こんにちは、イラストレーターに強い税理士の植村拓真です。



弊所では、上記のようにお考えのイラストレーターの方からよくご質問をいただきます。
たしかに、一定の所得を超えている方は法人化により、手取りが増えたり節税対策の幅が広がったりするメリットを享受できます。
一方で、事務作業の煩雑さが増したり、会社を維持するために費用がかかったりなど、さまざまな注意点があるため、誰でも法人化によるメリットを享受できるわけではありません。
場合によっては、法人化によりフリーランスや個人事業主のときよりも、納税額が増えたり事業に集中できなくなったりして後悔する方もいらっしゃいます。
そこで今回は判断に迷われている方向けに、イラストレーターが法人化を検討すべきタイミングとメリット・デメリットを徹底解説します。
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イラストレーターが法人化を検討すべきタイミング
さっそく、イラストレーターの方が法人化を検討するタイミングについて解説します。
所得が増えてきたタイミングや取引先との関係性、節税効果の観点から、法人化を考えるタイミングは人それぞれ異なります。
まずは、法人と個人事業主の違いを理解したうえで、いつ切り替えを検討すべきかを整理してみましょう。
- そもそも個人事業主と法人の違いとは?
- 法人化を検討する適切なタイミング
そもそも個人事業主と法人の違いとは?
イラストレーターの方の多くは、最初はフリーランスもしくは開業届を提出して個人事業主で開業します。
法人とは異なりすぐに活動を始められる気軽さがある一方で、所得が増えてくると「法人化した方がいいのでは」と感じるタイミングが訪れます。
そこでまずは、個人事業主と法人の主な違いを理解しておきましょう。以下の表に、主な比較項目をまとめました。
比較項目 | 個人事業主 | 法人 |
開業手続き | 税務署に開業届を提出する | 定款作成、公証役場で認証後、 法務局で登記など手続きを行う |
所得の扱い | 事業所得として本人に課税される | 会社と代表個人で分離する |
税率 | 税率が最大45%まで上がる |
法人税率は約23.20%で 一定+役員報酬に所得税 |
責任の範囲 | 事業の損失をすべて個人が負担する | 会社が独立した責任主体である (出資額の範囲内) |
社会的な信用 | 法人より得づらい | 個人事業主よりも得やすい |
税務申告 | 年1回の確定申告 | 決算書類+法人税申告 |
社会保険 | 国民健康保険、国民年金 | 健康保険、厚生年金 |
維持コスト | ほぼかからない | 登記費用、住民税の均等割、税理士費用などが発生 |
上記のとおり、両者には税金、責任、信用、社会保険の点に大きな違いがあります。
個人イラストレーターはコストをかけずにスタートできますが、所得が増えるほど税負担が重くなり、また事業の信用力という点では制約を受けるケースがあります。
一方、法人イラストレーターとしてスタートするためには、設立時に約10万円の初期費用、毎年の決算申告や社会保険の負担なども必要です。
しかし、法人化すれば税制上の選択肢が広がったり、取引先からの信用を得やすくなったりするなど、事業規模を拡大する際の足がかりになります。
特に、継続して収入が入るイラストレーターにとっては、個人事業主か法人かの選択は節税や信用戦略の面で大きな分岐点です。
まずは、個人事業主と法人の違いについて理解して、法人化する必要性の解像度を高めて後悔するリスクを回避しやすくしましょう。
関連記事:会社と個人事業主の違いは?見分け方や法人化の基準もわかりやすく解説
法人化を検討する適切なタイミング
イラストレーターとして仕事が安定して収入が伸びてきたタイミングで、個人事業主のままでいいのだろうかと不安になる方は少なくありません。
所得が900万を超え始めると、個人事業主の所得税率が跳ね上がって累進課税の負担を強く感じ始めます。
本段階に達したときが、個人事業主の方が法人化を検討すべきタイミングです。
法人化により所得にかかる税率が一定になり、利益を役員報酬として分散させたり社宅制度を導入して住居費を一部補助したりなど、節税効果を高める方法が使えるようになります。
将来スタッフを雇う予定がある方、社会保険制度を活用して老後の年金や医療保障を充実させたい方にとっても、法人化によりさまざまなメリットがあります。
イラストレーターの方が法人化する際は、所得の伸びだけでなく、契約形態や将来のビジョンまで含めたうえで、自身にとってのベストな法人化のタイミングを見極めましょう。
