こんにちは、植村会計事務所代表の植村拓真です。


個人事業主の方であれば、上記のようなことを考えたことがあるのではないでしょうか。
たしかに、法人は個人事業主よりも経費にできる出費の範囲が広いです。
しかし、なんでも経費になるわけではありませんし、過剰な経費計上は税務調査で指摘されるリスクとなります。
今回は、法人はなんでも経費で落とせるのかについてよくある勘違いと判断基準とあわせて解説します。
法人化を検討している方は、本記事の内容を参考にしてみてください。
法人がなんでも経費で落とすとどうなるのか

上記のように考える方がいますが、実際は個人事業主よりも経費の範囲が広いだけで、なんでも経費で落とせるわけではありません。
法人がなんでも経費で落としてしまうと、税務調査のリスクが高まりますし、追徴課税を課される恐れがあります。
後ほど詳しく解説しますが、法人で経費として認められるのは、事業に関係しており必要な範囲の出費です。
プライベートの出費や事業を行ううえで必要な範囲を超えた出費は経費計上できません。
プライベートの出費を含めて事業で発生した出費と偽って経費計上すると、税務当局から指摘を受けるリスクが高まります。
そして、プライベートの出費まで含めてなんでも経費で落としていると発覚すると、以下のようなペナルティを受けます。
- 所得が再計算されたうえで過少申告加算税が課される
- 悪質なケースだと判断された場合は重加算税が課される
なんでも経費で落としていると、経費計上で節税するどころか、負担する税金が大幅に増えて経営に大きなダメージを与えかねません。
ですので、出費を経費計上して節税する際は、事業に直接関連する出費かどうかを慎重に見極める必要があります。
なんでも経費で落とせると法人でよくある勘違い

ネットを見ていると、上記のような意見を見かける機会があります。
繰り返しになりますが、実際は法人の経費で落とせる範囲が個人事業主よりも広いだけです。
事業に関係がない出費や必要以上の過剰な出費は、経費として認められません。



上記のようなケースでは、法人の経費として計上できていても、あなたと事業内容が異なるか、たまたま見逃されているだけの恐れがあります。
ですので、あなたの事業に関係があり必要な出費以外は、ネットに経費計上できると書かれていても経費計上しないようにしましょう。
また「経費で落とせばタダになる」「領収書やレシートさえあれば経費計上できる」といった意見もネット上で見かけますが、よくある法人の経費計上に関する勘違いです。
経費計上したとしても手元のお金はなくなりますし、事業に無関係の出費は税務調査のリスクを高めます。
法人が経費で落とす判断基準
繰り返し触れている内容ですが、本項目では改めて法人が経費で落とす判断基準について解説しておきます。
法人であればなんでも経費で落とせると考えて経費処理する行為は、税務調査に入られて追徴課税を課されるリスクを高めかねません。
安全に法人で事業を行うために、本項目の内容を参考にしながら経費計上しましょう!
事業で収入を得るうえで必要な出費である
法人で出費が経費として認められるかどうかの判断基準は、事業で収入を得るために必要かどうかです。
事業活動に直接関係する出費が経費として計上できます。
たとえば、法人のアフィリエイターで、記事や動画コンテンツを作成するための取材でかかったバスや電車の利用料は経費計上できます。
一方、プライベートでバスや電車を利用してかかった利用料は、法人のアフィリエイト事業とは関係ないため経費として認められません。
どちらも同じバスや電車の利用料ですが、事業に必要ない分は経費計上は認められません。
事業の経費とプライベートの出費を明確に区別して、適切な経費処理を心がけましょう。
出費の必要性が事業を行ううえで高いか
法人が事業でかかった費用を経費計上する際のもうひとつの判断基準は、事業を行ううえででの必要性があるかどうかです。
事業に関係のある出費だとしても、余分であったり過剰であったりする費用は経費計上が認められません。
たとえば、法人のアフィリエイターで取材を行うための移動でグリーン車を使用したり、飛行機でファーストクラスを利用したりする際の費用は、必要性が低いため経費計上が認められません。
法人が事業でかかった費用が経費として認められるためには、事業を行ううえでの必要性が高い必要があります。
先ほどの例ですと、取材に行くだけなら新幹線は普通車でいいですし、飛行機もエコノミークラスで十分です。
法人が経費で落とせるもの一覧
最後に、法人が経費で落とせるものの一覧を紹介します。
本項目で紹介する経費で落とせる費用はあくまで一例ですので、参考程度にご覧ください。
役員報酬 | 税法上、経費扱いできるのは定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与の3種類 役員報酬を用いた節税対策の詳細はこちら |
生命保険 | 法人が負担する社長の生命保険料 |
給料賃金 | 法人から従業員に支払う給与、生計をともにする家族への報酬は対象外 (正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態は問わない) |
広告宣伝費 | 商品の宣伝で必要なバナー広告やリスティング広告にかかる費用など、広告でかかる費用 |
交際費 | 事業に関連する飲み会や食事会などの費用、事業とは無関係の飲食でかかった費用は対象外 |
会議費 | 会議のために必要な飲食代 |
旅費交通費 | 出張でかかった交通機関の利用料や宿泊料金など |
通信費 | インターネットの利用料、スマホや固定電話の通話料、郵便代など |
消耗品費 | 金額が10万円未満で使用するとなくなったり使えなくなったりする物品の購入費用 |
事務用品費 | 紙やペンなどの事務用品の購入費用 |
水道光熱費 | 店舗や事務所の水道、電気、ガスの利用料金 |
地代家賃 | 店舗や事務所などの家賃 |
福利厚生費 | 会社の社員旅行、お見舞、香典などの費用 |
寄付金 | 国や地方公共団体への寄付金(全額経費)、一般の寄付金(制限あり)、特定公益増進法人などへの寄付金(制限あり) 法人が支出した寄附金の損金算入についてはこちら |
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関連記事:合同会社が経費で落とせるもの一覧|いくらまで経費計上できる?
まとめ
今回は、法人はなんでも経費で落とせるのかについてよくある勘違いと判断基準とあわせて解説しました。
法人だからなんでも経費で落とせるというのは誤った知識です。
法人が事業でかかった費用を経費で落とすためには、事業で収入を得るうえで必要な出費であり、出費の必要性が事業を行ううえで高くなければなりません。
プライベートの出費や事業を行ううえでの過剰な出費は、経費計上が認められませんので注意しましょう。
税務調査で経費について指摘されてしまうと、結果的に節税するどころか、本来よりも多い金額を納税しなければならなくなります。
上記の内容を踏まえたうえで、節税目的で法人化すべきか悩んでいる個人事業主(フリーランス)の方は、慎重に検討しましょう。
法人化には他にも考慮すべき要素がありますので、以下の記事もあわせてご覧ください。
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