こんにちは、中小企業の顧問実績が豊富な税理士の植村拓真です。
弊所では、ネットビジネス業やIT業など幅広い業種で顧問先様がいらっしゃいます。
また、創業して間もないベンチャー企業から業績が安定してきた中小企業まで、さまざまな事業フェーズの経理や税務会計に関する相談に乗っております。
日頃からよくいただく相談内容の1つが、役員報酬の金額設定についてです。特に、下記のような質問をいただきます。



適切な決め方について知りたいです!
本記事を読んでいる経営者の方の中には、上記のような不安や疑問を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、役員報酬が高すぎる中小企業が抱えるリスクについて、相場や適切な決め方とあわせて解説します。
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
役員報酬が高すぎる中小企業が抱えるリスク
本項目では、役員報酬が高すぎる中小企業が抱えるリスクについて解説します。

上記のように考える経営者の方も多いですが、役員報酬が高すぎる場合、下記のようなリスクが伴います。
- 不相当に高額な役員報酬は損金算入されない
- 税務調査で否認される確率が高い
不相当に高額な役員報酬は損金算入されない
役員報酬が業績や役割に対して不相当に高額な場合、下記の法人税法の条文のとおり、損金算入できません。
内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
引用:e-Gov(法人税法 第三十四条2項 役員給与の損金不算入)
- 役員の職務内容
- 会社の業績
- 従業員の給与水準
- 同業他社の役員報酬額
役員報酬が不相当に高額だと税務署に判断された場合、損金算入できないため、修正申告が必要になったり、追徴課税が発生したりするなどのリスクがあります。
参考:国税庁(過大役員給与の損金不算入額算定に関する一考察 ―役員退職給与を中心に―)
参考:国税庁(No.5211 役員に対する給与|平成29年4月1日以後支給決議分)
関連記事:税務調査における修正申告・更正とは?違いについて税理士が解説
税務調査で否認される確率が高い
令和5年度における法人税の申告件数は約318万件で、税務調査が入った件数は約6万件でした。
上記のデータに基づいて計算すると、税務調査に入られる確率は2%程度です。しかし、下表のとおり、税務調査に入られた場合、約76%の高確率で非違を指摘されます。
引用:国税庁(令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要|p7)
上記の理由から、不相当に高額な役員報酬を損金算入していた場合、税務調査で否認される確率が非常に高いです。
参考:国税庁(令和5事務年度 法人税等の申告〔課税〕事績の概要)
関連記事:マイクロ法人も税務調査の対象?調査が入る理由や税理士の必要性も解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
中小企業における役員報酬の相場
本項目では、中小企業における役員報酬の相場について解説します。


上記のような不安や疑問を抱えている経営者の方は、本項目を参考にしてみてください。中小企業における役員報酬の相場について、下記の3つに分けて解説していきます。
- 資本金別に見る役員報酬の平均
- 売上に対する役員報酬の比率
- 役員報酬と従業員給与の適正なバランス
資本金別に見る役員報酬の平均
中小企業における役員報酬の相場に関しては、国税庁の民間給与実態統計調査のデータが参考になります。
下表は上記の調査結果をもとに、2023年時点の株式会社における役員報酬の平均を、資本金額ごとに並べたものです。
資本金額 | 男性 | 女性 | 合計 |
2,000万円未満 | 約725万円 | 約422万円 | 約634万円 |
2,000万円以上 | 約1,060万円 | 約501万円 | 約940万円 |
5,000万円以上 | 約1,235万円 | 約634万円 | 約1,147万円 |
1億円以上 | 約1,491万円 | 約610万円 | 約1,380万円 |
役員報酬の平均額は、資本金額に比例して高くなる傾向にありますが、節税対策や資金繰りなどを踏まえて控えめに設定するケースもあります。
参考:国税庁(令和5年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-)
関連記事:合同会社の役員報酬の相場と決め方|かかる税金や節税方法も解説
売上に対する役員報酬の比率
売上に対する役員報酬の比率に関しても明確な基準はありません。
一般的には売上の3〜10%程度を役員報酬とするケースが多く、年間利益の20%以内に収めるのが妥当とされています。
上記の理由として、役員報酬が高すぎると、税務上のリスクが高まったり、財務健全性に悪影響を及ぼしたりするおそれがあるためです。
なお、役員報酬は売上の何パーセントが適切かについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬は売上の何パーセントが適切?金額の決め方や注意点を徹底解説
参考:J-Net21(役員報酬はどのように決めればよいのでしょうか?)