法人化のタイミングについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:個人事業主が法人化するタイミングはいつ?節税シミュレーションも掲載
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イラストレーターが法人化する5つのメリット
本項目では、イラストレーターが法人化する際に得られる主な5つのメリットを解説します。
節税の仕組みだけでなく、社会的な信用力や契約上の優位性、資金面の自由度といった実務面にも多くの違いが生じます。
個人事業主のままでいるか法人化の切り替えを考える際には、各事業形態のメリットを正しく理解する姿勢が欠かせません。
本項目の内容は、現在の働き方や収入状況と照らし合わせながら、判断材料として活用しましょう。
- 社会的な信用を得やすく事業規模を拡大しやすい
- 所得が増えるほど所得にかかる税率を抑えられる
- 経費計上できる支出の種類が増える
- 役員報酬を活用して節税対策を徹底できる【注意事項あり】
- 最長2年消費税の免税事業者を選択できる【注意事項あり】
①社会的な信用を得やすく事業規模を拡大しやすい
イラストレーターで収入が安定してくると、企業との契約、コンペに参加、制作会社との提携など、仕事の幅が広がる傾向があります。
その中で、法人でなければ契約できない場面に直面して、思いがけず仕事の機会を失ってしまうケースも少なくありません。
たとえ実績が豊富でも、請求書や契約書の名義が個人名だと小規模な事業者という印象を与えやすく、信用を得づらいケースが出てきます。
そこで法人化しておくと、法務局に登録された組織として認識されるため、発注側に安心感を与える材料になり得ます。
銀行口座の開設や資金調達の審査、助成金の活用なども法人であればスムーズに進みやすく、設備投資や拠点拡大といった中長期の展開にも対応しやすいです。
企業からの継続依頼を増やしたい、制作業務を拡大していきたいと考えている方にとって、法人化は社会的な信用を得るうえで有効手段といえます。
②所得が増えるほど所得にかかる税率を抑えられる
イラストレーターで継続して収入を得られる状態になると、所得税と住民税による税負担の重さが気になり節税対策を検討する方が増加します。
個人事業主は所得に応じて税率が上がる累進課税によって課税されて、たとえば年間所得が900万円を超えると、所得税率33%に住民税約10%を加えて合計43%前後となります。
一方で、法人に切り替えた場合に所得にかかる税率は、法人税率は一定で利益800万円までは15%、超えた部分に23.20%です。
同じ900万円の年間所得に対してかかる法人税を計算すると、個人事業主と比べて約240万円の差が生じます。
年間所得が一定の金額を超えると、個人事業主よりも法人のイラストレーターとして活動したほうが、税金面で有利になるケースがあります。
節税面に注目して法人化する行為に対してネットでさまざまな意見を見かけますが、手元により多くの資金を残しつつ、安定して事業を継続するためには有効な手段であるといえます。
関連記事:【法人版】節税対策の裏ワザ|手元により多くの資金を残す方法
③経費計上できる支出の種類が増える
イラストレーターとして制作活動を続けていると、デジタルであればソフトウェアの利用料、アナログであれば画材の購入費、両者とも制作に必要な設備や資料の購入費など、多くの支出が発生します。
個人事業主でも事業に関連する支出は経費として処理できますが、法人化すると事業との関係が明確であればより幅広く経費計上できます。
たとえば、法人で経費計上が認められやすい支出は以下のとおりです。
- ソフトウェア使用料(Adobeなどの定額プラン)
- 出張時の日当や交通費
- 書籍代や参考資料の購入費
- 役員報酬に伴う給与や賞与
- 社宅制度を活用した家賃の一部
- 健康診断や予防接種などの福利厚生費
- カフェでの打ち合わせ費用や会議費、交際費
上記のような支出を適切に経費処理できれば、課税所得を圧縮して法人税や地方税の負担を減らす効果が期待できます。
関連記事:法人はなんでも経費で落とせる?よくある勘違いと判断基準を解説
④役員報酬を活用して節税対策を徹底できる【注意事項あり】
法人化によって活用できる節税対策の中でも、主な方法として役員報酬の設定が挙げられます。そもそも役員報酬とは、法人の代表者などに対して会社から支払う報酬のことです。
法人の法人税と社長個人の所得税を切り分けて計算できるため、役員報酬をうまく設定すれば所得を分散しやすくなります。
たとえば、法人の利益をそのまま申告するよりも、一部を社長個人が役員報酬として受け取り所得税を申告したほうが、合計の納税額を抑えられるケースがあります。
