんにちは、税理士法人植村会計事務所の代表を務める植村拓真です。
売上規模が拡大している個人の方の中には、節税対策の一環として合同会社を設立される方もいらっしゃいます。
合同会社を設立すると決算を行わなければなりませんが、今まで行ってきた個人の確定申告とは異なる点が多いため、戸惑う経営者の方も多いです。
弊社でも、上記のような経営者の方や法人化を検討している個人の方から、決算に関するご相談をいただく機会がよくあります。たとえば、以下のようなご質問をいただきます。



本記事を読んでいる方の中にも、同様の疑問や不安を抱いている方がいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、合同会社の決算を自分で行う際のやり方について、売上なしの場合でも決算は不要とはならない理由とあわせて解説します。
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
合同会社の決算を自分で行う際のやり方

本項目では、合同会社の決算を自分で行う際のやり方について解説します。
合同会社の決算を自分で行う際は、主に以下の流れで進めます。
- 帳簿への記帳を完了させる
- 決算整理仕訳を行う
- 決算書を作成する
- 法人税や消費税などの申告書を作成する
- 税務申告書を提出して税金を納める
それでは、順番に見ていきましょう。
帳簿への記帳を完了させる
決算書の作成に取り掛かる前に、帳簿への記帳を完了させましょう。記帳とは日々の取引を帳簿に記録する作業です。
日常的に正しく記帳していれば、決算を行う際には売上や必要経費などの情報が整理されているため、決算業務でかかる時間を大幅に短縮できます。
日頃から帳簿への記帳を怠っている場合、決算を行う際に必要経費の領収書を集めたり、取引履歴を遡りながら記帳したりする作業が発生するため、非常に手間がかかってしまいます。
決算業務の負担を少しでも軽減できるように、帳簿への記帳は日々の習慣にしましょう!
なお、帳簿へのこまめな記帳は、経営状況をタイムリーに把握できるメリットもあります。
参考:中小企業庁(経営力・資金調達力強化を目指す中小企業のための「中小会計要領」の手引き)
関連記事:決算申告を税理士に丸投げする際の費用相場や安く抑える方法
決算整理仕訳を行う
決算整理仕訳とは、決算時点における実際の数字と帳簿上の数字を一致させるために行う特別な仕訳です。
決算整理仕訳にはさまざまな項目がありますが、以下の4点に絞って順番に解説していきます。
- 売掛金
- 未払費用
- 減価償却費
- 貸倒引当金
決算整理仕訳は高度な専門知識を求められる場面も多いため、不明な点がある場合は税理士への相談も検討してみましょう。
関連記事:【法人の決算申告】税理士なしのリスクと依頼時の費用相場
売掛金
売上の計上が漏れているものがないかについて、決算整理仕訳で改めてチェックを行いましょう。売上の計上タイミングに関しては、下記のように定められています。
売上高(収入額)は、原則として、現金の受領時期とは関係なく、商品や製品などを引き渡した時点及びサービスを提供した時点で計上する。
引用:統計局ホームページ(売上高〔収入額〕の概念について)
今期に発生した売上で翌期以降に入金されるものを、決算整理仕訳の際に見つけた場合は、売掛金として処理します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 売掛金 | 100万円 | 売上高 | 100万円 |
参考:J-Net21(今期?それとも翌期の売上?「売上高の計上時期」が重要なわけ)
参考:中小企業庁(経営力・資金調達力強化を目指す中小企業のための「中小会計要領」の手引き)
未払費用
継続的な契約を結んでいて、今期に役務提供を受けているものの、まだ支払いが完了していない費用を決算整理仕訳する際に用いる勘定科目が、未払費用です。
たとえば、水道光熱費や通信費など、使用した月の翌月に請求書が届いて支払いが行われる費用が該当します!
また、以下のような費用も未払費用に該当するため、決算整理仕訳の際に漏れなく計上しましょう。
- 事務所の家賃
- 翌月払いの従業員給与
- 翌期に借入元本とあわせて返済する支払利息
参考:中小企業庁(経営力・資金調達力強化を目指す中小企業のための「中小会計要領」の手引き)
減価償却費
原則、使用できる期間が1年以上かつ取得価額が10万円以上の設備や備品などを購入した場合、固定資産として計上して、法定耐用年数に応じて減価償却しなければなりません。
減価償却費の計算方法については、国税庁のホームページをご参照ください。
なお、減価償却費の仕訳方法には、固定資産から直接差し引く直接法と減価償却累計額を用いる間接法があります。直接法と間接法のメリットとデメリットは、下表のとおりです。
| 比較項目 | メリット | デメリット |
| 直接法 | ・間接法と比べると仕訳が簡単 ・簿記に関する知識が少なくても取り組みやすい |
・取得原価が分かりにくくなる ・個別注記表に減価償却累計額を記載しなければならない |
| 間接法 | ・取得価額や取得原価、減価償却累計額が分かりやすくなる ・決算書の透明性が高くなる |
・直接法と比べると仕訳が煩雑 ・減価償却累計額の管理が必要になる |
減価償却費の仕訳では高度な専門知識を求められる場面も多いため、不明な点がある場合は税理士への相談も検討してみましょう。
参考:中小企業庁(経営力・資金調達力強化を目指す中小企業のための「中小会計要領」の手引き)
参考:J-Net21(固定資産として計上するのはどのような場合でしょうか。)
参考:国税庁(主な減価償却資産の耐用年数表)
参考:中小企業庁(「個別注記表」って、何ですか?)
関連記事:【注意点あり】決算申告のみ税理士に依頼|費用相場も解説
貸倒引当金
貸倒引当金とは、売掛金や貸付金などが回収不能になるリスクに備えて、あらかじめ見積もり額を計上するものです。
原則、貸倒引当金の繰入限度額は、売掛金や受取手形といった一括評価金銭債権の期末合計額に、貸倒実績率を掛けて算出します。

