こんにちは、会社設立の支援実績が豊富な税理士の植村拓真です。
弊所では、これから起業される方や売上規模が拡大して節税対策について考え始めている個人事業主の方など、さまざまな事業フェーズの方からご相談をいただきます。起業前の方、節税対策の一環で法人化を検討している方、どちらの方も理解しきれていないポイントとして、会社と個人事業主の違いが挙げられます。
たとえば、よくいただくのが以下のようなご質問です。



本記事を読んでいる方の中にも、上記のような疑問を持っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、会社と個人事業主の違いについて、見分け方や法人化を検討する基準とあわせて解説します。起業を考えている方や法人化を視野に入れている個人事業主の方は、本記事を参考にしてみてください。
会社と個人事業主の違い
本項目では、会社と個人事業主の違いについて、下記の観点に分けて解説します。
- 開業費用
- 維持費
- 資金調達
- 廃業手続き
- 事業承継
- 赤字の繰り越し
- 負う責任の範囲
- 経理や税務会計
- 資本金
- 採用
- 節税
- 事業主の給与
- 銀行口座
- 事業形態
- その他
会社と個人事業主のどちらで起業しようか迷われている方は、本項目を参考にしてみてください。
開業費用
会社と個人事業主の開業費用における違いについて解説します。
会社
会社を設立する場合、事業形態によってかかる費用が異なります。株式会社を設立する場合にかかる費用は、以下のとおりです。
登録免許税 | 資本金の0.7%(最低15万円) |
定款の認証手数料 | 資本金額に応じて3〜5万円 |
定款謄本の交付手数料 | 約2,000円 |
一方、合同会社を設立する場合、定款の認証が不要なため、費用を抑えられます。
株式会社も合同会社も電子定款を利用すれば、印紙税4万円を節約できます。会社を設立する際の手続きや書類作成には専門知識が求められるため、税理士への依頼も検討しましょう。
参考:国税庁(No.7191 登録免許税の税額表)
参考:日本公証人連合会(定款認証)
関連記事:会社設立に税理士は必要?費用相場やメリットについて解説
個人事業主
個人事業主として開業する場合、会社の設立とは異なり、開業費用は基本的に発生しません。開業手続きとして、納税地を所轄する税務署に個人事業の開業・廃業等届出書を提出する必要がありますが、手続きにあたっての手数料はかかりません。
また、青色申告を希望する場合、所得税の青色申告承認申請書を提出する必要がありますが、無料で行えます。ただし、事業を開始するにあたって事務所を借りたり、備品を購入したりするなどの初期投資が必要なケースもありますので注意しましょう。
以上のように、個人事業主は開業の手続きが簡便で、かかる費用も少ないため、資金に余裕がない方でも始めやすい特徴があります。
維持費
会社と個人事業主の維持費における違いについて解説します。
会社
会社を運営する場合、主に以下のような維持費が発生します。
- 社会保険料
- 法人住民税の均等割
- オフィスの賃料や水道光熱費
- 税理士の顧問料
会社を設立すると社会保険への加入が必要です。
上記のため、健康保険や厚生年金保険の負担が毎月発生します。たとえば、厚生年金保険料率は18.30%で、保険料は会社と従業員で折半します。
法人住民税の均等割は、赤字であっても発生するため注意が必要です。経理や税務会計に関する業務や決算申告を税理士に依頼する場合、月額3〜6万円程度の顧問料がかかります。
以上のような費用は、事業規模や業種、本店所在地を所轄する自治体の条例などによって変動します。特に、社会保険料や税金の納付は、法律で定められた義務であり、日頃から適切な管理が必要です。
関連記事:中小企業や小さい会社で税理士が必要な理由と費用相場
関連記事:顧問税理士とは?顧問契約の必要性・メリットや注意点を解説
個人事業主
個人事業主の場合、事業規模に応じて、以下のような維持費が発生します。
個人事業主は会社と比較すると、必須でかかる維持費が少ないのが特徴です。なお、売上が増加した場合、節税効果や社会的な信用度の向上などが期待できる法人化も念頭に置きましょう。
関連記事:合同会社か個人事業主ならどっちが得?違いやメリット・デメリットを比較して徹底解説
資金調達
会社と個人事業主の資金調達における違いについて解説します。
会社
株式会社の資金調達には多くの選択肢があります。資金調達の主な方法は、次のとおりです。
- 金融機関からの融資
- 補助金
- 助成金
- クラウドファンディング
- 株式の発行
- 社債の発行
会社は財務面の透明性や社会的な信用度が高いため、個人事業主よりも資金調達しやすい傾向があります。増資と呼ばれる株式を発行して資金調達する方法は、返済不要の資金を調達できるため、株式会社ならではの手段です。