ただし、役員報酬を損金参入するためには期首に定めた金額を毎月固定で支払う必要があり、期の途中で変更すると損金不算入となるため注意しましょう。
また、あまりにも高額に設定すると、今度は社長個人の所得税が増えすぎてしまうため、法人と個人両者の税率を踏まえたバランスの良い設定が欠かせません。
役員報酬については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
関連記事:役員報酬を活用した税金対策|法人で使える節税スキームもまとめて解説
⑤最長2年消費税の免税事業者を選択できる【注意事項あり】
イラストレーターとして法人化すれば、設立初年度から2年間の消費税免税制度を活用できます。
新たに法人設立した場合、原則として設立1期目と2期目は消費税を納める義務が免除される制度が適用されます。
たとえば、イラスト制作のクライアントから税込110万円の報酬を受け取った場合、10万円分の消費税を納税せずに済むため10万円は利益です。
個人事業主のイラストレーターの場合、前々年の課税売上が1,000万円を超えていれば自動で消費税の課税事業者となりますが、新設法人は縛りを受けません。
法人化を上手く活用すれば、2年分の消費税納税を回避しつつ設備投資したり生活費に回したりできます。
引用:国税庁(消費税のしくみ)
ただし、令和5年10月に導入されたインボイス制度をキッカケに適格請求書発行事業者の登録を完了している場合、消費税の免税期間を自ら放棄する形になります。
今回は簡単に説明しますが、適格請求書発行事業者の登録は消費税の課税事業者を選択して行う必要があるからです。

上記のように考える方もいますが、デメリットもあるため注意しなければなりません。
あなたが適格請求書発行事業者の登録を行わなければインボイスを発行できず、取引相手はあなたとの取引で発生した消費税分の仕入税額控除を受けられないからです。
あなたとの取引で発生する消費税が多ければ多いほど、取引先は他の取引先と契約して、取引を終了される確率が上がります。
イラストレーターで法人化して消費税の免税期間を活用したいと考えている方は、取引先がインボイスの発行を求めているかどうかを確認しておきましょう。
関連記事:インボイス制度と法人成り|タイミングから影響と対策まで解説
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イラストレーターが法人化する3つのデメリット
法人化には節税や信用面でのメリットがある一方、すべてのイラストレーターにとって最適な選択とは言い切れません。
たとえば、会計処理の複雑化、社会保険料の増加、加入できる健康保険制度の変更、本名公開のリスクなど、見逃せない不利な点もあります。
法人化のデメリットを事前に把握しておかなければ、思わぬストレスや経費増加につながりかねません。
そこで本項目では、法人化の判断材料となる主なデメリット3つを解説します。
- 経理や税務会計の難易度が高くなり作業量も増加する
- 文芸美術国民健康保険組合に加入できない
- 本名を知られるリスクが高まる
①経理や税務会計の難易度が高くなり作業量も増加する
イラストレーターで法人化すると、経理や税務会計の難易度が高まり作業量も増加します。
個人事業主のように単式簿記で済むケースとは異なり、法人では複式簿記の採用が義務付けられており、決算書類も貸借対照表・損益計算書などが必要です。
さらに、法人税の申告、消費税や源泉所得税の処理、役員報酬の計上などといった管理業務も発生して、帳簿の作成負担は確実に増加します。
そのため、イラストの制作や集客活動などにかける時間が削られて、精神面で余裕を持ちづらくなるデメリットが発生します。
そこで税理士と顧問契約を結んでおけば、顧問料はかかりますが煩雑な税関係の作業を代行してもらえるため、イラストレーターの事業に集中できて享受できるメリットは大きいです。
法人化して決算申告や税務調査などに悩まされず事業に集中したいイラストレーターの方は、税理士への相談を検討してみましょう。
関連記事:【法人の決算申告】税理士なしのリスクと依頼時の費用相場
②文芸美術国民健康保険組合に加入できない
個人事業主のイラストレーターの方であれば、文芸美術国民健康保険組合(文美国保)に加入できるケースがあります。
文芸・美術・著作に従事していると認められて、かつ文美国保の加盟団体の会員であるという要件を満たせば加入が認められる健康保険組合です。
2025年度の文美国保の保険料は、医療分が月額19,900円、後期高齢者支援金分が月額5,800円で、所得の金額にかかわらず一定です。
