こんにちは、合同会社の顧問実績が豊富な税理士の植村拓真です。
近年、会社を設立する場合、合同会社が選ばれるケースが増えてきています。
たとえば、GoogleやApple、Amazonの日本法人が合同会社で設立されているのは有名です。合同会社は設立コストが少なく、経営の自由度が高いのが特徴です。
また、上記の理由から、売上規模が拡大した個人事業主の節税手段として、合同会社を掛け持ちするケースもあります。弊所にも、さまざまな目的で合同会社の設立を検討されている方から、頻繁にご相談が寄せられています。
特に、よくいただくのが下記のようなご質問です。



本記事を読んでいる方の中にも、上記のような疑問を持っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、合同会社で売上なしでも納める税金について決算や確定申告の必要性とあわせて解説します。
株式会社よりも経営しやすい合同会社での起業を検討している方や、節税対策の一環で法人化を考えている個人事業主の方は、本記事を参考にしてみてください。
合同会社で売上なしでも納める税金
本項目では、合同会社で売上なしでも納める税金について解説します。
売上なしの合同会社が納める税金は、次のとおりです。
- 法人住民税の均等割
- 固定資産税
- 自動車税
- 印紙税
- 源泉所得税
- 特別徴収した個人住民税
それでは、1つずつ見ていきましょう。
法人住民税の均等割
引用:総務省(法人住民税)
法人税割は法人税額に対して課税されるため、売上なしや赤字の場合、法人税割は課されません。
しかし、均等割は合同会社の規模に応じて課税されるため、売上なしや赤字の場合でも、合同会社が存続している限り納付する必要があります。
たとえば、資本金が1,000万円以下で、従業員数が50人以下の合同会社は、年間7万円の均等割を負担します。
固定資産税
固定資産税は、合同会社が所有する土地や建物などの不動産に課される税金です。また、車やパソコンなどの償却資産に対しても固定資産税はかかります。
合同会社で売上なしや赤字の場合でも、不動産や償却資産を保有していれば、納税義務が発生するため注意しましょう。
固定資産税の税額は、1月1日時点の資産価格に対して、1.4%の税率を掛けて算出されます。
固定資産税の使い道は、上下水道の整備や道路の維持管理、福祉サービスの拡充などです。なお、合同会社の事務所が賃貸であれば、固定資産税は課されません。
関連記事:中小企業や小さい会社で税理士が必要な理由と費用相場
自動車税
また、合同会社を休眠会社にした場合でも、自動車を所有していれば自動車税は課されるので注意しましょう。自動車税の税額は、自動車の種類や排気量などによって決まります。
上記に加えて、車検時に自動車重量税を支払う必要もあるため、車両維持にかかる費用は資金計画にしっかりと組み込んでおきましょう。
参考:総務省(地方税制度|自動車税・軽自動車税)
参考:法務省(休眠会社・休眠一般法人の整理作業について)
参考:国税庁(No.7192 自動車重量税のあらまし)
印紙税
合同会社で売上なしでも、契約書や領収書などを発行した場合、印紙税が課されます。契約書の場合、記載されている契約金額に応じて印紙税の税額が決まります。
領収書の場合、下表のとおり記載されている金額が、5万円以上だと印紙税の対象です。
引用:国税庁(No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書)
原則として、印紙税の納付方法は、必要な金額分の収入印紙を購入し、該当の文書に貼付して消印するだけで手続きが完了します。
印紙税は契約書や領収書以外にも、約束手形や社債券などにもかかるため、不明な点がある場合、税理士に確認しましょう。
参考:国税庁(印紙税の手引)
源泉所得税
従業員を雇用している合同会社は、従業員に支払う給与から所得税を天引きし、従業員に代わって納税する義務があります。
なお、上記の源泉所得税は、年末調整で過不足の調整が求められます。
引用:J-Net21(所得税の源泉徴収義務I−サラリーマンの給与所得を中心として−)
年末調整によって実際の税額が確定し、過剰に徴収した分は従業員へ還付され、不足分は追加での納付が必要です。
参考:国税庁(No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは)
参考:J-Net21(源泉徴収の基礎知識)
特別徴収した個人住民税
従業員を雇用している合同会社は、従業員に支払う給与から個人住民税を天引きして、従業員が1月1日時点で住んでいる自治体に納付する義務があります。
なお、個人住民税は前年の所得に基づき計算されるため、先に述べた源泉所得税のような年末調整は不要です。
参考:総務省(個人住民税の現年課税化)
参考:神戸市(所得税は年末調整できるのに、住民税はできないのでしょうか。)
参考:鹿児島市(所得税には年末調整があるのに、個人住民税にはないのですか。)
