こんにちは、ネットビジネス業に強い税理士の植村拓真です。
植村会計事務所では開業以来、私自身がネットビジネス業に取り組んでいた経験を活かして、主にネットビジネス業の方と顧問契約を結ばせていただいております。
そんな弊所では、SNSやYouTubeなどで活躍されているインフルエンサーの方から、以下のようなご相談を日々いただいております。



インフルエンサーが節税目的で法人化する場合、タイミングや収益規模によっては損をしかねません。法人化によって想定よりも税金や経理や税務会計の作業量が増加するケースがあるからです。
しかし、それでも節税につながるならと、法人化を検討している方がいらっしゃると思います。
そこで今回は、インフルエンサーが法人化を検討する適切なタイミングからメリット・注意点まで税理士が徹底解説します。
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
インフルエンサーが法人化を検討する適切なタイミング
インフルエンサーとして活動を続けていると、売上が大きく伸びたり事業の幅が広がったりして、法人化すべきかどうかを検討する場面に直面します。
ただし、法人化にはコストや手続きが発生するため、適切なタイミングの見極めが重要です。
そこで本項目では、法人化を前向きに検討すべき3つのタイミングについて解説します。
- 年間売上が900万円以上で安定している
- 事業規模をどんどん拡大していきたい
- 新規取引先を開拓したい
年間売上が900万円以上で安定している
年間売上が900万円以上で安定するようになったときが、節税対策を徹底したいインフルエンサーが法人化を検討すべきタイミングです。
個人事業主の所得にかかる税率は、所得の増加に比例して上昇します。
日本の所得税は累進課税制度を採用しており、課税所得が695万円以上だと税率は23%になり、900万円以上であれば33%まで跳ね上がります。住民税も加算されると、実効税率は40%程度です。
一方、法人税は一律の税率で課されるため、一定以上の所得があり節税対策を徹底したいインフルエンサーの方は、法人化したほうが税負担を軽くできるケースがあります。
年間売上が安定して900万円以上ある状態のインフルエンサーの方は、節税対策として法人化を検討してみましょう。
事業規模をどんどん拡大していきたい
インフルエンサーの事業が軌道に乗り始めて、SNS投稿や広告収入にとどまらず、自社ブランドの立ち上げや外注の活用などを見据えているときも、法人化を検討するタイミングです。
事業規模が大きくなるにつれて、個人事業主のままでは契約形態や資金調達、社会的信用の面で限界が出てきます。
法人として登記しておけば、法人名義での請求書や契約書を発行できるようになり、取引先に与える印象も大きく変わります。
そして、事業融資や補助金の活用など、資金調達の選択肢が増える点も、インフルエンサーが法人化する大きなメリットです。
関連記事:アフィリエイト業の事業目的を定款に記載する際の書き方と注意点
新規取引先を開拓したい
新たな企業案件や広告主との直接契約を増やしていきたいと考えているインフルエンサーの方にとって、法人化は取引先からの信用を得るための手段です。
実際に、法人相手でなければ取引しない企業は少なくなく、個人事業主では商談の前に除外されるケースもあります。法人格があるかどうかで、契約の安定性や信用の評価が変わります。
さらに、法人名義で銀行口座を開設すれば、広告収入や案件報酬などの受け取りや経費の管理もより明確に整理できて、ビジネスとしての信用性が高まる点もメリットです。
新規取引先を開拓していくためには、情報発信力やフォロワー数といった影響力はもちろん、取引基盤としての信用性が問われます。
法人化によって「きちんとした体制で活動している」と対外に印象付けられて、競合との差別化にもつながるケースもあります。
法人化は新規取引先の開拓で有利に働くケースがあるため、営業活動を強化したいインフルエンサーの方は法人化を検討しましょう。
法人化のタイミングについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:個人事業主が法人化するタイミングはいつ?節税シミュレーションも掲載
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
インフルエンサーが法人化するメリット
インフルエンサーが法人化するメリットについて、さらに詳しく解説します。繰り返しになりますが、インフルエンサーが法人化するメリットには、税金面や信用面などのさまざまなものがあります。