そのため、所得が増えるほど市町村の国民健康保険よりも負担を抑えられる仕組みです。
一方、法人化すると文美国保には加入できなくなり、会社員と同じく協会けんぽの社会保険へ切り替える必要があります。
Question
先日、個人事業所から法人化をしました。文芸美術国保組合に加入できますか。
Answer
法人事業所の事業主、従業員の方々は健康保険が強制適用となっております。そのため、当組合を含め、国民健康保険には加入できません。
引用:文芸美術 国民健康保険組合(審査について)
③本名を知られるリスクが高まる
イラストレーターで法人化すると、代表者の氏名や本店所在地といった情報が法務局に登記されて、誰でも閲覧できるようになります。
登記簿謄本はオンラインで取得できるため、氏名や住所が外部に知られるきっかけとなるリスクが含まれています。
たとえば、ペンネームで活動しているイラストレーターの方が法人化した場合、ファンや取引先に本名が知られかねません。
活動する際に匿名性を重視して活動しているイラストレーターの方にとって、法人化による情報の公開は精神面で大きなハードルです。
法人化を検討する際には、名前や住所の取り扱いが持つ影響をあらかじめ把握して、登記上の公開情報に対して慎重に対応する必要があります。
関連記事:会社と個人事業主はどっちが得?違いやメリット・デメリットを比較して法人化を検討
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イラストレーターが法人化の手続きやかかる費用を大幅に抑える方法
最後に、イラストレーターが法人化の手続きやかかる費用を大幅に抑える方法を紹介して終わりにしたいと思います。
結論から述べますと、法人設立の支援と顧問契約をセットで依頼すると割引を受けられる事務所に依頼しましょう。
たとえば、植村会計事務所では、法人設立の支援と同時に顧問契約を結んでいただける方向けに、サポートと設立費用の総額で株式会社なら13.8万円、合同会社なら1.6万円のプランを用意しております。
本来であれば、設立だけで株式会社は約25万円、合同会社は約10万円かかるため、ご依頼いただけますと最大で約10万円お得に法人化できます。
弊所で設立 | 自力で設立 | 司法書士で設立 | |
合同会社 | 1.6万円 (約4万円お得) |
約6万円 | 約6万円 |
株式会社 | 13.8万円 (約11万円お得) |
約25万円 | 約30万円 |
弊所で株式会社を設立する際の費用 | |
費用名 | 金額 |
設立手数料 | 0円 |
設立の実費費用 (定款認証手数料+登録免許税) |
182,000円 (32,000円+150,000円) |
顧問契約セット割引 | -44,000円 |
合計金額 | 138,000円 |
弊所で合同会社を設立する際の費用 | |
費用名 | 金額 |
設立手数料 | 0円 |
設立の実費費用 (登録免許税のみ) |
60,000円 |
顧問契約セット割引 | -44,000円 |
合計金額 | 16,000円 |
※登記謄本取得や郵送などでかかる実費は別途ご負担をお願いいたします
※定款認証手数料は資本金が100万円未満なら32,000円、100万~300万円未満なら42,000円、300万円以上なら52,000円です
もちろん、法人化にかかる費用だけでなく、自社の業種が得意か、担当者が人としての相性が良く相談しやすいかなど、他の要素についても注目すべきです。
法人成りする際の税理士選びについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:法人成りを税理士に相談する必要性|メリットや費用相場も解説
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まとめ
今回は、イラストレーターが法人化を検討すべきタイミングとメリット・デメリットを徹底解説しました。
法人化には節税や信用面での恩恵がある一方で、社会保険料の増加やプライバシー面のリスクなど、無視できないデメリットも含まれます。
誤ったタイミングで法人化してしまうと、節税どころか逆に納税額が増加したり精神的なストレスにつながるおそれがあるため、事前にシミュレーションしたうえでの判断が重要です。
法人化後に後悔しないためにも、数字や制度をしっかり理解したうえで、自身の状況に合った選択を心がけましょう。
格安でサポートを受けながら法人化を設立して事業に集中したい
税務調査に怯えずに安心して事業に取り組みたい
上記のような方は、お気軽に弊所までご相談くださいませ!