合同会社で売上なしでも納める場合のある税金
本項目では、合同会社で売上なしでも納める場合のある税金について解説します。売上なしの合同会社でも場合により課される税金は、以下のとおりです。
- 法人事業税および特別法人事業税
- 消費税および地方消費税
法人事業税および特別法人事業税
上記は法人事業税の所得割といわれます。以上の理由から、売上なしや赤字の場合は法人事業税の納付義務は発生しません。
一方、資本金が1億円を超える合同会社の場合、所得割に加えて、付加価値割と資本割が適用されます。
上記のケースでは、売上なしや赤字の場合でも法人事業税が課されるため注意が必要です。
なお、特別法人事業税は法人事業税の税額に対してかかる税金であり、法人事業税と一緒に徴収されます。
引用:総務省(特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律案の概要)
消費税および地方消費税
消費税は消費者から預かり、消費者の代わりに事業者が納める税金です。原則として、合同会社で売上なしであれば、消費税を受け取るような取引が生じていないため、納税義務はありません。
ただし、上記のように思っていても下記のような資産の譲渡や貸付けを行っていた場合、消費税が課されるため注意が必要です。
・商品の販売、事業等に用いている建物、機械、備品などの売却、特許権などの無体財産権の譲渡は、資産の譲渡に該当します。
・代物弁済による資産の譲渡、負担付き贈与による資産の譲渡、資産の交換、金銭以外の資産の出資(現物出資)は、対価を得て行う資産の譲渡に該当します。
・土地や建物が収用され、対価補償金を取得した場合は、対価を得て資産の譲渡を行ったものに該当します。
引用:国税庁(No.6145 資産の譲渡の具体例)
・自動車などの有形資産の貸付けのほか、特許権、実用新案権、ノウハウなどの無形の資産を利用させることは、資産の貸付けに該当します。
・保養所などの福利厚生施設を割安な料金で社員に利用させる場合や音楽、デザインなどの著作物を使用させる場合は、資産の貸付けに該当します。
引用:国税庁(No.6149 資産の貸付けの具体例)
消費税はサービスや商品提供の際に課税される印象が強いですが、以上のような資産の譲渡や貸付けでも課税されます。上記の場合、消費税の納税義務が生じますので、適切な確定申告を行いましょう。
参考:財務省(消費税について教えてください。)
参考:総務省(地方税制度|地方消費税)
参考:国税庁(No.6117 「資産の譲渡等」とは)
参考:国税庁(No.6153 役務の提供の具体例)
合同会社で売上なしだと課されない税金
本項目では、合同会社で売上なしだと課されない税金について解説します。売上なしの合同会社が納める必要のない税金は、下記のとおりです。
- 法人税および地方法人税
- 法人住民税の法人税割
上記について順番に見ていきましょう。
法人税および地方法人税
なお、法人税法の第74条で規定されているとおり、法人税がかからない場合でも確定申告は必要ですので注意しましょう。また、地方法人税は法人税の税額に基づいて計算されるため、法人税が課されない場合は地方法人税も課されません。
参考:財務省(法人課税に関する基本的な資料)
参考:総務省(地方税制度|地方法人税|国税)
法人住民税の法人税割
国に納めた法人税額が多いほど税額は増えますが、合同会社で売上なしの場合、法人住民税の法人税割は課されません。繰り返しになりますが、法人住民税の均等割については、売上なしや赤字の場合でも納付が必要です。
参考:総務省(法人住民税)
合同会社で売上なしのメリット
本項目では、合同会社で売上なしのメリットについて解説します。売上なしの場合、不安に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、売上なしの合同会社には、下記のようなメリットがあります。
- 節税につながる
- 欠損金があれば繰り越せる
それでは、1つずつ見ていきましょう。
節税につながる
繰り返しになりますが、事業活動によって得られた課税所得に対して法人税がかかるため、売上なしの合同会社には法人税が課されません。
上記の理由から、売上なしの合同会社には節税面でメリットがあります。ただし、先に述べた消費税および地方消費税については、資産の譲渡や貸付けを行った場合、納税義務が生じるため注意が必要です。
参考:財務省(法人課税に関する基本的な資料)
参考:e-Gov(法人税法 第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則)
関連記事:決算申告を税理士に丸投げする際の費用相場や安く抑える方法
欠損金があれば繰り越せる
合同会社が青色申告を行っている場合、欠損金を最大10年間繰り越して翌事業年度以降の黒字と相殺できます。
上記の仕組みにより、課税所得を減らせるため、税負担の軽減が期待できます。
ただし、欠損金の繰り越しには確定申告が必要で、無申告だと欠損金の繰り越しが認められません!
