こんにちは、アフィリエイトに強い税理士の植村拓真です。
初期投資をかけずに始められるアフィリエイトは、サラリーマンや主婦の副業として人気があります。
下に示した図のとおり、アフィリエイト広告の市場規模は今後も拡大する見込みです。
弊所でも、売上規模が大きくなってきたアフィリエイターの方から税金に関するご相談をいただく機会が増加しています。中でも、個人事業税に関してのご質問をしばしばいただきます。
所得税や住民税、消費税については分かりやすく解説された情報がインターネット上に溢れていますが、個人事業税に関する解説記事はまだ足りていないようです。
具体的には、下記のような質問をよくいただきます。



本記事を読んでいるアフィリエイターの方の中にも、上記のような疑問や不安を抱えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、アフィリエイトでも個人事業税はかかるのかについて、納税不要のケースや未申告のリスクとあわせて解説します。
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アフィリエイトでも個人事業税はかかる
原則、アフィリエイト収入がある方は個人事業税の課税対象です。個人事業税は個人事業の開業・廃業等届出書の職業欄に記載する業種によって、税率が異なります。
上記の詳細については、本記事の個人事業税の基礎知識の項目をご参照ください。
職業欄にアフィリエイトと記載すると、広告業に区分されるケースが多く、個人事業税の税率は5%になります。
ただし、業種の区分は自治体ごとに異なるため、不安な場合は納税地を所轄する都道府県税事務所へ確認しましょう。
個人事業税は前年の事業所得に対してかかる地方税で、8月に納税地を所轄する都道府県税事務所から納税通知書が送られてきます。納付時期は8月と11月の年2回です。
なお、確定申告を行っていれば、個人事業税の申告は不要です。
参考:東京都主税局(個人事業税)
参考:国税庁(A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続)
参考:総務省(地方税制度|個人事業税)
参考:国税庁(租税公課 – 確定申告書作成コーナー -)
関連記事:アフィリエイトで開業届を提出するタイミングから書き方まで税理士が解説
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そもそもアフィリエイトとは?
アフィリエイトとは、インターネット広告の一形態です。
下に示した図のとおり、アフィリエイターが自身のWEBサイトやブログに広告主の商品やサービスを紹介して、該当のWEBサイトやブログを経由して商品の購入やサービスへの申し込みが発生すると、広告主からアフィリエイターに報酬が支払われる仕組みです。
引用:消費者庁(デジタル広告〔アフィリエイト広告〕への対応について|p4)
以上のような仕組みを活用して、広告主は効率的に商品やサービスを宣伝しています。
また、アフィリエイターへの支払いは成果報酬のため、広告主は広告費を抑えながら、多様なメディアを通じて多くのユーザーにリーチできます。
アフィリエイターになるために特別な資格やスキルは不要で、初期費用もほとんどかからないため、アフィリエイトはサラリーマンや主婦の副業として人気です。
以上のように、広告主、アフィリエイター、消費者の3者にとってメリットのある仕組みとしてアフィリエイトは急速に普及しています。
参考:国民生活センター(アフィリエイト広告のしくみと法規制)
参考:消費者庁(アフィリエイト広告の取引実態)
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個人事業税の基礎知識
本項目で解説するのは、個人事業税の基礎知識についてです。下記の5点に分けて解説していきます。
- アフィリエイターが納める税金の1つ
- 個人事業税が課される理由
- 個人事業税の税率
- 個人事業税の申告方法
- 個人事業税の納付方法
個人事業主が納める税金の1つ
個人事業税は個人事業主が納める税金の1つです。個人事業主が納める個人事業税以外の税金は、主に次のとおりです。
- 所得税
- 個人住民税
- 消費税
課税主体に着目した場合、下表のとおり、国に納める国税と地方自治体に納める地方税の2つに区分されます。
引用:総務省(地方税の仕組み)
所得税や消費税は国税で、個人住民税や個人事業税は地方税です。アフィリエイトを始める場合、以上のような税務に関する知識も深めておくのが大切です。