以上のように、会社を設立すると資金調達の幅が広がるため、事業規模の拡大につなげられます。なお、資金調達には専門知識が求められる場面が多いため、税理士の力も借りましょう。
参考:中小企業庁(中小企業者のためのエクイティ・ファイナンスの基礎情報)
参考:J-Net21(社債を発行しようと思いますが、留意すべき点を教えてください。)
参考:中小企業庁(ミラサポplus 補助金・助成金 中小企業支援サイト)
関連記事:日本政策金融公庫の融資審査を確実に通すためのチェックポイント6選
個人事業主
個人事業主も金融機関からの融資や補助金、助成金、クラウドファンディングなどを活用できます。しかし、会社と比較した場合、社会的な信用度が低いため審査が厳しく、調達できる資金が少額になるケースがあります。
個人事業主は融資の審査が通りにくい傾向があるものの、しっかりと事業計画書を作成したり、確定申告を行っていたりすれば、融資を受けられる確率は高まります。
関連記事:個人事業主に顧問税理士はいつから必要?費用相場やタイミングも解説
廃業手続き
会社と個人事業主の廃業手続きにおける違いについて解説します。
会社
会社が廃業する際の手続きは、個人事業主に比べると非常に煩雑です。たとえば、株式会社を廃業する場合の手続きは、次のとおりです。
1. 株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)による解散決議
2. 清算人・代表清算人の選任
3. 清算人就任登記・解散登記
4. 閉解散の通知・公告
5. 会社財産の現況調査
6. 現務の結了・財産の換価・分配・処分
7. 債権者保護手続き(解散公告など)
8. 決算報告承認総会の招集・開催
9. 清算結了登記
引用:J-Net21(廃業するにはどうしたらよいですか?)
また、上記のプロセスにおいて下記のような費用が発生します。
解散の登記 | 3万円 |
清算人の選任に関する登記 | 9千円 |
清算結了の登記 | 2千円 |
官報の掲載料 | 3〜4万円程度 |
税理士への依頼費用 | 15〜30万円程度 |
会社の廃業手続きには多くのコストがかかるため、慎重な判断が求められます。万が一、会社を廃業しなければならない状況に陥った場合、税理士に相談しながら進めましょう。
参考:法務局(株式会社解散及び清算人選任登記申請書)
参考:法務局(株式会社清算結了登記申請書)
参考:全国官報販売協同組合(官報公告掲載料金)
関連記事:中小企業や小さい会社で税理士が必要な理由と費用相場
関連記事:一人社長(一人会社)の税理士の必要性|費用相場と選び方も解説
個人事業主
個人事業主の廃業手続きは非常にシンプルです。個人事業主には解散や清算の概念はなく、納税地を所轄する税務署に個人事業の開業・廃業等届出書を提出すれば、廃業手続きは完了します。
個人事業の開業・廃業等届出書は、個人事業主の廃業について納税地を所轄する税務署へ通知するための重要な書類です。個人事業主は無限責任のため、仕入先への未払い金や金融機関からの借入金、税金の滞納などがある場合、廃業後も対応する必要があります。
参考:国税庁(法第63条《事業を廃止した場合の必要経費の特例》関係)
関連記事:法人成りで個人事業主の廃業届を提出する必要性やタイミングを解説
関連記事:法人成りで個人事業主を廃業しないデメリットとメリットを解説
事業承継
会社と個人事業主の事業承継における違いについて解説します。
会社
会社は法人格を有するため、経営者が死亡したり退職したりしても会社は維持され、事業を中断せずに続けられます。また、株式会社の場合、株式譲渡による事業承継ができるため、手続きが明確で簡単です。
以上の理由から、後継者を計画的に育成したり、円滑な事業承継を進める見通しを立てたりしやすいです。なお、顧問税理士をつけておけば、会社の経営状況や財務状況を細かく把握してくれるため、さらにスムーズな事業承継が実現できます。
参考:中小企業庁(事業承継を知る)
参考:J-Net21(事業承継のための準備)
参考:中小企業庁(中小M&Aの主な手法と特徴)
関連記事:顧問税理士とは?顧問契約の必要性・メリットや注意点を解説
個人事業主
個人事業主の事業承継は会社の場合とは異なり、個人事業主を交代する手続きが必要です。先代の個人事業主は、納税地を所轄する税務署に個人事業の開業・廃業等届出書を提出し、事業用の資産を後継者に譲渡します。
後継者は新たに事業を開始する形になるため、1ヶ月以内に個人事業の開業・廃業等届出書を納税地を所轄する税務署に提出します。個人事業主が事業承継する際に取られる主な方法は、次のとおりです。
- 生前贈与
- 相続
- M&A
なお、個人事業主の事業承継では、相続税や贈与税などがかかるケースもあるため、税理士の力を借りながら進めましょう。
参考:国税庁(個人版事業承継税制)
参考:中小企業庁(第2節 個人事業者の事業承継)
参考:J-Net21(個人事業主の事業承継について、税務上の留意点はありますか?)
