こんにちは、フリーランスエンジニアの顧問実績が豊富な税理士の植村拓真です。
植村会計事務所では、多くのフリーランスエンジニアの方と顧問契約を結ばせていただいております。
そして、さまざまなご質問やご要望をいただくのですが、特に多いのが以下のような内容です。
たしかに、フリーランスエンジニアは経費にできるものが少ない業種ですので、なるべく節税対策をしたい、そして税務調査を回避したいと考える方が多いです。
今回はそんな方に向けて、フリーランスエンジニアの経費率が少ない理由について経費一例や計上時の注意点とあわせて税理士が解説します。
フリーランスエンジニアの経費率が少ない理由
フリーランスエンジニアの経費率が少ない主な理由は、事業を行ううえでの必要経費が他業種よりも少ない点にあります。
フリーランスのエンジニアにとっての経費は、パソコンやタブレットの端末購入費、ソフトウェアの購入費(サブスク料金)、インターネット回線の通信料などがメインです。
端末やソフトウェア、インターネット回線などは一度購入すれば長期間使用できますし、修理費やレンタル料などが発生したとしても高額になるケースは多くありません。
そのため、他業種よりも経費率が少ない傾向があります。
そのうえで、フリーランスエンジニアは他業種と同じように、事業とは無関係な出費を経費計上できません。
たとえば、家族や友人との食事代や旅行費用、私的な健康診断の費用は経費として認められません。
さらに、フリーランスエンジニアは事業を行う場所を選ばずオフィスを構える必要性が低いため、経費率が飲食や製造のようなオフィスを借りる必要がある業種と比べて低い傾向があります。
最後に、フリーランスエンジニアに限った話ではありませんが、フリーランスは法人に比べると経費として認められる範囲が狭いです。
上記のとおり、フリーランスエンジニアの経費率が低いと言われる理由はさまざまですが、主な要因は事業を行ううえでの必要経費が他業種よりも少ない点にあります。
フリーランスエンジニアが経費にできるもの一例
フリーランスエンジニアは経費率が低い業種であるため、経費にできるものを少しでも多く知って節税対策を徹底したいと考える方は少なくありません。
そこで本項目では、フリーランスエンジニアが経費にできるもの一例を紹介します。
パソコンやタブレット、周辺機器の購入費
フリーランスエンジニアが経費計上できる主な費用として、パソコンやタブレットなどの端末購入費、周辺機器の購入費が挙げられます。
たとえば、パソコンやマウス、キーボードといった事業を行ううえで必要性の高いものの購入費は、経費として認められます。
また、イヤホンやマウスパッドなども業務で使用していれば、購入費用は経費扱いです。
パソコンやタブレットのような長期間使用するものの購入費用は、減価償却費として処理します。
減価償却費とは、資産の耐用年数に応じて購入費用を分割して、毎年分割した金額を経費計上する方法です。
たとえば、耐用年数4年の業務で使用するノートパソコンを購入した場合、購入費用を4年間にわたって均等に経費計上します。
一度に大きな出費が発生するのを回避できるため、安定した財務管理を実現できます。
インターネットや電話などの通信費や工事費
フリーランスエンジニアの主な経費として、インターネットや電話などの通信費や工事費も挙げられます。
インターネットは、フリーランスエンジニアにとって業務を行ううえで重要なインフラです。
そのため、ネット回線の月額料やWi-Fiルーターの使用料は、業務に必要な費用として経費計上できます。
そして、通信機器の設置や維持にかかる費用は、通信費として経費計上できます。
また、業務で使用するスマートフォンや固定電話に関する費用も通信費扱いです。
クライアントとの打ち合わせや他のエンジニアとの会議でスマホや固定電話を用いて通話する場合、通信料が経費扱いになります。
オフィスの家賃や水道光熱費
フリーランスエンジニアの事業を行うためにオフィスを借りていると、オフィスの家賃や水道光熱費が経費に該当します。
たとえば、業務のみで使用するオフィスを借りている場合、家賃と業務中に使用した水道代や電気代は全額が経費扱いです。
自宅をオフィス代わりにしている場合の家賃や水道光熱費は、一部を家事按分して経費計上します。
業務で使用している部屋の面積や時間に応じて割合を算出して家事按分します。
コピー用紙やプリンターのインクなどの消耗品費
フリーランスエンジニアの消耗品費には、普段の業務で頻繁に使用する消耗品の購入費が含まれます。
たとえば、コピー用紙やプリンターのインク、トナーカートリッジといったプリンター関連の物品やオフィス用品の購入費は、業務で必要であれば経費計上できます。
また、オフィスを掃除するための物品、ペンやノートなどの文房具の購入費も、事務作業やアイデアの整理などに使用されるため消耗品費に該当します。