引用:国税庁(No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定)
なお、中小法人については、法定繰入率を用いた繰入限度額の計算が認められています。

引用:国税庁(No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定)
50万円(一括評価金銭債権の期末合計額)✕ 6/1,000(法定繰入率)= 3,000円(貸倒引当金繰入額)
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 貸倒引当金繰入額 | 3,000円 | 貸倒引当金 | 3,000円 |
参考:中小企業庁(経営力・資金調達力強化を目指す中小企業のための「中小会計要領」の手引き)
参考:J-Net21(貸倒損失と貸倒引当金)
決算書を作成する
合同会社で作成する決算書の主な内訳は、以下のとおりです。
- 損益計算書
- 貸借対照表
- 社員資本等変動計算書
- 個別注記表
特に、収益性や財務健全性などを把握するうえで大切な書類が、損益計算書と貸借対照表です。
損益計算書とは、当期における売上高やかかった費用などを示すもので、最終的にどれだけの利益を出したのかが明らかになります。

貸借対照表とは、期末時点での資産や負債などの状況を一覧化したもので、保有する資産の内訳やどのような方法で資金調達しているのかなどを把握できます。

参考:J-Net21(決算書の作成)
参考:J-Net21(決算書の作成にあたり、最低限守るべきルールはありますか?)
参考:J-Net21(どうすれば「中小会計要領」にしたがった決算書が作れますか?)
参考:J-Net21(会社法上の計算書類について教えてください。)
参考:e-Gov(会社計算規則 第四節 持分会社の計算書類)
関連記事:合同会社に税理士は必要?費用相場や不要なケースも解説
法人税や消費税などの申告書を作成する
決算書の作成が完了したあとは、決算書の内容をもとに税金ごとの申告書を作成しましょう!
申告書の作成もできる会計ソフトを使えば、スムーズに進められます。
合同会社では主に下表のような税金の申告が必要ですが、税金ごとに計算方法や申告書の提出先などが異なるため注意しましょう。
| 税金の種類 | 申告書の提出先 | 税金の概要 |
| 法人税 | 本店所在地を所轄する税務署 | ・課税所得に税率をかけて税額が算出される ・税率は資本金や課税所得の金額によって異なる |
| 法人住民税 | ・都道府県民税は本店所在地を所轄する都道府県税事務所 ・市町村民税は本店所在地を所轄する市区町村役場 (東京都23区内の場合は、上記ふたつをまとめて本店所在地を所轄する都税事務所へ提出) |
法人税額に税率をかけて算出される法人税割と赤字や売上なしでも課される均等割のふたつで構成されている |
| 法人事業税 | 本店所在地を所轄する都道府県税事務所 | ・資本金の額や業種などによって税額の算出方法が異なる ・申告書を提出した事業年度に損金算入できる ・原則、赤字や売上なしの場合は非課税 |
| 消費税 | 本店所在地を所轄する税務署 | 資本金が1,000万円以上の場合や2期前の課税売上高が1,000万円を超えている場合、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合に納税義務が発生する |
参考:国税庁(C1-1 法人税及び地方法人税の申告|法人税申告書別表等)
参考:国税庁(No.5759 法人税の税率)
参考:総務省(地方税制度|法人住民税)
参考:東京都主税局(法人事業税・法人都民税|仕事と税金)
参考:国税庁(No.5300 租税公課等の損金算入の可否と租税の損金算入時期)
参考:総務省(地方税制度|法人事業税)
参考:総務省(地方税制度|法人住民税・法人事業税)
参考:国税庁(消費税のしくみ)
参考:国税庁(No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
税務申告書を提出して税金を納める
作成した申告書は本店所在地を所轄する税務署や都道府県税事務所、市区町村役場の窓口へ持参したり郵送したりして提出します。
法人税や消費税に関しては、e-Tax(イータックス)を活用した電子申告がおすすめです。
また、税金の納付方法も多様化しており、法人税や消費税などの国税については、クレジットカード納付やスマホアプリ納付なども選べます。

