こんにちは、IT業全般の顧問実績が豊富な税理士の植村拓真です。
弊所では、副業ITエンジニアの方から多くのお問い合わせをいただきます。
中でも特に多いのが以下のような内容です。


ITエンジニアは経費率が低い業種であるため、少しでも多く経費計上して納税額を抑えたいと考える方は少なくありません。
本記事を読んでいる方も、同じように考えているのではないでしょうか。
今回はそんな方に向けて、副業ITエンジニアの経費について申告が必要なケースから経費の例まで解説します。
副業でも税務調査に入られる恐れがありますので、適切な経費計上を心がけて確定申告を行いましょう。
副業ITエンジニアの経費と確定申告が必要なケース


まずは上記のような方向けに、副業ITエンジニアの経費の概要と確定申告が必要なケースについて解説します。
- 前提知識:副業ITエンジニアの経費とは
- 必要なケース①:給与や退職金以外の所得が年間20万円以上である
- 必要なケース②:給与の年間収入が2,000万円を超えている
前提知識:副業ITエンジニアの経費とは
副業ITエンジニアの経費とは、業務を行ううえで必要な費用のことです。
ITエンジニアの業務とプライベートで発生した費用が重なるものは、家事按分で業務利用の割合を明確にすれば経費として認められるケースがあります。
たとえば、リモートで業務を行うITエンジニアの方は、自宅を事務所として使用するケースが少なくありません。
自宅の一部を事務所として申請すれば、家賃の一部を経費計上できます。
ただし、経費は税務署に業務で発生した費用だと認められる範囲内でなければなりません。
経費計上する費用の金額が過剰だと、副業でも税務調査の対象となる恐れがあります。
副業ITエンジニアの業務で発生した費用を経費計上できるかは、業務を行ううえで必要であるか、金額が過剰ではないかの見極めが重要です。
ITエンジニアの経費については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:フリーランスエンジニアは経費率が少ない!一例や計上時の注意点を税理士が解説
必要なケース①:給与や退職金以外の所得が年間20万円以上である
副業ITエンジニアで確定申告が必要なケースの代表例として、年間で給与所得や退職金以外の所得が20万円以上あるケースが挙げられます。
たとえば、副業ITエンジニアの業務を行って得た報酬から経費を差し引いたあと、金額が年間で20万円を超えた場合、税法に基づいて確定申告を行わなければなりません。
また、年間所得が20万円以下であっても、住民税の申告は必要なケースがあります。
住民税の未申告によっては、自治体を通じて差し押さえの通知が勤務先に届いて、副業でITエンジニアの業務を行っているとバレる恐れもあります。
会社に副業でITエンジニアの業務を行っているとバレたくない方は、住民税の申告を忘れずに行いましょう。
会社員の副業バレを回避する方法については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:会社員の会社設立はばれる!勤務先に内緒で法人化する方法と注意点を解説
必要なケース②:給与の年間収入が2,000万円を超えている
年間の給与収入が2,000万円を超える場合も確定申告が必要です。
本業の会社から受け取る年間の給与収入が2,000万円を超えると、源泉徴収による税務処理が完了しないからです。
年間所得が20万円未満であれば確定申告は不要であると言い切っている情報をネットで見かけますが、本ケースのように確定申告が必要なケースもあるので注意しましょう。
関連記事:確定申告が全くわからない方へ|やり方や相談先について税理士が解説
副業ITエンジニアの経費一例
それでは、副業ITエンジニアで経費に該当する費用の一例を紹介します。
本項目で紹介する経費はあくまで一例です。
繰り返しになりますが、実際に経費計上できるかどうかは、発生した費用が業務に関係があるかどうかです。
本項目で紹介している経費でも、業務に関係がなければ経費計上できません。
虚偽の申告は税務調査のリスクを高めますので、安全に副業ITエンジニアとして稼ぐためにも、適切な確定申告を行うように心がけましょう。
- パソコンの購入費
- サーバーの料金やルーツの購入費
- 書籍代やセミナーの参加費
- 外注費
- 交通費
- 会議費
- 出張費
- 地代家賃
- 水道光熱費
- 通信費
パソコンの購入費
副業ITエンジニアにとってパソコンの購入費は、業務に直接関連する費用として経費計上できる代表例です。
副業の業務を行うために自費で購入していれば、経費計上の対象です。
パソコンの購入費が30万円以上の場合は減価償却の対象になり、購入年に全額を経費計上できません。