役員報酬と従業員給与の適正なバランス
役員報酬と従業員給与の適正なバランスに関する明確な基準はありませんが、従業員側の気持ちを汲み取りながら慎重に決めましょう。
たとえば、従業員の賞与がカットされているような状況で、高すぎる役員報酬を得ていると、職場の信頼関係が損なわれるリスクは高いです。
また、従業員の平均年収の5倍以上もの役員報酬を支給する場合、従業員の士気が低下するおそれもあります。
経営者は重い責任を負うとはいえ、従業員の理解と協力が得られなければ、会社の発展は見込めません。
参考:J-Net21(役員報酬はどのように決めればよいのでしょうか?)
関連記事:役員報酬をなしにするデメリットと注意点|決める手順も解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
中小企業における役員報酬の決め方
本項目では、中小企業における役員報酬の決め方について解説します。


上記のような疑問を抱えている経営者の方は、本項目を参考にしてみてください。中小企業における役員報酬の決め方は、主に次のとおりです。
- 付加価値分配率を用いる
- 税負担を最小化できる額にする
- 役員の生活費をベースに算出しない
- 役員の前職での給与水準は考慮しない
- 0円で設定しない
- 従業員給与との差を作りすぎない
付加価値分配率を用いる
付加価値分配率を用いると、役員報酬を適正な金額で設定しやすいです。
付加価値は原価に対して、どれだけの価値を上乗せしたかの指標であり、下記の計算式をもとに算出されます。
付加価値額 = 営業利益高+人件費+租税公課+不動産・物品賃借料
引用:中小企業庁(中小企業の生産性分析 第3章)
企業部門の付加価値は、労働者に対する人件費(福利厚生費+従業員給与+役員給与)、債権者や株主に対する資本コスト(支払利息・割引料+動産・不動産賃借料+税引き後営業純益+減価償却費)、政府に対する税金(法人税及び住民税+租税公課)の3つに分解でき、各々が付加価値全体に占める割合は、労働分配率、資本分配率、租税分配率と呼ばれる。
引用:国立国会図書館デジタルコレクション(付加価値分配の現状と企業を巡る問題)
下に示した図のとおり、中小企業における労働分配率の目安は77%前後です。
引用:中小企業庁(第1節 企業が生み出す付加価値と労働生産性)
なお、労働分配率は役員報酬と従業員給与が合算されているため、労働分配率に対して下記の比率を目安に役員報酬を算出しましょう。
役員報酬:従業員給与=25〜40%:75〜60%
以上のように、付加価値分配率を用いれば、業績に応じた偏りの少ない役員報酬を設定できます。
関連記事:合同会社の役員報酬の相場と決め方|かかる税金や節税方法も解説
税負担を最小化できる額にする
税負担を最小化できる額にするのも役員報酬の決め方の1つです。
役員報酬を多くすると経費計上の額が増やせるため、法人税の負担を軽減できますが、個人の所得税や住民税の負担は重くなります。
また、社会保険料は役員報酬の額に比例して高くなるため、役員報酬を多くするほど会社も個人も負担が大きくなります。
以上のように、法人税や所得税、住民税、社会保険料の負担を最小化できる役員報酬の額を見極めていきましょう。
関連記事:役員報酬で税金がかからないのはいくらまで?税金の種類もあわせて解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
役員の生活費をベースに算出しない
役員報酬の金額は、役員の生活費をベースにして算出しないようにしましょう。
役員の生活費をベースに役員報酬を設定すると、会社の業績が落ちた場合、資金繰りを圧迫してしまうおそれがあります。
また、生活費を基準に設定された役員報酬は、利益の再投資を妨げるおそれもあり、会社の発展を阻害するリスクがあります。
役員報酬は資金繰りの安定と事業成長を前提に設定しましょう。
関連記事:役員報酬を8万円に設定するメリットは税金や社会保険料の節約にあり!