引用:国税庁(G-2 国税の納付手続納期限・振替日・納付方法)
法人住民税や法人事業税などの地方税については、eLTAX(エルタックス)を通じてオンライン上で申告や納税ができるため、活用も検討してみましょう。
参考:e-Tax(利用可能手続一覧)
参考:財務省(税の種類に関する資料)
参考:eLTAX(eLTAXの概要)
関連記事:合同会社が納付する税金一覧|申告と納付のタイミングも解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
合同会社の決算を自分で行う際の基礎知識

本項目では、合同会社の決算を自分で行う際の基礎知識について、以下の観点に分けて解説します。
- 合同会社の決算は自分でできるものの労力はかかる
- 合同会社で売上なしでも決算は不要とはならない
- 決算には申告期限が設けられている
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
合同会社の決算は自分でできるものの労力はかかる
繰り返しになりますが、決算は事業年度の終了後に決算書を作成して、税務申告と納税を行う一連の手続きを指します。
合同会社の決算書作成や税務申告は、個人の確定申告と比べると難易度が高いため、実際に取り組んでみると想像以上の労力がかかってしまうケースも多いです。
合同会社の決算を自分で行うのは、コストを削減するための選択肢のひとつですが、経営者が決算業務に多くの時間を取られて、事業活動が疎かになってしまうのは本末転倒です。
合同会社の決算を自分で行った際にかかる労力や発生する機会損失などをシミュレーションして、場合によっては税理士への依頼も検討してみましょう。
関連記事:【注意点あり】決算申告のみ税理士に依頼|費用相場も解説
合同会社で売上なしでも決算は不要とはならない
下記のとおり、売上の有無に関わらず、決算書の作成や決算に基づいた税務申告を行わなければならないと、会社法や法人税法で定められているためです。
持分会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表その他持分会社の財産の状況を示すために必要かつ適切なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)を作成しなければならない。
引用:e-Gov(会社法 第六百十七条第二項 計算書類の作成及び保存)
内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
引用:e-Gov(法人税法 第七十四条第一項 確定申告)
また、2期連続で本店所在地を所轄する税務署への申告が遅れた場合、青色申告の承認が取り消されるおそれがあるため注意しましょう。
法第127条第1項第4号の規定による取消しは、2事業年度連続してその提出期限内に法第74条第1項の規定による申告書の提出がない場合に行うものとする。この場合、当該2事業年度目の事業年度以後の事業年度について、その承認を取り消す。
引用:国税庁(法人の青色申告の承認の取消しについて|事務運営指針)
青色申告の承認が取り消されてしまうと、欠損金の繰越控除や少額減価償却資産の特例といった税制上の優遇措置を受けられなくなります。
なお、合同会社で売上なしでも、法人住民税の均等割は課税されるため注意しましょう。
均等割と法人税割の決定的な違いとしては、法人税割は国に法人税を納めている法人、つまり黒字の法人だけが払うのに対して、均等割は赤字の法人も払わなければならないということです。言い換えると、均等割は、法人がどれだけ儲けたかに関係なく、地域社会の一員として支払う会費という性格が強いといえます。
引用:総務省(地方税制度|法人住民税)
合同会社で売上なしでも納める税金については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:合同会社で売上なしでも納める税金|決算や確定申告の必要性も解説
決算には申告期限が設けられている
決算の申告期限に関して、以下の観点に分けて解説していきます。
- 事業年度が終了した日の翌日から2か月以内が原則
- 申告期限の延長が認められるケースがある
事業年度が終了した日の翌日から2か月以内が原則
下記のとおり、決算に基づく法人税や消費税などの申告は、事業年度が終了した日の翌日から2か月以内が原則です。
内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
引用:e-Gov(法人税法 第七十四条第一項 確定申告)
申告期限を過ぎてしまった場合、日数に応じて延滞税が課されます。