専門書の購入費や勉強会の参加費などの新聞図書費
フリーランスエンジニアの新聞図書費には、専門書や技術書の購入費、勉強会やセミナーの参加費が含まれます。
新聞図書費とは、業務に関連する知識や技術を習得するために必要な資料の購入費で、業務内容に直接関わる出版物や情報源が対象です。
たとえば、プログラミング言語やテクノロジーに関する専門書、業界誌の購入費は、フリーランスエンジニアとしてのスキルアップや業務の効率化に必要であるため、経費計上が認められます。
他にも、業務に関連する技術系のニュースサイトの有料コンテンツの購読料も、電子書籍やデジタル購読費として経費計上できます。
フリーランスエンジニアとしてのスキル向上を目的としていれば、勉強会やセミナーの参加費も経費です。
事業に関する固定資産税や印紙税などの租税公課
フリーランスエンジニアが経費計上できる租税公課には、固定資産税や印紙税のような事業に関連する税金や公的料金が含まれます。
固定資産税は、オフィスや事業用設備を所有している場合にかかる税金で、事業を行ううえでの必要経費です。
また印紙税は、契約書や領収書などに貼付する印紙に対して支払う税金です。
フリーランスエンジニアの事業に関する取引でかかる場合、印紙税も経費として処理できます。
営業で使用する名刺の作成費や商品宣伝のための広告宣伝費
フリーランスエンジニアの広告宣伝費には、営業で使用する名刺の作成費やプロダクトの宣伝費が含まれます。
広告宣伝費は自身の技術やサービスを市場に広く周知させて、クライアントを獲得するために重要な経費です。
Google広告やFacebook広告など、見込み客がいる業界や顧客に直接アプローチするための費用は、フリーランスエンジニアの顧客基盤を拡大するための投資として扱えます。
また、エンジニア業界のイベントの参加費も、新たなビジネスチャンスを生み出す活動として広告宣伝費に該当します。
業務を第三者に依頼する際の外注費
フリーランスエンジニアが業務を第三者に依頼する際の費用は、外注費扱いで経費計上できます。
業務の効率化や自力では行えない業務を第三者に依頼する際に発生します。
たとえば、プロジェクト完遂に必要な専門知識や経験が不足している場合、他のエンジニアに作業を委託するケースが典型的な例です。
他にも、ホームページのデザインや記事または動画コンテンツの作成、アプリケーション開発といった専門性の高い作業を外部に依頼するケースもあります。
外部の専門家に業務を依頼する際の費用は事業に直接関係があるため、必要経費として処理できます。
出張時にかかった宿泊費や運賃などの旅費・交通費
フリーランスエンジニアが出張でかかった費用は、旅費・交通費として経費計上できます。
旅費・交通費には、フリーランスエンジニアの業務を行ううえで必要な移動や宿泊にかかる費用が含まれます。
たとえば、クライアントとの打ち合わせや事業に関わる作業を行うために、他県や他国に移動する際の費用や宿泊費です。
電車やバスといった公共交通機関、タクシーや飛行機などの交通手段を利用した際の運賃、出張時の旅館やホテルの費用が旅費・交通費に該当します。
スタッフに支払う給与
フリーランスエンジニアでスタッフを雇っている方は、スタッフに支払う給与も経費計上できます。
業務の効率化や規模拡大のためにスタッフを雇うため、給与は事業に直接関連する重要な経費です。
給与には定期的に支払われる基本給の他に、時間外手当や業績に応じたボーナスも含まれます。
スタッフの福利厚生費
フリーランスエンジニアでスタッフを雇っている場合、福利厚生費も経費計上できます。
福利厚生費は、スタッフの健康維持や業務に対するモチベーション向上につながり、業務の生産性や効率を高められるため、事業に直接関係している費用として経費計上できます。
たとえば、健康保険料や雇用保険料、スタッフのスキル向上目的の研修費、退職金制度に関する積立金などです。
他にも、スタッフの健康管理を目的とした健康診断やレクリエーション施設の利用費も該当します。
関連記事:フリーランスエンジニアが法人化するタイミング|メリット・注意点とあわせて解説
フリーランスエンジニアが経費にできないもの一例
フリーランスエンジニアの経費について触れたので、経費にできないものについても解説しておきます。
一例を紹介しますので、出費を経費計上するうえで参考にしてみてください。
事業に無関係のプライベートの出費
フリーランスエンジニアに限った話ではありませんが、事業とは無関係なプライベートの出費は経費計上できません。
たとえば、家族旅行費や家庭用品の購入費、個人の健康診断でかかった費用などです。
事業とは無関係の出費を経費計上すると、税務調査で指摘されて追徴課税を課されるリスクが高まります。
フリーランスエンジニアで出費を経費計上する際は、事業に関係あるものだけを選択しましょう。