たとえば、30万円のデスクトップパソコンを5年で減価償却する場合、毎年6万円ずつを経費計上します。
購入費が30万円未満であれば一括で経費計上できるため、複雑な仕訳は不要です。
サーバーの料金やルーツの購入費
副業ITエンジニアが業務に使用するサーバー料金やツールの購入費は、業務遂行に欠かせないものとして経費計上できます。
サーバー代はレンタルサーバーやクラウドサービスなどの利用料が該当して、継続発生する経費として計上します。
また、Webデザインやプログラミングなどで活用する専用ツールの購入費も、業務の効率を向上させるために必要な経費です。
書籍代やセミナーの参加費
ITエンジニアの業務を遂行するうえで必要な専門知識を学習するための書籍代、業務に関連する内容のセミナーに参加する際の費用も、業務に関係のあるため経費計上できます。
業務上必要な知識を学習するためにかかる費用であれば、業務で直接使用する物でなくても経費です。
外注費
副業ITエンジニアの外注費とは、業務の一部を他の専門家に依頼する際に支払う費用のことです。
業務に関係のある費用ですので経費計上できます。
たとえば、特定のプログラムの作成やデザイン業務、リサーチ補助など、プロジェクトを遂行するうえで必要な作業を外部委託する際にかかる費用が該当します。
交通費
副業ITエンジニアの交通費とは、業務を遂行するために必要な移動費のことです。
訪問先への電車代やバス代、ガソリン代、駐車場料金などが該当します。
たとえば、クライアントとの打ち合わせや会議、現場作業のために移動が必要であれば、移動時にかかる交通費を経費計上できます。
プライベートでの移動や目的地が副業ITエンジニアの業務と無関係である場合は、経費計上できません。
業務とプライベートの境界が曖昧なケースもあります。
業務遂行のために必要な移動については、移動の記録や目的を明記しておきましょう。
会議費
副業ITエンジニアが計上する会議費は、業務目的で取引先や顧客との会議や打ち合わせにかかる費用のことです。
たとえば、打ち合わせのために利用するカフェやレストランの飲み物代が該当します。
打ち合わせが業務に必要であると明確にできれば、経費計上が認められる傾向があります。
ただし、プライベートの集まりや交際費とみなされる飲食店利用で発生した費用は、経費計上が認められません。
繰り返しになりますが、会議費として経費計上するうえで、利用目的や参加者名などを領収書に記録して、業務との関連性を証明できる状態にしておくことが重要です。
また、会議費は税務調査の際に指摘されやすいため、普段から領収書や記録の保管を徹底して、適切な金額を経費計上するよう心がけておきましょう。
出張費
副業ITエンジニアの業務で出張費が発生するケースは少ないですが、業務遂行のうえで必要であれば認められます。
副業ITエンジニアとして経費計上できる出張費には、クライアントとの会議や打ち合わせで出張する際にかかる交通費や宿泊費、食事代が含まれます。
ただし、副業ITエンジニアの業務とは無関係な観光やプライベートの用事で発生した費用に関しては、経費計上が認められません。
出張費として出張でかかった費用を経費計上する際は、領収書に出張内容や日程、目的などを正確に記録して、紛失しないように保管しておきましょう。
地代家賃
副業ITエンジニアの経費として家賃を経費計上する場合、全額ではなく仕事で使用している割合に応じた金額が認められます。
たとえば、自宅の一部をオフィスとして使用しているとき、使用面積や使用頻度をもとに、家賃を業務分とプライベート分に分けて業務分のみを経費計上します。
業務分の家賃を算出するには、家賃の何割が業務に使用されているのかを明確にすることが重要です。
税務署に提出する書類には、経費計上の明確な根拠が求められるケースがあります。
水道光熱費
副業ITエンジニアとして自宅で業務を行う場合、業務で使用した水道光熱費の一部を経費計上できます。
ただし、家全体で発生する水道光熱費のすべてが経費に当たるわけではありません。
地代家賃と同じく、仕事で使用している割合を算出して、業務分のみを経費計上する必要があります。
たとえば、業務を行っている部屋の面積や使用時間をもとに、業務の使用割合を算出します。
プライベートでの使用分を含めていると経費計上が認められませんので、家事按分する際は注意しましょう。
通信費
副業ITエンジニアが業務用に使う通信費の一部は経費として計上できます。
上記のようなご質問をいただく機会があるのですが、業務のみの使用であると証明できなければ、全額の経費計上は認められません。
そのため、副業ITエンジニアの業務で発生した通信費を算出する際は、1日のうちに何時間を業務で使用しているかを基準に家事按分します。
本項目では、副業ITエンジニアが経費計上できる費用の一例を紹介しました。