本項目では、以下の主な5つのメリットについて解説するので順番に見ていきましょう。
- 所得にかかる税率を抑えられるケースがある
- 経費の幅が広がる
- 社会的な信用を得やすい
- 社長の肩書が手に入る
- 【注意点あり】最長2年間消費税の免税事業者になる
所得にかかる税率を抑えられるケースがある
節税対策を徹底したいインフルエンサーの方が法人化を検討する際、注目されるのが所得にかかる税率の違いです。
繰り返しになりますが、個人事業主のまま年間売上が大きくなると、所得税と住民税の合計で40%前後の税負担となるケースがあります。
一方、法人化すれば法人税の実効税率は一定水準で収まって、所得が多い方ほど税率差による恩恵を受けやすいです。
一見すると税率の差はわずかですが、長期目線で見れば納税額に大きな差が生じる見込みがあるため、法人化が節税対策の要となるケースがあります。
関連記事:法人税と所得税ならどっちが得?税金面で法人化すべきケースを解説
経費の幅が広がる
法人が経費として認められる支出の幅が、個人より広い点も大きなメリットです。
個人の場合、事業と私生活の区分が曖昧になりがちで、税務署から家事関連費として否認される支出もあります。
たとえば、打ち合わせに必要だったと証明できない飲食店での交際費、按分していないスマホやWi-Fiの通信費などです。
一方で法人化すれば、法人が支出する経費と個人の生活費を明確に分けやすくなり、必要経費として認められやすくなる傾向があります。
たとえば、社長が自宅の一部を事務所として使用している場合、使用しているスペースに応じた地代家賃を法人から社長個人に支払えば、法人の経費扱いです。
また、法人であれば退職金制度を設けたり、福利厚生費としてスタッフや役員の健康診断の一部負担したり、役員報酬などの制度設計も行えます。
各支出は節税はもちろん、スタッフのモチベーション管理にもつながるため、長期目線の経営視点でも有効です。
関連記事:SNSインフルエンサーが経費計上できるもの・できないものを解説
関連記事:【法人版】節税対策の裏ワザ|手元により多くの資金を残す方法
社会的な信用を得やすい
インフルエンサーの方が法人化で得られる最も大きな変化のひとつが、社会的信用の向上です。
個人インフルエンサーとして活動している間は、どうしても対外から事業の継続性や契約の安定性に不安を抱かれるおそれがあります。
一方、法人登記を行って法人名義で契約や請求を行うようになると、法人としての責任を負う体制が整っていると見なされて、取引先や金融機関からの信用が得やすいです。
たとえば、企業案件を受託する際に、契約相手が法人であることを条件とする企業もあるため、法人化していれば新規案件の間口が広がります。
また、法人名義での銀行口座開設やビジネス用クレジットカードの発行などもできるようになり、事業資金の管理が整えば信用調査においても好影響です。
社長の肩書が手に入る
インフルエンサーが法人化で享受できる主なメリットといえば、税金面ばかりに注目が集まりがちです。
実は他にも、代表取締役や社長といった肩書を名乗れるようになるメリットがあります。
インフルエンサーという職業は比較的新しく社会的に理解されにくい場面もありますが、法人の代表者という肩書が加わるため、名刺やプロフィール上の説得力が一気に増します。
社会的な信用に関する話になりますが、実際に商談や契約交渉の場で社長という肩書を使えるかどうかで、相手の対応が変わるケースも少なくありません。
法人格があるというだけで、いち個人の趣味的な活動とは一線を画すイメージが生まれて、自己ブランディングにも好影響を与えられます。
【注意点あり】最長2年間消費税の免税事業者になる
法人化して会社を新たに設立すると、一定の条件を満たせば、最長で2年間は消費税の免税事業者です。
新設法人に対する優遇措置のひとつであり、創業初期のキャッシュフローを守るうえで役立ちます。
たとえば、アフィリエイトや広告収入などで売上があった場合でも、課税売上高が基準に満たなければ消費税を納める必要がないため、手元に残る利益を最大化しやすいです。
ただし、本制度を活用するためには、いくつかの条件を満たさなければなりません。
資本金または出資額が1,000万円未満であり、かつ設立1期目の「特定期間(設立日から起算した最初の6ヶ月間)」に支払った給与等の総額が1,000万円以下である場合、2期目も消費税の免税事業者として扱われます。
一方、特定期間中に支払った給与等の合計額が1,000万円を超えると、基準期間がない新設法人であっても、2期目から消費税の課税事業者です。
引用:国税庁(消費税のしくみ)
