こんにちは、ネットワークビジネスに強い税理士の植村拓真です。
ネットワークビジネスは、会社員や主婦の方でも取り組みやすい副業のひとつです。
ネットワークビジネス事業者(ディストリビューター)の方の中には、順調に愛用者を増やしたり販売組織を拡大させたりして、事業として十分に収入を得ている方も多くいらっしゃいます。
弊所でも、上記のようなネットワークビジネス事業者の方から、税務に関するご相談をいただく機会が多いです。特に、以下のような質問をよくいただきます。



開業届を提出すると、どんなメリットがありますか?
本記事を読んでいるネットワークビジネス事業者の方の中にも、上記のような疑問を抱いている方がいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、ネットワークビジネスで開業届を提出する際の書き方について、提出するメリットとあわせて解説します。
開業届の書き方がよく分からなかったり、提出するべきかどうかの判断に迷ったりしているネットワークビジネス事業者の方は、本記事を参考にしてみてください。
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ネットワークビジネスで開業届を提出する際の書き方
本項目では、ネットワークビジネスで開業届を提出する際の書き方について解説します。
開業届を提出する際の書き方のポイントは、下表のとおりです。
項目 | 説明 |
納税地 | 原則、住民票に登録してある住所を記入 |
氏名 | ご自身のお名前を記入 |
生年月日 | ご自身の生年月日を記入 |
個人番号 | 提出用にのみマイナンバーを記入(コピーを控えにする場合はマスキング処理を施す) |
職業 | 記入例は以下のとおり
・無店舗小売業(健康食品) |
屋号 | 事業で使用する名称がある場合は記入(必須ではない) |
届出の区分 | 開業にチェックを入れる |
開業・廃業等日 | 事業を開始した日にちを記入(明確なルールがないため、常識の範囲内であれば、自由に決めて良い) |
事業の概要 | 記入例は以下のとおり
・連鎖販売取引による健康食品や化粧品などの販売及び販売組織の育成 |
給与等の支払の状況 | 該当がない場合は記入不要 |
関与税理士 | 顧問税理士や開業届の作成を依頼した税理士がいる場合は記入 |
開業届の書き方で不明な点がある場合は、税理士への相談も検討してみましょう。
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ネットワークビジネスで開業届を提出するメリット
本項目では、ネットワークビジネスで開業届を提出するメリットについて解説します。

上記のような疑問を抱いているネットワークビジネス事業者の方は、本項目を参考にしてみてください。
ネットワークビジネスで開業届を提出するメリットは、次のとおりです。
- 青色申告を選択できるようになる
- 就労証明書を作成できるようになる
- 個人事業主としての強い覚悟が生まれる
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
青色申告を選択できるようになる
開業届とあわせて所得税の青色申告承認申請書を、納税地を所轄する税務署へ提出すれば、青色申告の制度を利用できるようになります。
青色申告を選択するメリットは、さまざまな税制上の優遇措置を受けられる点です。
代表的なものが青色申告特別控除で、一定の要件を満たしている場合、最高65万円を所得から控除できます。
また、青色申告特別控除の他に、青色申告で受けられる税制上の優遇措置は、以下のとおりです。
- 家族への給与を全額経費として計上できる
- 赤字を最大3年間繰り越して将来の黒字と相殺できる
- 30万円未満の資産であれば即時償却できる
原則、青色申告では複式簿記での記帳が必要であり、白色申告と比べると確定申告の難易度が高くなる点には注意しましょう。なお、複式簿記とは、下記のとおりです。
いわゆる「正規の簿記」とは、「資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明瞭に記録し、その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない」との規定に基づく記帳方法を称しています。したがって、「正規の簿記」とは、損益計算書と貸借対照表が導き出せる組織的な簿記の方式で、一般的には複式簿記をいいます。
引用:国税庁(貸借対照表作成の手引き)
売上や販売組織が拡大していて、節税対策も考えているネットワークビジネス事業者の方は、青色申告の選択を検討しましょう。
参考:J-Net21(青色申告とはどのようなものですか?メリットは何でしょうか?)
