こんにちは、IT業の顧問実績が豊富な税理士の植村拓真です。
IT起業は初期費用が比較的少なく済み、市場のニーズも拡大しているため、柔軟な働き方を望んでいる方の選択肢のひとつとして人気があります。
会社員から独立されるケースや本業と掛け持ちされるケースも多いです。
弊所でも、会社設立してIT起業しようと考えている方から、税務や資金調達に関するご相談をいただく機会が増えています。
上記のようなIT起業を検討されている方からよくいただくのが、次のような質問です。



どのくらいの費用がかかりますか?
本記事を読んでいる方の中にも、上記のような疑問を抱いている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、IT業で会社設立して起業する方法について、成功させるポイントや手続きとあわせて解説します。
IT業で会社設立して起業を成功させたい方は、本記事を参考にしてみてください。
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
IT業で会社設立を成功させるポイント
本項目では、IT業で会社設立を成功させるポイントについて解説します。


上記のようなIT起業の成功率を高めたい方は、本項目を参考にしてみてください。IT業で会社設立を成功させるポイントは、次のとおりです。
- 最適なビジネスモデルの選択
- 最新のIT技術やIT業界のトレンドを把握
- 最適な開発ツールの選択
- ITスキルが高いエンジニアの確保
- IT業に関するライセンスの取得
- IT業に関するルールの遵守
- 経理や税務会計に関する業務の適正な処理
- 必要資金の確保
- 大口顧客の獲得
- 自社サービスの構築
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
最適なビジネスモデルの選択
下表のとおり、IT業界は大きく5つに分けられます。
業界分類 | 業界の特徴 | 主なビジネスモデル | スモールスタートのしやすさ |
ハードウェア | ・パソコンやサーバー、周辺機器などの開発や製造、販売を行う業界 ・物理的な製品を扱うため、設備投資や在庫管理が必要 |
・販売 ・リース |
✕(多額の資本や大規模な設備投資が不可欠) |
ソフトウェア | ・業務系や組み込み系、Web系など、さまざまなソフトウェア開発を行う ・開発スキルがあれば個人でも参入しやすく、受託開発もできる |
・SaaS ・ライセンスビジネス ・受託開発 |
◎(自宅でPC1台から始められる) |
情報処理サービス | ・システムの開発や運用、保守、アウトソーシング、BPOなどを請け負う ・法人顧客からの信用や実績づくりが重要 |
・受託開発 ・SaaS ・BPO ・SES |
△(実績づくりと顧客開拓が課題) |
インターネット・Web | ・Web技術とインターネットを活用し、情報発信やECなど多様なサービスを展開する業界 ・個人開発や副業で始めるケースも多い |
・広告 ・SaaS ・サブスクリプション ・コンテンツ販売 |
◎(少人数や低資本で始められる) |
通信インフラ | ・通信回線やネットワーク機器の整備や運用を通じて、日常に欠かせない通信環境を支える業界 ・大規模な設備投資や許認可の取得が必要なケースが多い |
・MVNO ・機器販売/保守 ・IaaS ・データセンター運営 |
✕(多額の初期投資とさまざまな法対応が必要) |
ご自身のITスキルや優位性、資本金などと照らし合わせて、最適な業界やビジネスモデルを選択するのが、IT業で会社設立を成功させるポイントのひとつです。
関連記事:ITエンジニアの起業は1人でもできる!失敗しないコツを税理士視点で解説
最新のIT技術やIT業界のトレンドを把握
最新のIT技術やIT業界の動向を把握しておくのは、IT業で会社設立を成功させるポイントのひとつです。
- 生成AI
- IoT
- ブロックチェーン
- メタバース
情報収集を怠ると、ご自身が提供したり取り扱ったりするプロダクトやサービスが、時代に取り残されるおそれがあります。
学び続ける姿勢を保ち、市場や顧客の動きに応じて、プロダクトやサービスを柔軟に進化させる意識が重要です。
日頃からITに関するニュースや専門媒体を読み、市場の変化に対する感度を高めましょう。
関連記事:いきなり法人化して起業するのは問題なし!メリット・デメリットやタイミングも解説
最適な開発ツールの選択
開発ツールの選択は、作業効率やプロダクトの質に大きな影響を及ぼします。上記の理由から、業務の目的やチーム構成に合わせた最適なツール選びが大切です。
- 生成AIが搭載されたIDE(統合開発環境)
- プロジェクトの進捗を共有できるタスク管理ツール
- チャットやファイル共有ができるコミュニケーションツール
また、ツールを導入する際は、次のような観点も重要です。
- 費用に見合う性能があるか
- 他のツールと連携できるか
- 操作がわかりやすいか
- サポート体制が整っているか
- セキュリティが十分か
適切なツールを選べば集中力が高まるため、開発スピードが上がり、成果も出やすくなります。
ITスキルが高いエンジニアの確保
IT分野で競争力を保つには、高いITスキルを持っている人材を、戦略的に確保していく必要があります。
IT人材は需要に対して供給が追いつかず、採用が難航しやすい状況です。
たとえば、リモート勤務や成果重視の評価制度などを導入すると、多様な人材の関心を集めやすくなります!