関連記事:ネットビジネスの税金と確定申告まとめ|無申告がバレる理由も解説
参考:国税庁(所得税のしくみ)
参考:総務省(地方税制度|個人住民税)
参考:国税庁(消費税のしくみ)
個人事業税が課される理由
道路や上下水道の整備、日々のごみ収集など、自治体が提供する行政サービスのお陰で、私たちは事業活動を円滑に行えています。
自治体が提供する行政サービスの経費を一部負担する形で課税されるのが、個人事業税です。
たとえば、法人では事業規模の拡大に伴い、雇用促進に関する助成制度や設備投資への補助金など、行政サービスを幅広く利用する機会が頻繁にあります。
一方、個人事業主は法人と比べると事業規模が小さいため、生活に密接した狭い範囲の行政サービスで十分な場合が多いです。
以上のように、行政サービスの安定供給を支えるため、法人と個人事業主それぞれの事業規模や利用する行政サービスの範囲に応じた、適切な配分で事業税が課されています。
参考:総務省(地方税制度|個人事業税)
参考:総務省(地方税制度|法人事業税)
個人事業税の税率
個人事業税は前年の事業所得に3〜5%の税率をかけて算出されます。業種ごとの税率は、下表のとおりです。
区分 | 税率 | 事業の種類 |
第1種事業 (37業種) |
5% | 物品販売業、運送取扱業、料理店業、遊覧所業、保険業、船舶定係場業、飲食店業、商品取引業、金銭貸付業、倉庫業、周旋業、不動産売買業、物品貸付業、駐車場業、代理業、広告業、不動産貸付業、請負業、仲立業、興信所業、製造業、印刷業、問屋業、案内業、電気供給業、出版業、両替業、冠婚葬祭業、土石採取業、写真業、公衆浴場業(むし風呂等)、電気通信事業、席貸業、演劇興行業、運送業、旅館業、遊技場業 |
第2種事業 (3業種) |
4% | 畜産業、水産業、薪炭製造業 |
第3種事業 (30業種) |
5% | 医業、公証人業、設計監督者業、公衆浴場業(銭湯)、歯科医業、弁理士業、不動産鑑定業、歯科衛生士業、薬剤師業、税理士業、デザイン業、歯科技工士業、獣医業、公認会計士業、諸芸師匠業、測量士業、弁護士業、計理士業、理容業、土地家屋調査士業、司法書士業、社会保険労務士業、美容業、海事代理士業、行政書士業、コンサルタント業、クリーニング業、印刷製版業 |
3% | あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業 |
繰り返しになりますが、アフィリエイトは第1種事業の広告業に区分されるケースが多く、個人事業税の税率は5%で計算されます。
ただし、自治体によってはアフィリエイトの事業区分が上記と異なる場合があり、想定していた税率で算出されないケースもあるため注意しましょう。
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個人事業税の申告方法
確定申告を行っていない場合、納税地を所轄する都道府県税事務所に個人事業税を申告しなければなりません。確定申告を済ませている方は、個人事業税の申告は不要です。
ただし、確定申告書の事業税の欄に漏れなく記入しましょう。
引用:国税庁(確定申告書等の様式・手引き等|申告書第一表・第二表【令和6年分用】)
上記については、本記事の法人成りで個人事業主を廃業した場合の個人事業税の取り扱いの項目もご参照ください。
個人事業税の納付方法
原則、個人事業税の納税通知書は、8月に納税地を所轄する都道府県税事務所から送られてきます。
繰り返しになりますが、納付は年に2回で、第1期納期限が8月末、第2期納期限が11月末です。
支払い方法は、納税地を所轄する都道府県税事務所の窓口での納付のほか、クレジットカード納付や口座振替なども選べます。
なお、口座振替で納付する場合、引き落とし時に残高不足が起きないように注意しましょう。
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法人成りで個人事業主を廃業した場合の個人事業税の取り扱い
法人成りで個人事業主を廃業したアフィリエイターの方は、廃業年の個人事業税の取り扱いについて注意が必要です。
廃業年の個人事業税の申告については、下記のように規定されているため、期限内に行いましょう。
年の中途で事業を廃止した場合は、所得税の確定申告や住民税の申告とは別に、廃止の日から1か月以内(死亡による廃止の場合は4か月以内)に個人の事業税の申告をしなければなりません。
引用:東京都主税局(個人事業税)
