こんにちは、ITエンジニアの顧問実績が豊富な税理士の植村拓真です。
近年、ITエンジニアとして起業される方が目立ってきているものの「大変そう」「よく分からない」という不安から、はじめの一歩を踏み出せていない方は非常にたくさんいます。
実際に弊所では、上記のように感じていらっしゃる方からのお問い合わせをよくいただいております。



本記事を読んでいる方の中にも、上記のようにお考えの方がいるのではないでしょうか。
そこで今回は、ITエンジニア起業で失敗したくない方向けにメリットやデメリットについてタイミングとあわせて解説します。
ITエンジニアの起業が1人でもできる理由
ITエンジニアとして起業を検討している方の中には、なぜ1人でも起業できるのかについてまず知りたいという方も多いのではないでしょうか。
理由は大きく分けると2つあります。
- 初期費用が少ない
- 維持費も少ない
本項目ではそれぞれについて解説しますので、順番に見ていきましょう。
初期費用が少ない
ITエンジニアとして起業をする際にかかる初期費用は少ないです。
設備への投資も少なく、在庫管理も不要なため、他の職種と比べたときに初期費用をかけずに起業できるからです。
たとえば、ITエンジニアの仕事はパソコン1台さえあれば仕事を完結させられるため、わざわざオフィスを構える必要もありません。
そういった観点から、ITエンジニアとしての起業は、他の職種と比較したときに初期費用の面で非常に有利であるといえます。
維持費も少ない
ITエンジニアの起業では、初期費用と同様に維持費を抑えられます。
エンジニアとしてのスキルとパソコン1台さえあれば、仕事を完結させられるからです。
たとえば、自分1人で業務を完結させられるのであれば、人件費や外注費はかかりません。
また、オフィスを借りずに自宅で仕事をするのであれば、当たり前ですが自宅以外の家賃は発生しません。
最低限必要な維持費として挙げられるものは、インターネット回線利用料や光熱費などです。
ですので、ITエンジニアとして起業したあとのランニングコストは少ないと言えます。
ITエンジニアの1人起業で失敗しないコツ
「ITエンジニアで起業を考えているけれど、失敗したらどうしよう」という恐怖から躊躇されている方も中にはいらっしゃるかもしれません。
ITエンジニアで1人起業するうえで失敗しないコツは3つあります。
- 資金調達を行う
- 経営に関する知識を身に付けておく
- リスクを考慮して起業する
本項目では、3つそれぞれについて見ていきましょう。
資金調達を行う
ITエンジニアとして起業するにあたって、事業を立ち上げた直後の資金や生活費の確保は必要不可欠です。
収益を安定させるまでにはある程度の期間がかかるものだからです。
起業後、数ヶ月から1年の間にどのくらいの費用が必要かを見積もり、万が一に備えられるくらいの資金を準備してから起業しましょう。
資金を調達する方法としては、
- 金融機関から融資を受ける
- フリーランスエージェントで仕事を受注し起業資金を貯める
- クラウドファンディングを活用する
などが挙げられます。
関連記事:創業融資・資金調達支援サービスについて
経営に関する知識を身に付けておく
ITエンジニアで1人起業する場合でも、経営に関する知識を身に付けておくことをオススメします。
経営者としてのスキルやマインドを向上させるためには経験を積むことが一番ですが、たとえばビジネス関連の書籍を読んだり、セミナーに参加することも有効な手段です。
起業家は単なる技術者ではなく、経営者としてのスキルやマインドも必要不可欠です。
リスクを考慮して起業する
起業はリスクを伴いますが、それを考慮したうえで起業する必要があります。
事業計画を立てずにスタートしたり、財務計画を疎かにしたりすることは起業失敗の大きな要因となってしまうからです。
例えるならば、地図もコンパスも持たず、近所を散歩するときのサンダルでエベレストを登頂しようとするようなものです。どう考えても無計画で危険です。
多くの人々が起業のリスクを過小評価してしまいやすいので、リスクを正しく評価し、事前に対策を講じておくことが重要です。
ITエンジニアが1人で起業するメリット


という方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。
ITエンジニアとして1人で起業するうえでのメリットは次のとおりです。