売上なしでも確定申告を行い、翌事業年度以降の節税につなげましょう。
参考:国税庁(No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除)
合同会社で売上なしのデメリット
本項目で解説するのは、合同会社で売上なしのデメリットについてです。売上なしの合同会社には、前の項目で説明したようなメリットがある一方、次のようなデメリットもあるため注意が必要です。
- 脱税を疑われる
- 資金調達しにくくなる
上記2点について順番に見ていきましょう。
脱税を疑われる
合同会社で売上なしの決算が長期間にわたって続くと、税務署から脱税を疑われるリスクが高くなります。租税回避するために意図的に売上なしにしているとみなされ、税務調査に入られるおそれもあります。
万が一、税務調査に入られた場合は、税理士の力を借りながら対応しましょう。
関連記事:税務調査における修正申告・更正とは?違いについて税理士が解説
資金調達しにくくなる
金融機関は返済能力を重視するため、売上なしだと融資の審査が通る確率は低下します。もし、資金調達が急務の際に考えられる手段は、下記のとおりです。
- 資本金から工面する
- 日本政策金融公庫から融資を受ける
- 補助金や助成金を活用する
ただし、上記のような公的機関を活用した場合でも、売上なしの合同会社に対する審査は通常よりも厳しくなります。売上なしの決算が続くと社会的な信用度が落ちるため、資金調達しにくくなるリスクも念頭に置きましょう。
関連記事:日本政策金融公庫の融資審査を確実に通すためのチェックポイント6選
合同会社で売上なしでも課される税金を減らす方法
本項目では、合同会社で売上なしでも課される税金を減らす方法について解説します。
売上なしの合同会社が納めなければならない税金を減らす方法は、次のとおりです。
- 休眠の届出を行う
- 解散と清算の手続きを行う
- 個人成りする
それでは、1つずつ見ていきましょう。
休眠の届出を行う
休眠とは合同会社の一時的な活動停止を意味し、休眠の届出に費用はかかりません。休眠中は法人住民税の均等割が免除または減免されるケースがあるため、税負担の軽減が期待できます。
固定資産や償却資産を保有している場合、休眠中でも固定資産税や自動車税などが課されるため注意が必要です。休眠の届出や休眠中の確定申告などに不明な点がある場合、税理士に相談してみましょう。
参考:国税庁(C1-8 異動事項に関する届出)
参考:法務省(休眠会社・休眠一般法人の整理作業について)
参考:逗子市(休眠中の法人ですが、法人市民税の申告納付は必要ですか?)