関連記事:ネットワークビジネスの節税対策|副業がばれない方法や無申告のリスクも解説
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就労証明書を作成できるようになる
開業届を提出すれば、信用度の高い就労証明書を自作できるようになります。
開業届は個人事業主であることを公的に示す書類であり、保育園の入園申請や被扶養者の認定などの場面で提出が必要な就労証明書の根拠となります。
就労証明書は会社員であれば勤務先が発行するものですが、ネットワークビジネスを専業で行っている場合は、ご自身で作成しなければなりません。
保育が必要な事由に該当するかどうかを審査するうえで、参考にする資料のひとつだからです。
開業届を提出していれば、就労証明書の根拠となるため、信用度の高い就労証明書を作成できます。
一方、開業届が未提出の場合、根拠のない就労証明書とみなされ、審査で落とされるおそれがあります。
特に、待機児童が発生している地域にお住まいの場合、厳しく審査されるケースもあるため注意しましょう。
開業届の提出によって、子育てに関する国の制度を利用できる確率が高まります。
参考:渋谷区(入園案内・各種書式 | 保育園の入園申込)
参考:町田市(2025 年 4 月認可保育所等入所待機児童数〔速報値〕について)
個人事業主としての強い覚悟が生まれる
開業届の提出によって、個人事業主としての強い覚悟が生まれます。
雇用されて働いていると、毎月決まった日に給与が支払われる安心感から、成果に対して無関心になったり、成長意欲が薄くなったりしがちです。
開業届の提出は、上記のような停滞や後退などから脱却するための重要な区切りとなります。
開業届の提出は単なる書類提出ではなく、ネットワークビジネスを事業として捉え、本気で取り組んでいくための第一歩であり、自分に適度なプレッシャーを与える役割を果たします。
小遣い稼ぎ感覚でネットワークビジネスを始めた場合であっても、開業届の提出によって気持ちが引き締まり、事業活動における責任感が増します。
以上のように、覚悟を決めるきっかけとして開業届の提出は有効です。
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ネットワークビジネスで開業届を提出する際に必要なもの
本項目では、ネットワークビジネスで開業届を提出する際に必要なものについて解説します。

上記のような疑問を抱いているネットワークビジネス事業者の方は、本項目を参考にしてみてください。
ネットワークビジネスで開業届を提出する際に必要なものは、下記のとおりです。
- 本人確認書類
- 印鑑
- マイナンバーカード
- 所得税の青色申告承認申請書
それでは、順番に見ていきましょう。
本人確認書類
開業届を提出する際には本人確認が行われるため、下表のとおり、マイナンバーの記載とあわせて本人確認書類の提示もしくは写しの提出が必要です。
引用:国税庁(番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い)
マイナンバーカードを持っている場合、番号確認と身元確認の両方を行えるため、最も効率的です。
マイナンバーカードを持っていない場合は、通知カードや住民票の写しなどのマイナンバーを確認できる書類と、運転免許証やパスポートなどのマイナンバーの持ち主であるのを確認できる書類の組み合わせが必要になります。
本人確認書類の提示もしくは写しの提出が漏れた場合、納税地を所轄する税務署に開業届を受理されないおそれもあるため注意しましょう。
e-Taxでは電子証明書を登録する段階で本人確認が完了するためです。
参考:国税庁(A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続)
参考:国税庁(番号法令、国税庁告示における主な本人確認書類等)
参考:国税庁(電子証明書の取得|e-Tax)
参考:国税庁(電子証明書とは何ですか|e-Tax)
参考:財務省(本人確認書類とは、どのような書類ですか)
印鑑
令和3年度の税制改正により、令和3年4月以降、開業届を提出する際に印鑑は不要となりました。
今までは納税地を所轄する税務署へ書類を提出する際には印鑑が必要でしたが、現在は一部の書類を除いて印鑑が不要です。
印鑑が不要となっても、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類の提出によって身元確認が行われているため、不正提出のリスクは十分に抑制されています。
原則、印鑑は不要ですが、開業届に記入ミスがあった場合、訂正印での修正や書き直しを求められるケースもあります。