- スキルを活かして起業できる
- 自分で仕事を選べる
- 高い収益性を見込める
- 副業しながら起業できる
本項目ではそれぞれについて解説しますので、一つずつ順番に見ていきましょう。
スキルを活かして起業できる
ITエンジニアとして起業するメリットの一つが、会社員時代に培ったスキル・経験をそのまま活かせるという点です。
起業するにあたって新しいことをゼロから学んだり身に付けなくて良いからです。
たとえば、もしあなたが、PHPを用いて要件定義から開発、設計、テスト、保守・運用の一連の流れを経験している場合、Webアプリを開発できます。
また、自社サービスのシステム開発に技術的なスキル・経験を活かすだけでなく、他社のシステム開発の支援もできるでしょう。
今まで培ったスキルや経験をそのまま活かして起業できるのは、非常に効率が良いです。
自分で仕事を選べる
会社員であれば所属している組織に準じてタスクが受動的に振り分けられますが、起業することで能動的に仕事を受注していくことになるからです。
自分が得意な仕事ややりたい仕事を選べるという自由度が高まります。
たとえば、自社サービスを事業にする場合、馴染みのある業界に対してどのような方法や枠組みで事業を展開していくかを決め、仕事に取り組むことができます。
また、他社のシステム開発を支援するような場合、単価や案件内容、勤務形態を考慮しながら、どの案件に参画するかを判断しやすくなるでしょう。
そういった観点から、ITエンジニアとして1人で起業することで、自分に合った仕事を選びやすくなります。
高い収益性を見込める
ITエンジニアとして起業するメリットとして、高い収益性が見込めることが挙げられます。
人を雇用せずとも事業を運営できるからです。
たとえば、起業して収益をあげるためには、多くの場合、人を雇って人的リソースの確保が必要となります。
そのため、人件費やマネジメントコストがかかります。
しかし、ITエンジニアの場合、人件費をかけずに一人でWebサービス・アプリ・システムなどの開発ができます。
一旦開発してしまえばそこから自動的に収益が生じるケースも多いです。
このように、エンジニアは1人でも収益を拡大していけるケースが多く、高い収益性が見込めます。
副業しながら起業できる
副業しながら起業できる点も、ITエンジニアとして1人起業する上でのメリットです。
ビジネスを軌道に乗せるまでには、ある程度の時間がかかる場合が多いです。
そのため、起業したての頃は、収益が増えなかったり安定しなかったりすることもあります。
そんなとき、ITエンジニアの副業案件を受託することで、事業の収益低下に備えたり自分の生活レベルを一定に保ったりすることができます。
副業案件は単価の高いものも多いため、短い稼働日数でも多くの収入が得られます。
事業がすぐに軌道に乗らなかったとしても、副業をしながら心の余裕を持って続けられる点も、ITエンジニアとして起業することのメリットと言えるでしょう。
関連記事:会社員の会社設立はばれる!勤務先に内緒で法人化する方法と注意点を解説
ITエンジニアが1人で起業するデメリット
ITエンジニアとして1人起業するうえで、たくさん魅力的な部分やメリットがあります。
一方で、やはりデメリットがあるのも事実です。
たとえば、
- 起業直後は売上が安定しない
- 事務作業をすべてひとりで行わなければならない
- コミュニケーション能力が必要になる
- 業界の最新情報を自力で収集する必要がある
- 会社の設立費用と維持費がかかる
などが挙げられます。
本項目では、それぞれについて具体的に解説していきます。
起業直後は売上が安定しない
ITエンジニアとして1人で起業した直後は、月々の売上が安定しないこともあります。
起業初期はマーケティングが思うように機能しなかったり、ブランディングが不足したりしてしまう傾向があるからです。
自分のサービスやスキルを市場にどうアピールするかが不十分だと、たとえば、顧客獲得に苦戦したり、自分が理想とする単価で案件を受注できなかったりしてしまいます。
そういうことから、起業して間もない期間は月々の収益が不安定になりやすい傾向があります。
ですので、起業直後のリスクを分散するためにも、クラウドソーシングなどで複数の案件を幅広く受託できるようにしておきしょう。