なお、採用の場面においては、求めるスキルを明確に定義しておき、報酬水準を業界の相場に合わせて設計するのが重要です。
経営者自身がITスキルが高い場合、営業やマーケティングに強い人材を揃えると、組織全体のバランスが整い、事業規模の拡大につながります。
関連記事:法人化で後悔したくない!失敗しないコツを税理士が解説
IT業に関するライセンスの取得
IT業で会社設立する際、ご自身の事業に関連するライセンスの取得が欠かせません。
法令遵守によって信用が高まり、取引契約や資金調達の場面で有利になる傾向があります。
法令違反のリスクを避けたり経営の土台を強化したりするために、IT業に関するライセンスの取得は、会社設立初期の重要な施策のひとつです。
IT業に関するルールの遵守
IT業で会社設立する場合、IT業に関連する法令やガイドラインを把握し、ルールの遵守が求められます。IT業に関連する主な法令やガイドラインは、下表のとおりです。
主な法令やガイドライン | 概要 |
個人情報保護法 | 個人情報を取り扱う事業者の収集や利用、管理などに関する法律 |
特定電子メール法 | ・広告宣伝メールの送信ルールを定めた法律 ・広告宣伝メールを送るには受信者の同意が必要 |
ISMS基本方針(情報セキュリティ基本方針) | 情報漏洩や不正アクセスを防ぐ体制を整備するための管理方針 |
著作権法 | 著作物の創作者に権利を認め、無断での利用や複製を制限する法律 |
参考:政府広報オンライン(「個人情報保護法」を分かりやすく解説。個人情報の取扱いルールとは?)
参考:総務省(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント)
参考:総務省(情報セキュリティ対策に関連する 既存の基準・ガイドライン)
参考:e-Gov(著作権法)
経理や税務会計に関する業務の適正な処理
IT業の会社設立を成功させるには、経理や税務会計に関して適正な処理が欠かせません。特に、ソフトウェア開発に関する処理では注意が必要です。
ソフトウェア開発で発生した費用は、研究開発費として計上すれば、税額控除の対象になります。
引用:経済産業省(研究開発税制の概要と令和5・6年度の税制改正について|p14)
一方、開発されたソフトウェアは無形固定資産に該当するため、耐用年数3年もしくは5年に渡って減価償却を行います。上記の詳細については、国税庁のホームページをご参照ください。
以上のように、経理や税務会計に関して適正な処理を行わなければ、本来受けられる税制上のメリットを逃したり、税務上のリスクが高まったりします。
経理や税務会計に関する業務を自力でこなせるか不安な方は、税理士への依頼も検討しましょう。
関連記事:IT業に強い税理士の特徴と依頼するタイミングについて解説
必要資金の確保
必要資金の確保は、IT業で会社設立を成功させるポイントのひとつです。
たとえば、ソフトウェアの開発費やクラウドサービスの利用料などは、売上が立つ前から発生するため、会社設立して早々に資金が尽きてしまうおそれがあります。
また、サブスクリプションモデルで収益を上げるケースでは、売上が安定するまでに半年以上かかる場合もあります。
事業が止まってしまうリスクを回避するためには、運転資金に十分な余裕を持たせておくのが大切です。
資金計画を綿密に練り、助成金や補助金、金融機関からの融資などを活用し、必要資金をしっかりと確保しましょう。
参考:J-Net21(黒字倒産とはどのようなものでしょうか?また、そうならないためにはどうしたらよいのでしょうか?)