参考:八王子市(会社を休業しました。八王子市に届出等は必要ですか。)
参考:あま市(法人を作ったが、休業している場合は均等割を納付する必要はあるか)
関連記事:中小企業や小さい会社で税理士が必要な理由と費用相場
解散と清算の手続きを行う
合同会社の解散と清算は、事業活動を再開する予定がない場合に有効な手続きです。社員全員の同意を得て解散を決定し、清算人を選任します。
ただし、下記のようなコストがかかるのを念頭に置きましょう。
- 解散および清算人選任登記における登録免許税
- 清算結了登記における登録免許税
- 官報への解散公告の掲載費用
- 税理士への依頼費用
解散と清算の手続きにより法人格が消失し、合同会社に課されていた税負担はなくなります。なお、解散から清算完了までに2ヶ月以上かかる点にも注意しましょう。
参考:J-Net21(会社の解散について手順を教えてください。)
参考:法務局(合同会社解散及び清算人選任登記申請書)
参考:法務局(合同会社清算結了登記申請書)
参考:国立印刷局(会社法 法定公告について)
個人成りする
個人成りは、合同会社で売上なしでも課される税金を減らす方法の1つです。
先に述べた合同会社の休眠もしくは解散と清算の手続きを行い、個人事業主として事業活動を行うことを指します。
個人事業主の場合、売上なしや赤字でも法人住民税の均等割のような税金は課されません。また、個人事業主は合同会社よりも経理や税務会計に関する処理が簡単です。
なお、従業員が5名未満の個人事業主は、社会保険の加入義務がないため、社会保険料の負担軽減も期待できます。
関連記事:合同会社か個人事業主ならどっちが得?違いやメリット・デメリットを比較して徹底解説
合同会社で売上なしでも決算と確定申告が必要な理由
本項目で解説するのは、合同会社で売上なしでも決算と確定申告が必要な理由についてです。
合同会社で売上なしの場合でも決算と確定申告が必要な理由は、下記のとおりです。
- 欠損金の繰越控除を受けるため
- 売上なしでも納付が必要な税金があるため
それでは、順番に見ていきましょう。
欠損金の繰越控除を受けるため
ただし、毎年、決算と確定申告を行っていなければ、欠損金の繰越控除は受けられません。なお、青色申告の合同会社は、欠損金を最大10年間繰り越して控除できます。
法人税法の第74条で規定されているとおり、売上なしでも決算と確定申告を怠らずに実施し、税制上の優遇措置を享受しましょう。
参考:国税庁(No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除)
売上なしでも納付が必要な税金があるため
本記事の合同会社で売上なしでも納める税金の項目で解説したとおり、売上なしの場合でも合同会社には税金が課されるため、決算と確定申告が必要です。
法人住民税の均等割は、課税所得の有無に関係なく納付義務が発生し、最低でも年間7万円かかります。
引用:総務省(法人住民税)
なお、先に述べた休眠の手続きを行い、合同会社の事業活動を完全に休止した場合、法人住民税の均等割が免除されるケースもあります。
繰り返しになりますが、法人税法の第74条に則り、売上なしの場合でも決算と確定申告は適切に行いましょう。
関連記事:決算申告を税理士に丸投げする際の費用相場や安く抑える方法
売上なしの合同会社で決算と確定申告を行わないリスク
本項目では、売上なしの合同会社で決算と確定申告を行わないリスクについて解説します。

上記のように誤認している経営者がたまにいますが、税務上のリスクが伴いますので注意しましょう。売上なしの合同会社で決算と確定申告を行わない場合、下記のようなリスクが考えられます。
- 税務調査に入られる確率が高くなる
- 金融機関や取引先からの信用が落ちる
- 青色申告の承認が取り消される
- 延滞税や加算税が課されるおそれがある
上記について1つずつ見ていきましょう。
税務調査に入られる確率が高くなる
税務調査は確定申告の内容に不自然な点があったり、無申告だったりする法人に対して実施されるケースが多いです。税務調査に入られた場合、過去3〜5年分の経理や税務会計に関する資料や取引記録の提出が求められます。
無申告が発覚した場合、後述する延滞税や加算税などの追徴課税が課されるおそれがあります。以上のように、税務調査に入られるリスクを回避するためにも決算と確定申告は欠かさず実施しましょう。
万が一、税務調査に入られた場合は税理士の力を借りながら対応しましょう。
参考:国税庁(令和5年度 査察の概要)
参考:国税庁(No.9205 延滞税について)
参考:財務省(加算税の概要)
関連記事:無申告がバレる理由|確定申告していない人のペナルティと末路
金融機関や取引先からの信用が落ちる
合同会社で売上なしでも決算と確定申告を実施していないと、金融機関や取引先からの信用を失うおそれがあります。
決算書は経営状況が確認できる重要な資料です。金融機関に融資を申し込む場合、決算書の提出が求められます。当然ですが、決算を実施していないと決算書の提出はできません。
上記の場合、金融機関から経営状況が不透明と判断され、融資を受けられないリスクがあります。
また、取引先が社会的な信用度を確認するために決算書の提出を求めるケースもあり、提出できない場合、ビジネスチャンスを逃してしまうおそれがあります。
関連記事:日本政策金融公庫の融資審査を確実に通すためのチェックポイント6選
青色申告の承認が取り消される
青色申告の承認を受けている合同会社には、欠損金の繰越控除や少額減価償却資産の特例などの税制上の優遇措置があります。
しかし、決算と確定申告を行わなかった場合、青色申告の承認が取り消されるおそれがあります。
青色申告の資格を失うと、翌事業年度以降の税負担が増加するリスクもあるため、決算と確定申告は怠らずに実施して、承認が取り消されないように注意しましょう。
なお、売上なしの合同会社の決算と確定申告について不安がある場合、税理士に相談しながら進めましょう。
関連記事:合同会社に税理士は必要?費用相場や不要なケースも解説
延滞税や加算税が課されるおそれがある
売上なしの合同会社でも決算や確定申告を行わないと、延滞税や加算税が課されるおそれがあります。売上なしでも法人住民税の均等割が課されるため、納付期限を過ぎた場合、延滞税が日割りで加算され、長期間放置すると負担が増えてしまいます。
加算税は、決算や確定申告が適切に実施されなかった場合に科されるペナルティです。加算税の課税割合は、下表のように規定されています。
引用:財務省(加算税の概要)
関連記事:【法人の決算申告】税理士なしのリスクと依頼時の費用相場
合同会社の税金に関するよくある質問
最後に、合同会社の税金に関するよくある質問についてご紹介します。
内容は随時追記します。
合同会社は決算が不要ですか?