また、下表のような加算税が課されるおそれもあるため注意しましょう。


以上のように、本店所在地を所轄する税務署への申告が遅れた場合、本来の納税額よりも税負担が増加するおそれがあります。
期限内に申告を完了させられるように、見通しを立てて決算業務を進めましょう。
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
申告期限の延長が認められるケースがある
決算日までに本店所在地を所轄する税務署へ定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書を提出すれば、申告期限を1か月延長できます。
申告期限の延長が認められるケースの詳細については、国税庁のホームページをご参照ください。
なお、申告期限の延長の特例の取りやめの届出を行わなければ、翌期以降も申告期限の延長が認められます。
消費税の申告期限の延長については、令和2年度税制改正によって認められるようになりました。
以上のように、申告期限の延長は認められますが、納期限の延長は認められていない点に注意しましょう。
申告の延長が認められた期間については利子税が課されるため、決算日の翌日から2か月以内に見込納付を行っておき、確定した税額との差額を後日精算するのが一般的です。
参考:国税庁(No.6610 法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について)
参考:国税庁(D1-2 消費税申告期限延長届出手続)
参考:国税庁(申告と納税)
参考:財務省(税制改正の概要 令和2年度 税制改正の大綱 p66)
参考:財務省(延滞税・利⼦税・還付加算⾦について)
参考:横浜市(法人税〔国税〕で申告期限の特例延長が認められた場合、法人市民税ではどのような手続きが必要ですか。)
参考:大阪府(法人府民税・事業税の申告期限の延長)
関連記事:【失敗しない】決算期の決め方|変更方法から調べ方まで解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
合同会社の決算を自分で行う場合のデメリット

本項目では、合同会社の決算を自分で行う場合のデメリットについて解説します。
合同会社の決算を自分で行う場合の主なデメリットは、以下のとおりです。
- 決算業務に時間を取られて機会損失が生じるおそれがある
- 申告ミスによってペナルティが科されるリスクがある
- 活用できたはずの節税対策を見落とすおそれがある
それでは、順番に見ていきましょう。
決算業務に時間を取られて機会損失が生じるおそれがある
決算業務に時間を取られて機会損失が生じるおそれがあるのは、合同会社の決算を自分で行う場合のデメリットのひとつです。
- 帳簿への記帳
- 決算整理仕訳の実施
- 決算書の作成
- 法人税や消費税などの申告書の作成
- 税務申告書の提出と納税
経理や税務会計に関する専門知識が不足している場合、多大な時間と労力がかかってしまうおそれがあります。
上記のような場合に懸念されるのは、営業活動や顧客対応といった経営上重要な業務に充てるべき時間が奪われてしまい、機会損失が生じるリスクです。
税理士への依頼費用を節約するために自分で決算業務を行っても、削減できたコスト以上の機会損失を招いてしまっては本末転倒です。
関連記事:決算申告を税理士に丸投げする際の費用相場や安く抑える方法
申告ミスによってペナルティが科されるリスクがある
合同会社の決算業務を自力で行う場合、申告の遅れやミスによってペナルティが科されるリスクがあります。
繰り返しになりますが、申告が遅れたり申告内容にミスがあったりすると、延滞税や加算税などが課されて、本来の納税額より多く納めなければならないおそれがあります。
また、税制改正は毎年行われているため、申告ミスによるペナルティを回避するためにも、最新情報を常に把握し続けなければなりません。
税理士に決算を依頼すれば、毎年改正される複雑な税制に対応した正確な申告を期限内に行えるため、ペナルティが科されるリスクを回避できます。
特に、事業活動に専念したい場合は、税理士への依頼も検討してみましょう。
参考:国税庁(延滞税の計算方法)
参考:財務省(加算税制度の概要①|基本情報)
参考:財務省(税制改正の概要)
関連記事:【法人の決算申告】税理士なしのリスクと依頼時の費用相場
活用できたはずの節税対策を見落とすおそれがある
活用できたはずの節税対策を見落とすおそれがあるのも、合同会社の決算を自分で行う場合のデメリットのひとつです。
活用できたはずの節税対策を見落としてしまうと、税負担を軽減させられないため、資金繰りに影響を及ぼすリスクもあります。
また、ご自身の事業規模や事業内容にマッチしていて、税法や税制に則った適切な節税対策を講じるのは容易ではありません。
特に、節税対策は決算時に気づいても実行できないものが多いため、期中から計画的に取り組まなければならない点に注意しましょう。
関連記事:合同会社が経費で落とせるもの一覧|いくらまで経費計上できる?
関連記事:合同会社の一人社長が給料(役員報酬)を設定する際のルールと決め方
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
合同会社の決算を効率よく自分で行うための方法