また、インボイス制度の影響により、消費税の免税事業者では取引先との取引に影響が出るおそれがあります。
インボイスを発行できなければ、取引先が仕入税額控除を受けられないため、消費税分を報酬から差し引かれたり、契約自体が見直されたりするケースもあります。
消費税免税の恩恵は短期目線では利益につながりますが、事業の成長や取引関係の安定を考慮すると、消費税の課税事業者としてインボイス発行の準備を整えるべきか検討が必要です。
参考:国税庁(No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)
参考:国税庁(No.6501 納税義務の免除)
関連記事:インボイス制度と法人成り|タイミングから影響と対策まで解説
関連記事:アフィリエイトで法人化(会社設立)するメリット・デメリットとタイミングを解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
インフルエンサーが法人化する際の注意点
インフルエンサーの法人化にはメリットだけでなくいくつかの注意点もあるため、慎重に検討しなければなりません。
そこで本項目では、法人化の際に注意すべきポイントを以下の5点に整理して解説します。
- 【メリットもあり】社会保険料がかかる
- 赤字経営でも法人住民税の均等割7万円が発生する
- 専門知識が必要な経理や税務会計の負担が増加する
- 税務調査のリスクが高まる
- 原則、役員報酬は1年間自由に変更できない
【メリットもあり】社会保険料がかかる
インフルエンサーで法人化して会社を設立すると、たとえ代表者ひとりであっても社会保険(健康保険や厚生年金保険)への加入が必要です。
社長個人が法人に雇用されて報酬を受け取る立場となるためで、原則として会社負担を含む社会保険に切り替わります。
法人化の際に注意すべきなのが、毎月の社会保険料の負担です。事業規模や経営状況によっては負担が重く感じられる方もいます。
とはいえ、社会保険に加入すれば将来受け取る年金額が厚くなったり、高額療養費制度などの保障が充実したりなど、公的制度上のメリットも享受できます。
そして、福利厚生が整っている法人として外部に評価されやすかったり、リクルートの際に有利に働く点も社会保険に加入するメリットです。
赤字経営でも法人住民税の均等割7万円が発生する
インフルエンサーで法人化して会社が赤字経営であっても、法人住民税の均等割7万円が発生する点に注意しましょう。
事業規模や業績に関係なく、法人がある限り発生する法定費用で、資本金や従業員数によってはさらに高くなるケースもあります。個人事業主の場合、所得がゼロであれば所得税や住民税は発生しません。
しかし法人の場合、赤字経営であっても法人住民税の均等割の納税義務が生じるため、事業が軌道に乗るまでの期間や売上減少が起こったときでも、一定の出費があります。
専門知識が必要な経理や税務会計の負担が増加する
法人化すると、経理や税務会計に関する事務作業の負担が増加するため、事業に集中できなくなるおそれがあります。
個人事業主であれば、白色申告や青色申告で比較的シンプルな帳簿付けと申告書の提出だけで済みますが、法人では貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成して、法人税や消費税などといった複数の税目に対応した申告が必要です。
さらに、期中の会計処理には仕訳のルールや税法上の専門知識が求められるほか、源泉所得税や法定調書の作成、年末調整といった人件費に関する処理も発生します。
役員報酬の設定や社会保険の算定なども経営判断に直結するため、税務と労務の知識を組み合わせた対応が必要です。
法人化に伴い増加する各事務作業は、事業に集中したいインフルエンサーにとって想定以上の大きな負担となるおそれがあります。
そのため、事業に集中したまま法人化したいインフルエンサーの方がよく弊所にご相談くださいます。
税理士報酬はかかるものの、申告ミスによるペナルティや税務調査など、さまざまなリスクを回避できる安心感は大きなメリットです。
関連記事:会社と個人事業主はどっちが得?違いやメリット・デメリットを比較して法人化を検討
税務調査のリスクが高まる
法人化すると、個人事業主よりも税務調査の対象となる確率が高まる傾向があります。
税務署としても、法人は一定規模の事業を継続して行っている前提で捉えているため、申告内容が適切かどうかを定期的に確認しようとする動きがあります。
特に、経費の使い方や役員報酬の妥当性、交際費や家賃などの支出が適正かの判断は調査対象になりがちです。