役員の前職での給与水準は考慮しない
役員報酬の金額を決めるうえで、役員の前職での給与水準は考慮しないようにしましょう。
前職での給与が高額だった場合、同じ給与水準で役員報酬を設定してしまうと、今の会社の財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。
健全な経営を行うためにも、役員報酬は役員の職務内容や会社の業績などを加味しながら、事業成長の妨げにならない金額で設定しましょう。
関連記事:役員報酬の手取りを増やす方法|シミュレーションや一覧表も掲載
0円で設定しない
ただし、役員報酬を0円で設定した場合、下記のようなリスクがあります。
- 役員報酬の経費計上がなくなるため法人税の負担が増える
- 他に収入源がなければ生活費の確保ができない
- 国民健康保険や国民年金に加入するため負担が重くなる
- 年金の受給額が減る
- 金融機関や取引先からの信用を失う
役員報酬を0円に設定するのは法律上問題ありませんが、以上のようなデメリットがあるため注意しましょう。
役員報酬をなしにするデメリットと注意点については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬をなしにするデメリットと注意点|決める手順も解説
関連記事:役員報酬なしの社会保険の加入義務は?合同会社の一人社長向けにも解説
従業員給与との差を作りすぎない
役員報酬を決める際は、従業員給与との差を作りすぎないように注意しましょう。
役員だけが高すぎる役員報酬を受け取っていると、従業員の不満が生まれやすく、職場の士気や生産性が低下したり、業績に悪影響を及ぼしたりします。
一方、従業員から納得が得られるような金額で役員報酬を設定すれば、健全な組織運営につながります。
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
中小企業の役員報酬に関する節税対策
本項目では、中小企業の役員報酬に関する節税対策について解説します。
役員報酬の設定金額によっては、所得税や住民税、社会保険料の負担が重くなる場合があります。

上記のように感じている経営者の方は、本項目を参考にしてみてください。中小企業の役員報酬に関する節税対策として、下記の3点について解説していきます。
- 配当所得で受け取る方が節税効果が高いケースがある
- 家族への支給で税負担の軽減が期待できる
- 社会保険料の負担を軽減できる役員報酬の額にする
配当所得で受け取る方が節税効果が高いケースがある
下表のとおり、配当所得は総合課税または申告分離課税を選べます。
引用:国税庁(No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度)
総合課税を選ぶと配当控除が適用されるため、同じ額を役員報酬で受け取る場合と比べると所得税や住民税の負担が軽減できるケースがあります。
一方、申告分離課税を選んだ場合、配当控除は適用されません。
しかし、所得税の税率が一律15.315%になるため、課税される配当所得が330万円以上のケースでは、役員報酬で受け取る場合と比べると税負担の軽減が期待できます。
なお、配当所得で受け取る場合の節税効果の試算には、専門知識が求められるため、税理士の力も借りましょう。
参考:財務省(受取配当等の益金不算入制度)
参考:国税庁(No.1330 配当金を受け取ったとき|配当所得)
参考:国税庁(No.1250 配当所得があるとき|配当控除)
参考:総務省(上場株式の配当等への課税方式の選択)
参考:国税庁(No.2260 所得税の税率)
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
家族への支給で税負担の軽減が期待できる
下表のとおり、役員報酬にかかる所得税は、課税所得が多いほど税率も高くなります。
上記の理由から、家族へ役員報酬を支給して所得を分散させれば、税負担の軽減が期待できます。
下表は課税所得2,000万円を自分1人で受け取る場合と夫婦で分割して受け取る場合に分けて、かかる所得税の金額を比較したものです。
ケース | 計算式 | 所得税の合計 |
自分1人で受け取る | 20,000,000円 ✕ 40% ー 2,796,000円 | 5,204,000円 |
夫婦で分割して受け取る | (10,000,000 ✕ 33% ー 1,536,000円) ✕ 2 | 3,528,000円 |
上表のとおり、自分1人で受け取るよりも夫婦で分割して受け取った方が、高い節税効果を得られます。
ただし、勤務実態のない家族に対して役員報酬を支給するのは、税務署に指摘されるおそれがあるため注意が必要です。
関連記事:【法人版】節税対策の裏ワザ|手元により多くの資金を残す方法
社会保険料の負担を軽減できる役員報酬の額にする
たとえば、役員報酬の月額63,000円未満に設定すれば、下表のとおり、社会保険料が最も安くなります。
引用:全国健康保険協会(令和7年3月分〔4月納付分〕からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|東京都)
ただし、社会保険料の負担を軽減できる額で役員報酬を設定した場合、下記のようなリスクもあるため注意が必要です。
- 将来受け取れる年金額に影響が出る
- 経費計上できる額が減るため法人税の負担が増える
以上のようなリスクも加味しながら、役員報酬の金額を設定しましょう。
関連記事:役員報酬を8万円に設定するメリットは税金や社会保険料の節約にあり!