以下の記事でもITエンジニアの経費について紹介していますので、参考にしてみてください。
関連記事:フリーランスエンジニアは経費率が少ない!一例や計上時の注意点を税理士が解説
副業ITエンジニアが経費計上する際の注意点
副業ITエンジニアの業務でかかった費用を経費計上する際、いくつか注意すべき内容があります。
プライベートでかかった費用を経費計上しない以外にもありますので、適切な経費処理を行って税務調査のリスクを下げるために確認しておきましょう。
- 経費を使いすぎると手元の資金がなくなる
- 個人事業主で売上が少ないころは会計ソフトを活用する
経費を使いすぎると手元の資金がなくなる
副業ITエンジニアの業務でかかった費用を経費計上をする際、支出が増えすぎると手元の資金が不足する恐れがあります。
ITエンジニアは経費率の低い業種ですので、経費を増やしたいと考える方は多いです。
経費を増やせば税負担は軽減されますが、資金を使用した分キャッシュフローが圧迫されるケースがあり、長期目線で見れば事業運営に影響を及ぼす恐れがあります。
たとえば、業務で使用するパソコンやソフトウェアの購入費、サーバー代などはITエンジニアにとって必要経費ではありますが、利益に直結しない支出が積み重なってしまうと、資金繰りに支障をきたしかねません。
副業ITエンジニアの必要経費を計上する際は、事業にとって本当に必要な支出かどうかを見極めて、予算内で計画的に管理しましょう。
個人事業主で売上が少ないころは会計ソフトを活用する
法人化していない個人の副業ITエンジニアで売上が少ない方は、会計ソフトを活用して仕訳を行い確定申告に備えましょう。
事業を始めたばかりで売上が少ない状態であれば、経費処理や確定申告の難易度は高くないからです。
今後売上が伸びる見込みがあり事業に集中したい、資金力があるので法人化して事業規模の拡大を目指したいといった方であれば、副業を始めたばかりでも税理士に依頼するメリットはあります。
関連記事:フリーランスエンジニアが法人化するタイミング|メリット・注意点とあわせて解説
関連記事:フリーランスエンジニアが税理士探しで失敗しない方法と費用相場を解説
ITエンジニアの経費に関するよくある質問
最後に、ITエンジニアの経費に関するよくある質問を紹介します。
- フリーランスエンジニアの経費率は低いですか?
- 副業ITエンジニアの業務が会社にバレないようにする方法を教えてください
(※内容は随時追加いたします)
フリーランスエンジニアの経費率は低いですか?
フリーランスエンジニアの経費率は、他の業種に比べて低いです。
ITエンジニアの業務を行ううえで必要な費用は、パソコンやソフトウェアの購入費、サーバーの利用料など、限られた範囲の支出で済む傾向があるためです。
また、クライアントとのやり取りはリモートで行うケースが多く、通勤や頻繁な移動が不要であるため、交通費や出張費も他の業種に比べてかかりません。
関連記事:フリーランスエンジニアは経費率が少ない!一例や計上時の注意点を税理士が解説
副業ITエンジニアの業務が会社にバレないようにする方法を教えてください
副業ITエンジニアの業務が本業の会社に知られないようにする方法は、いくつかあります。
まず、確定申告時に住民税の納付方法を選択する際、普通徴収を選択しましょう。
特別徴収を選択すると、本業の会社に住民税の通知が届いてしまいます。
一方、普通徴収を選択すれば自分で納付期限までに住民税を納めるので、本業の会社に副業ITエンジニアの業務がバレる心配はありません。
そして、副業ITエンジニアとしてネットで活動する際は、ブログやSNS、YouTubeなどで個人情報を特定できる内容を発信しないようにしましょう。
ネットは不特定多数の人間が利用していますので、本業の会社の人にバレる恐れが十分にあります。
他にも、副業ITエンジニアの業務が会社にバレないようにする方法はありますので、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:会社員の会社設立はばれる!勤務先に内緒で法人化する方法と注意点を解説
まとめ
今回は、副業ITエンジニアの経費について申告が必要なケースから経費の例まで解説しました。
ITエンジニアは経費率が少ない業種ですが、売上が伸びて納税額が増加したからといって、プライベートの費用を経費扱いしたり、グレーな節税対策に手を出したりするのはNGです。
副業でも税務調査の対象になる恐れがありますので、適切な経費処理を心がけましょう。
また、業務でかかった費用は、必ず領収書を受け取り一定の期間は保管するようにしてください。
原則、白色申告であれば領収書は5年で帳簿類は7年、青色申告なら領収書と帳簿類は7年保管が必要です。
いつ税務調査が入っても大丈夫なように、整理整頓して綺麗な状態で保管しておきましょう。