参考:国税庁(No.1440 譲渡所得)
関連記事:相続税を自分で申告する際の税務調査のリスクと軽減させる方法
赤字の繰り越し
会社と個人事業主の赤字の繰り越しにおける違いについて解説します。
会社
会社は青色申告を行っている場合、赤字を最大10年間繰り越して、翌年度以降の黒字から控除できます。
また、本事業年度に赤字が発生した場合、前事業年度に赤字を繰り戻し、前事業年度に納付した法人税の還付を受けられる制度もあります。
個人事業主も赤字を繰り越せますが、繰り越し期間は3年であるため、10年まで繰り越せる会社の方が高い節税効果が期待できます。なお、会社の税務申告は難易度が高いため、税理士への丸投げも念頭に置きましょう。
参考:国税庁(C1-19 青色申告書の承認の申請)
参考:国税庁(No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除)
参考:国税庁(No.5763 欠損金の繰戻しによる還付)
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
関連記事:決算申告を税理士に丸投げする際の費用相場や安く抑える方法
個人事業主
個人事業主が青色申告を行っている場合、赤字を3年間にわたって繰り越しできます。
上記によって期待できるのは、所得税や住民税などの軽減です。また、赤字の繰り戻し制度を活用すれば、今年度の赤字を前年度に繰り戻して、前年度に納付した所得税の還付を受けられます。
以上のような制度を活用するためには、赤字でも確定申告を行っておく必要があるため注意しましょう。
関連記事:【個人事業主・法人対応】確定申告を税理士に丸投げする費用相場やメリット・デメリットを解説
負う責任の範囲
会社と個人事業主が負う責任の範囲における違いについて解説します。
会社
株式会社もしくは合同会社を設立した場合、事業における責任は有限責任となります。会社が倒産しても、出資者や代表者が負う責任は、出資額の範囲内に限られ、出資額以上の債務を個人が背負う必要はありません。
たとえば、事業に失敗して借金が発生した場合でも、個人の資産は差し押さえられません!
したがって、法人化すれば、万が一のリスクを最小限に抑えられます。ただし、中小企業や設立したての会社では、融資を受ける際に個人保証が求められるケースがあるため注意が必要です。
上記の場合、有限責任の会社であっても、出資額以上の債務を個人が背負うリスクがあります。負う責任の範囲を正しく理解して、予期せぬ事態に備えましょう。
参考:J-Net21(有限責任と無限責任について教えてください。)
個人事業主
個人事業主は無限責任です。事業で生じたすべての債務に対して、個人が責任を負うのを無限責任といいます。
事業に失敗して借金ができた場合、個人事業主は個人の財産を使ってまで返済する必要があります。たとえば、仕入先への未払い金や金融機関からの借入金、税金の滞納など、すべての債務を負わなければなりません。
個人事業主は以上のようなリスクを加味しながら事業を運営する必要があるため、起業する場合、事業形態の選択において慎重な判断が求められます。
参考:J-Net21(有限責任と無限責任について教えてください。)
関連記事:いきなり法人化して起業するのは問題なし!メリット・デメリットやタイミングも解説
経理や税務会計
会社と個人事業主の経理や税務会計における違いについて解説します。
会社
会社の場合、経理や税務会計に関する業務が、個人事業主よりも煩雑です。複式簿記を用いて決算書を作成し、事業年度が終了した翌日から2ヶ月以内に税務申告を行います。
なお、株式会社の場合、会社の財務状況や経営成績の開示を目的とした決算公告が義務づけられています。また、社会保険に関する手続きも日常的に発生するため、経理や税務会計に関する業務を税理士に丸投げするケースも多いです。
参考:J-Net21(ホームページで決算公告を行いたいのですが、注意点があったら教えてください。)
参考:日本年金機構(厚生年金保険料等の納付)
参考:全国健康保険協会(5.保険料と納付方法)
関連記事:【失敗しない】決算期の決め方|変更方法から調べ方まで解説
関連記事:決算申告を税理士に丸投げする際の費用相場や安く抑える方法
個人事業主
個人事業主の確定申告は、下記のように規定されています。
所得税法では毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税を納付することになっています。
引用:国税庁(No.2024 確定申告を忘れたとき)
確定申告で個人事業主が納める税金は、次のとおりです。
なお、従業員を雇用していない場合、源泉所得税の申告と納税の必要はありません。
個人事業主の経理や税務会計に関する業務は、会社に比べると難易度は低く、簿記3級程度の知識があれば対応できます。クラウド会計ソフトやe-Taxの普及により、経理や税務会計に関する業務が簡略化されていますが、苦手意識や手間を感じる場合、税理士への依頼も検討しましょう。