合同会社は決算が必要です。繰り返しになりますが、合同会社で売上なしの場合でも決算と確定申告を行わないと、青色申告の承認が取り消されたり、税務調査に入られたりするおそれがあるため注意しましょう。
合同会社の経営を続ける限り、決算と確定申告を適切に実施する必要があります。決算と確定申告を自力で行う自信がない場合、税理士への依頼も検討しましょう。
参考:e-Gov(法人税法 第七十四条 確定申告)
参考:国税庁(法人の青色申告の承認の取消しについて)
関連記事:【法人の決算申告】税理士なしのリスクと依頼時の費用相場
マイクロ法人は売上なしでも設立できますか?
売上なしでもマイクロ法人は設立できます。マイクロ法人を設立する場合、定款の認証や法人登記などの手続きが必要ですが、売上の有無は設立の要件に含まれていません。
繰り返しになりますが、売上なしでも法人住民税の均等割を納付したり、決算と確定申告を行ったりする必要があるため注意が必要です。
また、売上なしのマイクロ法人は、租税回避を目的としたペーパーカンパニーと疑われるおそれがあります。
関連記事:マイクロ法人は違法?正しい設立方法とメリット・デメリットを解説
合同会社にかかる税金のシミュレーションはできますか?
合同会社にかかる税金のシミュレーションはできます。益金から損金を差し引いて算出される課税所得に対して法人税はかかるため、正確な試算には売上や経費などの詳細なデータが必要です。
また、役員報酬を設定する場合、所得税や住民税、社会保険料も考慮しながらシミュレーションを行いましょう。繰り返しになりますが、売上なしでも法人住民税の均等割は課されますので注意が必要です。
合同会社と株式会社は納める税金に違いはありますか?
合同会社も株式会社も普通法人に区分されるため、納める税金に違いはありません。ただし、下表のとおり、設立時の登録免許税に差があります。
株式会社の場合は最低15万円ですが、合同会社の場合は最低6万円です。
上記のように、合同会社の方が設立にかかるコストを抑えられるため、会社形態を合同会社にするケースが増えています。なお、合同会社が納付する税金については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:合同会社が納付する税金一覧|申告と納付のタイミングも解説
参考:独立行政法人経済産業研究所(ようやく浸透した日本版LLC)
法人が売上なしの場合、税金はかかりますか?
法人が売上なしの場合でも、法人住民税の均等割は納めなければなりません。また、場合によっては下記のような税金も課されます。
固定資産や償却資産を所有している場合 | 固定資産税 |
自動車を所有している場合 | 自動車税 |
従業員を雇用している場合 | 源泉所得税、特別徴収した個人住民税 |
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
株式会社が売上なしの場合、決算は必要ですか?
株式会社が売上なしの場合でも、決算を行う必要があります。繰り返しになりますが、上記は法人税法の第74条で規定されており、事業年度ごとに決算を行い、確定申告をしなければなりません。
決算を行わなかった場合、税務調査に入られたり、ペナルティを科せられたりするおそれがあります。また、株式会社は会社法の第440条で決算公告が義務づけられていますので注意しましょう。
参考:J-Net21(ホームページで決算公告を行いたいのですが、注意点があったら教えてください。)
関連記事:税務調査における修正申告・更正とは?違いについて税理士が解説
法人が売上なしでも経費計上はできますか?