関連記事:日本政策金融公庫の融資審査を確実に通すためのチェックポイント6選
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
大口顧客の獲得
IT業で会社設立したあと、安定した経営を目指す場合、大口顧客の複数確保が欠かせません。
1社からの売上に依存してしまうと、取引契約が終了した瞬間に資金繰りが悪化し、プロダクト開発やサービスの提供が止まってしまうおそれがあります。
特に、IT業はクラウドサービスの利用料や人件費などの固定費がかさみやすいため、毎月の入金が途切れないような状態にしましょう。
参考:J-Net21(黒字倒産とはどのようなものでしょうか?また、そうならないためにはどうしたらよいのでしょうか?)
自社サービスの構築
IT業で会社設立する場合、自社サービスの構築が重要です。受託開発ではクライアントの予算や仕様に従う必要があります。
一方、自社サービスであれば、企画から運用までご自身の判断で進められます。また、価格や機能を柔軟に決められる点も自社サービスを構築するメリットのひとつです。
提供するサービスの品質が高ければ、信用が厚くなり、事業規模の拡大にもつながります。
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
IT業で会社設立する際の流れ
本項目で解説するのは、IT業で会社設立する際の流れについてです。


上記のような疑問を抱えている方は、本項目を参考にしてみてください。IT業で会社設立する際の流れは、以下のとおりです。
- ①ビジネスプランの策定
- ②事業計画書の作成
- ③資金調達の実施
- ④会社設立に関する手続きの実施
それでは、順番に見ていきましょう。
①ビジネスプランの策定
事業の軸となるビジネスプランの策定が欠かせません。思いつきで進めてしまうと、プロダクトやサービスが必要な人に届かず、事業が失敗するおそれがあります。
事業を成功させるためには、どんな市場を狙うのか、競合と何が違うのかなどについて、きちんと整理しましょう。
また、プロダクトの機能や価格だけでなく、カスタマーサポートのスピードやブランド力なども含めて、自社の強みを見つけ出しておくのが大切です。
販売経路や広告手段まで具体的に設計すれば、資金調達の場面でも信用を得やすくなります。
数字に基づいた綿密な計画こそが、IT業での会社設立を成功させる出発点になります!
②事業計画書の作成
IT業で会社設立する際は、事業計画書を作成しましょう。
事業計画書の作成は必須ではありませんが、事業の方向性や将来像を明確に示す資料として、資金調達や人材確保などの場面で信用を得る鍵になります。
事業計画書には、主に下記のような内容を記載します。
- 創業の目的
- 提供するサービスやプロダクトの内容
- 販売方法
- 対象顧客
- 必要資金の内訳
- 資金調達の手段
- 収支の見通し
- 競合との差別化要素
たとえば、SaaS型ツール開発で事業展開を考えている場合、導入のしやすさや見込まれる利用継続率の高さなどを明記しておくと効果的です!
6W2Hを意識した構成にすれば、第三者にも伝わりやすい事業計画書に仕上がります。
参考:J-Net21(事業計画書はなぜ必要か)
参考:J-Net21(事業計画書の作成手順)
関連記事:会社設立手続きを自分で行う5つのステップ|費用や流れについて解説
③資金調達の実施
IT業で会社設立を進めるうえで、資金調達は欠かせません。
資金調達の主な手段としては、次のとおりです。
- 日本政策金融公庫の創業融資
- 自治体の助成金や補助金
- エンジェル投資家からの出資
- ベンチャーキャピタルからの出資
- クラウドファンディング
上記の手段は特徴やリスクがそれぞれ異なるため、事業計画と合致する方法を選びましょう。
なお、税理士に依頼すれば、資金調達に関する書類作成や幅広いサポートを実施してもらえます。資金調達の成功確率を高めたい方は、税理士への依頼も検討しましょう。
参考:J-Net21(資金調達方法)
参考:J-Net21(創業支援を目的とした公的な融資制度はありますか?)