本項目では、合同会社の決算を効率よく自分で行うための方法について解説します。
合同会社の決算を効率よく自分で行うための主な方法は、以下のとおりです。
- 法人決算に対応した会計ソフトを活用する
- 記帳以外の業務を税理士に依頼する
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
法人決算に対応した会計ソフトを活用する
合同会社の決算を効率よく自分で行うための方法のひとつとして挙げられるのは、法人決算に対応した会計ソフトの活用です。
最近の会計ソフトの中には、銀行口座やクレジットカードと連携すると、自動で仕訳してくれる機能が実装されているものもあるため、記帳作業の負担を軽減できます。
特に、クラウド会計ソフトは帳簿データの共有が容易なため、記帳以外の業務を税理士へ依頼する場合に効率的です。
また、申告書の作成ができる会計ソフトを活用すれば、記帳が完了した帳簿のデータから簡単な手順で申告書を作成できたり、電子申告をスムーズに行えたりします。
記帳以外の業務を税理士に依頼する
税理士への依頼費用を抑えたい場合には、記帳から税務申告まで決算に関するすべての業務を丸投げするのではなく、記帳以外の業務を税理士に依頼するのが効果的です。
ただし、上記の方法を採用する場合は、日々の記帳業務を正確に処理する必要があります。
記帳以外の業務を税理士に依頼する方法で、決算を効率よく進めたりコストを削減したりする場合は、領収書や請求書などの証憑書類を整理して記帳漏れを防ぎましょう。
関連記事:合同会社に税理士は必要?費用相場や不要なケースも解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
合同会社の決算に関するよくある質問

