こんにちは、植村会計事務所代表の植村拓真です。
相続関連の手続きは作業が多く複雑で、多くの方が「めんどくさい」「よくわからない」と悩んでいます。
実際に弊所では、上記のように考えていらっしゃる方からのお問い合わせをよくいただいております。
本記事を読んでいる方の中にも、上記のように考えている方がいるのではないでしょうか。
しかし、手続きを行わずに放置していると、さまざまなデメリットが発生する恐れがあるため注意が必要です。
そこで今回は、相続手続きがめんどくさい理由と放置NGな理由を対処法とあわせて解説します。
相続手続きがめんどくさい5つの理由
相続手続きは、さまざまな理由からめんどくさいと言われています。
本項目ではなぜめんどくさいと言われているのかを解説しますので、順番に見ていきましょう。
- 必要書類を集めるのに時間がかかる
- 平日に仕事があると時間を確保できない
- 相続する財産を把握できていない
- 相続税の支払い能力が低い
- 相談先を探して足を運ぶためにも時間がかかる
①必要書類を集めるのに時間がかかる
相続手続きがめんどうだと言われる理由のひとつに、必要書類を集めるのに時間がかかる点が挙げられます。
預貯金や不動産などを相続するためには多くの書類が必要で、特に戸籍謄本の準備がもっとも面倒だと言われています。
戸籍謄本は本籍地を管轄する市区町村で交付される書類です。
もし、被相続人が本籍地を複数回変更していた場合、複数の役所に問い合わせて請求しなければなりません。
郵送で請求する際に準備で時間がかかるだけでなく、戸籍謄本が届くまでの時間もかかります。
②平日に仕事があると時間を確保できない
相続手続きが初めての方であれば、事前に税金や手続きなどについて調べる必要があるため時間がかかります。
そして、相続手続きに関する必要書類は、平日に役所や法務局などに請求する必要があります。
平日の日中に仕事がある方は時間を確保するのが困難で、なかなか手続きの準備が進みません。
③相続する財産を把握できていない
相続手続きを進める前に準備を全く行っていない場合、何を相続するのか把握するのは困難です。
たとえば、被相続人の銀行口座の残高を確認するためには、被相続人の戸籍謄本をすべて金融機関に提出しなければなりません。
繰り返しになりますが、被相続人が本籍地を複数回変更している場合、戸籍謄本を複数の役所に問い合わせて請求する必要があります。
④相続税の支払い能力が低い
被相続人から財産を相続して相続税を納める際、資金不足の問題が発生するケースは少なくありません。
特に、相続する財産の大部分が不動産などの現金化しにくいもので構成されている場合、相続税の支払い能力の低さに悩まされがちです。
なお、相続税の納付が困難な場合、一定の条件を満たせば納税期限の延長が認められます。
条件は以下のとおりですので、確認しておきましょう。
- 相続税の納税額が10万円を超えている
- 金銭での納付が困難である
- 延納税額および利子税に相当する担保を提供できる
(※納税額が100万円以下で延納期間が3年以下は担保不要) - 納付期限ませに延納申請書と担保提供関連書類を税務署長に提出する
⑤相談先を探して足を運ぶためにも時間がかかる
相続手続きの時間を確保できない、手続きがよくわからない方であれば、相談先を探すことになります。
相続手続きに関するお悩みは、相続税なら税理士、相続人間でのトラブル解決なら弁護士、相続登記なら司法書士に依頼します。
しかし、実際に税理士や弁護士などの専門家を探す際、事務所が多すぎてどこに相談するのが適切かを判断するのは困難です。
さらに、依頼先の事務所を訪問するためにも時間がかかります。
依頼先探しを少しでも時短したい方は、オンライン・リモート面談に対応している事務所に相談しましょう。
そして、平日の日中に多忙な方は、平日19時以降や土日面談にも対応している事務所に相談するのがおすすめです。
弊所では、事前にご予約いただいた方に、平日19時や土日面談にリモート面談を実施しておりますのでお気軽にご相談くださいませ。
相続手続きがめんどくさくても放置NGな5つの理由
相続手続きは、さまざまな理由からめんどくさいと考えている方がいます。
しかし、めんどくさいからといって放置してしまうと、以下のようなデメリットが発生してしまいます。
- 相続放棄と限定承認ができなくなる
- 遺留分を請求できなくなる
- 相続回復請求ができなくなる
- 名義変更しないと消える遺産がある
- 相続税の無申告はペナルティの対象になる恐れがある
①相続放棄と限定承認ができなくなる
相続手続きがめんどくさいからと放置してしまうと、相続放棄と限定承認ができなくなってしまいます。
相続放棄や限定承認を行うためには、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述書を提出する必要があるからです。
3ヶ月を過ぎてしまうと、自動的に相続を承認したとみなされて、被相続人の財産を負債も含めて引き継がなければなりません。
相続手続きの放置には多額の借金を引き継ぐリスクがありますので、放置せずにすぐ手続きを行いましょう。
ちなみに、相続には単純承認、限定承認、相続放棄の3つがあります。
各用語について解説するので確認しておきましょう。