参考:J-Net21(補助金・助成金の活用)
参考:J-Net21(エンジェル税制)
参考:J-Net21(クラウドファンディングについて教えてください。)
関連記事:日本政策金融公庫の融資審査を確実に通すためのチェックポイント6選
④会社設立に関する手続きの実施
IT業で会社設立する場合の手続きは、次のとおりです。
項目 | 概要 |
①基本事項の決定 | 会社名や事業の内容、本店所在地の住所、資本金の額などを決めます |
②会社の実印を発注 | 設立登記の際に使う実印を、専門業者へ依頼して作成します |
③定款の作成と認証 | ・会社の基本情報や運営ルールを記したもので、会社の憲法ともいわれます ・本店所在地を所轄する公証役場で認証が必要です(合同会社の場合は不要) |
④資本金の払い込み | ・資本金は発起人の口座に振り込みます ・払い込んだ口座の通帳や振込記録をコピーし、設立登記の際に提出します |
⑤本店所在地を所轄する法務局での設立登記 | 設立登記申請書や登録免許税の収入印紙貼付台紙、定款、払い込みを証する書面、印鑑届書などを提出します |
⑥本店所在地を所轄する年金事務所や税務署、役場への書類提出 | ・年金事務所には健康保険・厚生年金保険新規適用届や健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届などを提出します ・税務署には法人設立届出書や給与支払事務所等の開設届出書などを提出します ・役場には法人設立届出書を提出します |
弊所では、会社設立と顧問契約をあわせてご依頼くださる方向けに、フルサポートプランを格安で提供させていただいておりますので、お気軽にご相談くださいませ!
参考:J-Net21(株式会社の設立手続き)
参考:J-Net21(合同会社の設立手続き)
参考:J-Net21(定款の作り方)
関連記事:会社設立手続きを自分で行う5つのステップ|費用や流れについて解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
IT業で会社設立する場合に必要な費用
本項目では、IT業で会社設立する場合に必要な費用について解説します。

上記のような疑問を抱いている方は、本項目を参考にしてみてください。IT業で会社設立する場合に必要な費用に関して、下記の2点に分けて解説していきます。
- 会社設立にかかる費用
- 資本金の目安
上記について順番に見ていきましょう。
会社設立にかかる費用
会社設立する際に最低でもかかる費用を、株式会社の場合と合同会社の場合でまとめた表は、次のとおりです。
項目 | 株式会社の場合 | 合同会社の場合 |
登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
定款認証の手数料 | 3万円 | 0円 (定款認証が不要) |
定款にかかる印紙税額 (電子定款であれば不要) |
4万円 | 4万円 |
定款謄本の交付手数料 | 2,000円程度 | 0円 (定款認証が不要) |
合計 | 22万円程度 | 10万円程度 |
合同会社は会社設立にかかる費用を安く抑えられますが、2006年に導入された比較的新しい会社形態のため認知度が低く、株式会社と比べると社会的な信用度の面で劣る傾向があります。
株式会社と合同会社のどちらを選ぶべきかについては、事業の目的や将来の展望によって判断するのが適切です。
ご自身の事業における優先事項を明確にしたうえで、会社形態を選択しましょう。なお、会社形態はあとから変更もできます。
会社設立の手続きでは専門知識を求められる場面も多いため、自力で進められるか不安な方は、税理士への依頼も検討しましょう。
参考:国税庁(No.7191 登録免許税の税額表)
参考:日本公証人連合会(9-4 定款認証)
参考:国税庁(課税される定款の範囲)
参考:国税庁(印紙税額の一覧表|第1号文書から第20号文書まで)
参考:法務局(株式会社|持分会社への組織変更)
参考:法務局(持分会社|株式会社への組織変更)
関連記事:合同会社の設立で節税できる理由|設立の基準やデメリットも解説
資本金の目安
IT業で会社設立する際、資本金の額は金融機関や取引先からの信用に大きく影響します。
資本金が著しく少ない場合、取引を断られたり、融資の審査で不利になったりするおそれもあります。
資本金1円でも会社設立できますが、社会的な信用度に着目するなら、資本金は最低でも100万円以上で設定しましょう。
また、下記のような初期費用を考慮し、3〜6か月分の運転資金を加えた額で資本金を設定すると安心です。
- 事務所の賃料
- パソコン購入費
- クラウドサービス利用料
- 人件費
- 通信費
- 開発費
参考:J-Net21(新会社法って何ですか?資本金1円でも会社が設立できると聞きました。)