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
中小企業の役員報酬を設定する際の注意点
本項目では、中小企業の役員報酬を設定する際の注意点について解説します。
ルールを守らない場合、損金算入を否認されるケースもあるため注意しましょう。中小企業の役員報酬を設定する際の注意点は、次のとおりです。
- 事業年度の開始から3ヶ月以内に決めなければならない
- 事業年度の途中で変更できないのが原則
- 税務署のチェックが入っても問題ないようにしておく
事業年度の開始から3ヶ月以内に決めなければならない
役員報酬は事業年度の開始から3ヶ月以内に決めなければなりません。
上記の期限を過ぎてしまうと、役員報酬を経費計上できなくなるため、法人税の負担が増えるおそれがあります。
また、役員報酬を決定したり変更したりするには、原則として、株主総会での承認が必要になります。
なお、税務調査に備えて株主総会の議事録はしっかりと保管しておきましょう。
参考:国税庁(No.5211 役員に対する給与|平成29年4月1日以後支給決議分)
参考:J-Net21(役員報酬はどのように決めればよいのでしょうか?)
関連記事:マイクロ法人も税務調査の対象?調査が入る理由や税理士の必要性も解説
事業年度の途中で変更できないのが原則
原則、役員報酬は事業年度の途中で変更できないため注意が必要です。
たとえば、役員報酬の月額を100万円と決定したあとに、事業年度の途中で月額120万円へと変更した場合、増額した20万円分は経費計上できません。
また、減額したときも同様で、差額が経費として認められません。売上や利益が増えたからといって役員報酬は自由に変更できないので注意しましょう。
参考:J-Net21(役員に対する給与と賞与はどう処理すればいいの?)
参考:国税庁(役員給与に関するQ&A)
関連記事:中小企業や小さい会社で税理士が必要な理由と費用相場
税務署のチェックが入っても問題ないようにしておく
役員報酬は税務署のチェックが入りやすい項目の1つです。
たとえば、同業種や同規模の会社と比較して高すぎる役員報酬を支給していないかや、業績に見合わない金額で役員報酬を設定していないかなどをチェックされます。
繰り返しになりますが、役員報酬は事業年度の開始から3ヶ月以内に決めなければならないため、ルールを守っていないのが発覚した場合、損金算入を否認されるおそれがあります。
参考:J-Net21(役員に対する給与と賞与はどう処理すればいいの?)
参考:国税庁(役員給与に関するQ&A)
関連記事:税務調査における修正申告・更正とは?違いについて税理士が解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
中小企業の役員報酬に関するよくある質問
最後に、中小企業の役員報酬に関するよくある質問について紹介します。
内容は随時追記します。
役員報酬は売上の何パーセントが適切ですか?
売上に対する役員報酬の割合の目安は、下表のとおりです。
ケース | 売上に対する割合 |
利益率が高い | 10〜30%程度 |
利益率が低い | 5〜15%程度 |
創業期や成長期 | 5〜10%程度 |
役員報酬の金額を決める際、売上に対する割合だけでなく、利益率や資金繰り、税負担なども考慮に入れながら判断しましょう。
関連記事:役員報酬は売上の何パーセントが適切?金額の決め方や注意点を徹底解説
中小企業の役員の平均年収はどのくらいですか?
下表は上記の調査結果をもとに、2023年時点の株式会社における役員報酬の平均を、資本金額ごとに並べたものです。
資本金額 | 役員の平均年収 |
2,000万円未満 | 約634万円 |
2,000万円以上 | 約940万円 |
5,000万円以上 | 約1,147万円 |
1億円以上 | 約1,380万円 |
資本金額10億円以上の大企業における役員の平均年収は約1,946万円であるため、中小企業の役員の平均年収は、大企業の役員と比べると低い傾向にあります。
なお、男女別の役員の平均年収については、本記事の資本金別に見る役員報酬の平均の項目をご参照ください。
また、役員報酬の手取りを増やす方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬の手取りを増やす方法|シミュレーションや一覧表も掲載
参考:中小企業庁(中小企業の定義について)
参考:国税庁(令和5年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-)
中小企業の常務の平均年収はどのくらいですか?
