こんにちは、植村会計事務所代表の植村拓真です。
以下のような理由から、日本には決算期を3月に設定している法人が多いです。
- 教育機関の年度に合わせる
- 税制改正のタイミングに合わせる
- 国や地方自治体の会計年度に合わせる
そのため、法人化する際に決算期を決めますが、いつにすべきかわからず、なんとなく3月に設定した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
決算期は自社の状況に合わせて設定すべきですので、あとから変更したいと考える方もいらっしゃいます。
今回はそんな方に向けて、決算期の変更手続きの手順についてメリット・デメリットとあわせてお話しします。
【注意】決算期の変更手続きを行うデメリット
繰り返しになりますが、決算期は自由に決められますが、自社の状況によってはあとから後悔する方もいらっしゃいます。
すでに後悔して、決算期の変更を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本項目ではそんな方々に向けて、決算期の変更手続きを行うデメリットについてお話しします。
決算期をいつに変更するかを決めるうえで、参考にしてみてください。
①手続きに時間がかかる
仕方がない内容ではありますが、決算期の変更手続きには時間がかかるデメリットがあります。
後ほど詳しくお話ししますが、決算期を変更するためには、以下の手順を踏む必要があります。
- 株主総会で一定数の賛成を得る
- 議事録を作成する
- 定款を変更する
- 税務署に異動事項に関する届出と議事録のコピーを提出する
上記のとおり、決算期を変更するためには、株主総会を開催したり税務署に必要書類を提出したりなどの時間と人的資源が必要です。
ひとり社長の法人であればすべてご自身で行う必要があるため、手続きに時間がかかるのはデメリットであると言えます。
②納税や税理士報酬支払いのタイミングが早まる
1事業年度は現行の会社法で、原則12ヶ月未満と定められています。
そのため、決算期を変更する際は、1事業年度が12ヶ月を超えないように設定します。
つまり、決算期を変更すると決算日が早まるため、納税や税理士報酬支払いのタイミングも早まるわけです。
③事業年度の短縮により税金計算時に調整が必要になる
決算期の変更により事業年度が短縮されると、税金計算時に調整が必要になります。
たとえば、減価償却資産の償却限度額や中小法人の軽減税率は、事業年度の月数に応じて調整が必要です。
そして、法人化直後の会社で消費税の免税事業者である場合、事業年度を短縮すると消費税の課税事業者になる時期が早まってしまうケースがあります。
④前年度との財務データの比較が困難になる
決算期の変更により事業年度が短縮されると、前事業年度との財務データの比較が困難です。
通常、企業の業績評価や成長の分析は、過去の損益計算書を用いて行います。
しかし、決算期を変更すると他の事業年度と期間が異なってしまうため、企業の業績評価や成長の分析損益計算書を見ても行えません。
特に、月ごとに売上や出費が大きく異なる場合は比較が難しくなります。
決算期を変更にはメリットだけでなくデメリットもありますので、慎重に検討しましょう
決算期の変更手続きを行うメリット
続いて、決算期の変更を行うメリットは以下のとおりです。
- 余裕を持って決算業務を行える
- 消費税の免税期間を延長できる
- 役員報酬を再設定する時期を早められる
- 課税の繰り延べられる
順番に詳細を見ていきましょう。
①余裕を持って決算業務を行える
上記のような方が、決算期の変更手続きを行うケースがあります。
決算期が繁忙期と被っている場合、普段の業務だけでなく決算業務も行わなければなりません。
正確に決算申告を行わなければ、あとから税務署に指摘される恐れがあります。
そして、普段の業務ばかりに集中していると、決算申告の期限に間に合いません。
そこで、繁忙期を避けて決算期を変更すれば、余裕を持って決算業務を行えるようになります。
顧問税理士がいない、決算申告を自力で行なっている方は、繁忙期を意識して決算期を再設定してみましょう。
関連記事:【法人の決算申告】税理士なしのリスクと依頼時の費用相場
②消費税の免税期間を延長できる
消費税の免税事業者である場合、決算期を変更すれば免税期間を延長できるケースがあります。
本来、課税売上高が1,000万円を超えた場合、翌々事業年度から消費税の課税事業者に切り替わります。
しかし、決算期を変更すると免税期間が伸びるため、翌々事業年度の開始直後に消費税の課税事業者にはなりません。
③役員報酬を再設定する時期を早められる
決算期を変更して事業年度を短縮すると、通常よりも早く役員報酬を再設定できます。
本来、役員報酬は定期同額給与に該当する必要があり、事業年度が終わるまで変更できません。
しかし、決算期の変更で事業年度が短縮されるため、本来よりも早いタイミングで再設定できます。
④課税の繰り延べられる
あくまで課税の繰り延べですが、決算期の変更により資金繰りを調整できます。
決算期を早めて事業年度内の利益を縮小すれば、翌事業年度の納税額は増えますが、目先の現金を本来よりも多く残せます。
しかし、繰り返しになりますが、決算期の変更による資金繰りの調整はあくまで課税の繰り延べです。
いずれ利益分の税金を納めなければなりませんので、翌事業年度の資金繰りに注意して決算期を変更しましょう。
決算期の変更手続きを行う手順
決算期の変更手続きを行う手順は、以下のとおりです。
- 株主総会で一定数の賛成を得えて議事録を作成する
- 定款を変更する
- 税務署に異動事項に関する届出と議事録のコピーを提出する
それでは、順番に見ていきましょう。
①株主総会で一定数の賛成を得えて議事録を作成する
まずは、株主総会で決算期の変更について3分の2以上の賛成を得ましょう。
通常、事業年度は定款に定められており、変更には株主総会の特別決議が必要です。
そして、決算期の変更を行う旨を記載した株主総会議事録を作成しましょう。
株主総会議事録はコピーして、後ほど税務署に異動事項に関する届出とセットで提出します。
②定款を変更する
定款に記載されている事業年度に関する記載は、決算期の変更に合わせて変更する必要があります。
公証役場での認証や法務局への届出は不要です。
③税務署に異動事項に関する届出と議事録のコピーを提出する
最後に、所轄の税務署、都道府県税事務所、市区町村役所に「異動事項に関する届出」と「株主総会議事録のコピー」を提出します。
以上で決算期の変更手続きは完了です。
必要に応じて、取引先や金融機関に連絡を入れておきましょう。
決算期変更の届出の提出期限
上記のようにお考えの方がいらっしゃると思いますが、決算期変更の届出の提出には明確な期限はありません。
しかし、いつでもいいわけではありませんので、変更後の決算期の末日までには済ませておきましょう。
決算期をいつに変更すればいいか悩んでいる、変更手続きが面倒など、決算期の変更に関してお悩みで相談できる税理士をお探しの方は、お気軽にご相談ください!