参考:J-Net21(会社設立時には戦略的に資本金額を決める)
参考:J-Net21(運転資金の考え方)
関連記事:会社設立に税理士は必要?費用相場やメリットについて解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
IT業で会社設立した際に活用できる節税対策
本項目では、IT業で会社設立した際に活用できる節税対策について解説します。


上記のような不安を抱いている方は、本項目を参考にしてみてください。IT業で会社設立した際に活用できる節税対策は、次のとおりです。
- 必要経費の計上
- 役員報酬の設定金額の調整
- 消費税の還付金
- 税制上の優遇措置
- 助成金や補助金を活用した圧縮記帳
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
必要経費の計上
IT業で会社設立すると、必要経費として認められる支出が、個人事業主と比べると大幅に増えるため、課税所得を減らす手段として有効です。
- 役員報酬
- 退職金
- 生命保険料
- 日当
- 福利厚生費
また、会社名義で自宅兼事務所を借りたり、社宅制度を導入したりすれば、家賃の5〜8割程度を経費計上できるケースもあります。
IT業は他の業種と比べると利益率が高く、課税所得が多くなりやすい傾向にあるため、必要経費を適切に活用しながら節税につなげましょう。
自宅経費を活用した法人の節税対策については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:自宅経費を活用した法人の節税対策|持ち家・賃貸のケースや個人事業主の場合も解説
関連記事:家賃はどこまで経費にできる?個人事業主・法人にわけて解説
参考:国税庁(No.5211 役員に対する給与|平成29年4月1日以後支給決議分)
参考:国税庁(No.5208 役員の退職金の損金算入時期)
参考:J-Net21(生命保険のしくみと税務)
参考:国税庁(福利厚生費|確定申告書作成コーナー)
役員報酬の設定金額の調整
IT業で会社設立する場合、役員報酬の金額を適切に設定すれば、節税につながります。
繰り返しになりますが、IT業は他の業種と比べると利益率が高く、課税所得が多くなりやすいです。役員報酬は経費計上できるため、課税所得を圧縮し、法人税の負担軽減につなげられます。
ただし、役員報酬を受け取る個人には、所得税や住民税が発生するため注意が必要です。役員報酬の設定金額が及ぼす影響は、下表のとおりです。
役員報酬の設定金額 | 高い | 低い |
法人税の負担 | 軽くなる | 重くなる |
個人の所得税や住民税の負担 | 重くなる | 軽くなる |
以上のように、会社と個人それぞれが負担する税金のバランスを考えて、役員報酬の金額を設定しましょう。
関連記事:役員報酬で税金がかからないのはいくらまで?税金の種類もあわせて解説
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
消費税の還付金
会社設立して直後の売上がまだ少ない時期に、ソフトウェア開発のために多額の設備投資を行った場合、消費税の還付を受けられるケースがあります。仕入税額が売上税額よりも多いような場合です。
たとえば、ソフトウェア開発に必要な機材の購入に1,500万円かかり、10%の150万円を消費税として支払ったとします。
該当事業年度の課税売上高が1,000万円で、受け取った消費税が100万円であれば、50万円分還付されます。なお、消費税の還付を受けられる条件は、次のとおりです。
- 消費税の課税事業者である
- 原則課税を適用している
参考:国税庁(No.6613 免税事業者と仕入税額の還付)
参考:国税庁(消費税のしくみ)
参考:国税庁(No.6351 納付税額の計算のしかた)
税制上の優遇措置
下表のような税制上の優遇措置を活用するのも有効な節税手段です。
主な税制上の優遇措置 | 概要 |
中小企業投資促進税制 | ・新たに導入した機械やソフトウェアの取得金額の30%特別償却か7%税額控除を選べる制度 ・パソコンは対象外 ・適用期限は2026年度末まで |
中小企業経営強化税制 | ・対象となる設備を導入した際に即時償却か取得金額の10%税額控除を選べる制度 ・適用期限は2026年度末まで |
研究開発税制 | 新技術や新製品の研究開発に投資した金額の一部を法人税から控除できる制度 |
少額減価償却資産の特例 | ・30万円未満の減価償却資産を購入した場合、即時償却できる制度 ・年間300万円までが限度 ・適用期限は2025年度末まで |
欠損金の繰越控除 | 赤字を最長10年間繰り越して、翌事業年度以降の利益から控除できる制度 |
以上のような制度を活用する際には専門知識が求められるため、不明な点がある場合は、税理士への相談も検討しましょう!