また、思いがけない事故や怪我、体調不良などで納期に遅れることがないよう健康の管理にも気を付けましょう。
事務作業をすべてひとりで行わなければならない
ITエンジニアで1人起業したときのデメリットとして、事務作業などに時間を取られ、メイン業務や事業経営に集中できないことが多く発生してしまう点が挙げられます。
当たり前のことですが、会社員として勤めていたときは営業部や経理部といった形で分業されていたタスクを、起業後は全て自分1人でやっていく必要があるからです。
たとえば、エンジニアとしての仕事はもちろん、営業活動・確定申告・クライアントとの契約手続きなど全部1人で行わなければなりません。
不得意な業務がある場合、「餅は餅屋」の発想で、外部の専門家に任せることも必要になるでしょう。
起業後はビジネスそのものだけに、時間や労力を割くことは難しいということを念頭に置いておきましょう。
関連記事:フリーランスエンジニアが税理士探しで失敗しない方法と費用相場を解説
コミュニケーション能力が必要になる
ITエンジニア起業は、プログラミングなどの実務スキルさえ高ければ問題ないと思われがちですが、クライアントとのコミュニケーション能力も求められます。
起業したばかりの状態は、実績もないうえにサービスにおける信頼関係もまだ構築されていないからです。
例えるならば、起業当初というのは「ダイヤの原石」のような状態なのです。
磨いていけば光り輝く可能性を秘めてはいますが、その石ころに人は価値を見出すことはできません。
ですから、自分で自分の価値を伝えていく必要があります。
実績が積み重なったり、認知が広がったりするまでは、先方に納得してサービスを利用してもらうための営業力やプレゼンテーションスキルが試されます。
ですので、クライアントのニーズや意図を読み取り、自分のサービスの良さを言語化できるコミュニケーション能力も必要です。
業界の最新情報を自力で収集する必要がある
IT業界は、変化が早くトレンドを常に追いかける必要があります。
起業後は新しいプログラミング言語やAI技術など、業界の最新情報を自力で収集し続けないといけません。
競合他社に自分の仕事を奪われないようにしていくためです。
ですので、常にスキルや知識をアップデートしておかなくてはいけません。
会社員として働いていたときは、周りからの共有で新しい情報が入手しやすい環境にありました。
しかし、ITエンジニアとして1人で起業して事業を運営するとなると、業界の最新情報は自ら取りにいかなければ入ってきません。
新しい技術の頻繁なアップデートについていけるか不安といったプレッシャーを感じるかもしれません。
ですが、IT業界のニュースを日頃からこまめにチェックする習慣を作るなどの工夫や対策をしてみましょう。
会社の設立費用と維持費がかかる
もし仮に、会社を設立することを視野に入れている場合は、設立費用と設立後の維持費がかかることは把握しておきましょう。
後から想定外の費用が発生すると、事業計画が狂う恐れがあるからです。
たとえば、税金、保険、登記費用、顧問弁護士や税理士の費用などが考慮されていないと、予期せぬ負担が生じます。
負担を防ぐために、すべてのコストを事前に把握しておくことは非常に大切です。
会社を設立する際にかかるものとして、登記費用・資本金・定款にかかる費用など、さまざまなものがあります。
また、会社を設立したあとも、社会保険料・オフィス家賃・水道光熱費・通信費・法人税などの税金・税理士や弁護士などへ支払う報酬などが発生することも念頭に置いておきましょう。
関連記事:会社と個人事業主はどっちが得?メリット・デメリットを比較して法人化を検討
まとめ
今回は、ITエンジニアの1人起業で失敗したくないという方向けにメリットとデメリット、タイミングもあわせて解説しました。
ITエンジニアはたった1人でも起業しやすい職種であり、メリットが非常に多くある一方で、下記のようなデメリットもあるので注意していきましょう。
- 起業直後は売上が安定しない
- 事務作業をすべてひとりで行わなければならない
- コミュニケーション能力が必要になる
- 業界の最新情報を自力で収集する必要がある
- 会社の設立費用と維持費がかかる
なお、植村会計事務所では、顧問契約と法人化をセットでご依頼くださる方向けに、株式会社13.8万円、合同会社1.6万円で会社設立・法人化フルサポートプランを提供させていただいております。