なお、税務行政のデジタル・トランスフォーメーションの一環として、令和7年1月以降、開業届や確定申告書などの控えへの収受日付印の押捺も廃止されました。
マイナンバーカード
繰り返しになりますが、開業届の提出時には本人確認が行われるため、マイナンバーの記載に加え、番号確認書類と身元確認書類の提出が必要です。
マイナンバーカードを持っていれば、1枚で番号確認と身元確認の両方を完結させられます。
一方、マイナンバーカードを持っていない場合は、マイナンバーの記載がある住民票の写しや通知カードなどが番号確認書類として使えます。
e-Taxを使用してオンライン上で開業届を提出する場合、マイナンバーカード方式でも手続きを進められます。
ただし、ご自身のスマートフォンがマイナンバーカードの読み取りに非対応の場合、ICカードリーダーが必要になるため注意が必要です。
なお、マイナンバーカードを発行する場合、申請から受け取りまで数週間かかるケースもあるため、余裕を持って準備を進めましょう。
参考:国税庁(A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続)
参考:国税庁(番号法令、国税庁告示における主な本人確認書類等)
参考:国税庁(番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い)
参考:国税庁(マイナンバーカード方式とは何ですか|e-Tax)
参考:国税庁(マイナンバーカード読取対応のスマートフォンの一覧について|確定申告書等作成コーナー)
参考:川崎市(マイナンバーカードは、申請からどれくらいで受取ができますか)
所得税の青色申告承認申請書
青色申告を選択する場合、開業届とあわせて所得税の青色申告承認申請書を、納税地を所轄する税務署へ提出するのがおすすめです。
特に、売上規模が拡大しているネットワークビジネス事業者の方は、青色申告の選択によって節税効果が期待できます!
青色申告で享受できる税制上のメリットについては、本記事のネットワークビジネスで開業届を提出するメリットの項目をご参照ください。
所得税の青色申告承認申請書の提出期限は、以下のとおりです。
青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始等の日(非居住者の場合には事業を国内において開始した日)から2月以内。)に提出してください。
なお、提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。
引用:国税庁(A1-8 所得税の青色申告承認申請手続)
万が一、提出期限に間に合わなかった場合、今年度の確定申告では青色申告の特典が受けられなくなるため注意しましょう。
なお、所得税の青色申告承認申請書の書き方で不明な点がある場合は、税理士への相談も検討してみましょう。
関連記事:ネットワークビジネスを行う個人事業主の税金と確定申告について税理士が解説
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ネットワークビジネスで開業届を提出する際の書き方に関するよくある質問
最後に、ネットワークビジネスで開業届を提出する際の書き方に関するよくある質問をご紹介します。


上記のような疑問を抱いているネットワークビジネス事業者の方は、本項目も参考にしてみてください。内容は随時追記します。
ネットワークビジネスで開業届を提出するデメリットはありますか?
ネットワークビジネスで開業届を提出すると、以下のようなデメリットが生じるおそれがあるため注意しましょう。
- 失業給付を受給できなくなる
- 配偶者の扶養から外れる
雇用保険の失業給付を受けている場合、開業届の提出によって受給できなくなるリスクがあります。
また、配偶者の扶養に入っている場合、健康保険組合の規定によっては被扶養者と認められず、扶養から外れるおそれがあります。
万が一、配偶者の扶養から外れた場合、国民健康保険をご自身で負担しなければなりません。
参考:ハローワークインターネットサービス(不正受給の典型例)
参考:デンソー健康保険組合(自営業のご家族が被扶養者になれる条件|健保のしくみ)
ネットワークビジネスと並行してフリーランスのクリエイターとしても活動している場合、開業届の職業欄はどのように記入すれば良いでしょうか?
ネットワークビジネスと並行してフリーランスのクリエイターとしても活動している場合、開業届の職業欄には収入が多い方のみを記入します。
たとえば、クリエイターの収入が月20万円で、ネットワークビジネスの収入が月10万円であれば、開業届の職業欄に記入するのはクリエイターの方です!