中小企業における常務の平均年収に関しては、人事院の民間給与実態統計調査のデータが参考になります。
ただし、上記の調査結果には中小企業の範囲に合致するデータがありません。
そこで、中小企業の範囲に最も近いデータとして、従業員数が500人以上1,000人未満の企業における常務の平均年収を、下表にまとめましたので参考にしてみてください。
時点 | 常務の平均年収 |
令和4年 | 約2,154万円 |
平成30年 | 約2,126万円 |
平成29年 | 約2,084万円 |
平成28年 | 約2,123万円 |
平成27年 | 約2,076万円 |
一人社長が給料を設定する際のルールや決め方はありますか?
一人社長の給料を設定する場合、ルールに則っていなければ、税制上の恩恵を受けられなくなります。
たとえば、役員報酬を毎月50万円と決めた場合、決算まで同じ金額を支給し続けなければ、経費計上できません。
また、事業規模や業績に見合わない高すぎる役員報酬も経費として認められません。
関連記事:合同会社の一人社長が給料(役員報酬)を設定する際のルールと決め方
参考:J-Net21(役員報酬はどのように決めればよいのでしょうか?)
参考:e-Gov(法人税法 第三十四条2項 役員給与の損金不算入)
社長として給料をもらいすぎた場合のリスクやデメリットはありますか?
社長として給料をもらいすぎた場合、不相当に高額な役員報酬は損金算入されないため、法人税の負担が増加するおそれがあります。
特に、税務調査に入られた場合、高すぎる役員報酬の経費計上は否認される確率が高いです。
上記の詳細については、本記事の役員報酬が高すぎる中小企業が抱えるリスクの項目をご参照ください。
関連記事:中小企業や小さい会社で税理士が必要な理由と費用相場
中小企業の役員になるメリットを教えてください
メリット | 解説 |
会社の経営に深く関与できる | ・自分のアイデアやビジョンを形にしやすい ・新規事業の立ち上げや組織改革など、会社の成長に大きく貢献できる |
成果に応じた報酬を得られる | ・会社の業績が良ければ、役員報酬や賞与に反映されるケースがある ・会社の成長に伴った収入アップが期待できる |
自己成長の機会が多い | ・経営に関する幅広い知識やスキルを習得できる ・さまざまなステークホルダーとの関わりを通して、人脈を広げられる |
中小企業の社長の年収ランキングみたいなものはありますか?
中小企業の社長の年収ランキングはありません。
引用:首相官邸ホームページ(成長力が高く地域経済を牽引する中堅企業の成長を促進する政策について|p2)
また、中小企業は公開会社に該当しないケースが多く、役員報酬の開示義務がないため、正確な比較ができません。
参考:J-Net21(会社法上の「公開会社」の意味について教えてください。)
参考:e-Gov(会社法施行規則 第百十九条 公開会社の特則)
参考:e-Gov(会社法施行規則 第百二十一条 株式会社の会社役員に関する事項)
中小企業の社長で年収3,000万を受け取る場合、いくらの売上が必要ですか?
下表のとおり、2018〜2023年度の売上高人件費比率は、平均13.8%程度です。
引用:独立行政法人労働政策研究・研修機構(企業経営、分配率:主要労働統計指標)
売上高人件費比率を13.8%とし、役員報酬と従業員給与の比率を4つのケースでシミュレーションした売上の目安は、下表のとおりです。
役員報酬:従業員給与 | 計算式 | 売上の目安 |
25%:75% | 3,000万円 ÷ 13.8% ÷ 25% | 約8億6千万円 |
30%:70% | 3,000万円 ÷ 13.8% ÷ 30% | 約7億2千万円 |
35%:65% | 3,000万円 ÷ 13.8% ÷ 35% | 約6億2千万円 |
40%:60% | 3,000万円 ÷ 13.8% ÷ 40% | 約5億4千万円 |
なお、上表の試算結果は、業種や利益率、従業員数などを考慮していません。
また、売上規模によっては年収3,000万円が適切な金額ではないケースもあり、税負担が重くなるおそれがあるため注意しましょう。
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
社員10人規模の社長の場合、年収の目安はいくらですか?