関連記事:確定申告が全くわからない方へ|やり方や相談先について税理士が解説
資本金
会社と個人事業主の資本金における違いについて解説します。
会社
会社の設立時には資本金を用意する必要がありますが、最低資本金制度が撤廃され、現在は1円から会社を設立できます。ただし、資本金の額は、融資の審査や取引先の与信調査において重要な役割を果たすため、慎重に検討しましょう。
資本金の額は3~6ヶ月分の運転資金を目安に設定するのが一般的です。なお、資本金の額が1,000万円以上の場合、設立1期目から消費税の納税義務が発生するため注意が必要です。
参考:J-Net21(新会社法って何ですか?資本金1円でも会社が設立できると聞きました。)
参考:国税庁(No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)
関連記事:会社設立手続きを自分で行う5つのステップ|費用や流れについて解説
個人事業主
元入金は事業を開始する際に必要な設備や備品の購入、事務所の賃料などに使用されます。元入金が0円でも事業を開始できますが、金融機関から融資を受ける際、元入金が少ない場合、融資の審査に影響するケースがあるため注意が必要です。
元入金は3~6ヶ月分の運転資金を目安に準備しておくと良いです。また、事業用とプライベート用に銀行口座を分け、適切な資金管理を行いましょう。
採用
会社と個人事業主の採用面での違いについて解説します。
会社
会社は社会保険の加入が義務づけられているため、安心して働ける環境を提供できます。また、会社の設立によって社会的な信用度が高まるため、給与が安定している、事業の継続性があるなどの安心感を求職者に与えられるのも大きなポイントです。
さらに、福利厚生を充実させたり就業規則を整えたりすれば、優秀な人材の採用につなげられます。事業規模の拡大のために優秀な人材を雇い入れたい場合、会社の設立を検討しましょう。
個人事業主
個人事業主が人材を採用する場合、会社に比べると不利な点が多いです。個人事業主は求人情報誌や求人サイトへの掲載ができないおそれがあります。
また、社会保険を完備していなかったり、就業規則が整っていなかったりするケースでは、人材の採用が難航します。福利厚生の充実度や働きやすい職場環境などを求職者は重視するためです。
個人事業主は社会的な信用度が低いため、給与の支払いが安定しているか、事業の継続性はあるかなどの不安を求職者に抱かれるおそれもあります。社会的な信用度の有無は、採用面で大きな影響を及ぼすため、人材の採用に力を入れたい場合、会社の設立を検討しましょう。
関連記事:いきなり法人化して起業するのは問題なし!メリット・デメリットやタイミングも解説
節税
会社と個人事業主の節税面での違いについて解説します。
会社
会社は個人事業主に比べて、高い節税効果が期待できます。法人税の税率は下表のように規定されているため、課税所得が増えても税率は変わりません。
上記に対して、個人事業主が納める所得税は超過累進税率のため、課税所得が増えるつれて税率も高くなります。
会社を設立すると役員報酬を経費計上できるようになり、給与所得控除も適用できます。繰り返しになりますが、赤字を最大10年間繰り越して控除できるようになるのも、会社を設立して得られるメリットの1つです。
また、会社は個人事業主よりも経費として認められる範囲が広いため、節税につなげられます。なお、会社を設立すれば、何でも経費で落とせるようになるわけではありませんので注意しましょう。
関連記事:法人はなんでも経費で落とせる?よくある勘違いと判断基準を解説
個人事業主
繰り返しになりますが、個人事業主は所得が増えると税負担が重くなる傾向があります。
個人事業主にも節税対策はあり、たとえば、青色申告特別控除を活用すると最大65万円を所得金額から差し引けます。また、事業専従者給与を支給していれば、事業専従者控除を受けられるため、税負担の軽減が期待できます。
なお、所得税や住民税の負担を軽減させるために活用できる主な控除は、以下のとおりです。
税理士に相談しながら、適切な節税対策を実施しましょう。
参考:国税庁(No.2260 所得税の税率)
参考:国税庁(No.5759 法人税の税率)
参考:国税庁(No.1100 所得控除のあらまし)
事業主の給与
事業主の給与に関して、会社と個人事業主の違いについて解説します。
会社
繰り返しになりますが、会社を設立した場合、会社から役員報酬として給与を受け取る形になります。個人事業主と違い、会社と個人の資産は区別されるため、会社が得た利益は個人の所得とはなりません。
役員報酬は給与所得であり、給与所得控除を適用できるため、税負担の軽減が期待できます。また、役員報酬は一定の要件を満たせば、経費計上できるため、節税対策につながります。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
関連記事:役員報酬で税金がかからないのはいくらまで?税金の種類もあわせて解説
関連記事:役員報酬を8万円に設定するメリットは税金や社会保険料の節約にあり!