なお、開業届の職業欄には、WEBデザイナーや動画編集など具体的な職業名で記入しましょう。
ネットワークビジネスに関しては、開業届の事業の概要欄に記入しておけば問題ありません。
開業届の書き方で不明な点がある場合は、税理士への相談も検討してみましょう。
開業届の書き方の見本や記入例はありますか?
開業届の書き方の見本は、以下のとおりです。
なお、屋号の記載は必須ではないため、空欄で提出しても届出は受理されます。開業届の書き方に関して不明な点がある場合は、税理士への相談も検討してみましょう。
参考:国税庁(A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|書き方)
開業届の職業欄を記入する際に参考にできる業種一覧みたいなものはありますか?
開業届の職業欄を記入する際に迷った場合は、総務省が定めている日本標準産業分類や日本標準職業分類を参考にするのがおすすめです。
- 無店舗小売業(健康食品)
- 無店舗小売業(化粧品)
- 無店舗小売業(日用品)
- 商品訪問・移動販売従事者
- その他の販売類似職業従事者
- その他の営業職業従事者
上記はあくまでも一例ですので、参考にしてみてください。開業届の職業欄には、ご自身の事業活動の実態に則した内容を記入しましょう。
ネットワークビジネスで開業届を提出する際の事業の概要欄の書き方について教えてください
ネットワークビジネスで開業届を提出する際、事業の概要欄には、ご自身が取り扱う商品やサービスなどを詳細に記載します。具体的な記載例は、以下のとおりです。
- 連鎖販売取引による健康食品や化粧品などの販売及び販売組織の育成
- 美容や健康、栄養に関するセミナー及び講習会の企画や運営、管理
- 栄養補助食品や日用品、家庭用電化製品などの販売代理店業
- 美容や健康、栄養に関するカウンセリング業
ネットワークビジネスとだけ記載すると事業の実態が不明確になってしまい、税務署から確認されるおそれもあるため、事業の概要欄には事業内容を詳しく記載しましょう。
個人事業主の開業届を提出する際、事業内容が複数ある場合の職業欄の書き方について教えてください
個人事業主の開業届を提出する際、事業内容が複数ある場合、職業欄には最も収入が多い主要なものをひとつだけ記入します。すべての事業内容を職業欄に書く必要はありません。
繰り返しになりますが、事業の概要欄には行っている事業内容をすべて記入しましょう。なお、開業届の書き方で不明な点がある場合は、税理士への相談も検討してみましょう。
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まとめ
今回は、ネットワークビジネスで開業届を提出する際の書き方について、提出するメリットとあわせて解説しました。
開業届を提出する際の書き方の主なポイントは、下表のとおりです。
項目 | 説明 |
納税地 | 原則、住民票に登録してある住所を記入 |
個人番号 | 提出用にのみマイナンバーを記入(コピーを控えにする場合はマスキング処理を施す) |
職業 | 記入例は以下のとおり
・無店舗小売業(健康食品) |
屋号 | 事業で使用する名称がある場合は記入(必須ではない) |
開業・廃業等日 | 事業を開始した日にちを記入(明確なルールがないため、常識の範囲内であれば、自由に決めて良い) |
事業の概要 | 記入例は以下のとおり
・連鎖販売取引による健康食品や化粧品などの販売及び販売組織の育成 |
関与税理士 | 顧問税理士や開業届の作成を依頼した税理士がいる場合は記入 |
国税庁のホームページに掲載されている開業届の記載例もご参照ください。ネットワークビジネスで開業届を提出するメリットは、次のとおりです。
- 青色申告を選択できるようになる
- 就労証明書を作成できるようになる
- 個人事業主としての強い覚悟が生まれる
ネットワークビジネスで開業届を提出する際に必要なものは、下記のとおりです。
- 本人確認書類
- 印鑑
- マイナンバーカード
なお、開業届の提出と同時に青色申告を選択する場合は、所得税の青色申告承認申請書も用意しましょう。