個人が納める税金
個人が納める所得税や住民税、国民健康保険料などの税金は、フリーランスエンジニアの業務とは無関係であるため経費計上できません。
税金は利益から控除されるものであり、経費とは区別して管理する必要があります。
繰り返しになりますが、経費として認められる出費は、事業に直接関わる費用に限られます。
小規模企業共済や国民年金基金の積立金
フリーランスエンジニアを含めた個人事業主が加入する小規模企業共済や国民年金基金の積立金は経費計上できません。
退職金や老後の生活を安定させるために積み立てるものであり、事業に無関係の費用だからです。
ただし、確定申告時に小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となり、節税効果を得られますので、忘れずに記載しておきましょう。
フリーランスエンジニアが経費計上する際の注意点
最後に、フリーランスエンジニアが経費計上する際の注意点について解説します。
意識しておけば、税務調査に入られて追徴課税を課されるリスクを下げられますので、本項目の内容を確認しておきましょう。
領収書やレシートは綺麗に保管して整理しておく
フリーランスエンジニアは個人事業主ではありますが、税務調査の対象となるケースがありますので、普段から税務調査に備える必要があります。
税務調査といえば法人に入りやすい傾向がありますが、個人事業主だからといって対象外ではないからです。
フリーランスエンジニアが税務調査に備えつつ出費を経費処理する際は、普段から領収書やレシートを整理して綺麗に保管しましょう。
領収書やレシートは、フリーランスエンジニアの事業で経費が発生して、正しく経費処理を行ったと証明するために必要な書類です。
領収書やレシートを普段から整理していなければ、確定申告時に焦って計算ミスをして納税額を誤ったり、紛失して本来よりも納税額が増えてしまったりするリスクが高まります。
また、各書類には7年間の保管期間が設けられていますので、期限内はいつ税務調査の連絡が入ってもいいように保管しておきましょう。
こまめに帳簿付けして計上漏れを防ぐ
フリーランスエンジニアが税務調査や追徴課税のリスクを回避するうえで、こまめな帳簿付けは重要です。
テキトーに帳簿付けしてしまい、正確に経費を記録しておかないと、確定申告でミスをして修正申告や税務調査、追徴課税につながる恐れがあります。
ですので、普段は業務で多忙かと思われますが、少しでも時間を確保して帳簿付けする習慣を身につけておきましょう。
経費率を無視してむやみに経費計上すると税務調査の対象になり得る
フリーランスエンジニアが売上に対する経費率を無視して過剰な経費処理を行うと、税務調査の対象となるリスクが高まります。
経費率が不自然に高い場合、税務当局から過剰な経費計上や計上ミスとみなされる恐れがありますので注意しましょう。
あくまで目安ですが、フリーランスエンジニアの経費率は50%前後であることを念頭に置いて、事業でかかった費用を正確に経費計上しましょう。
節税対策の徹底はフリーランスエンジニアに強い税理士を探す
上記のような方は、フリーランスエンジニアの顧問実績が豊富な税理士に依頼しましょう。
税理士によって得意な業種が異なりますので、フリーランスエンジニアの顧問実績が豊富であれば適切な節税対策を徹底してもらえます。
また、法人化や資金調達の適切なタイミング、インボイス制度の登録など、税務調査の対応以外に事業に関する適切なアドバイスももらえます。
税理士への依頼を検討している方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:フリーランスエンジニアが税理士探しで失敗しない方法と費用相場を解説
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今回は、フリーランスエンジニアの経費率が少ない理由について経費一例や計上時の注意点とあわせて解説しました。
フリーランスエンジニアは経費率が低い業種で、経費に関するお悩みをお持ちの方は少なくありません。
より多くの経費を計上して、少しでも税金を抑えたいと考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、プライベートの出費まで経費計上すると、税務調査で指摘されて追徴課税が発生するリスクが高まります。
目先の税金を抑えてそれ以上の追徴課税を課されてしまわないためにも、フリーランスエンジニアの事業とは無関係なプライベートの出費を経費計上しないようにしましょう。
また、経費計上のミスは故意でなくても税務調査のリスクになり得ます。
適切な経費処理や税務調査の対応などが不安は方は、フリーランスエンジニアの顧問実績が豊富な税理士への依頼を検討してみてください。