個人事業主
個人事業主の場合、事業活動によって得られた利益は、そのまま個人の所得となります。
上記のため、個人事業主には給与の概念はありません。繰り返しになりますが、会社を設立すると役員報酬として給与を受け取る形になるため、経費で落とせたり給与所得控除を適用できたりします。
上記の理由から、個人事業主の所得と役員報酬が同じ金額の場合、会社よりも個人事業主の方が税負担が重くなるケースがあります。課税所得の増えてきた個人事業主は、節税対策の一環として会社の設立も検討しましょう。
参考:国税庁(No.1350 事業所得の課税のしくみ)
参考:国税庁(No.1000 所得税のしくみ)
銀行口座
銀行口座の開設に関して、会社と個人事業主の違いについて解説します。
会社
会社を設立した場合、法人口座を開設するのが一般的です。法人口座は会社名義で開設される銀行口座で、会社と個人の財産を明確に区別するために必要です。
法人口座の開設には金融機関の審査があり、必要書類も多いため、手続きには時間がかかります。金融機関の審査を通過して法人口座は開設されるため、法人口座を持っている会社は取引先や顧客からの信頼が高まります。
また、法人口座を持っていると融資の審査が通りやすくなるのもメリットの1つです。法人口座の開設は任意ではあるものの、会社の設立と同時に法人口座を開設するのをおすすめします。
関連記事:会社設立に税理士は必要?費用相場やメリットについて解説
個人事業主
個人事業主は個人名義の銀行口座を事業活動で使えます。ただし、事業用の資金と生活費が混ざらないようにしましょう。
上記の口座を開設した場合の利点は、下記のとおりです。
- 事業とプライベートのお金を明確に区別できる
- 取引先や顧客からの信頼が向上する
- 会計ソフトと連携できる
- プライベートの支出を税理士に見られなくて済む
屋号付きの事業用口座を開設する場合、書類の準備や銀行の審査などにかかる時間も加味しながら進めましょう。なお、お金の管理や税務申告に苦手意識がある場合、税理士への依頼も検討しましょう。
関連記事:個人事業主に顧問税理士はいつから必要?費用相場やタイミングも解説
事業形態
事業形態に関して、会社と個人事業主の違いについて解説します。
会社
会社とは本店所在地を所轄する法務局で法人登記を行い、法人格を取得した組織です。会社法に基づき、下記の4つの事業形態が定められています。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
かつては有限会社もありましたが、2006年の会社法改正によって新設はできなくなり、既存の有限会社は特例有限会社として存続しています。2006年の会社法改正により、資本金1円でも会社を設立できるようになったため、合同会社が普及する一方で、合資会社や合名会社の新設は少なくなりました。
会社を設立するにあたって、株式会社と合同会社のどちらで設立するかについて迷われるケースが多いです。
参考:J-Net21(合同会社について教えてください。)
参考:J-Net21(新会社法って何ですか?資本金1円でも会社が設立できると聞きました。)
参考:J-Net21(有限会社ってなくなるのですか?)