最後に、合同会社の決算に関するよくある質問をご紹介します。内容は随時追記します。
合同会社で使える決算書のテンプレートはありますか?
インターネットで「合同会社 決算書 テンプレート」と検索すると、無料で使える雛形がダウンロードできますが、使用する際は以下の点に注意しましょう。
- 自動計算に誤りがないかチェックする
- 中小会計要領に準拠しているか確認する
- 勘定科目は自社の取引にあわせて追加や修正を行う
- 株式会社向けの仕様だった場合は合同会社に合わせた表記に変更する
参考:J-Net21(決算書とは?)
参考:J-Net21(決算書の作成)
参考:J-Net21(決算書の作成にあたり、最低限守るべきルールはありますか?)
参考:J-Net21(どうすれば「中小会計要領」にしたがった決算書が作れますか?)
参考:J-Net21(会社法上の計算書類について教えてください。)
参考:e-Gov(会社計算規則 第四節 持分会社の計算書類)
合同会社の決算はいつまでに終わらせないといけないですか?
合同会社の決算と税務申告は、決算日の翌日から2か月以内に終わらせるのが原則です。
税務申告の期限を超過してしまうと、延滞税や加算税などが発生するおそれもあるため、決算は計画的に進めるのが重要です。
事業活動が忙しくて決算業務に割く時間が足りない場合は、税理士への依頼も検討してみましょう。
参考:e-Gov(法人税法 第七十四条第一項 確定申告)
参考:国税庁(延滞税の計算方法)
参考:財務省(加算税制度の概要①|基本情報)
関連記事:【失敗しない】決算期の決め方|変更方法から調べ方まで解説
合同会社には決算公告の義務はありますか?
合同会社には決算公告の義務はありません。
下記のとおり、株式会社では決算公告について会社法で定められていますが、合同会社には規定がありません!
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
引用:e-Gov(会社法 第四百四十条第一項 計算書類の公告)
ただし、合同会社の社員や債権者には、決算書の閲覧や謄写が認められているため、請求があった場合は応じましょう。
持分会社の社員は、当該持分会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 計算書類が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 計算書類が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
2 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。ただし、定款によっても、社員が事業年度の終了時に同項各号に掲げる請求をすることを制限する旨を定めることができない。
引用:e-Gov(会社法 第六百十八条 計算書類の閲覧等)
合同会社の債権者は、当該合同会社の営業時間内は、いつでも、その計算書類(作成した日から五年以内のものに限る。)について第六百十八条第一項各号に掲げる請求をすることができる
引用:e-Gov(会社法 第六百二十五条)
参考:法務省(電子公告制度について)
参考:官報(会社法 法定公告について)
合同会社の確定申告を自分で行うメリットは何ですか?
- 税理士への依頼報酬を節約できる
- 自分のペースで柔軟に進められる
- 帳簿記帳や決算書の作成を通じて財務状況を詳細に把握できる
- 経理や税務会計に関する知識を習得できる
- 経営に関する情報の外部流出を防げる
特に、売上規模の小さな合同会社においては、確定申告にかかる費用を大幅に抑えられたり、経営力の向上につなげられたりします。
法人決算を自分でやる場合、どのようなデメリットやリスクがありますか?
法人決算を自分でやる場合に懸念されるのは、経理や税務会計に関する専門知識の不足や税制改正への対応漏れなどによる申告ミスです。
また、法人決算の業務に時間を取られて、事業活動に支障が出たり機会損失が発生したりするリスクもあります。
活用できたはずの節税対策を見落としてしまい、資金繰りに影響を及ぼすおそれもあるため、必要に応じて税理士への依頼も検討してみましょう。
参考:国税庁(延滞税の計算方法)
参考:財務省(加算税制度の概要①|基本情報)
合同会社で売上なしでしたが、確定申告や決算は不要ですか?
合同会社で売上なしでも確定申告や決算は必要です。
繰り返しになりますが、売上の有無に関わらず、決算書の作成や決算に基づいた税務申告を行わなければならないと、会社法や法人税法で定められているためです。
持分会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表その他持分会社の財産の状況を示すために必要かつ適切なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)を作成しなければならない。
引用:e-Gov(会社法 第六百十七条第二項 計算書類の作成及び保存)
内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
引用:e-Gov(法人税法 第七十四条第一項 確定申告)
合同会社で売上なしでも納める税金については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:合同会社で売上なしでも納める税金|決算や確定申告の必要性も解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
まとめ

今回は、合同会社の決算を自分で行う際のやり方について、売上なしの場合でも決算は不要とはならない理由とあわせて解説しました。
合同会社の決算を自分で行う際は、主に以下の流れで進めます。
- 帳簿への記帳を完了させる
- 決算整理仕訳を行う
- 決算書を作成する
- 法人税や消費税などの申告書を作成する
- 税務申告書を提出して税金を納める
また、合同会社の決算を効率よく自分で行うための主な方法は、次のとおりです。
- 法人決算に対応した会計ソフトを活用する
- 記帳以外の業務を税理士に依頼する
なお、売上の有無に関わらず、決算書の作成や決算に基づいた税務申告を行わなければならないと会社法や法人税法で定められているため、合同会社で売上なしでも決算は不要とはなりません。
合同会社の決算を自分で行うと、税理士への依頼報酬を節約できるメリットがありますが、以下のようなデメリットもあるため注意しましょう。
- 決算業務に時間を取られて機会損失が生じるおそれがある
- 申告ミスによってペナルティが科されるリスクがある
- 活用できたはずの節税対策を見落とすおそれがある