また、個人事業税は納税通知書が届いた年に経費計上するのが原則ですが、法人成りで個人事業主を廃業するアフィリエイターの方は、廃業年の翌年に納める個人事業税の見込み額を廃業年に経費計上できます。
個人事業税の見込み額の計算式は、下記のとおりです。
引用:国税庁(租税公課|事業を廃止した年分の所得につき課税される事業税の見込控除)
アフィリエイトで法人成りを検討しているアフィリエイターの方は、以上のような申告を漏れなく行いましょう。
関連記事:アフィリエイトで法人化(会社設立)するメリット・デメリットとタイミングを解説
関連記事:アフィリエイトのマイクロ法人化の節税方法!メリット・デメリットも解説
関連記事:法人成りで個人事業主を廃業しないデメリットとメリットを解説
関連記事:法人成りで個人事業主の廃業届を提出する必要性やタイミングを解説
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アフィリエイトで個人事業税が納税不要となるケース
本項目では、アフィリエイトで個人事業税が納税不要となるケースについて解説します。
アフィリエイトで個人事業税が納税不要となるケースは、主に次のとおりです。
- 事業所得が290万円以下だった
- 赤字の繰越控除が適用できる
それでは、順番に見ていきましょう。
事業所得が290万円以下だった
個人事業税には事業主控除が設けられており、控除額は最大290万円です。上記の理由から、事業所得が290万円以下の場合、個人事業税は課税されません。
ただし、年の途中から事業を始めた場合、控除額は下表のように月割りで計算されます。
事業を行った月数 | 事業主控除額 |
1ヶ月 | 242,000 |
2ヶ月 | 484,000 |
3ヶ月 | 725,000 |
4ヶ月 | 967,000 |
5ヶ月 | 1,209,000 |
6ヶ月 | 1,450,000 |
7ヶ月 | 1,692,000 |
8ヶ月 | 1,934,000 |
9ヶ月 | 2,175,000 |
10ヶ月 | 2,417,000 |
11ヶ月 | 2,659,000 |
12ヶ月 | 2,900,000 |
たとえば、7月から事業を開始した場合、事業を行った月数は6ヶ月となるため、控除額は145万円となります。
なお、個人事業税の計算では、青色申告の特別控除が適用されないため注意が必要です。
青色申告の特別控除を差し引いて計算している場合、事業所得が290万円以下だと思っていたにも関わらず、個人事業税の納税通知書が届くおそれがあります。
関連記事:アフィリエイトに強い税理士が解説!頼れる税理士の選び方や費用相場
赤字の繰越控除が適用できる
青色申告で確定申告を行っている場合、赤字を最大3年間繰り越して控除できます。
前年に赤字が出ている場合、今年の所得から赤字分を差し引いた金額が290万円以下になれば、事業主控除の範囲内に収まるため、個人事業税は発生しません。
参考:東京都主税局(個人事業税)
参考:国税庁(No.2070 青色申告制度)
関連記事:アフィリエイトに強い税理士が解説!頼れる税理士の選び方や費用相場
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アフィリエイトで個人事業税を納めないリスク
アフィリエイト収入で発生した個人事業税を納めなかった場合、以下のようなリスクが伴います。
- 延滞金が発生する
- 督促状が送られてくる
- 財産を差し押さえられる
延滞金は個人事業税の納付期限の翌日から発生し、滞納期間が長引くほど増加します。地方税である個人事業税にかかる延滞金の割合は、下表のとおりです。
個人事業税を納めない状態が続くと督促状が届きますし、最悪の場合、財産調査を経て差し押さえが行われます。
差し押さえの対象となる財産の種類は、預貯金や給与、不動産などさまざまです。
なお、給与が差し押さえられる場合に懸念されるのは、税金滞納が職場に知れ渡ってしまうおそれです。
引用:大阪府(滞納整理の強化)
関連記事:無申告がバレる理由|確定申告していない人のペナルティと末路
関連記事:アフィリエイトの税務調査で確認される内容と対策を解説
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アフィリエイトで納める税金に関するよくある質問
最後に、アフィリエイトで納める税金に関するよくある質問について紹介します。


上記のような疑問や不安を抱えているアフィリエイターの方は、本項目も参考にしてみてください。内容は随時追記します。
アフィリエイト収入を得ていますが、文筆業と届出していれば個人事業税はかかりませんか?