参考:独立行政法人経済産業研究所(ようやく浸透した日本版LLC)
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個人事業主
個人事業主とは、個人が独立して事業を営む形態を指します。たとえば、アフィリエイターやSNSマーケター、フリーランスエンジニア、個人の広告代理店などです。
個人事業主の場合、事業活動によって得られた利益は、すべて個人の資産となります。繰り返しになりますが、個人事業主は無限責任のため、すべての負債を個人が負う必要がある点には注意が必要です。
事業規模が拡大した場合、節税効果を期待して会社を設立する個人事業主も多いです。会社を設立すべきかどうかの判断に迷う場合、税理士に相談してみましょう。
関連記事:法人成りを税理士に相談する必要性|メリットや費用相場も解説
その他
会社と個人事業主は、下記の観点でも違いがあります。
- 開業手続き
- 税金
- 社会保険の加入義務
- 経費計上できる範囲
- 社会的な信用度
上記の観点における会社と個人事業主の違いについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:会社と個人事業主はどっちが得?違いやメリット・デメリットを比較して法人化を検討
個人事業主が会社設立を検討した方が良いケース
本項目で解説するのは、個人事業主が会社設立を検討した方が良いケースについてです。
下記のような場合、会社の設立を検討しましょう。
- 法人向けの事業を展開したい
- 大規模な資金調達を行いたい
- 採用規模を拡大したい
- 有限責任にしたい
- 経費計上の範囲を広げたい
- 許認可を取得したい
- その他
それでは、順番に見ていきましょう。
法人向けの事業を展開したい
個人事業主でも法人向けの事業を行えますが、企業の中には個人事業主と取引しない方針を持っている場合があり、ビジネスチャンスを逃すおそれがあります。会社を設立すれば、社会的な信用度が高まり、営業活動や契約交渉、取引の場面で有利に進められるケースがあります。
以上を踏まえて、法人向けの事業を展開したいと考えている個人事業主は、会社の設立を前向きに検討しましょう。
大規模な資金調達を行いたい
個人事業主も補助金や助成金、金融機関からの融資、クラウドファンディングなどを活用した資金調達を行えます。しかし、審査が通りにくかったり、融資額が少なかったり、使途に制限がかかったりするなどのケースがあります。
一方、会社は社会的な信用度が高いため、融資の審査が通りやすく、多額の資金を有利な条件で調達できるケースが多いです。また、会社向けの補助金や助成金もあり、会社を設立すると資金調達の選択肢が広がります。
事業規模の拡大や設備投資のために、十分な資金を確保する必要がある場合、会社の設立を検討しましょう。なお、判断に迷う場合、税理士に相談してみましょう。
関連記事:法人成りを税理士に相談する必要性|メリットや費用相場も解説
関連記事:日本政策金融公庫の融資審査を確実に通すためのチェックポイント6選
採用規模を拡大したい
採用規模を拡大したい場合、会社の設立を検討するのがおすすめです。個人事業主でも従業員を雇用できますが、会社の方が社会的な信用度が高いため、求職者からの関心が集まりやすく、優秀な人材を確保する点において有利です。
また、求職者に対して事業の継続性や労働環境が整っている印象を与えられる点もメリットといえます。特に、会社は社会保険の加入が義務づけられているため、国民健康保険や国民年金よりも手厚い保障を受けられる点も求職者にとっては魅力の1つです。
以上のような理由から、採用規模を拡大し、事業の安定成長を目指す場合、会社を設立するのが適しています。
有限責任にしたい
リスクマネジメントの一環として、有限責任にしたい場合、会社の設立を検討しましょう!
個人事業主は無限責任のため、業績が悪化し倒産に至った際、すべての負債を個人の資産を使ってまで返済する義務を負います。たとえば、仕入先への未払い金や借入金、税金の滞納などの債務は、すべて個人に請求されます。
一方、株式会社や合同会社は有限責任です。繰り返しになりますが、有限責任では負うべき責任が、出資額の範囲内に限定されます。
上記の場合、出資額以上の責任を負う必要がないため、個人の資産を使ってまで返済するリスクはありません。なお、株式会社や合同会社であっても、融資を受ける際に個人保証を求められるケースでは、無限責任になるため注意が必要です。
有限責任のメリットを活用し、事業上のリスクを軽減させたい場合、会社の設立を検討しましょう。
参考:J-Net21(有限責任と無限責任について教えてください。)
経費計上の範囲を広げたい
会社を設立すると経費計上の範囲が広がるため、節税効果が期待できます。会社の場合、役員報酬として自分に対して支払った給与は、一定の要件を満たせば、経費計上できます。
また、適切な条件を満たせば、個人事業主は経費計上できない退職金や生命保険料などを、会社の経費として落とせる点もメリットの1つです。なお、自宅を事務所として使用する場合、法人契約の社宅扱いにすれば、家賃を経費計上できます。
関連記事:合同会社が経費で落とせるもの一覧|いくらまで経費計上できる?