単純承認
単純承認とは、被相続人の財産を負債を含めてすべて相続することです。
先ほど解説したとおり、相続手続きを放置して3ヶ月経過すると、自動で単純承認したとみなされます。
限定承認
限定承認とは、相続する資産の範囲内で負債も受け継ぐことです。
相続する資産と負債の量がわからないケースに用いられます。
限定承認には期限があり、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所への申し立てが必要です。
相続放棄
相続放棄とは文字通り、負債を含めたすべての遺産を受け継ぐ権利を手放すことです。
原則、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申し立てる必要があります。
②遺留分を請求できなくなる
遺留分を請求できなくなる点にも注意しましょう。
遺留分とは、最低限保証されている法定相続人が相続する資産のことです。
被相続人が遺言を作成した場合でも排除されません。
しかし、遺留分の請求には、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったとを知ったときから1年以内、相続の開始から10年以内の期限があります。
期限を過ぎると遺留分請求の権利は消滅しますので、早めに対応しましょう。
③相続回復請求ができなくなる
相続回復請求とは、不正に侵害された相続権を取り戻すための法的手続きのことです。
相続回復請求権は、相続権の侵害を知った日から5年以内、または相続の開始から20年以内に行わなければ消滅します。
相続回復請求ができない場合、故意に相続権を侵害された際に裁判所に申し立てても、正当な相続分を取り戻せません。
④名義変更しないと消える遺産がある
相続手続きを放置していると、名義変更しないがために預貯金や株式、不動産などが消えるので注意しましょう。
財産は名義変更せずに放置すると相続人の所有権が確立されず、特定の期間を過ぎると無効になる場合があります。
たとえば、預貯金は名義人である被相続人の死亡後に名義変更せずに5年放置すると、預貯金の払い戻しを請求できなくなります。
なお、不動産の相続登記に関しては、2024年4月1日から義務付けられました。
相続登記の申請期限は、所有権の取得を知った日から3年以内、遺産分割の場合は成立した日から3年以内です。
⑤相続税の無申告はペナルティの対象になる恐れがある
相続税の納税期間は、相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内です。
納税する必要があるにもかかわらず無申告のまま放置していると、ペナルティとして追徴課税を課される恐れがあります。
また、無申告が故意であると判断されたり、虚偽の申告を行ったりすると、最悪の場合に刑事罰が科されるケースもあります。
相続税を無申告のまま放置するリスクは大きいですので、納税義務がある方は必ず申告しましょう。
関連記事:無申告がバレる理由|確定申告していない人のペナルティと末路
めんどくさい相続手続きの対処法
最後に、めんどくさい相続手続きの対処法について解説します。
- 不動産は売却してから相続する
- 生命保険を利用して相続税の納税資金を確保する
- 相続に強い税理士に依頼する
不動産は売却してから相続する
不動産の相続手続きがめんどくさい原因は、分割が困難な点にあります。
分割が困難であるため、相続人同士で揉める原因になりやすいです。
さらに、不動産が高額な場合、多額の相続税が大きな負担になる点も挙げられます。
そこで、不動産を相続する際に、あらかじめ不動産を売却しておけばトラブルを回避しやすいです。
不動産の売却金であれば分割しやすいですし、現金に変えておけば税負担を軽減できます。
生命保険の死亡保険金を利用して相続税の納税資金を確保する
相続する際に相続税の負担が大きいと感じ、あなたが死亡保険金の受取人である場合、生命保険を活用しましょう。
死亡保険金は遺産分割協議の対象外であるため、受取人が全額を受け取れます。
また、死亡保険金には「500万円×法定相続人の人数」の非課税限度額が設けられているため、節税につながります。
相続に強い税理士に依頼する
相続手続き自体がめんどくさい、時間を確保できない、よくわからない方は、相続に強い税理士に依頼しましょう。
相続に強い税理士に依頼すれば、専門用語を覚えたり、相続税を計算したり、相続手続きについて調べる手間が省けます。
関連記事:相続手続きに税理士は必要か?報酬の目安や探し方とあわせて解説
まとめ
今回は、相続手続きがめんどくさい理由と放置NGな理由を対処法とあわせて解説しました。
相続手続きがめんどくさいと感じて、何もせずに放置する方は少なくありません。
中には、なんとなく相続税を納める必要があるとわかっていながら、放置している方もいます。
繰り返しになりますが、相続手続きの放置には以下のデメリットがあります。
- 相続放棄と限定承認ができなくなる
- 遺留分を請求できなくなる
- 相続回復請求ができなくなる
- 名義変更しないと消える遺産がある
- 相続税の無申告はペナルティの対象になる恐れがある
相続関連の手続きには期限がありますので、なるべく早めに対応しましょう。