関連記事:IT業に強い税理士の特徴と依頼するタイミングについて解説
助成金や補助金を活用した圧縮記帳
圧縮記帳は国からの助成金や補助金で、減価償却資産を購入した際に活用できる会計処理の方法です。
減価償却資産の取得価格から補助金や助成金の額を差し引き、購入した事業年度に多額の税金がかかるのを避けられます。
通常であれば、補助金100万円は受け取った事業年度の収入となり、法人税の対象になります。
また、ソフトウェアやアプリの開発に必要な大型機材は、耐用年数に応じて数年で減価償却するため、購入した事業年度に全額を経費計上できません。
圧縮記帳を適用すれば、補助金100万円を圧縮損として計上し、大型機材の取得価格を200万円に減額できます。
補助金収入と圧縮損が相殺されるため、減価償却資産を購入した事業年度の税負担を軽減し、翌事業年度以降に課税を繰り延べられる仕組みです。
助成金や補助金を活用した圧縮記帳は、高度な専門知識が求められるため、税理士への相談も検討しましょう。
参考:J-Net21(補助金や助成金は課税対象になりますか?)
参考:e-Gov(法人税法 第六目 圧縮記帳)
参考:J-Net21(保険金や国の補助金など一定要件を満たす固定資産の取得には課税の繰延べ—圧縮記帳)
参考:国税庁(第2節 国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳)
関連記事:税理士に依頼するタイミングはいつ?メリットや必要なケースもあわせて解説
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
IT業の会社設立に関するよくある質問
最後に、IT業の会社設立に関するよくある質問について紹介します。
内容は随時追記します。
有名なIT企業やIT起業家を教えてください
国内の有名なIT企業とIT起業家は、次のとおりです。
企業名 | 主な事業領域 | 創業者(起業家) |
ソフトバンクグループ株式会社 | 通信、金融、AI | 孫正義 |
楽天グループ | EC、金融、通信、旅行 | 三木谷浩史 |
株式会社メルカリ | フリマアプリ、金融 | 山田進太郎 |
株式会社サイバーエージェント | メディア、インターネット広告、ゲーム | 藤田晋 |
GMOインターネットグループ | インターネットインフラ、インターネットセキュリティ、金融 | 熊谷正寿 |
株式会社ディー・エヌ・エー | ゲーム、モビリティ関連サービス、ヘルスケア | 南場智子 |
海外の有名なIT企業とIT起業家は、以下のとおりです。
企業名 | 主な事業領域 | 創業者(起業家) |
Apple | OS開発、ハードウェア開発、ソフトウェア開発 | スティーブ・ジョブズ |
Microsoft | OS開発、ソフトウェア開発、クラウドサービス | ビル・ゲイツ/ポール・アレン |
Google(Alphabet) | インターネット広告、AI開発、クラウドサービス | ラリー・ペイジ/セルゲイ・ブリン |
Meta(旧Facebook) | SNS、広告、メタバース、AI開発 | マーク・ザッカーバーグ |
Amazon | EC、クラウドサービス、物流 | ジェフ・ベゾス |
Tesla | EV、エネルギー、AI開発 | イーロン・マスク |
OpenAI | AI開発 | サム・アルトマン |
IT起業における成功例やおすすめのビジネスモデルはありますか?
IT起業における成功例として、売買を仲介するアプリの開発や月額制クラウドサービスの提供などが広く知られています。
また、受託開発で経験を積んだあとで、自社サービスを展開する流れもよく見られます。
まずは小規模からスタートし、検証と改善を重ねながら段階的に事業規模を拡大させていくスタンスが、安定した成長に結びつきます。
IT起業で失敗や後悔したくない方は、本記事のIT業で会社設立を成功させるポイントの項目もご参照ください。
IT起業は1人でもできますか?
IT起業は1人でもできます。IT業は在庫を持たず低コストで始められるため、1人でも起業しやすい分野です。
また、クラウドソーシングを活用すれば、人件費や採用にかかるコストを軽減できます。
なお、1人でIT起業する場合、強い孤独感に悩まされるケースもあるため注意しましょう。
関連記事:ITエンジニアの起業は1人でもできる!失敗しないコツを税理士視点で解説
IT起業の成功率はどのくらいですか?