関連記事:一人社長が経費で落とせるもの一覧|制限があるもの・落とせないものも解説
関連記事:家賃はどこまで経費にできる?個人事業主・法人にわけて解説
許認可を取得したい
新規事業を展開するにあたって許認可の取得が必要な場合、会社の設立を検討しましょう。たとえば、建設業を始めるにあたっての許認可は、個人事業主でも会社でも取得できますが、法人化する際には取得し直す必要があります。
新規事業に着手する段階から事業規模の拡大を想定している場合、上記のような許認可の再取得は二度手間です。また、個人事業主の場合、許認可は本人に対して交付されますが、会社の場合は法人に対して許認可が交付されます。
上記のため、会社で許認可を取得すると事業承継の場面で手続きがスムーズになるメリットもあります。許認可の取得にあたっては専門知識が求められるケースもあるため、専門家の力も借りましょう。
参考:J-Net21(許認可が必要な業種は)
参考:J-Net21(建設業を開業するにあたっての許認可要件について教えてください。)
その他
なお、下記のような場合も個人事業主が会社の設立を検討した方が良いケースです。
- 課税売上高が1,000万円を超えそう
- 年収が800万円を超えそう
上記のケースについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:会社と個人事業主はどっちが得?違いやメリット・デメリットを比較して法人化を検討
個人事業主が会社を設立しない方が良いケース
本項目では、個人事業主が会社を設立しない方が良いケースについて解説します。
個人事業主が会社を設立しない方が良いケースは、次のとおりです。
- 事業規模の拡大を考えていない
- 売上が低迷している
- 事業活動で得たお金を自由に使いたい
上記について1つずつ見ていきましょう。
事業規模の拡大を考えていない
事業規模の拡大を考えていない場合、法人化のメリットを十分に享受できないため、個人事業主のまま事業を続ける方が良いです。法人化すると社会的な信用度が向上したり、資金調達がしやすくなったりなどの恩恵を受けられますが、あくまでも事業規模を大きくしたい場合に限られます。
繰り返しになりますが、法人化には下記のようなデメリットもあります。
- 赤字でも法人住民税の均等割を支払う必要がある
- 自由に会社のお金を引き出せない
以上を踏まえて、小規模なまま事業を維持したい場合、会社を設立しない方が良いです。
関連記事:法人成りのメリットは責任・信用・節税面にあり!デメリットもあわせて解説
売上が低迷している
売上が低迷している場合、会社の設立を見送るのが賢明な判断です。繰り返しになりますが、会社の設立時には下記のような費用がかかります。
- 登録免許税
- 定款の認証手数料
- 定款謄本の交付手数料
また、会社の維持費として以下のような費用も発生します。
- 納税の負担
- 社会保険料の負担
- オフィスの賃料や水道光熱費
- 税理士の顧問料
売上が低迷している場合、上記のようなコストは大きな負担となり、事業活動の足枷になりかねません。繰り返しになりますが、法人化すると赤字でも法人住民税の均等割が発生します。
一方、個人事業主は赤字の場合、所得税や住民税が発生しないため、売上が少ないうちはコスト面で有利です。
以上の理由から、事業が安定したり売上拡大の見通しが立ったりするまでは、個人事業主として事業活動に集中する方が良いです。
事業活動で得たお金を自由に使いたい
上記のため、会社の代表者であっても、事業活動によって得られたお金は自由に使えません。個人事業主の場合、稼いだお金は自分の好きなように使えますが、法人化したあとは役員報酬として定められた金額を受け取る形になります。
また、自分1人の会社であっても会社の資産を私的流用した場合、業務上横領罪に該当し、罪に問われるおそれがあります。会社を設立すると自分が稼いだお金を自由に使えなくなるため、法人化をためらう個人事業主も多いです。
個人事業主のままであれば、以上のような制約がなく、事業活動で得たお金は自由に使えます。上記の理由から、金銭管理に柔軟性を求める場合、会社の設立はおすすめできません。
なお、役員報酬については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:役員報酬はいくらが得?節税対策と効果を最も高める方法を解説
個人事業主の会社設立に関するよくある質問
最後に、個人事業主の会社設立に関するよくある質問についてご紹介します。
内容は随時追記します。
法人と個人事業主の特徴や違いをわかりやすく教えてください
法人と個人事業主の特徴については、次のとおりです。
法人 | 法律によって人と同じく権利能力を与えられた組織 |
個人事業主 | 組織に属さず事業を継続的に行う個人 |
法人と個人事業主の違いに関しては、本記事の会社と個人事業主の違いの項目をご参照ください。
関連記事:法人税と所得税ならどっちが得?税金面で法人化すべきケースを解説
起業とフリーランスの違いは何ですか?