また、インフルエンサーのように事業とプライベートの境界が曖昧になりやすい職種では、事業と関係のない支出を経費にしていないかなどが厳しくチェックされる傾向があります。
万が一、税務調査で指摘された場合は修正申告や加算税などの支払いが必要です。税務調査のリスクを下げるために、日頃から正確に経理や税務会計を行うよう徹底して、根拠のある取引処理を心がけるようにしましょう。
関連記事:アフィリエイトの税務調査で確認される内容と対策を解説
関連記事:税務調査はインスタも対象!SNSインフルエンサーが監視される理由と対策を解説
原則、役員報酬は1年間自由に変更できない
会社から支払う役員報酬は、原則として期首から3ヶ月以内に決定して、1事業年度は自由に金額を変更できません。
例外で変更できるケースはありますが、事業年度内に金額を変更してしまうと一部が損金算入が認められなくなり、税負担が増加するおそれがあります。
役員報酬を過大に設定すると、社会保険料や所得税の負担が重くなり、資金繰りを圧迫する結果につながりかねません。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
関連記事:役員報酬の手取りを増やす方法|シミュレーションや一覧表も掲載
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
インフルエンサーで法人化しないほうがいいケース
上記のように考えている方向けに、本項目ではインフルエンサーで法人化しないほうがいい3つのケースについて解説します。
- 大きな売上が立っても安定していない
- 顧問税理士に依頼する予定がなく専門知識や経験もない
- 副業で取り組んでおり本業に集中したい
大きな売上が立っても安定していない
大型案件を受注できたりバズってアフィリエイト報酬が多く発生したりして、一時的に大きく売上が伸びたとしても、今後安定する見込みがない場合は法人化を慎重に検討しましょう。
繰り返しになりますが、たとえ赤字経営であっても法人住民税の均等割が7万円程度発生しますし、社会保険料なども負担する必要があるからです。
特に、フォロワーの増減や広告単価、案件数などによって毎月の売上が大きく変動するインフルエンサーの方にとっては、収入が安定しているかどうかは法人化を検討するうえで重要です。
また、インフルエンサー業は市場のトレンドに左右されやすく、人気の変動リスクも大きいため、一定期間の売上実績だけで法人化を急ぐのは避けましょう。
顧問税理士に依頼する予定がなく専門知識や経験もない
法人化をすると、帳簿の管理や決算処理、税務申告などの専門知識が求められる業務が急増します。
特に、法人税や消費税の申告には会計基準や税法の理解が必要であるため、個人事業主のような簡易な帳簿付けでは対応できません。
法人化をしたにもかかわらず、さまざまな実務に対応できなければ、申告漏れや帳簿不備によるペナルティのリスクが生じます。
また、税務署からの問い合わせや税務調査にも対応する必要があり、作業量だけでなく精神面のプレッシャーも無視できません。顧問税理士に依頼せず、自力ですべての経理や税務会計をこなそうとするのは大きな負担です。
事業に集中したいインフルエンサーの方にとって、各作業は事業の妨げになりかねません。仮に会計ソフトを導入したとしても、専門知識がなければ適切な処理はできません。
法人の経理や税務会計に関する専門知識や経験がなく、顧問税理士をつける予定がない方は、法人化をしないほうがいいケースに該当します。
関連記事:SNSインフルエンサーに強い税理士の費用相場から失敗しない選び方まで解説
関連記事:顧問税理士とは?顧問契約の必要性・メリットや注意点を解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
インフルエンサーの法人化シミュレーションは植村会計事務所にお任せください!
今回は、インフルエンサーが法人化する適切なタイミングからメリット・注意点まで税理士が徹底解説しました。
インフルエンサーが法人化を検討するうえで大きなメリットがある一方、経理・税務の複雑化や社会保険の負担などで、見落としがちな注意点もあります。
法人化をする際は注意点も考慮したうえで、慎重に検討しましょう。また、法人化を検討すべきタイミングは以下のとおりですので、判断するうえで参考にしてみてください。
- 年間売上が900万円以上で安定している
- 自社ブランドの立ち上げや外注を視野に入れている
- 新規取引先を開拓していきたい
植村会計事務所はネットビジネス業の顧問実績が豊富で、法人化シミュレーションを無料で実施しております。