IT起業した場合、5年間で50%程度が廃業や倒産しているともいわれています。なお、上記の数値は調査方法によって異なります。
長期的な成功を目指すには、顧客のニーズを正確に把握し、安定して利益を得られるビジネスモデルを採用しながら、変化へ柔軟に対応していく力が欠かせません。
IT起業の成功率を高めたい方は、本記事のIT業で会社設立を成功させるポイントの項目も参考にしてみてください。
関連記事:法人化で後悔したくない!失敗しないコツを税理士が解説
IT起業するとどのくらいの年収が見込めますか?
IT起業後、事業が軌道に乗ったあとに得られる社長の年収イメージは、下表のとおりです。
フェーズ | 年商の目安 | 当期純利益の目安 | 社長の年収イメージ |
黒字化直後 | 数千万円 | 500~1,000万円程度 | 600万~1,000万円程度 |
成長期 | 1億~5億円程度 | 1,000万円~7,000万円程度 | 1,000万~2,500万円程度 |
高収益期 | 5億円超 | 7,500万~2億円程度 | 2,500~5,000万円程度 |
上表は役員報酬のみを示しています。
なお、IT業界はSaaSや受託開発などビジネスモデル次第で利益率が大きく異なるため、同じ年商でも年収に幅が出るのは念頭に置きましょう。
また、創業期は役員報酬を0〜500万円程度に抑え、浮いた資金をプロダクト開発や人材採用に回すケースも多いです。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
IT起業にはどのような種類がありますか?
IT起業の主な業界として、下記の5つが挙げられます。
- ハードウェア
- ソフトウェア
- 情報処理サービス
- インターネット・Web
- 通信インフラ
IT起業の主な職種は、次のとおりです。
- アプリ開発エンジニア
- WEBデザイナー
- ITコンサルタント
- クラウドエンジニア
- グロースハッカー
- AIエンジニア
本記事の最適なビジネスモデルの選択の項目もご参照ください。
IT起業はアイデアがなかったり未経験だったりすると難しいですか?
IT起業はアイデアがなかったり未経験だったりすると、難しいわけではありません。
大切なのは、身の回りの困りごとや解決されていない課題に目を向け、ITで改善していく発想です。
また、プロダクトやサービスをゼロから全部1人で作るのではなく、OEMや外注などを活用する方法も考えられます。
小さく試しながら、上手くいく形を見つけ出し、ご自身の強みや優位性を発揮できる事業展開を心掛けましょう。
IT起業でエンジニアがいない場合の解決策はありますか?
エンジニアがいない場合でも、IT起業を諦める必要はありません。
- 開発を外部へ委託する
- ノーコードもしくはローコード開発ツールを活用する
- ITに詳しい友人や知人に声をかけてみる
- 独学で乗り切る
使える資金やスキルに応じて最適な方法を選び、スモールスタートで堅実に進めるのが、IT起業の成功率を高めます。
【全国対応・無料】ご相談・法人化シミュレーション・見積もりはこちら
まとめ
今回は、IT業で会社設立して起業する方法について、成功させるポイントや手続きとあわせて解説しました。
IT業で会社設立を成功させるポイントは、次のとおりです。
- 最適なビジネスモデルの選択
- 最新のIT技術やIT業界のトレンドを把握
- 最適な開発ツールの選択
- ITスキルが高いエンジニアの確保
- IT業に関するライセンスの取得
- IT業に関するルールの遵守
- 経理や税務会計に関する業務の適正な処理
- 必要資金の確保
- 大口顧客の獲得
- 自社サービスの構築
IT業で会社設立する際の流れは、以下のとおりです。
- ①ビジネスプランの策定
- ②事業計画書の作成
- ③資金調達の実施
- ④会社設立に関する手続きの実施
なお、会社設立には登録免許税や定款認証の手数料などが発生します。
株式会社で設立する場合は22万円程度、合同会社で設立する場合は10万円程度の費用が最低でもかかります。
また、資本金は1円から会社設立できますが、社会的な信用度の観点から100万円以上を目安に設定しましょう。