法人が売上なしの場合でも、事業活動に必要な経費は計上できます。たとえば、事務所の賃料や水道光熱費、通信費などが対象となります。
しかし、節税目的で無理に経費計上してしまうと、税務署から指摘されるおそれがあるため注意が必要です。法人の経費計上に関するよくある勘違いと判断基準については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:法人はなんでも経費で落とせる?よくある勘違いと判断基準を解説
関連記事:合同会社が経費で落とせるもの一覧|いくらまで経費計上できる?
法人が売上なしだった場合、確定申告は必要ですか?
繰り返しになりますが、法人が売上なしの場合でも、確定申告を行う必要があります。
上記は法人税法の第74条で規定されており、事業年度ごとに決算を行い、確定申告をしなければなりません。法人が売上なしの場合でも確定申告が必要な理由は、下記のとおりです。
- 欠損金の繰越控除を受けるため
- 売上なしでも納付が必要な税金があるため
上記については、本記事の合同会社で売上なしの場合でも決算と確定申告が必要な理由の項目で詳しく解説しています。売上なしの法人の確定申告で不明な点がある場合、税理士に確認しながら進めましょう。
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
合同会社で赤字の場合、法人住民税は免除されますか?
合同会社で赤字の場合、法人住民税の法人税割は免除されますが、均等割は免除されません。法人住民税の均等割は、下記のような性質があるため、合同会社で赤字の場合でも一定額の税金が課されます。
均等割と法人税割の決定的な違いとしては、法人税割は国に法人税を納めている法人、つまり黒字の法人だけが払うのに対して、均等割は赤字の法人も払わなければならないということです。言い換えると、均等割は、法人がどれだけ儲けたかに関係なく、地域社会の一員として支払う会費という性格が強いといえます。
引用:総務省(地方税制度|法人住民税)
なお、本記事の合同会社で売上なしでも課される税金を減らす方法の項目で解説したとおり、合同会社を休眠させた場合、法人住民税の均等割が免除されるケースがあります。
参考:逗子市(休眠中の法人ですが、法人市民税の申告納付は必要ですか?)
参考:八王子市(会社を休業しました。八王子市に届出等は必要ですか。)
参考:あま市(法人を作ったが、休業している場合は均等割を納付する必要はあるか)
合同会社で赤字の場合、確定申告は不要ですか?
合同会社で赤字の場合でも、確定申告は必要です。繰り返しになりますが、上記は法人税法の第74条で規定されており、事業年度ごとに決算を行い、確定申告をしなければなりません。
赤字の場合の確定申告で不明な点があれば、税理士に相談してみましょう。
参考:No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
関連記事:合同会社に税理士は必要?費用相場や不要なケースも解説
法人が売上なしでも役員報酬は支給できますか?
法人が売上なしでも役員報酬の支給はできます。しかし、支給する役員報酬の金額が、法人の業績や実情に見合っていない場合、税務署から指摘されるおそれがあります。
また、支給した役員報酬に対して、所得税や住民税、社会保険料がかかる点には注意が必要です。
関連記事:合同会社の役員報酬の相場と決め方|かかる税金や節税方法も解説
関連記事:合同会社を収入なしで設立できる?役員報酬ゼロ時の社会保険についても解説
まとめ
今回は、合同会社で売上なしでも納める税金について、決算や確定申告の必要性とあわせて解説しました。
合同会社で売上なしでも納める税金は、次のとおりです。
- 法人住民税の均等割
- 固定資産税
- 自動車税
- 印紙税
- 源泉所得税
- 特別徴収した個人住民税
一方、合同会社で売上なしだと課されない税金は、下記のとおりです。
- 法人税および地方法人税
- 法人住民税の法人税割
場合によっては、合同会社で売上なしでも以下の税金を納める必要があります。
- 法人事業税および特別法人事業税
- 消費税および地方消費税
合同会社で売上なしでも決算と確定申告が必要な理由は、次のとおりです。
- 欠損金の繰越控除を受けるため
- 売上なしでも納付が必要な税金があるため
なお、売上なしの合同会社で決算と確定申告を行わない場合、下記のようなリスクが生じるため注意が必要です。
- 税務調査に入られる確率が高くなる
- 金融機関や取引先からの信用が落ちる
- 青色申告の承認が取り消される
- 延滞税や加算税が課されるおそれがある