一般的に、起業とは法人を設立して会社経営することを指す場合が多いです。
一方、フリーランスは個人で仕事を請け負い、雇用契約を結ばないため、より自由な働き方を実現できるのが特徴です。起業は事業規模の拡大を念頭に置くケースが多いのに対し、フリーランスは自分のスキルや使える時間の範囲内で活動するのを重視します。
個人事業主が1人で会社を設立する流れを知りたいです
個人事業主が1人で会社を設立する場合のおおまかな流れは、次のとおりです。
個人事業主が1人で会社を設立するケースでは、専門知識が求められる場面も多いため、税理士の力も借りましょう。
関連記事:会社設立手続きを自分で行う5つのステップ|費用や流れについて解説
関連記事:個人事業主から合同会社に切り替えて法人化する手順やメリット・デメリット
関連記事:法人成りで個人事業主を廃業しないデメリットとメリットを解説
関連記事:法人成りで個人事業主の廃業届を提出する必要性やタイミングを解説
参考:J-Net21(株式会社の設立手続き)
参考:J-Net21(合同会社の設立手続き)
1人で会社を設立する際の注意点はありますか?
関連記事:法人成りの税理士報酬の相場は?依頼すべきケースから費用を安く抑えるコツまで解説
起業する場合、会社の設立と個人事業主のどっちが得ですか?
起業する場合、会社の設立と個人事業主のどっちが得かについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。判断に迷う場合は、税理士に相談してみましょう。
関連記事:合同会社か個人事業主ならどっちが得?違いやメリット・デメリットを比較して徹底解説
法人か個人事業主かの見分け方はありますか?
見分け方の1つとして、会社名の表記が挙げられます。法人の場合、株式会社や合同会社などの法人格を表す名称が付いています。
一方、個人事業主の場合、氏名や屋号で表記されるケースが多いです。また、法人の場合、登記が完了すると法人番号が付与され、国税庁法人番号公表サイトで検索できるようになります。
上記のサイトで検索するのも法人か個人事業主かを見分ける手段の1つです。
個人事業主が法人化するタイミングはいつですか?
個人事業主が法人化するタイミングは、本記事の個人事業主が会社設立を検討した方が良いケースの項目をご参照ください。なお、個人事業主の法人化には専門知識が求められたり、手間がかかったりするため、税理士への依頼も検討しましょう。
関連記事:法人成りの税理士報酬の相場は?依頼すべきケースから費用を安く抑えるコツまで解説
個人事業主が法人化するデメリットはありますか?
個人事業主が法人化するデメリットとして考えられるのは、次のとおりです。
- 会社の設立に費用と時間がかかる
- 社会保険料を負担する必要がある
- 経理や税務会計の難易度が上がる
- 赤字でも法人住民税の均等割が発生する
個人事業主が法人化するデメリットやメリットについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:法人成りのメリットは責任・信用・節税面にあり!デメリットもあわせて解説
関連記事:法人税と所得税ならどっちが得?税金面で法人化すべきケースを解説
まとめ
今回は、会社と個人事業主の違いについて、見分け方や法人化を検討する基準とあわせて解説しました。会社と個人事業主は下記の観点において違いがあります。
- 開業費用
- 維持費
- 資金調達
- 廃業手続き
- 事業承継
- 赤字の繰り越し
- 負う責任の範囲
- 経理や税務会計
- 資本金
- 採用
- 節税
- 事業主の給与
- 銀行口座
- 事業形態
- 開業手続き
- 税金
- 社会保険の加入義務
- 経費計上できる範囲
- 社会的な信用度
個人事業主が会社設立を検討した方が良いケースは、次のとおりです。
- 法人向けの事業を展開したい
- 大規模な資金調達を行いたい
- 採用規模を拡大したい
- 有限責任にしたい
- 経費計上の範囲を広げたい
- 許認可を取得したい
- 課税売上高が1,000万円を超えそう
- 年収が800万円を超えそう
一方、個人事業主が会社を設立しない方が良いケースは、以下のとおりです。
- 事業規模の拡大を考えていない
- 売上が低迷している
- 事業活動で得たお金を自由に使いたい