プログラマーやITエンジニアなどが該当する情報サービス業において、下記の条件でシミュレーションしてみましょう。
- 売上:1億円
- 人件費対売上高比率の業界平均:58.7%
- 社員数:10名
- 社員の平均年収:460万円
項目 | 計算式 | 合計 |
総人件費 | 1億円 ✕ 58.7% | 5,870万円 |
社員分の人件費 | 460万円 ✕ 10名 | 4,600万円 |
社長の年収 | 5,870万円 ー 4,600万円 | 1,270万円 |
以上の条件で試算した結果、社長の年収は1,000万円程度です。
上記のシミュレーションには税務に関する専門知識が求められるため、個人と会社の手取りを多くしたい経営者の方は、税理士へ相談してみましょう。
参考:日本政策金融公庫(小企業の経営指標調査|情報通信業)
参考:一般社団法人 情報サービス産業協会(2023年版 情報サービス産業 基本統計調査)
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
社員100人規模の社長の場合、年収の目安はいくらですか?
本ケースでも、プログラマーやITエンジニアなどが該当する情報サービス業におけるシミュレーションを、下記の条件で行います。
- 売上:8億2千万円
- 人件費対売上高比率の業界平均:58.7%
- 社員数:100名
- 社員の平均年収:460万円
項目 | 計算式 | 合計 |
総人件費 | 8億2千万円 ✕ 58.7% | 約4億8千万円 |
社員分の人件費 | 460万円 ✕ 100名 | 4億6千万円 |
社長の年収 | 4億8千万円 ー 4億6千万円 | 約2,000万円 |
以上の条件で試算した結果、社長の年収は2,000万円程度です。
上記はあくまでも情報サービス業に限ったシミュレーションですので、ご自身の会社の業種や売上、社員の平均年収などを考慮しながら試算しましょう!
なお、社長の手取りと会社の純利益を最大化させる役員報酬の決め方については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
参考:日本政策金融公庫(小企業の経営指標調査|情報通信業)
参考:一般社団法人 情報サービス産業協会(2023年版 情報サービス産業 基本統計調査)
中小企業でも役員報酬の開示義務はありますか?
原則、公開会社に該当しない中小企業の場合、役員報酬の開示義務はありません。なお、公開会社とは、下記の条文のとおりです。
公開会社 その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。
引用:e-Gov(会社法 第二条の五)
また、税務調査に入られる事態に備えて、役員報酬の決定や変更に関する記録はしっかりと保管しておきましょう。
参考:法務省(役員報酬の在り方に関する会社法上の論点の調査研究業務報告書)
参考:J-Net21(会社法上の「公開会社」の意味について教えてください。)
参考:e-Gov(会社法施行規則 第百十九条 公開会社の特則)
参考:e-Gov(会社法施行規則 第百二十一条 株式会社の会社役員に関する事項)
中小企業の社長の給料を設定する際のルールや決め方はありますか?
中小企業の社長の給料は、次のような観点に基づいて決めましょう。
- 付加価値分配率を用いる
- 税負担を最小化できる額にする
- 生活費をベースに算出しない
- 0円で設定しない
- 従業員給与との差を作りすぎない
また、中小企業の社長の給料を損金算入するためには、下記のようなルールを守る必要があります。
- 事業年度の開始から3ヶ月以内に決めなければならない
- 事業年度の途中で変更できないのが原則
- 不相当に高額な給料を設定しない
- 役員報酬が高すぎる中小企業が抱えるリスク
- 中小企業における役員報酬の決め方
- 中小企業の役員報酬を設定する際の注意点
関連記事:役員報酬で税金がかからないのはいくらまで?税金の種類もあわせて解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
まとめ
今回は、役員報酬が高すぎる中小企業が抱えるリスクについて、相場や適切な決め方とあわせて解説しました。
役員報酬が高すぎる中小企業が抱えるリスクは、次のとおりです。
- 不相当に高額な役員報酬は損金算入されない
- 税務調査で否認される確率が高い
役員報酬は国税庁の民間給与実態統計調査のデータを参考にしたり、売上に対する比率を考慮したりしながら適切に設定しましょう。
また、中小企業における役員報酬の具体的な決め方は、以下のとおりです。
- 付加価値分配率を用いる
- 税負担を最小化できる額にする
- 役員の生活費をベースに算出しない
- 役員の前職での給与水準は考慮しない
- 0円で設定しない
- 従業員給与との差を作りすぎない
中小企業の役員報酬を設定する際は、下記の点に注意しましょう。
- 事業年度の開始から3ヶ月以内に決めなければならない
- 事業年度の途中で変更できないのが原則
- 税務署のチェックが入っても問題ないようにしておく