アフィリエイト収入を得る過程で文章を書く作業が含まれていたとしても、成果報酬で広告収入を得ている場合、文筆業とは認められにくいです。
繰り返しになりますが、アフィリエイトは広告業に分類されて、個人事業税の課税対象となる傾向があります。
なお、上記については自治体ごとに判断が異なるケースもありますが、実態と異なる業種で届出を行った場合、後日確認や指摘が入るおそれもあるため注意が必要です。
税務上のリスクを回避するためにも、少しでも不安な点があれば、税理士に確認しましょう!
関連記事:アフィリエイトの税務調査で確認される内容と対策を解説
関連記事:インターネット取引等についてのお尋ねが税務署から届いた際の対処法を税理士が解説
アフィリエイトで個人事業主から法人化するタイミングはいつですか?
法人化を検討し始める目安の1つとして、アフィリエイトの課税所得が800万円を超えそうなタイミングが挙げられます。
なお、法人化によって得られる主なメリットは下記のとおりです。
- 法人税の適用で所得税よりも節税できるケースがある
- 経費計上できる範囲が広がる
- 社会的な信用度が高まる
関連記事:アフィリエイトで法人化(会社設立)するメリット・デメリットとタイミングを解説
関連記事:アフィリエイトのマイクロ法人化の節税方法!メリット・デメリットも解説
関連記事:アフィリエイトで合同会社を設立する目安から事業目的の設定まで徹底解説
参考:国税庁(No.2260 所得税の税率)
参考:国税庁(No.5759 法人税の税率)
アフィリエイトで発生した税金の無申告がばれるケースはありますか?
下記のとおり、インターネット取引を行っている個人への税務調査が強化されており、アフィリエイトで発生した税金の無申告がばれるケースが増えています。
引用:国税庁(令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況)
また、ASPへ税務調査が入り、支払調書の精査によって無申告が特定されるケースも多いです。
関連記事:アフィリエイトで確定申告しないとばれる?住民税やどうなるかも税理士が解説
関連記事:無申告がバレる理由|確定申告していない人のペナルティと末路
関連記事:ネットビジネスの税金と確定申告まとめ|無申告がバレる理由も解説
アフィリエイトでも消費税は納めなければなりませんか?
下に示した図のとおり、アフィリエイトでも基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合、2年後から消費税の納税義務が発生します。
引用:国税庁(消費税のしくみ)
なお、インボイス制度が導入されている現在、課税売上高が1,000万円を超えていない場合でも、消費税の課税事業者の選択は検討しましょう。
インボイスを発行できない消費税の免税事業者との取引において、公告主やASPは仕入税額控除が適用できないため、アフィリエイト契約を打ち切るおそれがあるためです。
インボイス制度がアフィリエイト業界に与える影響と対策については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
関連記事:アフィリエイト業界にインボイス制度が与える影響と対策まとめ
アフィリエイト収入にかかる税金は学生でも納める必要はありますか?
アフィリエイトの所得が、基礎控除額48万円を上回る場合、学生でも所得税の確定申告が必要です。
なお、所得税が発生しない場合でも、お住まいの市町村によっては住民税が課されるケースがあるため注意しましょう!
参考:武蔵野市(所得税は非課税でしたが住民税は課税になりました 非課税となる基準が異なりますか)
関連記事:アフィリエイトで確定申告しないとばれる?住民税やどうなるかも税理士が解説
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まとめ
今回は、アフィリエイトでも個人事業税はかかるのかについて、納税不要のケースや未申告のリスクとあわせて解説しました。
アフィリエイト収入がある方は、原則として、個人事業税の課税対象です。アフィリエイトは広告業に区分されるケースが多く、税率5%の個人事業税が前年の事業所得に対してかかります。
ただし、業種の区分は自治体ごとに異なるため、想定している税率が正しいかどうか不安な場合は、納税地を所轄する都道府県税事務所へ確認しましょう。
なお、アフィリエイトで個人事業税が納税不要となるケースは、主に次のとおりです。
- 事業所得が290万円以下だった
- 赤字の繰越控除が適用できる
また、アフィリエイトで個人事業税を納めない場合のリスクは、以下のとおりです。
- 延滞金がかさんでしまう
- 最悪の場合、財産を差し押さえられる
アフィリエイトで発生する個人事業税は、適切な申告と納税を行いましょう。